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中東情勢 ジルベール・アシュカルとのインタビュー(下)トルコがおそれるクルド人連盟によるキルクーク油田の支配米国はトルコ軍を牽制――トルコによる北部イラクへの越境攻撃の可能性が、ホワイトハウスをガタガタ揺り動かしているように見えます。ブッシュはトルコのエルドガン首相に対して、米国はPKK(クルド労働者党)をテロリスト組織と見なしていると繰り返し語り、情報活動も共有しているのでトルコ軍のイラクでの作戦は必要でないと抑えてきた。このやり方はこれまで成功してきましたが、これからもできるでしょうか。エルドガンは、軍事作戦を求めるトルコ国内からの圧力に抵抗できるでしょうか。 少し前に話したように、PKKはこのストーリーの公式の建前に過ぎないと私は思います。トルコ軍部によるこの間の身振りのすべては、そのほとんどの動機がキルクーク問題にあると私は確信しています。この都市(キルクーク)をめぐる紛争を、住民投票という方法によって解決するための最終期限が間近に迫っていることを知ってのことです。 米国はクルド戦略が不在――米国はPKKをテロリスト組織のリストに入れていますが、PKKと緊密に連携しているPJAK(クルディスタン自由生活党)は、イラン・イラク国境地帯で同様の戦争を行うために米国から直接・間接の援助を受けていると言われています。PJAKの指導者ラフマン・ハジ・アフマディは、最近ワシントンで歓迎されており、またイランは米国がPJAKを代理戦争に利用していると確信しています。あなたは米国のクルド戦略が何であると考えていますか。私は、この点について米国が長期的展望を持った一貫した戦略を持っているかどうか、本当に疑問に感じています。私は彼らが、肉眼による航路確認を行っているだけだと思います。まず最初に、ほとんど調和しがたいあまりにも多くの矛盾を抱えた複雑な状況の中で、彼らが何らかの政策をひねりだすことができるのか、大いに疑問です。彼らはこうした状況の中で存在しなければならず、その矛盾が爆発しないようにつとめなければなりません。しかし彼らはこうした爆発を避けることができるのでしょうか。それはまだ分かりません。 再度岐路に立つレバノン――「ルモンド・ディプロマティーク」のアラン・グレシュは、レバノンについて「微妙な宗派的錬金術に依拠した壊れやすい存在」と描いています。大統領選挙をめぐる政治的混乱、巨大な量の兵器の国内への流入、宗派的分裂のいっそうの深まりが、レバノンが「壊れやすい存在」であることを示している時、それがギリギリまでテストされ、もう一つの内戦の間際にある、とあなたは思いますか。 レバノンが現在、大統領選挙をめぐる争いによって、最近の歴史の中でもう一度大きな岐路に立たされていることは明らかです。十一月二十四日以後、レバノンには大統領がいません。現在のところ、米国とその地域的同盟者たちが支援する連合勢力である議会多数派と、ヒズボラを含み、シリア、イランが支援する連合勢力である野党は、妥協に達することができていません。 ヒズボラとイラン・シリア――あなたは、ヒズボラが実質的にはイランの代理人であるという古典的な非難について言及しました。しかしあなたが共著者である『三十三日間戦争』で、イランが依然として「至上の保証人」ではあるものの、ヒズボラは「テヘランの直接な支配下にあるイラン体制の単なる地方局」ではないと主張しています。ヒズボラはどのような点でイラン型モデルとは異なっているのでしょうか。ヒズボラは、事実上どの程度まで自立的政治組織と見なされるのでしょうか。そうですね。ヒズボラは国家ではないという意味で、イラン型モデルとは違っています。ヒズボラは一定の地域を支配していますが、統治しているわけではありません。したがってヒズボラをイラン型モデルになぞらえるのは困難です。 多宗教・多宗派的国家を構想――しかしイデオロギー面ではどうなのでしょうか。 イデオロギー的面から言えば、ヒズボラは、イラン・イスラム共和国の最高指導者への忠誠など、イランの支配的イデオロギーのあらゆる主要な教義を遵守しています。しかしこのイデオロギー的忠誠にもかかわらず、ヒズボラはその公式の結成の時点から、多宗教・多宗派的国家やイランの黙認などのレバノン的特殊性の名において、レバノンではイスラム共和国といったイラン型モデルは実行できないことを宣言しています。 〈補足質問〉 アメリカとシリアの取り引き――レバノン政府は妥協の産物として、軍司令官のミシェル・スレイマン将軍を大統領候補に指名しました。これはそのまま進むと思いますか。もしそうなれば、それは適切な解決だと思いますか。妥協による大統領候補現在のところでは、スレイマンが選出されそうです。おかしなことに、あらゆる中心人物が彼を自分たちの候補者だと主張しています。ハリリは自分の主要な同盟者との相談の上で、政府と議会の多数派の名においてこの提案を行いました。野党は、自分たちの仲間であるアウン将軍がどう出るかを待機しました。彼が大統領ポストを自分に、と主張していたからです。アウンは話し合いによる大統領候補としてスレイマンを最初に提案したのは自分だと述べ、この提案を受け入れました。そこで今日ヒズボラは、自らスレイマン将軍に賛成し「尊重」すると公式に表明しました。唯一の異議はハリリ陣営内の少数派からのものであり、この事実は、ハリリと彼を支持するメディアが絶望的に事態を不明瞭にさせようとしていることを示しています。スレイマンは事実上シリアのお気に入りの候補者です。シリア政府と密接な関係を持っていた前大統領のエミール・ラフードは、スレイマンに権力を引き渡そうと考えていましたが、ハリリの多数派がそれを妨害しました。 スレイマンの指名という事態が、ハリリの同盟者と現在では反シリア派のリーダーであるワリド・ジュンブラット自身が「アメリカとシリアの取り引き」と呼んできたものの結果であることについては、ベイルートでは秘密でも何でもありません。最近アナポリスで開催された中東会議にシリアを参加させるために米政府がシリア政府との間で行った交渉について、彼は言及しました。 まさにスレイマンが、何よりも米国とシリアの妥協の対象だったというのが真実です。レバノン政治の有名な伝統は、大統領の真の作り手は外国の権力だというところにあります。 レバノン軍より強力なヒズボラスレイマンとフアド・チェハブ将軍との間には似通ったところがあります。米海兵隊のレバノン派兵にまで至った、軍を中立化させるための一九五八年の市民の闘争によって、チェハブは大統領に選出されました。チェハブはワシントンとカイロの妥協による候補者でした。彼は軍の諜報機関を強引に活用して国を統治しましたが、同時にこれまでのところレバノンで最も「開明的」な改良派の大統領だったことも確かです。チェハブを模倣しようとするスレイマンの願いがどうあれ、米国とシリアの協調がなければ、妥協による大統領というあり方を超えて地域の政治の大転換を代表するような根本的協定にまで突き進むことはできません。そうした場合でも、スレイマンは依然としてヒズボラに直面することになります。ヒズボラは実質的に公式のレバノン軍よりも強力であり、紛争になった場合は宗派的ラインに基づいて国を分裂させることができるのです。 チェハブが指導する軍が、論議の余地なくこの国の主要勢力だった一九五八年との違いは明らかです。つまり、スレイマンが安定した体制を樹立するためには、米国とシリアとのより実質的な取り引きが必要だというだけではなく、ヒズボラに武装解除を受け入れさせる必要条件となるイラン政府自身の黙認が必要なのです。米国とイスラエルが基本的にシリアをイランから切り離そうとつとめている状況では、こうした展望からはほど遠いものがあります。 (本紙編集部:レバノンでは、ラフード前大統領の任期切れ退任によって昨年11月23日以後、大統領不在の対立状況が今日まで続いたままである)。 (「インターナショナルビューポイント」07年12月号) |