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毎日【イラク開戦5年 撤退か否か、米国二分】
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投稿者 木村愛二 日時 2008 年 3 月 20 日 22:23:36: CjMHiEP28ibKM
 

毎日【イラク開戦5年 撤退か否か、米国二分】

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http://mainichi.jp/select/world/news/20080320ddm003030122000c.html

クローズアップ2008:イラク開戦5年 撤退か否か、米国二分

 イラク戦争開戦から20日で5年。米国はブッシュ大統領が自らの「歴史的評価」をかけ米軍駐留の長期化も辞さない構えだ。大統領選の候補指名を争う民主党候補は、いずれも「戦争の早期終結」を掲げ、共和党と対立。出口戦略をめぐって国論は二分している。一方、イラクでは治安に改善が見られるものの、国民和解や宗派対立解消には至らず、対立の火種がくすぶる。イラク戦争の後遺症は国際社会に重くのしかかる。

 ◇政権「成果」に固執/民主「期限」を公約

 「治安情勢は劇的に改善している」。17日にバグダッドを電撃訪問したチェイニー米副大統領はマリキ・イラク首相との声明発表で、こう力説した。訪問は、イラクでの進展を米国民に強調し、「長い戦争」への理解を集めるのが狙いだ。

 米軍によると、昨年6月の3万人増派作戦完了後、イラクでの攻撃・テロは6割減少した。米調査機関「ピュー・リサーチセンター」の先月の調査では、米国民の48%が戦争は「順調」と評価。1年前の同約30%に比べ、様変わりした。

 「長期的な成功には私の任期(来年1月まで)を越えた米国の関与が必要だ」。そう訴えるブッシュ大統領は、増派戦略の成果を盾に、戦争継続を確実にしたい考えだ。駐留米軍約16万人のうち、今年7月までに約2万人を撤退させる計画だが、追加削減は「治安情勢次第」との姿勢だ。

 ペトレアス駐留米軍司令官は「観察期間」を置くことを提案。米政府高官によると、2万人削減後4〜6週間で事態が悪化しなければ、追加削減を検討するという。だが本格撤退には至らない見通しだ。米ケートー研究所のジャスティン・ローガン副部長は「米軍は少なくとも今後数年、撤退の希望がないままイラクに駐留し続けるだろう」と指摘する。

 政府部内で出口戦略が見えない中、米大統領選でもそれが大きな争点となっている。

 共和党候補のジョン・マケイン上院議員は、ブッシュ路線を継承、長期駐留の必要性を訴える。イラクを訪問中の17日には、「現地での進展を認識していない」と民主党を攻撃。今後、イラク戦争を焦点に据え、「安全保障に弱い」民主党を攻める構えだ。

 これに対し民主党のバラク・オバマ、ヒラリー・クリントン両上院議員は「戦争の早期終結」を掲げ、戦闘部隊の早期撤退を訴える。クリントン氏は「就任後6週間以内の撤退開始」、オバマ氏は「16カ月以内の撤退完了」を約束する。撤退期限を切ったオバマ氏の方が、より「出口」を明確にしたと言える。

 しかし、米ヘリテージ財団のジェームズ・フィリプス氏は「民主党候補が当選すれば早期撤退には慎重な姿勢に転じるだろう」と予測する。イスラム教シーア派が多数派を占めるイラクに、同派を国教とするイランが急接近。スンニ派が支配層を占めるアラブ産油国は強く警戒し米軍の性急な撤退には猛反発が予想されるなど、複雑な事情が絡むからだ。【ワシントン笠原敏彦】

 ◇陸自撤退、日本「顔」見えず

 日本のイラク復興支援について、政府は自衛隊派遣と政府開発援助(ODA)を「車の両輪」と強調する。しかし06年の陸上自衛隊撤退後、支援策全体に明確な方針を見いだせない状態が続いている。

 ODAは04年1月〜06年7月の陸自派遣期間中、派遣先の南部サマワに重点的に投資された。医療や社会基盤整備分野が多かった。03年10月にスペインでのイラク復興支援国会議で表明した日本の支援額50億ドルは、米国に次いで世界第2位だった。

 これに対し、陸自撤退後のODA投資先はイラク全土に広がった。04年3月に始まった空自の輸送活動も、米軍を中心とする多国籍軍の支援が柱となった。防衛省によると、輸送実績は陸自撤退後の06年9月から昨年12月末までで271回。そのうち国連支援は3割に満たない67回だ。

 日本の外交官はいまだにバグダッドの大使館員以外ほとんどイラクに入国できない。03年11月、銃撃を受け死亡した奥克彦大使(当時45歳)と井ノ上正盛1等書記官(同30歳)が取り組んでいた地域密着の「顔の見える支援」は再開できる状況ではない。【鵜塚健】

 ◇国家再建は遠く

 「病気に対応するため、強力な痛み止めを打ち続けている。だが、病状はますます深刻になっている」

 イラクの現状についてバグダッドのジャーナリスト(42)はこう表現した。米軍などによる治安対策の強化で、テロや宗派対立による犠牲者数は減ったものの、国民和解や民兵組織の武装解除、周辺諸国からの武器流入阻止など根本的対策はほとんど進んでいない。

 米軍は強引な捜索を続けており、イラク国民からはほとんど信頼されていない。米軍への不満が膨らんでおり、治安対策を緩めれば再び治安が悪化するのは確実だ。

 犠牲者の減少は、イスラム教シーア派反米強硬派サドル師派の民兵組織、マフディ軍が昨年8月に停戦を宣言したことなども背景だ。だが、同軍は戦力を維持するなど、不安定要因は解消されていない。

 政府は治安対策を優先し、失業や経済対策まで手が回らない。政府職員には汚職がまん延、物価高も重なり住民の政治不信を招いている。

 治安維持のために米軍に頼らざるを得ない一方、長引く駐留が国民の不満、いら立ちを増大させる悪循環に陥っている。【バグダッド小倉孝保】

 ◇混乱招いた、米侵攻誤り−−イラク副大統領、本紙と単独会見

 【バグダッド小倉孝保】イラクのタリク・ハシミ副大統領が18日、バグダッドで毎日新聞と単独会見し「米軍のイラク侵攻は間違いだった」と米政府を批判した。イラクの治安や経済状況が「全体として悪化」しているとの見方を示し、混乱の原因としてイラク戦争を挙げた。ただ、米軍の即時撤退には慎重な考え方を示した。

 副大統領はイラクの現状について「地域によって改善しているところもあるが、バグダッドとディヤラ、(モスルのある)ニナワ両県では不安定な状況が続いている。国民は国外へ避難し、医療などの公共サービスも改善されていない。全体としてはさらに悪化している」と説明した。

 さらに、フセイン政権崩壊後「これほど混乱が続く現状からみてイラクへの侵攻という決定そのものが間違っていたといえる。この結果がわかっていたら米政府も同じ決定はしないはずだ。問題は米国側にある」と述べた。

 ただ米軍については「できるだけ早期に撤退すべきだが、イラク治安当局には今、困難な状況を担う能力がない。米軍が撤退すれば、治安の空白状況を招き事態はさらに悪化する」と早期撤退に慎重な姿勢を示した。

 ハシミ副大統領はイスラム教スンニ派の政党「イラク・イスラム党」の指導者。政府内でスンニ派の利益を主張する立場を維持している。

毎日新聞 2008年3月20日 東京朝刊
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