運命は自分で変えられるの?井筒和幸
小さい頃、学校の先公が人間の運命は生まれづいた時から決まってるからなぁと偉そうなことを平気でヌカすので、じゃどうすればいいんですか? と聞き返してやったら、何ごとにも逆らわないでやることだと簡単に云うので、じゃ逆らったらどうなるんですか? と言い返すと、
逆らうと十中八九はロクな大人にならないとヘラヘラ笑われながら云われたので、それは困ったなあと悩みながら家に帰って、親にも同じことを問い詰めると同じようなことを云われて、
逆らうと牢屋に入れられるとも云われて、どうでもいいから宿題しなさいと返されて、ますます困ってしまった。こんな宿題をしてる限り、ロクなもんじゃないな、と子供には薄っすら予感は出来た。ならばと、外へ出た。パチンコ屋に入るために出たのではない、パチンコを打っていても何一つ変わらないことも知っていた。橋を越えて隣町に自転車を漕(こ)いだ。太陽はまだ赤くなかった。時間は十分あった。人生に必要なのは金かも知れないが、金など必要な歳でもなかった。誰かに奢(おご)ってもらえばいいと友を探した。友は一人二人で十分だった。公衆電話で呼び出すとすぐにスーパーーカブでやって来た。もちろん無免許だった。人生に免許は必要なかった。国鉄の駅裏に世の中に逆らうようにしてエロ映画館があった。上気して自分を忘れた。よし作ってみるかと思うと、運命が変わり始めた。