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田中宇の国際ニュース解説 2008年1月15日 http://tanakanews.com/
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★イギリスの凋落
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アメリカでは、金融危機と不況を併発する経済難が悪化しているが、ここ
2週間ほどの間に、イギリスが、アメリカをしのぐ急速な勢いで、アメリカと
同じ構造の経済難に陥りつつある。
イギリスは、昨夏のサブプライム債券問題を発端としたアメリカ発の金融危
機の中で、住宅金融専業の大手金融機関である「ノーザンロック」が資金調達
難に陥ったものの、それ以外には大きな危機は起こらなかった。英金融市場は
世界からの投資を集め、ロンドンの高級不動産は昨夏、年率36%の値上がり
という、30年ぶりの大幅上昇を記録した。
http://www.taipeitimes.com/News/worldbiz/archives/2007/08/20/2003375039
その後「イギリスでも、アメリカと同様の住宅市況の崩壊が起きそうだ」と
いう警告が専門家の間から出てくるようになった。だがその一方で、昨年のイ
ギリスの経済成長率は3・3%と、先進国(G7)の中で最高だった。イギリ
スでは1993年以来、15年間の経済成長が続いてきた。
http://www.ft.com/cms/s/0ecb34d0-72a8-11dc-b7ff-0000779fd2ac.html
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/money/property_and_mortgages/article2681755.ece
この間、イギリスの不動産市場では2桁の在庫増加が続き、住宅バブルの崩
壊の接近が感じられるようになった。昨年12月後半になって、11月の経済
統計数字が相次いで発表され、それが異様に悪化していることから、英経済が
急速に経済難に陥っていることがわかってきた。
http://www.ft.com/cms/s/1/57c901c2-a961-11dc-aa8b-0000779fd2ac.html
第3四半期(昨年7−9月)の経常赤字は400億ドルと、前期の270億
ドルから急増し、GDP比6%で1955年以来の大赤字になった。イギリス
は、世界からロンドンの金融市場に流入する投資資金からの儲けと、北海油田
からの石油産出が、貿易での赤字を埋めて経常収支をバランスさせてきたが、
昨年夏から投資がロンドンに流入しなくなり、それに北海油田の枯渇が加わっ
て、大赤字となった。貿易の赤字を金融の黒字で埋めていたのはアメリカと同
じ構造で、夏以降、金融の儲けが減って経常赤字が拡大したのも米英で共通だった。
http://www.upi.com/International_Security/Emerging_Threats/Analysis/2007/12/26/walkers_world_as_grim_as_1929/6774/print_view/
法人税の急減などから、同時期に発表された11月の財政赤字も、史上最
高額の112億ポンドとなり、赤字は前年同月の91億ポンドから急増した。
http://news.independent.co.uk/business/news/article3273201.ece
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7010233.stm
▼アングロサクソンの強さの崩壊
アメリカと同様、1990年代以来、イギリス経済の大黒柱は金融業である。
証券化やデリバティブなど、英米で共通の金融技術を使った高利回りの金融商
品を買おうと、中東のオイルマネーを筆頭に、世界からの資金がロンドンに流
入し、その儲けで英経済は回り、不動産価格は10年間に3倍の高騰となり、
投資流入の多さがポンド高を維持し、世界からの輸入品を安く買える好循環が
10年以上続いていた。
しかし、昨夏の米金融危機以来、この好循環の構図は崩壊している。米英金
融の強さの秘訣だった証券化は機能不全に陥り、ロンドンへの資金流入も細り、
不動産の売れ行きが鈍った。イギリスの不動産価格は今年(08年)が5%下
落、来年は8%下落、2010年も続落が予測されている。イギリスの住宅価
格の高騰幅はアメリカよりずっと大きいので、住宅バブル崩壊による被害もア
メリカより大きくなると予測されている。
http://www.guardian.co.uk/business/2007/dec/30/housingmarket.houseprices
http://www.ft.com/cms/s/0/996a30e8-bfb3-11dc-8052-0000779fd2ac.html
これまで長く上昇傾向が続き、昨夏まで最高値を更新し続けていたロンドン
の高級不動産(100万ポンド<約2億円>以上の物件)も、昨年9−12月
期には2%の下落に転じた。金融界の幹部の給料が下がって買えなくなったこ
とに加え、従来はさかんにロンドンの高級不動産に投資していたアラブの王族
やロシアの成金らが昨夏の金融危機以降、対英投資を減らした。
http://www.ft.com/cms/s/29cc2a3a-2101-11dc-8d50-000b5df10621.html
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/money/property_and_mortgages/article3123761.ece
アメリカ人と同様、イギリス人はここ数年、住宅ローンやクレジットカード
による融資で得た金を使って消費する傾向を強めており、昨年後半から金融機
関の貸し渋り傾向が増した影響で、ローンの破綻が増え、これが昨年末のクリ
スマス商戦から、消費の減少として表れている。英国民の貯蓄率は、9月から
12月の間に、4%から3・4%に下がり、国民の蓄えは急速に減っている。
アメリカ同様、消費は英経済の成長を支える主たる要素であり、消費減は、金
融業の悪化と並び、イギリスを不況に陥れそうだ。
http://news.independent.co.uk/business/news/article3324484.ece
http://news.scotsman.com/uk/Festive-spending-tips-many-into.3635999.jp
金融危機と不動産バブル崩壊は、世界からの投資資金を減少させ、ポンドの
下落につながる。アメリカと同様の傾向として、英国債の32%は外国人が保
有しており、外国人保有率はこの4年間で倍増した。外国人はポンドの為替が
高い上に利回りが良いので英国債を買っていた。しかし、ポンドが下落すると
国債を買いたい外人投資家は激減する。英政府は、不況で税収が減っても、そ
れをカバーするための国債増発ができなくなる。
イギリスは、金融危機、不況、通貨安、インフレという米経済を襲う4重苦
と同じかたちの苦境に陥っている。特に金融危機は、当局によって制御できる
範疇を越えて悪化しそうになっている。中央銀行が短期金利を下げても、銀行
間の市中金利(LIBOR)が下がらなくなっている。英米の金融界全体で、
サブプライム債券など高リスク債券の損失が増え続け、銀行が互いに信用でき
なくなり、銀行間市場での資金調達が難しくなっている。人間にたとえていう
と、血液循環が止まりかけている。
http://www.telegraph.co.uk/money/main.jhtml?xml=/money/2007/12/07/cnbank107.xml
イギリスの著名な経済アナリストであるピーター・スペンサー(Peter Spencer)
は、12月下旬の講演で「各国の中央銀行が金融危機を制御できる期間は、
あと数週間しか残されていない。今後2−3カ月以内に危機を終息できない場
合、銀行破綻が急増する。事態は非常に不安定で、信じられないような速さで
急展開しうる」「英経済は急減速しており、英政府の財政状況も急速に悪化し
ている。1月の政府税収が発表される2月に(悪化が明らかになり)最初の
ショックが起きるだろう」と述べている。
http://news.independent.co.uk/business/news/article3273201.ece
http://www.upi.com/International_Security/Emerging_Threats/Analysis/2007/12/26/walkers_world_as_grim_as_1929/6774/print_view/
▼イギリスの経済難は国際政治を変える
イギリスの人口は6千万人で、日本の半分、アメリカの5分の1しかいない。
日本も、新年早々株価が下がりっぱなしで、外国人の投資資金が日本から中国
などに去り、経済も不況に逆戻りしそうで、イギリスより日本の経済難の方が
はるかに重要だと考える読者が多いかもしれない。
しかし、世界的な影響としてみると、日本の経済危機よりイギリスの経済危
機の方が、はるかに影響が大きい。イギリスは、世界を支配するアメリカを黒
幕的に動かす覇権国であるが、日本は外交的にアメリカに完全従属しており、
国際政治的にはアメリカの一州のような存在である。
米英は、1980年代から、おそらくイギリスの発案で、同一の市場原理主
義の経済政策を両国で導入し、金融界の儲けが急増して大成功し、これを「ア
ングロサクソン型経済運営」として、世界中の国々に導入させようとした。
IMFなどによる「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる世界戦略である。
しかし、昨夏からの金融危機で、米英は急速に経済危機に陥り、アングロサク
ソン型経済運営はモデルとして失敗の烙印を押されそうだ。米英は、経済面で
の世界覇権を失いつつある。
ドイツやフランスは、アングロサクソン型を導入せよと米英から圧力をかけ
られ続けたが応じず、高税率・高福祉の体制を維持した。90年代には、独仏
の経済は米英より不調だっだか、今では福祉削減で中産階級が疲弊している英
米に比べて、独仏の方が堅調になっている。ポンドの対ユーロ相場が下落した
結果、昨年末には、イギリスの経済規模は、8年ぶりにフランスに抜かれてし
まった。このまま米英が不況に突入したら、アングロサクソン型を導入しなく
て良かった、という話になる。日本もアメリカからアングロサクソン型の導入
圧力をかけられ、いわゆる「抵抗勢力」のおかげで減速の努力はあったものの、
日本の制度はかなり無茶苦茶にされた。
http://www.nytimes.com/2008/01/11/opinion/11krugman.html?hp
http://www.ft.com/cms/s/0/1667a024-c0b0-11dc-b0b7-0000779fd2ac.html
イギリスは、昨年秋からの財政難のため、アメリカの泥沼の戦争につき合い
続けることができなくなった。イラクでは、英軍が米軍に次ぐ第2の勢力とし
て南部のバスラ周辺の占領を担当していたが、昨年12月に撤退を開始した。
英政府は、イラク撤退の理由を「英軍をアフガニスタンに注力するため」と説
明しているが、これはウソだ。実際にはイギリスは、前回の記事 http://tanakanews.com/080108pakistan.htm
に書いたように、アフガンではタリバンと交渉して戦闘を減らし、英軍と
NATO全体の負担を減らそうとしている。英政府は、アフガンに兵力を増派
するだけの財政的な余裕もない。
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/news/article563496.ece
アメリカは、イギリスのイラク撤退に反対し、アフガンでタリバンと交渉す
ることにも反対している。英政府はブッシュ政権が多用する「テロ戦争」とい
う言葉の使用も最近やめてしまい、911以来の、米英同盟によるテロ戦争の
構図は破綻した。イギリスにとって、アメリカとの同盟関係が失われることは、
アメリカを黒幕的に動かすことで維持されてきた間接的世界覇権の喪失を意味
する。英政府はできるだけ長くアメリカと軍事行動をともにしたかったはずだ
が、財政難でそれができなくなり、イギリスの間接覇権は失われかけている。
▼狡猾なフランス
英米中心の世界支配が崩れかけているのを見て、フランスとドイツは、EU
を米英中心体制から離脱させようとする策動を開始している。フランスは今年、
輪番制のEUの議長国だが、サルコジ大統領は、議長国である間に、EUに軍
事計画委員会(a European military planning headquarter)を新設しようと
している。新組織の目的は、EU加盟諸国の軍の首脳どうしの協調を強め、各
国の軍事戦略の間の矛盾を減らして「欧州統合軍」の設立を準備することであ
る。この手の組織を作る構想は、アメリカが「単独覇権主義」を宣言した
2003年イラク侵攻前からあるが、イギリスは一貫して反対している。
http://www.guardian.co.uk/eu/story/0,,2212151,00.html
http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9C04E1D7113DF933A05757C0A9659C8B63
イギリスの戦略は、EUを、米英中心の欧米間の軍事同盟であるNATOの
傘下に置き続けることである。EUが独自の統合軍を持たず、欧州各国がバラ
バラにNATOの傘下にあり続ければ、イギリスがアメリカを動かし、アメリ
カが欧州を傘下に置き、欧米が世界を支配するという、イギリスの間接的な世
界支配体制が維持される。独自の統合軍を持つと、EUはアメリカの傘下から
出て、アメリカの意向に関係なく戦略を決定するようになり、イギリスの間接
支配は失われる。
(ブッシュ政権の単独覇権主義は、EUのNATOからの離脱を扇動し、イギ
リスの観雪支配戦略を破壊した点で「隠れ多極主義」であり、イギリスが維持
してきた米英中心主義を破壊する動きである)
サルコジ大統領は、昨年5月の就任以来、米英やイスラエルとの親密さをア
ピールしてきた。「ユダヤ系であるサルコジは、アメリカやイスラエルの傀儡
だ」という見方が、イスラム社会など世界的に広がった。しかしサルコジが米
英イスラエルとの親密さを演出したのは、従来の世界を支配してきたこれらの
勢力と親しげに振る舞っておくことで、あとで反米的な諸国との親交を深めて
も、米英イスラエルから敵視されないようにするための予防的な演技だった。
昨年後半、サルコジは、リビアの最高指導者カダフィや、ベネズエラのチャ
ベス大統領をパリに招待し、エネルギー開発や武器販売の大口契約を結び、中
国やロシアとも親密な関係を結び、イランやイスラエルが核開発するならアラ
ブも核開発したいと考えるエジプトに原子炉を売り込み、イラン訪問をも検討
するなど、米英イスラエル中心主義に協力するどころか、それとは正反対の方
向に動いている。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/939536.html
http://www.presstv.ir/detail.aspx?id=36709§ionid=351020502
サルコジは、米英イスラエルが覇権を失い、世界が多極化しつつあることを
認識し、全方位外交で利権の拡大をはかっている。私は昨年10月の記事
http://tanakanews.com/071016france.htm でそのことを指摘したが、その後
のサルコジの動きを見ると、引き続きその方向に進んでいることがわかる。
EUに統合軍を作り、NATOから離脱させていこうとする動きも、その一環
である。(サルコジの巧妙さと比べると、対米従属以外に何の戦略も持とうと
しない日本が全くの無能に見える)
▼学問のふりをする地政学
従来のイギリスの世界戦略は、ユーラシア大陸の周辺部の国々(米英、日本、
東南アジアなど海洋勢力)を結束させ、大陸中心部のロシア、中国、中央アジ
アなどの内陸勢力を包囲弱体化するという「地政学」である。
(国際政治を地理的な戦略としてとらえる地政学は、客観的な学問のようなふ
りをしているが、実はイギリスに都合の良い二分論である。戦後の日本では、
地政学は正規の学問として扱われていないが、これは日本がイギリスの謀略を
熟知していたからではなく、逆に、日本ではイギリスの謀略や世界の覇権構造
についての研究を事実上禁じることで、日本人が自国の対米従属戦略の本質に
ついて考えないように仕向けてきた。無知が一番幸せという考え方である)
イギリスの地政学的なユーラシア包囲戦略は、アメリカの「隠れ多極主義」
によってロシアや中国が台頭したことで、崩壊している。中でもプーチンのロ
シアは、イラン、中国、ベネズエラなど米英が敵視する国々と組んで、石油ガ
スの世界的な利権を米英から奪う戦略を採っている。以前の記事 http://tanakanews.com/070320oil.htm
に書いた「新セブン・シスターズ」の戦略である。
ロシアは、西欧諸国が消費する天然ガスの3割近くを供給し、西欧はロシア
を敵視しにくくなっている。イギリスは、プーチンがエネルギーによる世界支
配を画策し始めた数年前から、原子力発電を増やして天然ガスの消費増を抑え
る対抗戦略を採ってきた。しかし、英政府は財政難なので、電力会社が原子力
発電所を作る際に補助金を出すことができず、反対運動などのリスクをおそれ
る電力業界はあまり積極的ではない。
http://www.msnbc.msn.com/id/22590162/
またイギリスは、新セブンシスターズに石油ガス利権を奪われていることや、
北海油田の枯渇への対策として、世界の中でも資源が未開発な南極周辺の石油
ガス利権を獲得することを狙っている。英政府は昨年秋、英領であるフォーク
ランド諸島周辺など南極近くの海域(大陸棚)について領有権を主張し、同じ
海域の領有権を主張するアルゼンチンやチリと衝突した。
http://www.energytribune.com/articles.cfm?aid=740
南極では「南極条約」によって、科学調査以外の地下資源開発が禁止されて
いる。だが国連では、南極条約と抵触しないことを前提に、海洋法条約に基づ
いて、南極周辺の海底の領有権を定めようとしており、2009年5月が領有
権申請の締め切りとなっている。国連を裏から操る術を知っているイギリスは
今後、南極条約の資源開発禁止規定を変えて、自国が南極で石油ガス開発でき
るようにするかもしれない。
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/N18419634.htm
▼イギリスの世界戦略としての地球温暖化問題
エネルギーにかかわるイギリスの地政学的戦略としては「地球温暖化対策」
もある。地球温暖化の理由を確定することは非常に難しく、議論百出の状態な
のに、イギリスは、科学者による国連の国際会議に巧妙に介入し、温暖化と人
類のエネルギー利用を結びつけるような結論を、確定版として国連に出させている。
http://www.newsmax.com/insidecover/global_warming/2007/12/10/55974.html
http://www.prisonplanet.com/articles/december2007/121207_scientists_shunned.htm
http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2007/11/04/eaclimate104.xml&page=1
イギリスの戦略は、石油ガス利権をロシアや中国、反米化した中東諸国など
に奪われることに対抗して、石油ガス利用を「悪」とする国際政治状況を作り
出し、石油ガス利用に国際課税しようとするものだ。独仏や日本などの先進国
は、発展途上国の発展に課税してピンハネできるので、イギリスの戦略に加担
している(アメリカのブッシュは隠れ多極主義なので、温暖化対策に抵抗し、
エタノール構想など、似て非なる計画を出している)。
http://tanakanews.com/070227warming.htm
日本では「中国が石油を使いすぎて地球が温暖化している」ということのほ
か「垂れ流しの中国による環境破壊に反対しよう」という宣伝(報道)もさか
んだが、国民の多くはこれを、イギリスの戦略に乗る日本政府の政治宣伝とは
気づかずにいる。
今年以降、米英の経済が破綻し、破綻しそうな米英の金融機関を救う買収基
金として、中国や中東産油国の政府投資基金が台頭する傾向が続き、世界の消
費大国がアメリカから中国や中東、インドなどに移っていくことが予測される。
国際社会では、イギリスなど先進国の発言力が低下し、代わりに中国やロシア、
中東諸国などの発言力が拡大しそうだ。地球温暖化問題を歪曲することによる
イギリスの「反石油」の地政学戦略は、成功しないだろう。
いわゆる「地球温暖化問題」は「解決」せず、日本ではこれを「良くないこ
と」ととらえる報道が流され、国民の多くはこれを鵜呑みにして悲しむだろう。
だが本当は、イギリスの覇権戦略が失敗するだけであり、日本人は悲しむ必要
などないのである。循環している太陽の活動が今年から転換し、地球は今後、
再び寒冷化していくという予測も出ている。
http://www.spaceandscience.net/id16.html
http://www.newstatesman.com/200712190004
▼明治維新前に戻る日本
日本人は、温暖化問題で一喜一憂する必要はないものの、イギリスが衰退し、
イギリスによる間接世界支配が終わることは、世界における日本の位置の低下
につながるかもしれない。
日本は明治維新によって、アジア最強の国になる態勢に入ったが、明治維新
は、長州藩などの維新勢力が、イギリスの地政学的戦略に乗ることを前提に、
イギリスから近代化の支援を受ける約束を取り付けた結果、起こされている。
イギリスは第二次大戦では、アメリカを自国の地政学的戦略に巻き込むために、
日本を英米共通に敵に仕立てたが、この時期を例外として、近現代の日本は一
貫して、ユーラシアの内陸勢力を封じ込めておくイギリスの世界戦略の片棒を
担ぐことが、国際社会における役割であり、戦後の対米従属も、その線に沿っ
た動きである。
アメリカ中枢の隠れ多極主義者による破壊活動の結果、イギリスの地政学戦
略が破綻し、このまま世界が多極化していくと、東アジアでは中国が強くなり、
朝鮮半島や東南アジアも中国の傘下に入る色彩を強める。すでに台湾では先日
の選挙で、中国寄りの姿勢をとる国民党が圧勝した。
イギリスの支配戦略が解け、東アジアで中国が強くなるということは、今後
の東アジアは、イギリスが中国を打ち負かしたアヘン戦争以前の国際政治体制
(華夷秩序、冊封態勢)に戻るということである。日本は、中国と距離を置き、
自ら孤立していく鎖国状態に戻りたいと考える傾向を強める(すでに日本人の
間には、その気運がある)。すでに外国人は日本入国の際に指紋押捺を義務づ
けられるようになり、日本が外人を歓迎しない体制ができつつある。
このまま世界が多極化していけば、イギリスは欧州沖の小さな島国に戻り、
日本は中国沖の小さな島国に戻る。スコットランドはイギリスから分離し、独
自に大陸との関係を模索するかもしれない。今の世界は150年前よりはるか
に一体的であり、鎖国など不可能で、経済的な国際化が逆行することはない。
だが政治的なイメージとしては、日英は大陸沖の島国に戻りそうだ。
江戸時代の日本は、必ずしも暗黒の嫌な社会ではなかったので、明治維新前
に戻ることは、日本人にとって苦しいことではない。アメリカが東アジアでの
覇権を縮小すれば、日本は自然に鎖国傾向になる。ただし、イギリスが今後、
全く新しい世界戦略を考えて実行・成功し、日本もその流れに巻き込まれてい
くのなら、この予測とは違う展開になる。
イギリスは、第一次大戦前後に大英帝国が衰退してから、現在まで約100
年間、驚くべき巧妙さとしぶとさによって、アメリカと国際社会を操り続け、
間接的覇権を維持している。イギリスの巧妙さを上回る策略で世界を多極化し、
イギリスを破綻させているブッシュ政権が終わった後、イギリスが何らかの新
しい世界戦略を開始して巻き返す可能性はある。日本人の多くは、従来のイギ
リスの戦略に気づかなかったように、今後の新戦略にも気づかないだろうが。
この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/080115UK.htm
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