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マクレラン元大統領報道官が語るブッシュ政権の犯罪
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2008/06/post_8897.html
2004年3月22日、クリントン政権及び現ブッシュ政権でテロ対策大統領特別補佐官を務めたリチャード・クラークが、後に話題となる暴露本『Against All Enemies(邦訳:爆弾証言 すべての敵に向かって)』を発表した。クラークは同書で「同時多発テロの直前まで、ブッシュ政権はテロ対策に全く無関心だった」と書き、ブッシュ大統領と閣僚たちを猛烈に批判し、一方でテロ対策の責務を果たせなかったと国民に謝罪した。
リチャード・クラークの大統領批判に真っ先に対応する羽目になったのが、当時のホワイトハウス報道官スコット・マクレランである。クラークの書籍が発売されたその日、彼はホワイトハウス定例記者会見で、リチャード・クラークを批判してこう言い放った:
「なぜ、まったく唐突にこんなことを?重大な懸念があったのなら、もっと早い時期から問題提起すべきだったのでは?政権を去って1年半が過ぎ、突然、このような重大な懸念を彼(クラーク)は持ち出しているんです。さて、ここで記者の皆さんに事実をちょっと鑑みてもらいたいのですが、彼は大統領選挙の真っ最中にこの件を持ち出しているということです。彼は本を書いたので、世に出て本の宣伝をしたいのですよ。」
ところが、それから4年以上経過した2008年6月、“元”報道官スコット・マクレランは、リチャード・クラークと同じように暴露本を発表し、同じようにブッシュ政権批判を開始したのである。しかも、書籍発表直後から、連日テレビに登場し、喋るたびに「本に書いてあるとおり・・・」と、まさしくあからさまに書籍の宣伝に努めているのだ。
そして再び皆が言う:重大な問題を知っていたのなら、なぜもっと早く告発しなかった?
政界の元同僚からは裏切り者呼ばわりされ、マスコミからは「新しいことは何も書いてない」と嘲笑され(内容の一部は昨年暮れに報道済み)、国民からは「ブッシュのプロパガンダに加担した張本人」と一層批判されることになった“テディベア”スコティ(愛称)。それなのに、インタビューに応えるマクレラン元報道官は、なぜか時折清々しい表情を見せる。さらに皮肉なことに、現役時代よりも今のほうが、弁舌が冴えているようだ。フォックスニュースの名物右翼タレント、ビル・オライリーの攻撃にも、一歩も退くことなく、むしろ少々愉快そうに反論し、ブッシュ大統領を必死に擁護するオライリーをおおいに苛立たせた。
今年2月で40歳になったばかりのスコット・マクレラン。彼に一体何が起きたのか?
ブッシュ欺瞞の原点:コカイン疑惑
「何も新しい暴露はない」と米マスコミは必死でマクレランの著作を蔑むが、テキサス州知事時代から2000年大統領選挙、イラク戦争からハリケーン・カトリーナまでのブッシュをすぐ傍で見てきた側近中の側近が記した政権の内情は、今でも充分価値のある暴露である。
例えば、2000年大統領選挙で注目の的となったのが、ジョージ・W・ブッシュのコカイン吸引による逮捕歴を巡る情報戦だった。テキサスの伝記作家、J・H・ハットフィールド氏が、1999年10月に発表した著作『Fortunate Son: George W. Bush and the Making of an American President(邦訳:幸運なる2世ジョージ・ブッシュの真実)』で詳細を暴露した疑惑である。ハットフィールド氏の調査によれば、1972年にコカイン吸引で地元警察に逮捕された若きブッシュは、父親の口利きで逮捕歴を抹消させるのと引き換えに、地元での奉仕活動(黒人貧困層を対象とした相談員)を義務付けられたという。
ブッシュ側は名誉毀損で出版社を訴え、同書は一時発禁処分となった。しかし、肝心のコカイン使用歴については、ブッシュ本人がなぜかマスコミの質問に曖昧な回答ばかりするので、疑惑は消えなかった。ブッシュは当時こう言っていた:「私は過去に過ちを犯し、その経験から学んできた。」
1999年当時、ブッシュ知事の広報担当官を務めていたスコット・マクレランは、ブッシュのコカイン使用逮捕歴について問われた際に「根も葉もない噂や中傷的な発言に対して答えるのも汚らわしい」と対応していた。(引用元:『幸運なる2世ジョージ・ブッシュの真実』)
しかし、マクレランの今回発表した回顧録によれば、ブッシュは当時こう打ち明けたという:「マスコミは馬鹿げたコカインの噂を諦めようとしないが、実を言うと、コカインを吸ったことがあるかどうか、本当に憶えてないんだ。若い頃はかなり狂ったパーティもやったもんだが、本当に憶えてないんだよ。」このブッシュの馬鹿げた言い訳に、マクレランは独り思った:「コカインのような違法薬物を使ったかどうか憶えてないなんて人間がいるだろうか?とても納得できるものではない。」
ブッシュのコカイン逮捕疑惑を調査・暴露したJ・H・ハットフィールド氏は、2001年のブッシュ大統領就任から半年後、ホテルの一室で死体となって発見された。薬物の過剰摂取による自殺とされている。
プレイムゲート
マクレランによれば、ブッシュ政権との決別を決定的にしたのは、プレイムゲートにおけるブッシュ大統領と側近たちの嘘であったという。CIA工作員ヴァレリー・プレイムの実名漏洩に関与しているかどうかを問われたカール・ローブ大統領顧問とリビー副大統領補佐官は、いずれも「関与していない」とマクレランに嘘を言った。ローブらの言葉を鵜呑みにしたマクレランは、定例会見でローブらの事件関与を否定し、その後記者たちから批判と嘲笑の矢面に立たされることになったのだ。
また、この事件の背景にある機密書類(NIE:国家情報評価報告書)の内容の一部が、ホワイトハウスからマスコミへリークされた件で、これまではチェイニー副大統領がマスコミへの漏洩を指示し、ブッシュは文書の機密解除だけを行ったと見なされていたが、実際にはブッシュ大統領自身が直接リークを許可したことも初めて暴露している。側近どころか、ブッシュ大統領本人からも欺かれていたことに愕然としたマクレラン報道官は、直後に報道官のポジションから降格を示唆され、ホワイトハウスから離れる決意をしたという。
ところで、なぜブッシュ政権はNIEの一部だけをマスコミにリークしたのか?その理由は、政権の都合に合わせ異例の短期間で作成された当該NIE文書には、ブッシュ政権の主張に沿わない内容も含まれていたからだ。これこそ、イギリス情報部トップが「ブッシュの政策に合わせて、情報と事実が仕組まれつつある」と懸念した状況なのであった。
ブッシュ政権の戦争マーケティング
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一方、小泉首相の関心は、大量破壊兵器の有無にはさほど向けられていなかった。イラク開戦時の緊急声明を発するまでの事務的な手続きを説明する官邸のスタッフにこう言った。
「事務的なことはいい。米国の行動を支持すると言える材料をできる限り持ってきてくれ。あとは自分で考える」
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−『自衛隊 知られざる変容』より抜粋−
最新の全米世論調査によれば、アメリカ国民の6割以上が、イラク戦争を「過ちだった」と考えている。マクレラン元大統領報道官も、イラク戦争を評して言う:「私の知るところでは、戦争は必要な場合に限ってのみ遂行されるべきであり、イラク戦争は遂行する必要のなかったものである。」
マクレランは、ブッシュ政権がイラク戦争の口実を国民に誤解させるために、戦争プロパガンダ・キャンペーンを行い、自分もそれに加担したと悔悟している。さらに、権力の監視役であるはずの米マスメディアが、その役割を充分に果たさず、政権のキャンペーンに沿って戦争の扇動に尽力した、とジャーナリズム批判にまで踏み込んでいる。取材に対応してきた当の本人が言うのだから、これほどリアルな言葉はないだろう。
マクレランの批判に反発するメディア人も多いが、反省の言葉もボツボツ出始めている。例えば、CNN政治部のジェシカ・エリン記者は、イラク戦争前に所属していたNBC放送で、ブッシュ大統領批判を抑え、“愛国的に振舞う”ように上層部から圧力があったと認めている。
これら開戦前の米マスメディアの戦争プロパガンダ活動の実態については、メディア監査団体FAIRのレポートや、新聞業界紙エディター&パブリッシャーの編集長グレッグ・ミッチェル氏の最新著作『So Wrong for So Long: How the Press, the Pundits--and the President--Failed on Iraq』に詳しい。
ブッシュ弾劾への布石?
元大統領報道官の回顧録に議会も色めきだっている。まずプレイムゲートの件で、ジョン・コンヤーズ率いる下院司法委員会は、6月20日にマクレランを同委員会で証言させると決定し、マクレランはそれに応じると言っている。
下院監査政府改革委員会のヘンリー・ワックスマン委員長も、プレイムゲート捜査において、機密扱いになっているブッシュ大統領と副大統領の調査審問記録を公開するよう求めている。
書籍の発売時期とワシントン情勢との関係について、マクレラン元報道官は否定しているが、政治的タイミングを狙っていたことは充分伺える。回顧録の発売から1週間ほど経過した6月6日に、ジョン・D・ロックフェラー4世議員が委員長を務める上院情報特別調査委員会は、最終報告書を公表した。これは、イラク戦争開戦前にブッシュ大統領及び閣僚が行った発言内容について、同時期の政府各情報機関の調査による裏づけが取れていたかどうかを詳細に検討したものである。
共和党側の妨害により調査が遅れ、完成までに5年もの歳月を費やした同報告書では、ブッシュ大統領と閣僚たちが、イラクへの軍事侵攻に関して国民の支持を取り付けるために、イラクの大量破壊兵器、並びにサダム・フセインとアル・カイダの関係に関して入手した情報を誇張し、各情報機関の反対意見を無視していた、と結論付けた。マクレランの回顧録は、この報告書が示す事実を裏付ける重要な証言記録としても注目されている。
6月7日には、下院の民主党議員60人あまりが、ブッシュ大統領と閣僚がテロ容疑者の尋問に関する拷問命令に直接関与した容疑について、司法省に特別捜査を要求している。これまで明らかになった公式記録から、ラムズフェルドのみならず、チェイニー副大統領、さらにブッシュ大統領本人も、テロ容疑者及び囚人虐待・拷問の件で“有罪”となる可能性は高い。
2008年大統領選挙を11月に控え、共和党ジョン・マケイン候補と民主党バラク・オバマ候補の一騎打ちに向けて、民主党側が夏から秋にかけてブッシュ大統領弾劾キャンペーンをぶつけてくる可能性は高い。弾劾のテーマがイラク戦争の是非になるとしたら、開戦前のイラク戦争決議に賛成票を投じたヒラリー・クリントン候補の存在は邪魔でしかなったわけだ。
ワシントン政治への幻滅
民主党の政治的策略に同調するのが回顧録執筆の動機かと問われれば、マクレランは否定するだろう。元大統領報道官は、数々のテレビインタビューの中で、バラク・オバマの“変革”キャンペーンにポジティブな姿勢を見せつつも、ジョージ・W・ブッシュが2000年大統領選で「ワシントン政治の変革」を掲げていたことを回顧し、若きテキサス人が唱える合衆国政治の“変革”に期待した自分自身がナイーブであったと反省している。インタビューで彼は言った:
「他の人と同じように、私もワシントンの万年選挙文化に巻き込まれました。自分たちはワシントンを変革できる、という高い望みを抱えて私はここにやって来ました。当時、大統領はテキサスでは超党派の指導者でしたから。しかし変革は起きなかった・・・。」
マクレランのブッシュ大統領に対する評価は、まさしく多くの共和党支持者の気持ちを代弁している。ホワイトハウスを目指していた当時のジョージ・W・ブッシュは、「思いやりある保守主義」を掲げた穏健派路線を強調しており、対外的には(少なくとも表向きは)『慎みある外交』を掲げていた。例えば、2000年10月3日のテレビ討論で、民主党アル・ゴア候補の『関与と拡大』戦略を批判しながらブッシュは言っている:「我が国の軍隊を常日頃から世界中に配備しようとは思わない。アメリカが“世界の警察官”になるのは望まない。」
コソボやソマリアの紛争に米軍兵士を派兵したクリントン政権に、共和党は反発していた。「紛争地からの早期撤退」を主張するブッシュは、そうした共和党穏健派の支持を集めた。ところがテキサスからワシントンに活躍の場が移るとブッシュの政策は一変し、積極介入・単独行動・先制攻撃を唱える「ブッシュ・ドクトリン」に変節していったのである。
マクレランは、現在のブッシュ政権を批判しつつも、個人的には今でもブッシュを敬愛し、ワシントンの政治文化がテキサス人を腐敗させたというスタンスで、次期大統領候補たちの今後について警告している。
悔悟、謝罪・・・そして真実が導くもの
回顧録の発売キャンペーンを開始した5月29日、ニューヨーク・エセックスハウス・ホテルのロビーで、スコット・マクレランは“元祖裏切り者”リチャード・クラークと対面した。クラークは、マクレランの回顧録が発売される数日前に、同じく新著『Your Government Failed You: Breaking the Cycle of National Security Disasters
』を発表したばかり。二人は共に、たまたまニューヨークで同じ様に書籍発売のプロモーションを行っていたのだ。
マクレランは、非常に申し訳なさそうに、後悔の念を示しながらクラークに言ったという。「私を追い込むために、連中(ホワイトハウス)がいかに個人的になるのか知っておくべきでした。つまりその、私があなたについて話した後にです」
「今なら、君を許せると思う。」クラークは応えた。
「どうか許してください。」マクレランは言った。
マクレランと会った次の日、テレビに出演したリチャード・クラークは言った:「彼(マクレラン)は私に許しを求めました。許しを請う者は許されるべきだと思います。しかしそれには、まず嘘を認める必要があるのです。」
民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、マクレランの変心に共感して言う:「この戦争は巨大な嘘です。嘘で始まって、嘘で続いています。どこかの時点で、彼にとってその嘘は背負いきれないほど重いものになったのでしょうね」
ブッシュ大統領によってFDA(米食品医薬品局)長官に任命された経験を持つ実兄マーク・マクレランは、弟の回顧録騒動についてコメントを発表した:「スコットは、ワシントンで経験したことについて、長い間真剣に考慮しました。それは書籍に反映されています。私は、その公務への献身と、政府がより良く機能するように、言う必要があると感じたことを発言した件においても、弟を深く尊敬しています。」
マクレランは、ワシントンでの経験によって得た最大の教訓について、インタビューで語っている:「最も重要な教訓は、その時点で声を上げることが重要だということです。私は若かった。もっと早く、これらの問題について声を上げるべきでした。」
2008年6月現在、イラクでの米軍兵士戦死者数はまもなく4,100人、戦傷者数は3万人に届こうとしている。また、現役・退役兵士の自殺者も年々増加しており、戦地から帰還後自殺する者の将来的な増加も懸念されている。 そして、イラク市民の犠牲者数は、確認された分だけでも9万人以上である。
そして、イラク・アフガニスタンでの深刻な犠牲を振り返ることもなく、米軍がアフガニスタンでイラン攻撃のリハーサルを行っているという噂が聞こえてくる。それは、ブッシュ政権が任期最後に放つオクトーバー・サプライズなのだろうか?
マクレラン元報道官は、回顧録の出版で得た利益の一部を、戦死者遺族の支援に費やすと約束しているが、加担した罪の重さは計り知れず、嘘を認めるだけで許されるはずもない。しかし、彼がこの先ずっと歴史の真実を伝え続けるならば、現在、そして未来の“不要な戦争”を止めさせる道が開けるかもしれない。