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テロ対策新法に続く恒久的海外派兵法制定策動に注意を!〈池田五律〉
〈いけだいつのり:派兵チェック編集員会〉
改めてテロ対策新法の問題性を確認する
1月24日、「テロ対策新法」の成立を受けて、海上自衛隊護衛艦「むらさめ」が母港・横須賀を出港した。25日には、補給艦「おうみ」が佐世保を出港。2月中旬から、四ヶ月ぶりに補給活動が再開されることになる。給油中止によって支障が出ると語っていたパキスタン海軍のアクバル報道官が歓迎を表明したが、同報道官は中断中の給油方法については語らなかったともいう(共同、1月11日、21時41分)。他の給油方法があり、支障は出なかったということだ。「テロとの戦い」に参戦継続まずありき、というわけだ。
「テロ対策新法」は、旧法にあった国会承認規定も削除し、国家には報告さえすればよいとことにした。衆院での異例の再議決だけでなく、新法そのものが国会を軽視するものなのだ。
一方、12月14日に第一護衛艦隊旗艦「しらね」が戦闘指揮所を火元とする火災を起こすという事件も生じている。修理費用が膨大であるため廃艦にすることになった。だが、火災原因については、1月に入っても海上自衛隊は「公表できる段階にない」としている。
ここで思い出されるのが、照屋寛徳議員の「イラク派兵自衛隊員の自殺に関する質問主意書」に対する政府答弁である。それは、以下のように述べている。
平成十九年十月末現在で、テロ対策特措法又はイラク特措法に基づき派遣された隊員のうち在職中に死亡した隊員は、陸上自衛隊が十四人、海上自衛隊が二十人、航空自衛隊が一人であり、そのうち、死因が自殺の者は陸上自衛隊が七人、海上自衛隊が八人、航空自衛隊が一人、病死の者は陸上自衛隊が一人、海上自衛隊が六人、航空自衛隊が零人、死因が事故又は不明の者は陸上自衛隊が六人、海上自衛隊が六人、航空自衛隊が零人である。/また、防衛省として、お尋ねの「退職した後に、精神疾患になった者や、自殺した隊員の数」については、把握していない。
極めて高い自殺率だ。「事故」とは一体、どういう「事故」なのか。「死因不明」というのは不気味である。派兵は、自衛隊員に非常なストレスと過酷な状況を強いていることは明らかである。「しらね」火災の背景にも、そうした状況への不満があるのではないかという憶測も成り立つ。
しかも、何処で給油用燃料を積み込んでいるのかなど、活動の詳細が分からないままの再開である。「しんぶん赤旗」12月25日によれば、2001年から2007年10月までの給油用燃料225億円の調達先は伊藤忠など二社が随意契約で独占していたという。守屋元防衛次官と山田洋行との関係ばかりに焦点が当てられているが、不透明な防衛産業との関係は、防衛省・自衛隊の活動の隅々にまで及んでいるのである。
給油される燃料が海上阻止行動以外に使われないという保証も十分でない。そもそも、アメリカにとっては対イラク作戦も対アフガニスタン作戦も区別はないのだから、海上阻止行動にのみ使われているからいいわけではない。対イラク作戦については、航空自衛隊が「後方支援活動」をし続けていることも忘れてはならない。対アフガニスタンに限っても、海上阻止行動はアメリカ主導の「不朽の自由作戦」の一部なのだから、アメリカ軍による掃討作戦によって殺される側からすれば、日本は立派な参戦国なのだ。インド洋からもイラクからも自衛隊を撤退させよという原則を改めて確認する必要があろう。
自民党の恒久的海外派兵法案を検証する
ところが、さらなる派兵拡大の方向に事態は動いている。「恒久的海外派兵法」制定の動きである。
「テロ対策新法」の期限は一年だ。ちなみに、「イラク特措法」は2009年7月に期限切れになる。2008年後半に、それらの継続問題が政治焦点の一つになることは必至である。その機会に「恒久的海外派兵法」を制定してしまおうという動きが浮上することは確実だ。石破防衛大臣は、自民党防衛政策検討委員会の委員長を務めていた2006年に、「海外派兵を恒久的に自衛隊の本来任務とする国際平和協力法案」(以下、国際協力法案)を取りまとめているからだ。
この自民党「国際協力法案」は、国連以外の要請に基づく派兵も可だとしている。活動内容は、武装解除も含む「人道復興支援」、「停戦監視活動」、「安全確保活動」、即ち治安活動、「警護活動」、「船舶検査活動」、「後方支援活動」である。自衛隊はそれら全てを行う。警察庁と海上保安庁も人道復興支援活動を行うとされている。
また、「国際協力法案」は、今まで自己の安全のためにしか使用できなかった武器使用規定を緩和して、任務遂行の妨害除去のための武器使用も可能にしている。内閣法制局も、任務遂行の妨害除去のための武器使用を全て憲法に禁じられているとは解釈していないようである。武力行使に当たることを防ぐ法整備がなされれば、できるという解釈が編み出されると思われる。
この問題性を物語るのが、「安全確保活動」、即ち治安活動である。「国際平和協力法案」は、その活動において、「多数集合して暴行しいて暴行若しくは脅迫」をし、またはその「危険」がある場合に、それを「鎮圧」するために武器使用ができるとしている。簡単にいえば武器を使って暴動鎮圧をするということであり、デモに対しても「危険」があると見なせば武器で弾圧するということだ。
「船舶検査活動」でも、今までは認められてこなかった「停戦命令」に従わせるための武器使用を盛り込んでいる。さらに、「回航」に際する拘束に抵抗した場合にも、武器使用がきるとしている。国土交通省は、退去命令を可能とする「不審船対策新法」を今国会に提出する方針で、それがこの問題の前哨戦になろう。
加えて、「国際協力法案」は、自衛隊活動地域において他国部隊が攻撃された場合に他国部隊を救援する、いわゆる「駆けつけ警護」においても武器使用ができるとしている。
この「駆けつけ警護」や多国籍軍への「後方支援」は、憲法で禁じられている集団的自衛権の行使に当たるものとされてきた。集団的自衛権行使で禁じられてきたことを行使してよいようにすることを目指した安倍前首相が首相の私的諮問機関として設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」検討する類型にも、この二つは入っていた。福田首相も、これらについては「懇談会」の議論を尊重するとしている。
また、こうした活動を行うようになることは、自衛隊の性格をも大きく変える。武器使用が緩和され、しかも集団的自衛権の行使に与える「駆けつけ警護」でのそれが認められることは、多国籍軍として戦闘行為を担うことへあと一歩と迫るものだ。そして殺しの実体験をさせることは、隊員のあり様を根本的に変える。
ここで特に注目してもらいたいのが、「安全確保活動」である。その活動には「駐留」と書かれている。駐留軍として占領地統治をする軍隊への道が敷かれているのだ。そこで思い浮かべて欲しいのは、占領地統治を行い、治安を維持することを主任務とする軍事組織は、憲兵だということである。防衛庁時代の調達不正疑惑や情報漏えい事件を契機として、昨年の防衛省設置法改正によって、監察本部というものが長官直属組織として作られた。それは、将来的には憲兵本部になるかもしれない。また、情報保全隊がイラク派兵反対の市民運動の情報を収集していることが明るみになったが、今回の守屋次官関連の調達不正を理由に福田首相が設置した「防衛省改革会議」では、情報保全隊の新編が議題となっている。三自衛隊の警務隊と情報保全隊を合体させることになろう。それは、守屋時代の昨年8月に防衛省が打ち出したものである。守屋問題を理由とした「粛軍」で守屋時代に打ち出した方針が推進されていく。その一つである新編情報保全隊は、監察本部と一体となった憲兵部隊の卵ともいえる。外に占領地統治機能を有する軍事組織は、内にも「反軍」行為取締り機能を持つことになるのだ。
民主党の動きにも注意を
自民党案には以上のような問題があるわけだが、政府・与党の「恒久的海外派兵法案」が最終的にどのようなものになるかは、内閣法制局との調整や公明党との調整もあり、不透明である。だが、民主党には、石破と共著もある長島昭久はじめ、恒久的海外派兵法積極論者が少なくない。11月8日の衆院テロ特別委員会で、長島昭久は、小沢・福田党首会談で確約したといわれる内容などでは「国連決議」だけでなく、「国連により認められた活動」なども含まれていることを理由に政府案と民主党との接点が見出せるのではないかと質問した。小沢・福田大連立構想は、こういう形で生きているのだ。公明党はこの動きを警戒し、恒久的海外派兵法容認の方向に進む。1月22日には、慎重姿勢から転換したとも報じられている。既に政府案の調整も始まっているという説もある。
今後の「恒久的海外派兵法案」形成過程において鍵になるのは、民主党が先の国会に「テロ対策新法」に対する対案として提出した「テロ根絶法」である。これは否決されずに継続審議になっている。その内容は、アフガニスタンに対する「治安分野改革支援活動」と「人道復興支援活動」に限定したもので、自衛隊には「人道復興支援活動」に限定したものだが、第五章には「テロ根絶のための法整備」が盛り込まれている。これが与野党協議の口実になっていくおそれがあるのではないだろうか。
それだけでなく、「テロ根絶法」自体が問題である。「治安分野改革支援活動」というのは、「アフガニスタン国際治安支援部隊」(ISAF)を念頭に置いたものだろう。だが、ISFAは国連安保理で「承認」されたものではあっても、安保理決議で「設立」されたものではない。北部同盟がカブールを掌握することを嫌って英軍主導で作られたものにすぎない。その既成事実を国連は事後承認しただけだ。そして現在は、NATOによって担われ、アメリカ主導の掃討戦と役割分担して、活動領域を拡大している。だが、その活動によっても多数のアフガニスタン民衆が死傷している。NATO側兵士にも死傷者が出ており、カナダなどでは撤退論も浮上している。一方の「人道復興支援」は、「地域復興支援チーム」を想定したものだろう。だが、「軍と文民支援との境を不明確にし、援助関係者の中立性を脅かす危険性がある」(日本国際ボランティアセンター、「アフガニスタンの地方復興支援チーム(PRT)支援強化に関する公開質問状」、2007年1月31日)と指摘されているものである。NATOとの連携強化、アフガニスタン地域復興支援チームへの参加は、安倍前首相がNATOで日本の首相として始めて講演して打ち出したものだ。安倍、福田、小沢の共通性にも、注意を払っておかねばなるまい。
ISAFもPRTも、「不朽の自由作戦」とは別個のものとされているが、役割分担した一体のものであるが、多国籍軍、治安部隊、国連PKOという分担は、アフガニスタンに限らず、最近の国連PKOに共通する傾向でもある。その意味では、国連幻想から距離を取って、あらゆる派兵拡大策動を批判していく必要があろう。
「恒久海外派兵法」でなく、「アフガニスタン派兵特措法」とでもいったものの制定が目論まれる可能性もある。アフガン派兵はかねてからアメリカが打診してきたものだ。2007年一年間のアフガニスタンでの米兵死傷者は843人(死者は83人)と、2001年のアフガン攻撃以来、最悪のとなったと報じられている。アフガン限定派兵法にも反対する構えを準備しておかねばなるまい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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