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http://mainichi.jp/select/world/news/20080601ddm001030071000c.html
STOPクラスター:第11部 条約案採択の陰で/上(その1) 焦る米国、露骨圧力
◇戦地で米兵の命が危うくなる
不発弾が市民を殺傷するクラスター爆弾を事実上、即時全面禁止する条約案が30日、産声を上げた。非政府組織と有志国が主導、米国抜きで新たな枠組みを作り上げた軍縮交渉「オスロ・プロセス」の成果だ。しかし、条約案採択に至る過程では、米国の露骨な圧力があった。【ダブリン福島良典、澤田克己、ワシントン大治朋子】
1通の手紙が、オスロ・プロセス参加国を震え上がらせた。手紙は、米軍との共同作戦に支障を与えない条約にしてほしい、との趣旨を伝えていた。送り主はライス米国務長官。5月初め、北大西洋条約機構(NATO)諸国に出した。複数国によると、書簡は「爆弾の製造や貯蔵」「(あらゆる)使用への支援」を禁じる2項目の削除を求めた。
同盟国は非加盟の米国への配慮に躍起になる。結局、日英独の主張で「非加盟国との軍事協力に関与できる」条項が新設された。
「条約が通れば中国の四川大地震などへの災害救援や人道支援ができなくなる」。米国務省マル次官補代行は5月21日の会見で真顔で話した。条約締結国の領海に禁止されている爆弾を持った米艦船は入れないからだという。「爆弾を撤去せず人道支援をやめるのか」。記者の質問に次官補代行は答えた。「人道支援は重要。包括的禁止は誤りだ」
「脅迫だ」。ダブリン会議参加国は反発した。だがインドネシア代表は「津波もあるし考える」と黙り込む。
米国には禁止条約で「米兵の命が危うくなる」危機感がある。圧力は焦りの裏返しだ。対人地雷禁止条約発効後は米国も地雷を使っていない。クラスター爆弾禁止条約が発効すれば米国も安易には使えない。
米国の懸念は現実になりつつある。英政府筋は毎日新聞に、米軍基地にあるクラスター爆弾の撤去を求める方針を認め、「米国と協議中だ」と述べた。
対人地雷禁止条約発効後、日独は「自国の法的管轄下にない」と米軍基地内の地雷貯蔵を黙認した。だが、イタリア、スペインなどは撤去を求めた。
一方、米国民にはクラスター爆弾の実情は十分伝わっていない。毎日新聞はイラク戦争で死亡した米兵3人が「クラスター爆弾の不発弾で死亡した」との証言を得た。しかし米国防総省が公表する戦死者リストなどには「クラスター爆弾」の記載や分類はない。ダブリン会議の米国での報道も従来通り低調だった。
毎日新聞 2008年6月1日 東京朝刊