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http://www.ashisuto.co.jp/corporate/totten/column/1187725_629.html
いま、世界は大きな転換期にある。私はこれまで何年にもわたって、カジノ経済や、お金がお金をうむマネー資本主義がいかに狂っているかを説いてきた。社会において、大部分の人は個人の体力や能力を使ってさまざまな職に就き、その労働によって得た報酬は生活のために消費されるか、または自分や家族が将来的に使うために貯蓄にまわされている。一方で、ごく一部の一握りの人は預金を働かせる、つまり投資をしたり株を買ってその配当を手にしている。しかし、お金がお金を生むことはありえない。このように一部の金持ちにお金が集中することで、社会の富の格差が広がり、多くの貧しい人々が増える結果となってしまうのだ。
日本でもバブルの華やかな頃、労働で収入を得ている人でもバブルのおこぼれをもらおうとばかりに「財テク」が流行した。財テクとは、博打をかっこよく言い換えた呼び名にすぎない。2005年に廃止された高額納税者リストでトップになった投資会社運用部長の年収は約100億円だった。ホリエモンが時代の寵児となり、今その正体が明らかになったサブプライムローンを売りさばいていたウォール街では、社員に数千万円、CEOには数十億円のボーナスが配られた。しかしはじけなかったバブルはない。リーマン・ブラザーズの負債額は64兆円、米国政府がファニーメイやAIG保険の救済につぎ込んだ税金は90兆円。世界経済の失速は不可避だろう。
原油価格が数年前の水準に下落すると予測するエコノミストもいるが、長期的にはかならず今以上の水準にもどると私はみている。なぜなら、現代の経済活動を支える石油の生産量は、今でなければ近い将来、必ずピークになるからだ。
石油減耗によりエネルギーが不足する社会に備えて、余裕のあるうちに準備をするべきだというのが私の持論だが、それを説得するのがいかに難しいかを日々実感している。私の経営する会社ではまず社員に家庭菜園をすすめ、次のプロジェクトとして日曜大工や洋裁の教室をしてはどうかと提案したが、社員の反応はさっぱりだった。
安くて豊富な石油が減耗した社会で大切になるのは「すでにあるものを再利用すること」である。米国は今ではエネルギーを浪費する国に堕落したが、1970年代に石油危機に直面した時、米国民はさまざまな対策を講じた。エネルギー効率を上げるために温水器にカバーをつけたり、自分で金物屋で道具を買って住宅に手を加えたり、当たり前のようだが寒ければ上着をもう一枚着た。新しい住宅建築の仕事がなくなった建設業者は、修理やリフォームを熱心におこなった。しかし80年代、石油価格が下落すると米国人はこの習慣をすぐに捨ててしまった。
金融恐慌だけでなく、きたるエネルギー危機に日本人がすべきことは、昭和時代には当たり前だった、自分でものを直して使う日常生活に戻ることである。そのために必要なのが拝金主義、消費社会との惜別である。はるか昔から、人はものを作り、直して使ってきた。新しいエネルギーや技術利用がそれまでに提供されればいうことはないが、安くて豊富なエネルギーに支えられた工業主義社会の終焉に際して、スキルを持ち、再利用をする習慣を身につけておくことは価値があると思うのだ。
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