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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008101802000236.html
振り込め詐欺 『息子が病気』に動揺 疑いつつも術中に
2008年10月18日 夕刊
振り込め詐欺に遭う人の気が知れない−。そう思う人は多いだろう。東京・多摩地区の製材所で働く高齢男性と妻もそうだったが、先月、自宅への電話の声を息子と信じ込み、現金百万円をだまし取られた。なぜ犯人の術中にはまってしまったのか。被害の一部始終を夫婦が明かした。 (池田悌一)
九月二十九日の夕方だった。夫(71)が仕事から帰宅すると、電話が鳴った。妻(67)が受話器を取った。
「正志だよお。風邪ひいちゃってよお。熱も少しあるんだよ」
隣の市に住む会社員の次男正志さん(38)=仮名=に似た口調だった。ただ、正志さんよりトーンは低い。妻は違和感を覚えたものの「熱のせいかな」と納得してしまった。
「携帯をなくして新しいのに替えたんで、番号を控えて。また明日の昼に電話する」。男はそれだけ言うと、電話を切った。
息子の具合が悪いのでは−。妻は心配を募らせた。「水枕を持って行きたいな」。そう考えつつ、眠れぬ夜を過ごした。
明くる日の正午前、妻が昼食の準備をしていると、予告通り、また電話があった。
「株で借金しちゃった…。借りた百七十万円を返さなきゃ四百万円になっちゃう。人から七十万円だけは借りられることになったけど、百万円足りない。指定の銀行口座に二時までに払い込んで」
家には息子から預かっている現金がある。「正志の百万円でいいのか」。妻は思わず、その存在を明かしてしまったが、一方的な言い分に「自分で取りに来なさい」と怒鳴りつけた。しかし男は冷静な口調で「できない」「会社を休めない」と繰り返すばかり。
昼休みで帰宅した夫が代わった。「なんでおまえの口座でないんだ」。そう疑問を投げかけると、「相手に直接振り込んでほしいんだ」。結局、夫は午後の仕事を休み、百万円を入金しに行った。
電話は次の日の正午にもあった。さらに七十万円を求める内容だった。妻が情けなさで号泣しているところへ夫が帰宅。妻には内緒で、前日と同じ信用金庫に向かった。
夫婦が詐欺に気付くのは、銀行支店長の機転がきっかけだった。窓口で振込用紙を受け取った夫は、女性行員に「昨日の振込用紙を見ながら書きます」と言った。その声を耳にした支店長が、「おかしい」と制止。夫が正志さんの本来の携帯番号に電話し、すべて巧妙に仕組まれていたことが分かった。
妻は詐欺と分かった直後から、原因不明の頭痛に悩まされ、病院通いを続けているという。「取りに来ないと強弁している時点で、怪しむべきだった」。夫妻は今も後悔し、自問を続けている。