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中東情勢 根幹に存在するパレスチナ問題 = 週刊かけはし
http://www.asyura2.com/08/wara1/msg/213.html
投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 2 月 16 日 00:19:22: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/frame080218f.html

中東情勢 ジルベール・アシュカルとのインタビュー(下)

トルコがおそれるクルド人連盟によるキルクーク油田の支配

米国はトルコ軍を牽制

――トルコによる北部イラクへの越境攻撃の可能性が、ホワイトハウスをガタガタ揺り動かしているように見えます。ブッシュはトルコのエルドガン首相に対して、米国はPKK(クルド労働者党)をテロリスト組織と見なしていると繰り返し語り、情報活動も共有しているのでトルコ軍のイラクでの作戦は必要でないと抑えてきた。このやり方はこれまで成功してきましたが、これからもできるでしょうか。エルドガンは、軍事作戦を求めるトルコ国内からの圧力に抵抗できるでしょうか。

 少し前に話したように、PKKはこのストーリーの公式の建前に過ぎないと私は思います。トルコ軍部によるこの間の身振りのすべては、そのほとんどの動機がキルクーク問題にあると私は確信しています。この都市(キルクーク)をめぐる紛争を、住民投票という方法によって解決するための最終期限が間近に迫っていることを知ってのことです。
 そして私は、トルコ軍部――私がトルコ軍部と言うのは、トルコの決定権を握っているのはエルドガン首相ではなく軍だからです――は、キルクークに関して非常にいらいらしていると思います。
 イラクの領域にあるクルディスタンの地が、すでに事実上の自治的な疑似国家となっているのを彼らが嫌っていることがその理由です。クルド人連盟がキルクークを掌握し、したがってそこにある油田を支配することになれば、クルド人連盟に強力な手段を与えることになり、クルディスタンの自治国家を確立し、永続化する結果になるのをトルコ軍部は知っています。クルド人がキルクークを押さえるのを妨げようとトルコ軍部が望んでいるのは、そのためです。キルクークには重要なトルクメン人コミュニティーがあり、数十年前には市で最大のコミュニティーと見なされていた、と彼らは述べ、自分の利害のために行動しているのではなく、トルコがエスニック的・文化的類縁性を持っているトルクメン人に代わって語っているのだと、主張しています。
 したがって私は、PKKに関する米国の言質が問題を解決し、緊張を決定的に緩和するとは思いません。しかし私は、これもまた討論の一部であると想像しているから言うのですが、キルクークの将来という問題について米国がトルコ政府に対してどういう約束をしているのか知りません。
 これは米国にとって大きな問題です。なぜなら、それは当然のこととして戦争の原因になりうるからです。この戦争は、今までイラクで起こった内部的暴力よりも重大なものになるでしょう。イラクのクルド人は、イラクのさまざまなアラブ人分派と違って本物の軍を持っており、トルコ自体も干渉するだろうからです。それはこの地域の情勢に広範で重大な結果をもたらしかねません。

米国はクルド戦略が不在

――米国はPKKをテロリスト組織のリストに入れていますが、PKKと緊密に連携しているPJAK(クルディスタン自由生活党)は、イラン・イラク国境地帯で同様の戦争を行うために米国から直接・間接の援助を受けていると言われています。PJAKの指導者ラフマン・ハジ・アフマディは、最近ワシントンで歓迎されており、またイランは米国がPJAKを代理戦争に利用していると確信しています。あなたは米国のクルド戦略が何であると考えていますか。

 私は、この点について米国が長期的展望を持った一貫した戦略を持っているかどうか、本当に疑問に感じています。私は彼らが、肉眼による航路確認を行っているだけだと思います。まず最初に、ほとんど調和しがたいあまりにも多くの矛盾を抱えた複雑な状況の中で、彼らが何らかの政策をひねりだすことができるのか、大いに疑問です。彼らはこうした状況の中で存在しなければならず、その矛盾が爆発しないようにつとめなければなりません。しかし彼らはこうした爆発を避けることができるのでしょうか。それはまだ分かりません。

再度岐路に立つレバノン

――「ルモンド・ディプロマティーク」のアラン・グレシュは、レバノンについて「微妙な宗派的錬金術に依拠した壊れやすい存在」と描いています。大統領選挙をめぐる政治的混乱、巨大な量の兵器の国内への流入、宗派的分裂のいっそうの深まりが、レバノンが「壊れやすい存在」であることを示している時、それがギリギリまでテストされ、もう一つの内戦の間際にある、とあなたは思いますか。

 レバノンが現在、大統領選挙をめぐる争いによって、最近の歴史の中でもう一度大きな岐路に立たされていることは明らかです。十一月二十四日以後、レバノンには大統領がいません。現在のところ、米国とその地域的同盟者たちが支援する連合勢力である議会多数派と、ヒズボラを含み、シリア、イランが支援する連合勢力である野党は、妥協に達することができていません。
 したがって彼らは、新大統領の選出のための議会の会合を延期してきました(レバノンでは共和国大統領は議会が選出しますが、大統領は非常に広範な権力を持っていました。それは大統領制の特徴と議会制の特徴との独特の結合でした。しかし、十五年間の内戦の最後の年である一九八九―九〇年に、大統領の権限は削減されました)。多数派と野党との間での妥協は、今までのところ成立していません。
 そしていっそう重要なことですが、両勢力の背後にあってレバノンの情勢に干渉している主要な地域的・国際的勢力、すなわち米国、フランス、シリア、イラン、そしてサウジの間での妥協も成立していません。
 もし彼らの間での妥協が成立せず、大統領選出の合意が何としてもなされない場合には、制度的分裂をもたらし、宗派的・政治的緊張の激化、そして新たな内戦にも点火しうるような幾つかのシナリオがありえます。今回の内戦は、シーア派とスンニ派を対立させることになります。それは十五年間の内戦では見られなかった特徴でした。それはマロン派キリスト教徒コミュニティー内部の二つの陣営での相互の戦闘をももたらします。十五年間の戦争で、マロン派分派間では幾たびかの衝突があったので、これは新しい事態ではありません。
 新しい内戦は、一九九〇年に終結した内戦よりも、さらに多くの流血をもたらす、より破壊的なものになりえます。先の内戦が始まった一九七五年以前と比べれぱ、キリスト教徒とムスリムとの間でよりも、スンニ派とシーア派の間の混合が進んでいるからです。
 これはまさしく恐るべき展望であり、理性がそれに打ち勝つことを願うだけです。それは真の理性にかかわる問題だからです。私は、両陣営がこの惨事から得るものは何もないと理解すべきだと言いたいのです。それは誰にとっても完全に破滅的です。とりわけ一般民衆にとって破滅的であることは、もちろんです。私は、ある種の妥協が成立し、最悪のシナリオが避けられることを強く望んでいます。

ヒズボラとイラン・シリア

――あなたは、ヒズボラが実質的にはイランの代理人であるという古典的な非難について言及しました。しかしあなたが共著者である『三十三日間戦争』で、イランが依然として「至上の保証人」ではあるものの、ヒズボラは「テヘランの直接な支配下にあるイラン体制の単なる地方局」ではないと主張しています。ヒズボラはどのような点でイラン型モデルとは異なっているのでしょうか。ヒズボラは、事実上どの程度まで自立的政治組織と見なされるのでしょうか。

 そうですね。ヒズボラは国家ではないという意味で、イラン型モデルとは違っています。ヒズボラは一定の地域を支配していますが、統治しているわけではありません。したがってヒズボラをイラン型モデルになぞらえるのは困難です。

多宗教・多宗派的国家を構想

――しかしイデオロギー面ではどうなのでしょうか。

 イデオロギー的面から言えば、ヒズボラは、イラン・イスラム共和国の最高指導者への忠誠など、イランの支配的イデオロギーのあらゆる主要な教義を遵守しています。しかしこのイデオロギー的忠誠にもかかわらず、ヒズボラはその公式の結成の時点から、多宗教・多宗派的国家やイランの黙認などのレバノン的特殊性の名において、レバノンではイスラム共和国といったイラン型モデルは実行できないことを宣言しています。
 彼らは、その公式宣言を行った時点で、自らの理想のモデルを実現できるようにするためには、キリスト教徒をイスラムに改宗させる必要があると述べました。それは彼らの教義問題を純粋な幻想の領域に押しやるに等しいものでした。その結果、イランモデルはヒズボラにとってユートピアという位置を持つことになりましたが、現実には、彼ら自身とシーア派コミュニティーの獲得物を最大限のものとするために、レバノンの宗派的・政治的枠組みの中で活動しています。
 ヒズボラは国家の支配を構想できないのですが、レバノンの他のあらゆる宗派的勢力がそうしているように、彼ら自身のコミュニティーを支配しようと努めていることは確かです。もっと正確に言えば、彼らは競争相手であり、現在の同盟者でもある別のレバノン・シーア派運動のアマルと共に、彼らのコミュニティーへの支配を行っています。彼らは、それぞれのコミュニティーが女性の地位や結婚や相続などいった課題に関して自らの宗教法を適用しつつ、さまざまな宗派的コミュニティーを代表する政治勢力が政治権力と国家機能を分有する現在の状況に満足しています。
 現在のヒズボラの主要な関心は、防衛的なものです。イスラエルと米国によって彼らがターゲットにされ、米国政府が彼らの武装解除を望んでいることを知っているからです。
 ヒズボラは武装解除を受け入れません。もし武装解除されたり、イスラエルの占領に対する抵抗闘争と西側の支配に対する反対によって築かれた政治的プロフィールを捨てなければならなくなったら、イスラエルと米国がヒズボラを粉砕することはより容易になるからです。彼らに大きな保障が与えられない限り武器を引き渡そうとしないのは、そのためです。少なくとも彼らの語っていることはそのようなものですが、そうした保障のために必要な、きわだった性格をもった政治的変化は、予見できる将来においては見られそうもありません。こうしたことは、ヒズボラがそれに従う以外の選択がほとんどないような形で、シリアとイランの両政府が武器を放棄するようアドバイスしない限りは、彼らがさらに今後長期間にわたって自らの武器に固執することを意味しています。

〈補足質問〉

アメリカとシリアの取り引き

――レバノン政府は妥協の産物として、軍司令官のミシェル・スレイマン将軍を大統領候補に指名しました。これはそのまま進むと思いますか。もしそうなれば、それは適切な解決だと思いますか。

妥協による大統領候補

 現在のところでは、スレイマンが選出されそうです。おかしなことに、あらゆる中心人物が彼を自分たちの候補者だと主張しています。
 ハリリは自分の主要な同盟者との相談の上で、政府と議会の多数派の名においてこの提案を行いました。野党は、自分たちの仲間であるアウン将軍がどう出るかを待機しました。彼が大統領ポストを自分に、と主張していたからです。アウンは話し合いによる大統領候補としてスレイマンを最初に提案したのは自分だと述べ、この提案を受け入れました。そこで今日ヒズボラは、自らスレイマン将軍に賛成し「尊重」すると公式に表明しました。唯一の異議はハリリ陣営内の少数派からのものであり、この事実は、ハリリと彼を支持するメディアが絶望的に事態を不明瞭にさせようとしていることを示しています。スレイマンは事実上シリアのお気に入りの候補者です。シリア政府と密接な関係を持っていた前大統領のエミール・ラフードは、スレイマンに権力を引き渡そうと考えていましたが、ハリリの多数派がそれを妨害しました。
 スレイマンの指名という事態が、ハリリの同盟者と現在では反シリア派のリーダーであるワリド・ジュンブラット自身が「アメリカとシリアの取り引き」と呼んできたものの結果であることについては、ベイルートでは秘密でも何でもありません。最近アナポリスで開催された中東会議にシリアを参加させるために米政府がシリア政府との間で行った交渉について、彼は言及しました。
 まさにスレイマンが、何よりも米国とシリアの妥協の対象だったというのが真実です。レバノン政治の有名な伝統は、大統領の真の作り手は外国の権力だというところにあります。

レバノン軍より強力なヒズボラ

 スレイマンとフアド・チェハブ将軍との間には似通ったところがあります。米海兵隊のレバノン派兵にまで至った、軍を中立化させるための一九五八年の市民の闘争によって、チェハブは大統領に選出されました。チェハブはワシントンとカイロの妥協による候補者でした。彼は軍の諜報機関を強引に活用して国を統治しましたが、同時にこれまでのところレバノンで最も「開明的」な改良派の大統領だったことも確かです。
 チェハブを模倣しようとするスレイマンの願いがどうあれ、米国とシリアの協調がなければ、妥協による大統領というあり方を超えて地域の政治の大転換を代表するような根本的協定にまで突き進むことはできません。そうした場合でも、スレイマンは依然としてヒズボラに直面することになります。ヒズボラは実質的に公式のレバノン軍よりも強力であり、紛争になった場合は宗派的ラインに基づいて国を分裂させることができるのです。
 チェハブが指導する軍が、論議の余地なくこの国の主要勢力だった一九五八年との違いは明らかです。つまり、スレイマンが安定した体制を樹立するためには、米国とシリアとのより実質的な取り引きが必要だというだけではなく、ヒズボラに武装解除を受け入れさせる必要条件となるイラン政府自身の黙認が必要なのです。米国とイスラエルが基本的にシリアをイランから切り離そうとつとめている状況では、こうした展望からはほど遠いものがあります。

(本紙編集部:レバノンでは、ラフード前大統領の任期切れ退任によって昨年11月23日以後、大統領不在の対立状況が今日まで続いたままである)。

(「インターナショナルビューポイント」07年12月号)
 

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