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12月11日2時1分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081211-00000501-san-soci
師走に入ってからの雇用不安が派遣社員だけでなく、大企業の正社員にも押し寄せてきた。ソニーが、国内外で正社員約8000人を含む約1万6000人を削減することを決めるなど、多くのサラリーマンにとっても人ごとではない事態になってきた。突然職を奪われた場合、どう生きればよいのか。過去に失職し、現在充実した第二の人生を歩んでいる人たちは「逆境を知り強くなった」「あなたの才能を求めている企業は必ずある」と、最後まであきらめずに前向きに生きるよう呼びかけている。 (蕎麦谷里志)
「朝出勤してロイター通信の配信で破綻(はたん)を知った。長男はまだ1歳。将来への不安で目の前が真っ暗になった」
北海道拓殖銀行の元行員で、現在はハーゲンダッツジャパンの後藤茂治さん(41)は拓銀が破綻した日をそう振り返る。
北海道旭川市で生まれ育った後藤さんは、北大農学部の大学院を修了、海外志向が強かったことから海外に支店を持つ拓銀を選んだ。しかし、入社6年目の冬に突然の破綻。ウォール街を闊歩(かっぽ)する夢は崩れた。
「また新しい夢を持とう」。絶望の中、妻、広美さん(43)に励まされ、改めて自分を見つめ直した。そして、「本当にやりたいことをやろう」と金融業界に見切りをつけ、学生時代にコメの品種改良の研究をしていたことから、食品業界に進むことを決意。会社の残務処理をしながら、就職活動をし、7社目に受けたハーゲンダッツに入社が決まった。
商品開発部門に配属されると、後藤さんは仕事に没頭した。そして手がけたのがあずき味のアイス。米国本社に日本の味を認めてもらうまで5年、150回以上も試作品をつくる長丁場だった。
「拓銀の影響で深刻な不況に陥った北海道に、少しでも元気を与えるため、北海道産あずきを使った商品を作りたかった」という新商品は、一時は生産が追いつかずに販売を中止するほどのヒット商品となった。
「あの挫折があって強くなれた。だから今は何があっても頑張れる。毎日が充実しています」と話す。
「サラリーマンは十分やった」と、趣味と実益を兼ねた仕事を始めた人もいる。千葉県館山市で妻、八穂子さん(59)とペンション「きやっせ」を切り盛りする谷川勝さん(64)は、山一証券の引受検査部長にまで上り詰めた敏腕証券マンだった。
山一の廃業は、青天の霹靂(へきれき)だった。「社員は入社したら定年まで勤め上げ、会社も最後まで責任を持つのが当たり前の時代だった。愛社精神も強く、みんな肩を落としていた。不安よりも寂しさが大きかった」と振り返る。廃業当時53歳。末っ子の長男はまだ高校生だった。
釣りが趣味だった谷川さんは、定年後は地方に居を移し、悠々自適の生活を送ろうと考えていた。「あと7年で定年なら、転職するよりも好きなことをやらせてほしい」。予定より早い定年と割り切り、家族を説得。海が近い館山で土地を見つけ、勉強会に参加するなどして、2年後にペンションを開いた。
深夜まで客の話し相手となり、朝は朝食の準備に追われる。慣れないことばかりで、体重は1年で56キロから40キロ台にまで落ちた。
「それでも今は慣れて、思い描いていた生活ができて満足してます」。収入は3分の1まで減り、夏には休みもないが、それ以外の平日はほとんどが自由時間。好きな釣りや、ゴミ拾いなど地域の活動を精力的に行っているという。
2人に共通するのは、厳しい現実を前に決して悲観せず、前向きに次の目標を持って行動したことだ。
「目標や夢を強く持ち続けることが大事。大きな挫折を乗り越えた自信は、次の世界でも必ず生きる」と後藤さん。金融マンとしてはかなわなかった海外での仕事も、現在はアイスの研究者として、米国の本社や工場に出向く日々だ。
谷川さんも「自分の才能を評価し、求めている会社や仕事は必ずある。悲観せずに頑張ってほしい」と、世界的な景気の減速で、この年末、雇用不安に陥った人へエールを送る。
山一を去った同僚の多くは金融業界に残ったが、中には起業したり、メーカーや庭師、便利屋になったりと、それぞれの道で活躍しているという。
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【主な正社員削減の例】
ソニー 平成21年度末までに約8000人を削減
奥村組 35歳以上を対象に早期退職者を募集し、臨時従業員を含む622人を削減
西友 35歳以上を対象に早期退職者を募集し、約350人を削減
レナウン 原則40歳以上を対象に早期退職者を募集し、21年1月末までに300人を削減
沖電気工業 管理職を対象に早期退職者を募集し、21年2月20日までに300人程度を削減
大京 40歳以上を対象に早期退職者を募集し、21年2月末までに450人を削減
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■雇用問題に関する主な相談窓口
・日本労働組合総連合会(連合) 0120・154052
・全国労働組合総連合(全労連) 0120・378060
・日本労働弁護団 03・3251・5363
(火、木曜の15時〜18時)
・派遣ユニオン 03・5371・8808
※全国の労働基準監督署、総合労働相談窓口、ハローワークでも相談は受け付けている