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イスラエル・米国、アラブ諸国に対し大きな影響力を持つシリア(かけはし)
http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/252.html
投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 6 月 27 日 20:57:36: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/frame080630g.html

レバノン 危機は終わっていない―ジルベール・アシュカルとのインタビュー(下)

戦争の合間における小康状態

――こうした状況において、イスラエルは介入の機会をつかむことができるでしょうか。

 私は、部分的にはその内部的危機のために、イスラエルが二〇〇六年にレバノンで起こしたような規模の軍事行動を再び乗りだすことは不可能だと確信しています。それはUNIFIL(国連レバノン暫定軍)が存在しているためではありません。UNIFILはそう望んだとしても、イスラエルのレバノン侵略を阻止することなど全くできないのです。イスラエルの侵攻をNATO軍によって阻止することはできません。真の障がいとは、イスラエル軍がレバノンですでに遭遇した抵抗の強さに示されています。
 すでにイスラエルは二〇〇〇年に、一九八二年以来占領していた南部レバノンの最後の地から撤退せざるをえませんでした。これがイスラエルに新たな土地への侵攻をためらわせています。したがって私は、イスラエルが二〇〇六年にこうむった侮辱への報復のために、もっと狭い範囲での攻撃を考えているのだと思います。しばらく前に起こったヒズボラの軍事指導者であるムグニエの暗殺を、ヒズボラは一つのシグナルとして認識しています。
 これも最近の事件においてある役割を果たしたと私は思います。すなわち、イスラエルの特殊部隊作戦などの目標を絞った作戦、ヒズボラのトップの首を取ることを目標にした作戦への恐怖です。ナスララ(ヒズボラの最高指導者)がもはや人々の前に姿を現そうとしないのはまさにそのためです。彼は二〇〇六年夏の直後に、人々の前に姿を現すことはあまりありませんでしたが、イスラエルが自らこうむった敗北にショックを受けた状態にあることを彼は知りました。ナスララは、自らの身が脅かされており、イスラエルが出来るだけ早い機会に彼を暗殺しようとしていることを知っています。
 他方、レバノンの紛争にイスラエルが介入するよう呼びかけている者はどこにもいません。米国政府でさえそれを望んでいません。それが彼らの同盟国を深刻に困惑させることになるからです。
 レバノン政府多数派も、イスラエルの介入を望んでいないのです。
 さらに米国自身が、海軍と空軍にによる爆撃以上のことはできません。米国はアフガニスタンとイラクで苦境にあるので、新たな地上侵攻を含む新たな戦線を開くことなど、とても想像できないのです。とりわけ、二〇〇六年のヒズボラの抵抗能力に示されたような困難な戦線に手をつけることなど考えられません。
 それにもかかわらずヒズボラは脅威を感じており、困惑させられるようなサインが積み重ねられているのを見ています。イタリアのベルルスコーニ首相と外相がUNIFILへの委任を見直す宣言をしたことを含めてです。
 ヒズボラはこの宣言を、ワシントンの当初の計画として登場したものを実行する意図の現れであると解釈しています。すなわち、レバノン軍ならびに同盟国軍とレバノン駐留NATO軍を結びつけて、ヒズボラを潰滅させることです。ヒズボラは、これがワシントンによって作成されたシナリオであるということを良く知っています。
 しかしヒズボラの行動が、この状況における予防的防衛行為であったとしても、私の意見ではそれは限界を超えたものであり、中期的には危険で有害なものとなる状況を作りだしました。今まさに起きたことが、孤立したエピソードではなく、レバノンにおける新たな戦争の第一ラウンドとして歴史によって見なされることは全くありうることです。それが多かれ少なかれ長期にわたる、連続したラウンドの間での小康状態という時期だったとしてもです。それは蓄積された不満と緊張が強いからであり、また他方では、それがこの領域におけるヒズボラの軍事勢力とレバノンの国家主権との共存がほとんど不可能であることが示されてきたからです。
 ヒズボラは国家内国家であり、さらにその状況を国家に強制する能力を確証してきました。過去において、ヒズボラはイスラエルの侵略に対する「抵抗国家」として登場することができました。この侵略に対してまさしく国家は立ち向かうことができず、南部レバノンの住民を防衛することもできないのですから。

キリスト教マロン派2派の動向

――ミシェル・アウン(訳注:親シリア派の野党でキリスト教マロン派などによって構成される自由愛国運動の指導者)がこの紛争に加わらなかった事実をどのように解釈しますか。

 そう、彼はこの衝突の局外にとどまりました。私は彼がそこに加わることに関心がなかったのだと思います。もし彼が介入したら、キリスト教徒間の衝突になったでしょう。彼は、レバノンの右翼タカ派勢力であるサミール・ジャアジャア(訳注:キリスト教マロン派で与党のレバノン軍団党指導者)によって自分が簡単に軍事的に打ち負かされることを知っています。その上、現在ジャアジャアはおそらくキリスト教徒地域で、アウンより人気があり、アウンはキリスト教徒地域に紛争を持ち込むことに関心がなかったのです。
 しかし面白いことは、ジャアジャア自身が騒動に加わらなかったことです。このことは、キリスト教徒地域の世論が自分たちの領域内でどんな衝突が起きることにも、非常に敵意を持っていたためだと思います。彼らは今回起こったような衝突から身を離していることを望んでいます。人びとは平和を維持することが利益になると考えました。キリスト教徒地域に紛争を拡大することは、ジャアジャアの人気への打撃となったでしょう。衝突がキリスト教徒地域で勃発すれば、それはこの地域に限定されることはないので、彼もまた待機することにしたのだと、私は思います。衝突がキリスト教徒地域に広がった場合、ヒズボラはアウンを支持するでしょうし、そうなったら国中が戦火に包まれ、レバノンは深刻な内戦にたたきこまれるでしょう。
 もし現在の力学が悪化し続ければ、そしてそれが長期間にわたることになれば、政治的解決の条件について考えることは困難になっていきます。もし諸条件が悪化すれば、われわれはレバノンにおける新たな内戦、軍の分裂、それぞれの陣営を支持する地域的・国際的勢力からの支援と介入を見ることになるでしょう。

かぎを握るシリア政府

――シリアはどういう役割を果たしているのですか。

 シリアは自らの領域にレバノンの宗派的戦争が拡大することを恐れています。すでにレバノン北部では、レバノンのアラウィ派(訳注:シリアのアサド大統領の出身宗派)とスンニ派の間での衝突が起きています。これはシリアの体制にとって危機を意味します。シリアの政権は、住民の圧倒的多数派がスンニ派であるこの国において、少数派グループであるアラウィ派によって統治されているからです。もし宗派間の衝突がシリアで勃発すれば、現体制は終りを迎えるでしょう。しかし今のところシリアの体制は、事態を厳重にコントロールしています。
 他方、イスラエルの新聞に掲載されている、イスラエルも米国もヒズボラ問題を解決できないという多くのコメントを読むだけで十分です。ヨーロッパについては言うまでもありません。アラブ諸国の軍について言えば、シリアの政権との協定ぬきに状況を処理することは困難だと彼らは考えていると思います。したがって唯一の解決策は、シリア政府と会談することです。
 「ハアレツ」紙などのイスラエルの新聞で、米国がイスラエル政府とシリア政府との会談を妨害しているのを責める記事を読むことができます。シリア政府との交渉が重要な要素になるとしている、ベーカー=ハミルトンの「イラク研究グループ」の提言(訳注:二〇〇六年末に出された、シリア、イランとの交渉を通じて米軍のイラクからの撤退を早めることをブッシュ政権に訴えた提言。ブッシュはこの提言を無視して昨年初頭からイラクへの米軍「増派」を強行した)を考えてみましょう。シリアはこれらすべてを自らに有利な兆候と解釈することができます。
 したがって、シリアがすべてを交渉のテーブルに乗せようとしていることは明らかです。その要求は、次のようなものです。
(1)シリアに対するすべての脅し、とりわけラフィク・ハリリ暗殺事件を調査する国際特別法廷の撤回。
(2)シリアに対する態度の転換とレバノンに対するシリアの後見的地位の承認。
 シリア政府がすでに一九七六年、一九八七年の二度にわたってベイルートに介入したことを忘れるべきではありません。一回目は、シリアが外から米国の敵を支持した後で、ワシントンの同盟者を救出するためでした。二度目はシリア軍とヒズボラとの衝突後でした。おそらく三度目があるかもしれません。
 シリア政府が、直接的か間接的かを問わず、再び軍事的に介入することを「求められる」可能性を排除することはできません。すなわち、イランがシリアを通ってヒズボラを支援する道を封じるためです。なぜならイスラエルと米国の双方にとって、シリア政府はイランに比べれば困惑の種である度合いは少ないからです。イスラエルにとってシリア政府は問題ではありません。イスラエルとシリアの国境は、平穏至極の状態です。
 もちろんレバノンがその不可分の一部である、複雑な中東の方程式という要素がありますが。

追記:ドーハ協定へのコメント

 (上記のインタビューは五月十三日に行われた。「イル・マニフェスト」紙への掲載が遅れたため、五月二十一日にカタールのドーハでレバノンのさまざまな分派によって調印された協定に関する以下のコメントを追記する。)

1 ほとんどの真剣なコメントが強調しているように、ドーハ協定は新しいレバノン紛争への奇跡的解決策ではないが、多かれ少なかれ遠い将来に新たな武装衝突のラウンドが起きる可能性を残してはいるものの、対立する二つの陣営が衝突を別の手段で継続するための暫定期間を切り開く上で最善の協定である。断続的に十五年間(一九七五年〜九〇年)続いたレバノン戦争は、この種の協定によって封印された。動きだした新しい内戦の力学を芽のうちに摘みとる地域的・国際的交渉がなければ、再び戦争が起こりうることを恐れるべきである。ついでに述べれば、来るべきアメリカの選挙の結果としてワシントンの中東政策が変化する可能性は、ドーハ停戦協定の基礎にある重要な要因の一つである。

2 ドーハ協定は、社会的に保守的な政治的・宗派的勢力間――とりわけ二つの陣営に分裂しているシーア派・スンニ派のムスリムとレバノンのキリスト教徒間――の制度的ポジションの配分をめぐる新たな妥協以外のなにものでもない。より狭い選挙区分割へと舞い戻った新旧の選挙法に関する合意は、ここ数年のうちにレバノンで復活した宗派的力学を強化することになるだろう。それは、政治的分岐と複数主義的宗派勢力を有利にするために、レバノンを全国単一の選挙区とする比例代表制を求めてきたレバノン左翼の主張とは正反対のものである。

3 サウジアラビア政府と米国政府の同盟者である議会多数派は、野党の側がその主要な要求――政府内での拒否権――を、最終的に武力をもって現場で強制したことにより、受け入れた。この拒否権は、二〇〇六年十二月に始まった平和的動員を通じては得られなかったものだった。次の議会選挙まで一年たらずとなった状況で、議会の現在の多数派は、現議会が六年間の任期でレバノン軍司令官ミシェル・スレイマンの共和国大統領への選出を保障することとの引き換えに、合意に基づいて統治される暫定政権が受け入れられると見積もった。これは二〇〇九年に予定されている選挙後、現在の議会多数派がその位置に止まることが全く不確実な情勢の下では、何よりも重要である。その意味で、今回の協定の主要な敗者は、ミシェル・アウン将軍である。彼の何よりの野望は、ワシントンとダマスカス(シリア政府)との間で二〇〇七年十二月に結ばれた協定に従ったスレイマンの選出を阻止するために中心的な役割を果してきたのであった。

4 ドーハ協定は、米国政府とサウジアラビア政府の側と、シリア政府とイラン政府の側との集中的な取り引きの結果である。カタールの首長――カタールは中東地域の米軍の主要な司令部センターの位置する場所であり(以前はサウジ王国に位置していた)、イスラエル国との友好的な関係を維持するとともに、シリア、イラン、レバノンのヒズボラとも同様に友好的な関係を維持している――は、この調停の完全なブローカーだった。ドーハ協定が調印されたのと同日に、イスラエルのオルメルト政権とシリア政府の間の交渉の進展が暴露されたことは、上記の五月十三日のインタビューの結論を確証したものである、と私には思える。

ロンドン 
2008年5月22日
(ジルベール・アシュカルはレバノン出身で、ロンドンの東方・アフリカ研究スクールで教鞭をとっている。邦訳著書に『野蛮の衝突』〔作品社刊〕など。最新刊に『中東の永続的動乱』〔つげ書房新社刊〕)。
(「インターナショナルビューポイント」08年5月号)
 

 

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