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(回答先: Re: teて 投稿者 きすぐれ真一 日時 2009 年 3 月 13 日 22:19:41)
ノウハウの伝承もなく、エリート意識だけが際限なく膨らんでいく
社員は記者クラブでふんぞり返り厳しい現場は制作会社に丸投げする 「殿様報道局」【SAPIO】
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20090514-01/1.htm
(SAPIO 2009号5月13日号掲載) 2009年5月14日(木)配信
文=鵜飼克郎(ジャーナリスト)と本誌編集部
大きな動きが見られたこの春の番組改編。各局に共通するキーワードは「ニュース」である。高視聴率を誇るNHKの『ニュース7』(19時〜19時30分)にぶつける形で、TBSは報道番組『総力報道!THE NEWS』(月〜金・17時50分〜19時50分)をスタートさせた。BSフジの『PRIME NEWS』(月〜金・19時〜20時55分)も新たに加わった。バラエティ番組を押しのけ、ゴールデンタイムに報道、情報番組が増えた形だが、これは「報道の復権」ではない。実態はむしろその逆である。『真相報道 バンキシャ!』のような大誤報がまたいつ起きてもおかしくないほど、取材現場はガタガタになっている。
予算削減で報道も外部スタッフに丸投げ
報道番組の増加には何とも情けない裏事情がある。日本テレビの関係者が解説する。
「テレビ業界の金欠ぶりが大きく影響しています。デジタル化への設備投資に加え、景気低迷によるCM収入の落ち込みが激しく、テレビ局は軒並み収益が悪化。日本テレビも半期ベースで37年ぶりの赤字決算となった。それに伴って制作費が削られることになり、各局ともカネのかからない編成を最優先したのです」
まず手をつけたのが人件費削減だった。日本テレビでは高額ギャラのみのもんたが降板し、『おもいッきりイイ!!テレビ』とその前の時間帯に放送されていた『ラジかるッ』を統合させた情報番組『おもいッきりDON!』が始まった。2つの番組が1つになれば単純計算でスタッフ数が半減し、大物タレントがいなくなれば制作費が削減できる。
さらに、報道、情報番組にするとリストラ効果を生むカラクリがある。長年報道に携わってきたテレビ局関係者が言う。
「番組編成に関係なく、報道局にはもともと固定費用がかかっている。政治、経済、事件などの日々の動きを取材するには一定数の記者が必要で、時間と経費もかかる。予算が削れないなら、せっかく取材したニュース素材を使って番組を作ったほうがオトクという発想だ」
また、ニュース映像なら編集作業なども粗くて済む。通常の番組だと、1分作るのに1時間の編集作業が必要になるといわれる。社外の編集ブースを利用するが、その使用料は1時間で1万5000円が相場で、これに編集機材を動かす編集マンの人件費もかかってくる。生放送のニュースなら、単純にこれらの制作費が浮くことになる。
ここまでは、まあ涙ぐましいテレビ局の企業努力と言えなくもない。しかし、以下の話はテレビ報道の本気度を疑わせる。
「記者クラブに詰め、政党や関係官庁などを回るのは社員記者の仕事だ。しかし、報道番組に特色を出すために長期密着などの特集もニーズが増している。番組ごとに『特集班』を編成している場合と、番組とは関係なく報道局、とくに社会部で『特集班』を組む場合があるが、実はこれらは制作会社のスタッフが中心となって作っている。
すでに一部テレビ局の社会部では、特集企画だけでなく、通常の取材現場にも制作会社所属の記者を投入しているところもある」(在京キー局・報道局記者)
以前から夕方のニュース番組などでは行列のできるお店≠竍激安グルメ≠ネどの企画モノは制作会社に外注していたが、本丸の報道すら外部スタッフに丸投げし始めているのが実態なのだ。
理由は予算削減ではなく社員の能力が低いから
表向きの理由はもちろんコスト削減だ。年収2000万円台もザラといわれるテレビ局の社員に対し、制作会社のスタッフの年収は400万円前後が多い。だが、報道に携わる制作会社のスタッフはこうも言う。
「予算削減という割には、社員記者は記者クラブで油を売っている。それでスクープがあるならまだしも、基本的には新聞社の後追いをしているだけ。朝刊を読んで、スクープがあればその内容を政党や省庁に確認する、という作業を彼らは取材≠ニ呼ぶ。テレビの速報性にあぐらをかき、他人のネタで商売をしている。社員たちはそんなママゴトみたいな仕事だけをしていて、難しい仕事、面倒な仕事は制作会社に投げてくる」
海外の紛争地帯での取材を見れば視聴者にもわかりやすい。社員は危ないから行ってはいけない≠ニ、およそジャーナリストとは言えない理由が堂々と通り、現地で取材するのは決まって契約したフリーランサーか現地スタッフだ。
「イラク戦争の時は、前線のはるか後方でアメリカ軍の陣営取材をするのが精一杯。社員記者が中継するときは決まってドバイやカタールなど隣国の安全な都市からだった。陥落後間もないバグダッドに入り、レポートしたのはやはりフリーランサーたちだった」(前出・制作会社スタッフ)
07年9月にミャンマーで反政府デモを取材中に射殺された長井健司氏も、テレビ局員ではなく独立系ニュースプロダクションの契約記者だった。
国内でも社員記者の活躍はとんと見ない。日曜日夕方の『ちびまる子ちゃん』、『サザエさん』のお化け番組に唯一対抗できるといわれてきた日本テレビの『真相報道バンキシャ!』。その現場をよく知る制作会社スタッフが言う。
「『バンキシャ!』が流したスクープを競って後追いする他局の番組はいずれもワイドショーだ。つまり本来ワイドショーが好むネタを報道番組が扱うことで、お茶の間でも肩肘張らずに見てもらえるという発想。これが最近の報道番組の傾向だ」
そのため、ワイドショーで実績がある制作会社に、人材提供はもちろん、ネタや企画の提案をさせているという。丸投げ企画も多く、制作会社のスタッフはロケハン、取材のアポ取り、取材、編集、放送中の対応などあらゆる仕事をこなしているという。
記者クラブでふんぞり返っている社員記者には到底できない仕事量だ。もはや危険な紛争地帯でも安全な日本でも、高給取りのエリート記者≠ェ役に立つ場面はない。
手柄は社員が独占責任は制作会社に
だが、彼らのプライドだけは相変わらず超一級のようだ。
「俺は○○先生と親しい≠ニかもう時効だけど実はあの騒動の裏にはこんな真相があってさ≠ネどと報道できないネタほど一生懸命自慢する。政治家も官僚もただ単にテレビ局の看板≠見てお付き合いしているだけなのに、まるで自分自身が特権階級の一員だと錯覚している」(前出・制作会社スタッフ)
この手の社員が指示を出す立場になると、現場は大混乱に陥る。もちろん社員にもいろいろいて、能力の差があり、性格も違う。しかし、多くの場合、能力に関係なく年次によって自動的にポストが上がっていくので、能力のない者、現場をあまり知らない者ほど現実離れした指示や命令を出し、現場は混乱し、スタッフの反発を招く。
「彼らは基本的には一流大学を卒業して頭はいい。それだけに要領のいい者が多く、常に上司の顔色をうかがう。
そのため現場スタッフからネタを出させ、それがいったん上の会議で通ると、どんな無理難題であっても、事実を歪曲することになっても、押し通してしまう傾向がある」(別の制作会社スタッフ)
だが、限られた時間で上から厳しい要求があると、制作会社のスタッフ連中は切羽詰まって週刊誌やネットなどで拾ったネタを出すことも多い。
「ところが、統括する社員には経験と知識がないのでその真贋を見破れない。にもかかわらず、もしそれで問題が起きればトカゲの尻尾切りにあうのは制作会社です。
ある局では、週刊誌で報じられた森元首相のスキャンダル記事をそのまま報道して問題になったことで、社員プロデューサー、ディレクターは他の部署に異動しただけだったが、そのネタに関与した制作会社は局から切られた」(前出・制作会社スタッフ)
手柄は自分に、責任は外部の人間に。そんな文化でジャーナリズムが育つはずもない。
「社員記者の命令・指示は絶対です。フジテレビでは社員の名刺には『フジテレビジョン』と書かれ、制作会社のスタッフの名刺には『フジテレビ』としか書かれていない。そのため、社員記者のことを『ビジョンさん』と呼ぶんです。地道な取材が報われてスクープ映像が撮れた場合は、『ビジョンさん』がやってきて現場から中継でレポートする。これでどうやってモチベーションを高めればいいのか」(制作会社スタッフ)
一方で、予算削減の影響は現場を実質的に支えている制作会社のベテランスタッフにも及んでいる。かつては取材となると、記者、カメラ、音声の最低でも3人が1チームとなって動くのが常識だった。しかし今では、ディレクターが1人でハンディカメラを持って取材に行くことが多くなった。以前から報道で仕事をしてきた制作会社のディレクターは言う。
「カメラを回しながらの取材だと、質問に集中できない。相手への突っ込みが甘くなる。会社に帰ってからVTRを見て、ああ、ここでもっと○○を聞いておけばよかった≠ニ後悔することも増えた」
単独行動は取材のノウハウ、手法の伝承も妨げている。空調完備の記者クラブでパソコンにずっと向かっている社員記者は論外だが、今後、若手の有能な記者が育つ土壌はますます失われている。
「BSやCSでニュース番組が増え、ネタもトレンドから動物ものまで際限なく報道の守備範囲が広がっている。圧倒的に人員が不足している。限られた人員で手分けして取材するため、散り散りになり、先輩記者と行動を共にすることがなくなった。先輩のやり方を見て盗んだり、取材手法の伝承ができなくなるなど、マイナス面は計り知れない」(在京キー局・報道局記者)
こうして今日もテレビでは名ばかりの「報道番組」が作られていく。