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http://tanakanews.com/090203israel.htm
「ダボス会議」(世界経済フォーラム)は毎年1月、スイスのスキーリゾート地であるダボスに、世界の主要な政治家、企業家、政治経済専門の学者や記者、活動家らが集まり、世界経済のゆくえについて話し合う国際会議だ。この会議は1970年代に「欧州経済フォーラム」として設立されたが、2000年に米クリントン大統領が主要閣僚の多くを引き連れて参加して以来、テーマの規模が全世界に拡大し、「ビルダーバーグ会議」(欧米中枢の人々のみによる年次非公開会議)をしのぐ、世界の将来を決める会議として注目されている。(America no longer owns globalization) この会議では、アジアなど新興大国の台頭によって欧米中心の世界体制は終わりつつあるという論調が、すでに2006年ごろから出ていた。たとえば06年のダボス会議に際しては、FT紙のコラムニストが「ダボスで経済大変動と格闘する」と題する、中国やインドなどの台頭やグローバル化が世界経済に与える影響についての分析が出た。翌07年の会議のテーマは、世界の中心が欧米から、BRIC・途上国側に移転していることを意味する「覇権バランスの移動」(the shifting power equation)だった。(Martin Wolf: Confronting seismic economic shifts in Davos) 今年も1月末のダボス会議では、多極化論や、世界不況への対応策としてBRICや途上国に期待する論調が目立ち、ダボスは多極化に対応する会議として定着した観がある。日本のマスコミが多極化という言葉を使うようになったのは最近だが、ダボス会議の世界では、もはや多極化は、やや陳腐化した話だ。(欧米だけの会議であるがゆえに影響力の低下が感じられるビルダーバーグよりましだが)(The shift in power from West to East) ▼トルコとイスラエルの喧嘩 そう思っていると、今年のダボス会議では、新手の乱闘があった。潘基文・国連事務総長も参加して中東問題を話し合う分科会において、自国の戦争を正当化するイスラエルのペレス大統領と、それを批判するトルコのエルドアン首相が対立し、司会をつとめるワシントンポストのコラムニスト、デビッド・イグナシウス(David Ignatius)がペレスの側についてエルドアンの発言を制したため、エルドアンは怒った。(Spy stuff: Did Mossad try to topple a NATO ally?)(The Online Conversion of David Ignatius) 分科会で講演したペレスは、イスラエルは民主主義を守るためにパレスチナのテロリストと戦っているのに、世界はイスラエルを不当に非難していると、制限時間を大幅に超過して約30分間、大声で怒りの演説を展開した。ペレスより前に10分の時間制限で講演したエルドアンは、ペレスの講演後、イスラエルの戦争犯罪を非難する指摘を行ったが、ペレスが反論して言い合いになり、司会に話を打ち切られた。エルドアンが「イスラエルは人殺しのやり方をよく知っている」と非難すると、ペレスは「イスタンブールに毎晩ミサイルが降ってきたら、君だって同じようにするだろう」とやり返した。(Turkish PM returns to hero's welcome after Gaza row) 昨年末のガザ侵攻以来、トルコでは反イスラエルの世論が高まっており、1月初めには20万人規模のイスラエル非難集会が開かれている。イスラエルに一矢報いたエルドアンは、ダボスから帰国した空港で国民に大歓待を受けた。エルドアンは、ダボスに行く前からイスラエルのガザ侵攻を批判しており、イスラエル政府内では「もうトルコを信用できないので、和平仲裁を頼めない」との指摘も出ている。トルコでは3月に選挙があるため、親イスラエル傾向があるロイター通信などは「選挙対策だろう」とも書いている。(Israeli official: Turkey's role as Mideast mediator has been compromised) トルコは90年前の国父アタチュルクらによる近代国家創建以来、それまでのイスラム教に基づく政治体制を破壊し、欧州型の政教分離された近代国家を作るナショナリズム(トルコ主義)の政治運動が主流だったが、10年ほど前から、イスラム主義に戻るべきだとする運動が勃興し、エルドアンが党首をつとめるAKP(公正発展党)はイスラム色をしだいに強めている(公式にはトルコはまだ政教分離の国是を維持している)。トルコ主義者は軍や法曹界、マスコミなどに多く、最高裁は昨年、AKPが政教分離に違反していると審議したが、トルコ全体としては、中東全域での反米イスラム化の流れを受け、AKP支持者が多い。 この暗闘の中でAKP政権は昨年来、軍人や政界、マスコミのトルコ主義者が「エルゲネコン」(Ergenekon)と呼ばれる「国家内国家」的な秘密結社を組織し、政権転覆のクーデターを画策しているとして、著名人を含む150人以上を摘発してきた。エルゲネコンはイスラエルの軍事諜報機関モサドに支援されていると、イスラム主義者らは主張している。トルコ当局は、トンジャイ・ギュネイ(Tuncay Guney)というユダヤ教のラビ(聖職者)を称する人物が、エルゲネコンを支援するモサド要員だとして取り調べをしている。(彼はラビではないという説もある)(Key testimony handed to defense) トルコ内外では、エルゲネコンの存在そのものを「無根拠な陰謀論」と見る向きがある。だが、イラン革命以来の30年の中東でのイスラム主義運動の拡大の一つとしてトルコで非欧米型国家を目指すイスラム主義が台頭し、既存の主流派だった欧米追随型のトルコ主義勢力との政争になり、イスラム主義を脅威と考えるイスラエルが、守勢に回るトルコ主義勢力を助けていると考えれば、エルゲネコンが存在し、それをモサドが支援してきたとしても不思議ではない。多くの国で、マスコミが欧米型国家運営の一環としての世論形成戦略(プロパガンダ)として成立していることを考えれば、トルコのマスコミで世俗主義が強く、マスコミがエルゲネコンを陰謀論扱いする理由も理解できる。(Is Ergenekon a real threat or imagined ploy?)(Massive Trial in Turkey Provides Look Into 'Deep State') ▼トルコとの対立を煽るイスラエル右派 トルコのイスラム主義系メディアでは、ダボス会議での対立を受け、イスラエルは隠然とトルコに反撃してくると予測している。この懸念は、イスラム主義者より、米英イスラエルの方が敵を「悪者」に仕立てるプロパガンダ戦争の技能がはるかに強い(日本もかつて極悪に仕立てられ、日本人自身が昔の祖国が極悪だったと思い込むという「大成功」をおさめている)ことを考えると、当然の見方である。(Pundits warn of psychological retaliation from Israel) しかし実際には、イスラエルはトルコを敵に回すと「亡国」の危険が強まる。トルコは、中東イスラム世界では有数の国際政治力(仲裁力)を持った国である。他の有力国のうち、エジプトは米国の傀儡で信頼されていない。サウジアラビアは自国の石油利権を守るあまり引っ込み思案すぎる。イランは米イスラエルから敵視され、仲裁力を封じられている。イラクは潰され、あと何年かは復活しない。トルコは唯一、欧米イスラエルとイスラム主義勢力の両方から「身内」とみなされうる。 1月初めには、サウジやエジプトなど中東の親米穏健派諸国と、イランやハマスなど反米イスラム主義勢力とを、エルドアンのトルコ政府が仲裁しうるという記事が、イスラエルの新聞に出た。トルコが仲裁すれば、イスラエルとイランとの戦争も回避できるかもしれなかった。(PM Erdogan is mediating between two competing axes) しかし、ガザ侵攻でイスラエルが戦争犯罪を重ね、トルコの世論が激しいイスラエル敵視に傾き、エルドアンとペレスが喧嘩した今、トルコがイスラエルとイスラム主義勢力とを仲裁できる状況は去りつつある。しかもイスラエルは、政権中枢で好戦派と暗闘する現実派が、米国でのオバマ就任を機に何とか自主停戦にこぎつけてガザから撤退し、ガザ戦争の泥沼に陥って自滅する危機はとりあえず回避しているものの、その後はガザでの戦争犯罪行為が国際的に非難され、イスラエルは政治的に不利になっている。まさにトルコを必要としているときに、イスラエルはトルコと喧嘩している。 この絶妙なタイミングから、この喧嘩を喧伝するのは、イスラエルを支持するふりをして潰そうとする、欧米言論界の「シオニスト右派」であるとも推測できる。ダボス会議前の1月22日には、米国のシオニスト右派系の中東研究所(AIPACが設立したWINEP)の研究員が、右派のウォールストリート・ジャーナル紙に「エルドアンのトルコは、腐敗した宗教政治に陥り、イランやロシアとも結託しており、もはや欧米の仲間ではない」と主張する記事を書いている。これも、シオニスト右派による、米イスラエルを弱めようとする隠れ多極化戦略の宣伝行為に見える。(Is Turkey Still a Western Ally?) ▼ホロコースト懐疑者の破門を解いたバチカン 1月21日のガザ撤退後、イスラエルが悪者にされる事態があちこちで噴出し、イスラエルはじわじわと立場が悪くなっている。イスラエルは、ガザの国連施設をこれ見よがしに空爆したため、国連では怒りが渦巻き、1月22日にガザを調査した国連代表は「イスラエルが戦争犯罪を行ったと思われる証拠は十分にある」と表明し、今のガザを戦前のワルシャワ・ユダヤ人ゲットーにたとえた。イスラエルが劣化ウラン弾や白リン弾を使用する犯罪行為を行ったとの指摘も出ている。国連を怒らせるのは、イスラエルの以前からの自滅行為である。(Falk: Enough evidence of Israeli war crimes)(「世界に嫌われたいイスラエル」) 米国政府中枢でも、国連大使のスーザン・ライスが「イスラエルは戦争犯罪容疑について内部調査すべきだ」と表明した。私が見るところ、ブレジンスキー、オルブライトの流れを汲む彼女は、オバマ政権内の隠れ多極化勢力であり、今後、彼女は国連内のBRIC・途上国勢力(非米同盟)と連携し、オバマ政権内の親イスラエル勢力と対立する可能性がある。(この手の対立は演出なのだが、わかりやすい構図なので喧伝され、日本のマスコミも後追いするかもしれない)(US: Israel must probe war crimes)(「オバマの多極型世界政府案」(スーザン・ライスについて言及)) スペインでは、イスラエルが2002年に行ったガザでの攻撃で、ハマス幹部のほかに14人の市民(うち9人は子供)が殺された事件で、パレスチナ人の提訴に基づき、イスラエル軍幹部を戦犯容疑で起訴する準備が行われたものの、イスラエル政府などが、おそらく米国経由でスペイン政府に圧力をかけ、この裁判を棚上げさせた。 地中海圏に属し、イスラム世界との関係を重視するスペインは、以前からパレスチナ和平や、イスラム教世界とキリスト教世界の和合に積極的である。今回の裁判の件は、過去の戦争を題材にイスラエルが悪者にされ得ることを示し、しかもイスラエルが横やりを入れて自国の悪事が暴かれそうな裁判を潰すという、多くの人が「やっぱりね」と思って反ユダヤ意識を強めそうな話までついており、今後の流れを示唆している。(Spanish FM: We'll act to prevent war crimes probes against Israel) ローマのカトリック教会(バチカン)も、イスラエルが弱体化するどさくさ紛れに、かねてからやりたかったことを実行している。バチカン(ローマ教皇)は1月24日、ホロコーストの「史実性」に疑問を表明する説話(「ナチスが殺したユダヤ人は600万人よりずっと少ない。せいぜい30万人だ」などの言説)を行ったため1988年に破門した英国の4人の司教に対し、破門を解除し、再びカトリック教会に受け入れると発表した。4人に対する破門解除の構想は以前からあり、ユダヤ人組織から強い反対を受けていた。(Pope rehabilitates holocaust-denying bishop) ▼反ユダヤ感情の噴出 ホロコーストに関しては、スウェーデン北部の町リューレオの議会と教会が「ガザでイスラエルによって殺された人々のことを思うと、複雑な気持ちにならずにホロコーストの惨事を記念する行事を行うことはできない」という理由から、1月27日のホロコースト記念日の行事(ろうそく点火)をとりやめた。この件を報じた記事の末尾には「こら、反ユダヤ主義者め。異教徒は、ユダヤ人に疑問を持つな」という「選民ラビ」と称する読者による、反ユダヤ的な皮肉のコメントがついている。(Swedish city cancels Holocaust event) ドイツでは「ドイツ人がユダヤ人を十分に尊敬しなくなった」「反ユダヤ思想の取り締まりが足りない」という理由をつけて、1月27日のホロコースト記念日の行事に、ユダヤ人組織の代表が、抗議の意味で欠席するという事態が起きた。多くの人が「ガザであんな人殺しをやったのだから、尊敬されるはずがない」と言いたいだろうが、そんな風に言うと「反ユダヤ思想」のレッテルを張られるのが、今の世界の実状だ。(Jewish Leaders Boycott German Holocaust Memorial Ceremony) 多くのユダヤ人組織では、右派勢力が強い。イスラエル右派は、世界の人々の反ユダヤ感情を煽るような傲慢なことを意図的にやるのが特徴だ。イスラエル右派に牛耳られていた米国が隆々としていた従来は、右派がどんなに傲慢に振る舞おうと、人々は黙って頭を下げていたが、米国が覇権国の座からずり落ちていく今後は、この傲慢さは自滅につながる。私は、表層しか見ない傾向が強い日本人には決して真似できないユダヤ人のラディカル(根本的)な思考方法を尊敬しているだけに、この自滅傾向に対して警告を発した方が良いと思っていろいろ書いてきた。(「イスラエル市民運動のラディカルさ」) 国連のIAEA(国際原子力機関)も、前々から言いたかったことを、この機会に言い出した。IAEAのエルバラダイ事務局長は、イスラエルが07年9月にシリアの施設を核兵器開発施設であるとして空爆した問題に関して「イスラエルは、空爆する前にIAEAに問題を持ち込むべきだった。あの空爆は戦争犯罪だ」と、初めてこの件でイスラエルを正面から非難した。もともと、イスラエルが空爆したのが核施設だったという根拠は非常に希薄であったが、国際政治の力関係上、これまでIAEAはイスラエルを強く非難できなかった。(Elbaradei: Israel violated international law in Syria) 中東では「イスラエルがイラク北部自国に併合しようとしている」という説が流布している。イラク北部のクルド人は以前からイスラエルのモサドに支援されており、イスラエル系のクルド人はイラク北部でさかんに土地を購入し、米国撤退後もイラク北部を親イスラエルの地域として維持しようとしているという説だ。ユダヤ人は「バビロン捕囚」の歴史があり、イラクにはユダヤ人関係の史跡(ユダヤ人指導者たちの墓)がいくつか存在するが、そこを拠点にイスラエルによるイラク占領が行われるとの見方もある。(Israel hopes to colonize parts of Iraq as `Greater Israel') イスラエルの今の力から見て、これらが実行される可能性は低いが、たとえ実現しない無根拠な話でも、このような言説が飛び交うだけで、イラクや周辺国の人々の反イスラエル感情は高まり、その分、イスラエルとイスラム世界が和解できる可能性が低くなる。 ▼パレスチナ国家を作らないとイスラエルは終わり 米国のカーター元大統領は最近「イスラエルと仲の良いパレスチナ国家を創設しない限り、イスラエルは破綻(catastrophe)に直面する」と述べた。パレスチナ国家を独立させ、イスラエルを含むパレスチナ地域においてユダヤ人とアラブ人を分離せずにいると、パレスチナ全体でのアラブ人の人口がユダヤ人より多くなり、民主主義の原理に基づいて今のユダヤ人国家が消滅する事態になりかねない、とカーターは警告している。この警告の背景には、親イスラエルのパレスチナ国家の建設がどんどん困難になっている現状がある。(Israel to face 'catastrophe' without Palestinian state, says Jimmy Carter) 最近、リビアの最高指導者カダフィも、カーターと同じ指摘を、反対側の立場から表明した。カダフィはヘラルド・トリビューン紙への寄稿記事で「中東では(イスラエル建国まで)長いこと、ユダヤ教徒とイスラム教徒とが仲良く共存してきたのだから、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家を別々に作る必要はない」「今さらパレスチナ人国家を作っても、それは反イスラエルの国になってしまい、イスラエルにとって脅威が増えるだけだ」「イスラエルには、すでにいくつかのアラブ系政党があるのだから、これらを占領地のパレスチナ人をも代表する政党として認めれば良いだけの話だ」と書いている。(Mideast's one-state solution By Muammar Qaddafi) カダフィの提案が実行されると、イスラエルではいずれ、ユダヤ人よりずっと出生率が高いパレスチナ人のアラブ系政党が与党になる。その後開く議会で、国名をイスラエルからパレスチナに、公用語をヘブライ語からアラビア語に、国旗をダビデの星からアラブの三色旗(もしくは緑色のイスラム旗)に変えれば、平和裏にイスラエルは消滅する。この変更に不満なユダヤ系国民は欧米に移住すればよい、というのがカダフィの言いたいことである。 こう考えると、米ブッシュ前政権が掲げた「中東民主化」の戦略が、実はイスラエルにとって潜在的な脅威だったことが、今さらのように見えてくる。イスラエルは窮地に陥るほど、米政界を牛耳ろうと頑張り、オバマ政権がやろうとする中東和平策を次々と壊していくだろう。すでにイスラエルの極右政治家であるアビグドル・リーバーマンは「オバマ政権の中東和平策が成功する可能性は全くない」と言い切っている。イスラエルでは2月10日に選挙を控えているが、ガザ戦争によって極右が強くなり、選挙戦で最も人気があるのはリーバーマンだと報じられている。(Lieberman: No Chance for Obama Envoy to Succeed)(Lieberman Gained Most From War, Surveys Say) |