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戦争に負けたブッシュ帝国二〇〇三年三月二十日、アメリカ・ブッシュ政権がイラクへの軍事侵略を開始してからすでに五年がたった。ブッシュは、開戦後わずか三週間で首都バグダッドを制圧し、五月一日には「イラクでの大規模戦闘は終了した」と誇らしげに宣言した。ブッシュ政権の中枢を担っていたチェイニー副大統領やラムズフェルド前・国防長官などのネオコングループはブッシュ政権発足の当初から、イラク・フセイン政権を軍事的に打倒し、中東における米帝国主義の覇権を再確立し石油資源に対する支配をゆるぎないものにすることを画策していたとされる。しかしブッシュが、フセイン政権による「大量破壊兵器の保持」と「アルカイダなどテロリスト組織との連携」を口実に「中東に自由と民主主義」をもたらすと訴え、国際法も国連憲章をも無視して開始したこの一方的大量殺戮戦争は完全に失敗した。 「大量破壊兵器」や「アルカイダとの連携」は全くのウソだった。五年が経過した現在、米軍のイラク占領の失敗は、もはや当のブッシュ政権すら認めざるをえない現実である。 二〇〇一年「9・11」の米本土同時テロ攻撃を契機に解き放たれたアフガニスタンからイラクにいたる「対テロ」戦争の嵐は、アフガニスタン、パキスタンから中東全域にまで及ぶ戦乱へと帰結した。ラムズフェルド、ボルトン、ウォルフォビッツなどの「ネオコン」グループは政権の座から去った。 米帝国主義の軍事的覇権は大きくゆらぎ、戦争と表裏一体の関係にあった新自由主義的なグローバル資本主義の支配は、そのほころびをいたるところで露呈している。米国のサブプライムローン危機を引き金とした「世界恐慌」の可能性が現実味を帯びている。アフガニスタンからイラクに到るブッシュ政権の泥沼は、確実に「ポスト冷戦」時代における米国の「単独覇権」の敗北をもたらし、世界は新たな混乱と激動にたたき込まれた。 不安定要因はいっそう拡大しかしこの戦争の代償はどのようなものだったのだろうか。イラク住民の死者は正確な数はわからないものの、開戦以来の累計で数十万人に達するとされる。シーラー国連イラク人道問題調整官が二月十一日に明らかにしたところによれば、人口二千七百万人のイラクで四百万人が飢餓に直面し、四〇%の人びとが安全な水を得ることができない。国内難民も二〇〇六年から倍増し、二百五十万人に上っている。米軍の死者は、すでに四千人に達しようとしている。昨年一年だけでも米兵の死者は九百一人と過去最多となった。ブッシュ政権は、米政権内部からの「段階的撤退」の提案を拒否して昨年一月以後、新たに三万人の軍隊をイラクに増派し、首都バグダッドを中心とした激しい「武装勢力掃討戦」を展開した。ブッシュは今年の「年頭教書」ではその「成果」を強調したものの、米国が擁立したマリキかいらい政権の「統治」の基盤は大きく揺らいでいる。米国は「石油法」を通じて、イラクの石油資源の略奪・支配をもくろんでいるがそれはイラク議会からも大きな抵抗に遭遇している。クルド人地域のキルクーク油田をめぐるイラク国内の対立にトルコもからんで、新たな不安定化の要素も拡大している。 米軍の撤退のメドは立っていない。ブッシュは「年頭教書」で増派部隊以外の米占領軍の段階的削減について明示できなかった。二月十一日にバグダッドを訪問したゲーツ米国防長官は、ペトレイアス駐留米軍司令官との会談後の記者会見で「イラク情勢は依然として不安定」と語り、増派部隊を七月に撤収して米占領軍の規模が十三万人に戻った時点で部隊削減を一時停止すべきだ、と述べた。 それはアフガニスタンでも同様である。カルザイ政権は米軍と他のNATO軍に支えられて首都カブールとその近郊で命脈を保っているにすぎない。アメリカの侵攻によって政権を去ったタリバンは確実にその地歩を拡大し、首都カブールでも攻勢を強めている。戦争と占領による民衆の貧困・飢餓が、タリバンへの支持と反米・反占領意識の基盤となっている。米軍はアフガニスタンへの増派を行なわざるをえなかった。こうした中で、アフガン占領継続をめぐるNATO諸国間の不協和音が、南東部の戦闘地域への派兵の分担をめぐって高まっている。 「対テロ」戦争のがんじがらめ状況は、終末を目前にしたブッシュの「決断」の余地を完全に奪っている。しかしその中でイランの「核開発の脅威」を背景にした新たな軍事的冒険の可能性も排除できない。ブッシュの年頭教書演説はイランに向けて「米国は米軍を脅かす存在には必ず立ち向かう」「ペルシャ湾におけるわれわれの利益を守る」と脅しをかけた。それは何よりもイスラエルのシオニスト支配者どもの意向に沿ったものであった。この危険を阻止しうるのは米国、そして全世界の反戦運動である。 社会をおおう「軍事の論理」日本政府は「9・11」以後の米国の先制的「対テロ」戦争戦略に無条件に追随し、「テロ特措法」を成立させてインド洋・アラビア海に自衛隊を派遣した。続いてイラク侵略戦争に対してもNATO加盟の同盟国をふくむ多くの諸国政府が反対する中で、「イラク特措法」を成立させ、陸上自衛隊をイラク南部のサマワに派兵した。陸上自衛隊は撤退したが、航空自衛隊はクウェートの基地からイラク本土に米軍のために兵員や物資を補給し続けている。スペイン、オランダなど多くの「有志連合」諸国がイラクの戦場から続々と離脱した今日、日本政府の支援継続は国際的にも突出している。「テロ特措法」は昨年十一月に期限切れとなり、海上自衛隊のインド洋から引き上げざるを得なかったが、今年一月には二度にわたって延長された臨時国会で「衆院再議決」という五十七年ぶりの強行手段で「新テロ特措法」を成立させ、二月二十一日には補給艦「おうみ」による給油活動が再開された。 自衛隊のアフガン・イラク戦争への参戦は、グローバルな「日米同盟」の下での「戦争国家体制」づくりと憲法九条改悪への道を加速させた。小泉―安倍政権が進めた「派兵・改憲」国家路線は、参院選での与党の歴史的敗北と安倍政権の退陣で生まれた福田政権によっても踏襲されている。福田首相は一月通常国会の施政方針演説で、改憲に向けた「憲法審査会」の始動と、恒久派兵法(基本法)の制定に意欲を示した。 二月十日、ミュンヘン安全保障会議に出席した高村外相は「日本は『平和協力国家』として国際社会において積極的な責任と役割を果たしていく」と述べ、自衛隊の恒久派兵法についても「必要な法制度の検討を進めていきたい」と強調した。これは昨年一月にNATO本部を首相として初めて訪問した安倍前首相が「日本は自衛隊の海外派兵をためらわない」と言い切った発言を引き継いだものである。 二月十三日には自民党の「国際協力の一般法に関する合同部会」(座長・山崎拓)の初会合が開かれた。公明党とともに与党プロジェクトチームを発足させ、派兵恒久法に関して「今国会の会期中に成案を得て、国会で審議を行うところまで進めたい」(山崎座長)としている。 インド洋での自衛隊の海上給油活動再開にあたって、古庄幸一・元海上幕僚長は「わが国や自衛隊の実力を考えれば、各国海軍と同じように、前線でのテロ阻止活動そのものに参加すべきではないか」「集団的自衛権の問題や武器使用基準といったハードルはあるが、政治が決断すれば超えられるはずだ」(「朝日」2月24日「耕論」欄)と語っている。 昨年十月末と十一月初めの二回にわたる福田―小沢の党首会談では、派兵恒久法の制定を軸に自民・民主の「大連立」に踏み込むことがいったんは合意された。また民主党は昨年十二月に国会に提出した「新テロ特措法案」への対案としての「アフガン復興人道支援法案」の中に、海外派兵基本法の制定をめざすことを書き込んだ。自民・民主両党の間での法案の詰めの作業には、いまだに多くの問題が含まれているとはいえ、この「二大政党」間で、明文改憲を経ないまま「国際協力」の名の下に派兵恒久法を作成して、事実上自衛隊をいつでもどこでも海外の紛争地域に送ることを可能にさせる了解ができていることは重大である。このようにして「集団的自衛権」の行使をクリアし、それをベースに憲法九条改悪へのロードマップを具体化しようというのである。 しかし今、米空母艦載機の岩国移転を拒否した岩国市政へのゴリ押し的介入、沖縄・辺野古や高江への米軍新基地建設など「米軍再編」強行への自治体をふくめて地元の抵抗が広がり、さらに守屋・防衛省汚職、在沖米軍兵士の性暴力、そしてイージス艦「あたご」が漁船を沈めた事件など、「軍事の論理」が民主主義と人権を踏みつぶす事態が鮮明に浮かび上がっている。 今こそ、全世界の人びとと共に米軍をはじめとするすべての占領軍のアフガニスタン、イラクからの撤退を訴えるとともに、市民社会全体を覆う「軍事の論理」の暴走にストップをかけよう。 イラク戦争五年目の三月二十日を前後して、全世界の人びとは反戦のうねりを作りだそうとしている。五年前の二月十五日、イラク戦争を前にして地球を一まわりする同時反戦デモを行い、一千万人以上が平和への思いを一つにした。反戦・平和の運動を再構築しよう。 東京では三月二十二日、「イラク占領、まる5年、WORLD PEACE NOW3・22 〜平和をねがい世界が動く〜」が開かれる(芝公園23号地、午後1時)。パレードはアメリカ大使館に向かい、抗議の声を届ける。全国でもさまざまな行動が準備されている。多くの人びとに呼びかけ、成功をかちとろう。(純) |