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(回答先: Re: teて 投稿者 きすぐれ真一 日時 2009 年 3 月 16 日 11:14:40)
検察は政治資金規正法違反の解釈を「形式犯」から「実質犯」に変えた? 【個人発明家blog】
http://hatumeika.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-5d63.html
2009年3月26日 (木)
検察は政治資金規正法違反の解釈を「形式犯」から「実質犯」に変えた?
小沢一郎秘書の逮捕・起訴の件で、政治資金規正法違反の刑罰(5年以下の禁固・・・)は25条に記載されているが、今回問題となっている「虚偽記載」の罪の内容は12条1項に記載されているので、その一部を次に抜粋する。
「(報告書の提出)
第12条 政治団体の会計責任者(報告書の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、毎年12月31日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるもの(これらの事項がないときは、その旨)を記載した報告書を、その日の翌日から3月以内(その間に衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の公示の日から選挙の期日までの期間がかかる場合(第20条第1項において「報告書の提出期限が延長される場合」という。)には、4月以内)に、第6条第1項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。
1.すべての収入について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに次に掲げる事項
イ 個人が負担する党費又は会費については、その金額及びこれを納入した者の数
ロ 同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間5万円を超えるものについては、その寄附をした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日並びに当該寄附をした者が第22条の5第1項本文に規定する者であつて同項ただし書に規定するものであるときはその旨
ハ 同一の者によつて寄附のあつせんをされた寄附で、その金額の合計額が年間5万円を超えるものについては、その寄附のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該寄附のあつせんに係る寄附の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日
(以下、略)」
今、この12条1項の内容を詳しく調べている時間はないので、全くの私見だが、おそらく、この12条1項のロの「その寄付をした者」として、西松建設の名前ではなく政治団体の名前を報告書に書いたことが「虚偽記載」の罪に当たるのだ、というのが検察の主張と予想される。
ところで、水口洋介弁護士のブログ(2009/3/9記事)では、政治資金規正法第25条1項3号「政治資金規正法25条1項(次の各号の一に該当する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。) 3号 第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者(第12条第1項には、政治団体の会計責任者の報告書提出義務が記載されている。)」について、次のような書かれている。
「政治資金規正法は複雑でわかりにくいですが、これはいわゆる形式犯ですから、虚偽であるか否かは形式的な事実認識が問われるはずです。つまり「新政治問題研究会」などという政治団体が存在しないことを知りながら、あえて存在すると記載することが虚偽記載になるのであって、もし「新政治問題研究会」が実在するのであれば、そう書いたからといって虚偽記載ではないということになるのが普通の形式犯の虚偽という故意についての解釈でしょう。」
「もし「新政治問題研究会」が実在するのであれば、そう書いたからといって虚偽記載ではない」というのがポイントだ。つまり、資金が西松A→政治団体B→団体C(小沢事務所の団体)と流れていたとき、しかも、少なくとも団体Bが全くのペーパーではないと認識していたとき、Cの秘書は、献金者の名前としては素直に(形式的な事実に基づいて)団体Bの名前を書けばよいのであって、西松Aの名前を書くとかえってその方が「虚偽記載」になるのではないか、ということだ。
また、「佐々木和子弁護士事務所」(元検事で元参議院議員の佐々木弁護士によるもの)の2009/3/9記事によると、次のように書かれている。>
「政治資金規正法違反は,贈収賄と違って形式犯であり,その違反による強制捜査(逮捕)は従来1億円が基準であった。しかし,3日の逮捕は,わずかにその額2,100万円(+100万円)。
西松建設は,政党(及び政治資金団体)にしか寄附ができないとする制限(21条1項)に違反し,ダミーの政治団体を使って寄附をし,一社当たりに認められる年間寄附上限額(資本金50億円以上の会社であれば年3000万円)を超えた(21条の3)。
小沢側はその事情を知りながら,寄附を受けた(22条の2)。これは「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」(26条)という軽罪だから,法的構成としては,正しい事項を報告しなかった12条違反として,25条の「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」としているのであろう。ちなみに前者の時効は3 年,後者は5年である。」
この文章によると、今回の秘書の容疑としては、(a)西松が一社当たりに認められる年間寄附上限額(資本金50億円以上の会社であれば年3000万円)を超えている(21条の3)ことを知りながら,寄附を受けた(22条の2)という「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」(26条)という軽罪、(b)正しい事項を報告しなかった12条違反としての,25条の「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」の形式犯、の2つがあるということだ。
また、元検事の郷原信郎弁護士も、同様に形式犯だとの立場から、今回の小沢秘書は虚偽記載の要件に当たらないのではないかという主張をされている。同弁護士による記事「ガダルカナル化する特捜捜査」では、「・・・では、このような東京地検特捜部の捜査は、果たしてうまくいくのであろうか。3月11日の記事でも述べたように、今回、逮捕容疑の政治資金規正法違反事件には、「寄附者」をどう認定するかという点に関して重大な問題がある。献金の名義とされた西松建設のOBが代表を務める政治団体の実体が全くないということでなければ、大久保容疑者が西松建設の資金による献金だと認識していても収支報告書の虚偽記載罪は成立しない。」と述べられている。
以上のように、政治資金規正法違反は、自動車の速度違反や駐車違反と同じ「形式犯」(何らかの法益を侵害するかその危険を犯したという結果によって刑罰を負わせる「実質犯」と違って、結果を問わないで形式のみで処罰する犯罪)だというのが従来の総務省、法務省、検察その他一般の解釈だった。
このように政治資金規正法の虚偽記載の罪を「形式犯」とする限りは、その成立には@西松建設の政治団体が「実体のないダミー」だったという事実があること、Aそのことを小沢一郎氏の秘書が認識していた(故意がある)ことが必要となる。そして、今回の事件では、西松建設の政治団体が、代表者が常駐しており年に数回の宴会施設を借りて10人くらいが出席するパーティをやっていたなどの事実から「実体のないダミー」とは言えないので、Aの認識の有無を問う前に、@の事実がないから、虚偽記載の罪は成立しない、ということになる。仮にAの認識があっても、その内容は「(西松建設との関係はあっただろうが)とにかく実体のある団体から献金を受けてその団体の名前を書いた」という適法な行為の認識(故意?)があるだけなので、犯罪にはならない。
今日の産経ニュースでは、「小沢秘書が最近になって、献金が西松からだと認識していたと供述した、・・・(他方、)形式的にせよ実際に献金を振り込んでくれたのは政治団体であり、収支報告書にはその通り記載したとも供述している」として、早く保釈してもらうことを狙って自供したのかもしれないと書かれていたが、そのような弁護団の戦略も、上記のような「この犯罪は『形式犯』であり、今回の政治団体には事実として実体があったから、たとえそのことを認識していたとしても犯罪にはならない」という従来の一般的な解釈を前提しているのだと思う。
しかし、それでは、検察は困る。何より、この総選挙が差し迫った時期にいきなり逮捕して政治的混乱を引き起こし、地方から大量の検事を動員して税金を使いまくった以上、「起訴できませんでした」とは口が裂けても言えない。
それで、今回、検察は、急遽、政治資金規正法違反の「虚偽記載」の罪の解釈を、形式犯から実質犯に変えてきたようだ。それは、昨日(2009/3/25)付けの日経新聞にそのような「検察は従来の形式犯から踏み込んで・・・実態を・・・」というような記事があったので、そう思った。また今日の毎日jpの記事にも「小沢氏も追及を−−土本武司元最高検検事の話 「政治の透明化が求められる時代に政治資金規正法違反は形式犯とは言えない重大な犯罪だ。今回、起訴されたのは会計責任者だが、小沢氏の監督責任についても刑事責任を追及すべきだ。」とあった。
今の「形式犯」の解釈を変えないと、検察は裁判で勝てない。裁判で勝つためには、つまり小沢秘書を有罪にするためには、形式犯だという今までの解釈を実質犯に変えて、裁判所にもその解釈を認めてもらうしかない。
具体的には、政治資金規正法の報告書に記載する「その寄付をした者」(政治資金規正法12条1項ロ)の解釈を、「形式的に献金をした人(例えば銀行振り込みなら、その振込みの名義人)」(今回の事件なら政治団体)という解釈から、「背後で実質的に資金を出した人」(今回なら西松建設)という解釈に変えるしかない。
政治資金規正法違反は「実質犯」なのだという解釈をとれば、政治資金の流れを透明化するという法益を守るためには「その寄付をした者」を「形式的に資金を振り込んだ人」ではなく「背後で実質的に資金を出した人」と解釈する方が合理的だという主張は、論理的には可能かもしれない。
しかし、刑事法には、罪刑法定主義という大原則があり、この大原則は法解釈をも拘束する。罪刑法定主義は、どこまでは処罰されないがどこからは処罰されるという範囲を一般市民に予め知らせるという「市民の自由を保障する機能」(保障的機能)を刑事法に持たせるためのものだ。同じ要請から、拡張解釈はよいが類推解釈は許されないとされている。「その寄付をした者」を「背後で実質的に資金を出した人」と解釈することは、「罪刑法定主義が禁止する類推解釈」に限りなく近い拡張解釈ということになると思う。
何か事件があるたびに検察や裁判所の解釈がころころ変わってしまうのでは、罪刑法定主義の「市民の自由を保障する機能」が否定されてしまう。
裁判所が今回の検察の法解釈の変更(形式犯から実質犯へ)を受け入れて、小沢秘書を有罪にするのかどうか、極めて疑問だ。
検察がこのように、今回の事件から急に、従来の形式犯から実質犯へと解釈を変えてきたということは、そのことだけでも、(前回の記事で述べた元検事の郷原弁護士の見立てのように、捜査の最初は「法解釈の勘違い・勉強不足」ということだったとしても結果的には)今回の捜査・起訴が「恣意的」「国策捜査的」なものになってしまったことを示すものでもあると思う。
いずれにせよ、今回の裁判では、政治資金規正法違反の「虚偽記載」の罪が従来のように形式犯と解釈するか実質犯と解釈するかの法解釈論が決め手になるだろう。
追記:なお、政治資金規正法の虚偽記載の罪を形式犯とするか検察のように「政治資金の透明化という趣旨」から実質犯のように解釈するかについて、元検事の郷原弁護士の記事があるので、その一部を引用しておく。
これを読むと、政治資金規正法違反を形式犯とするか実質犯とするかは、この法律の「政治資金の流れの透明性を高める」という目的を重視するか、この法律の目的はそうだとしても、この法律の当面の役割は「ヤミ献金をなくし、収入の総額を正確に開示すること」だと考えるかもかなり関係するようだ。それと、上記の罪刑法定主義の要請も大いに関連する。
「政治資金規正法違反になるとすれば、寄附者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体で、しかも、それを小沢氏側が認識していた場合だ。捜査のポイントはこの点を立証できるかどうかだが、全国に数万とある政治団体の中には、政治資金の流れの中に介在するだけで活動の実態がほとんどないものも多数ある。西松建設の設立した政治団体が全く実体がないダミーと言えるのかは、微妙なところだ。
もちろん、政治資金の流れの透明性を高めるという政治資金規正法の目的から考えると、実質的な拠出者も収支報告書に記載して公表するのが望ましいことは確かだが、政治資金の規正は、ヤミ献金をなくし、収入の総額を正確に開示することを中心に行われてきたのが現実で、資金の実質的拠出者の明示の公開とは程遠い段階だ。法律の趣旨を達成するために今後実現していくべきことと、現行法でどこまで義務付けられ、罰則の対象とされているのかということとは別の問題だ。 」
2009年3月26日 (木) 雑談(政治関係) | 固定リンク