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●NHKに視聴率を奪われた民放の堕落
(会員制経済情報誌『現代産業情報』11月15日号より転載)
NHKテレビが好調である。
ビデオリサーチの調査によると、今年度関東地区の上半期、ゴールデンタイム
(午後7時〜10時)で13.6%の視聴率を視聴率を稼ぎ、民放キー局を抜いてト
ップとなった。
NHKがゴールデンタイムで首位に立つのは初めてだが、週間視聴率の報道部
門で、「ニュース7」をはじめベスト10のうち9番組がNHKであるところに
躍進の秘密がある。
つまり、NHKが時代と真面目に向かい合い、意欲を持って番組作りをしてい
る姿勢が評価されている。
NHKは近年、経営問題や管理体制の不備を批判されることが多かったが、そ
の危機意識が制作現場をいい形で動かしたともいえよう。
それは同時に、民放の堕落を証明している。
11月12日のゴールデンタイムに、NHKは「ニュース7」「クローズアップ現
代」「ためしてガッテン」「ニュースウォッチ9」「その時歴史が動いた キ
ング牧師」の7番組を放映した。
同時間帯に日本テレビは、「笑ってコラえて」と「日本史サスペンス劇場 悲
劇の女スペシャル」の2番組を流し、フジテレビは、お笑いとクイズ、テレビ
朝日は、クイズとドラマと「報道ステーション」、テレビ東京は、旅番組だっ
た。
報道に回帰しているTBSは、9時から関口宏の「水曜ノンフィクション」、
10時から「久米宏のテレビってヤツは?」で“健闘”しているものの、内容も
含めたNHKの分厚さには敵わない。
結局、テレビ局の人間は、電通、博報堂とのタイアップによる電波の独占で、
高収入を維持したまま、意識も感覚も高度経済成長期のままである。
頭の中ではバブル崩壊の不況も、今回の世界恐慌も理解できているつもりだが、
組織も会社も安泰だから、危機感がない。
孫正義や堀江貴文や三木谷浩史といった野心家が、だらけた意識のまま株価が
安く、改革もできないテレビ局を狙うのは当然で、困った時だけ「電波の公共
性」を口にする経営陣は、噴飯ものだった。
自分たちが繁栄に甘え、危機感がないから、作る番組は、クイズにお笑いに旅
番組にバラエティ。
簡単に作れて制作費が安い。島田伸助、ビートたけし、和田アキ子、久本雅美
といった人気者のスケジュールを押さえてから、番組を作るのだという。
おそらく彼らは、国民がバカだと思っている。モノを考える能力がなく、その
気もないから、「お笑い番組」を見せておけばいいと考えている。
世相を切るのは、島田や和田ら瞬発力のある芸人で十分、真面目に真相を追及、
真実を伝えることは、コストにあわないと考えている。
視聴者は、しょせんタダで見ているのだからと、視線は常にスポンサーに向け
られている。
従がって、CMは小刻みに何度でも入るし、重要な場面にさしかかるとあえて
CMを入れ、緊張を削ぐようなことを平気でする。
トヨタもホンダもソニーも、テレビ局のように規制に守られ、競争のない世界
にはいない。
ことに今回の不況は、安泰と思われた大企業まで揺さぶっている。
そんなシビアな現実に直面している大企業は、国民を愚弄するような番組を作
り続ける民放を既に見放しており、だからCMの本数を減らしている。
代わってCMが目立つのは、保険のアリコ、携帯のソフトバンク、増毛のリー
ブ21、化粧品の再春館製薬などである。
アリコが国有化されたAIG傘下であることはいうまでもなく、ソフトバンク
は経営危機を迎えており、リーブ21や再春館製薬は、製品や販売方法の“怪し
さ”が指摘されている。
意識ある国民は、ゴールデンタイムに民放を見ない。それどころか、あまりの
くだらなさに怒りを覚えている。
それを意識していない民放の経営陣は、三木谷氏でなくともいいから、意欲的
な他産業に渡すか、免許を返上した方がいい。
そんな衰退が予想される民放をめぐって、新たな難問が生じた。
前経団連会長でトヨタの奥田取締役相談役が、首相官邸で開かれた「厚生労働
行政のあり方に関する懇談会」で、テレビの厚労省批判に切れた。
「私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと(思う)、スポンサーをひく
とか」と発言した。
財界総理と言われ、時の政権に深く関与した人物の“妄言”には、周囲も慌て
たようだ。
そして、そんな番組にはまともな大企業がスポンサーにならないかのような発
言は、波紋を広げるだろう。
もちろん、スポンサーには決定的に弱い民放は、こんな重大な問題さえ報道で
きず、更に衰退していくのかもしれない。
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