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08年3月26日 中日新聞
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http://www.chunichi.co.jp/article/feature/yui_no_kokoro/list/200803/CK2008032602098545.html
稲葉は最近、ある男性の死にショックを受けた。こもれび荘からわずか数十メートルの神田川の川べりでその老人がなくなったのは真冬。稲葉が知ったのは夏だった。
「こんなに近くなのに気がつくことさえ、できなかった」
路上生活者の相談は増え、電話での問い合わせは全国から。一方で、すぐ足元に目が届かない現実。いら立ちは募る。
「引っ込み思案な人や交わるのが駄目な人は、つなぎ役が必要なのに、目の前に現れる人に追われてしまう」と宇鉄はため息をつく。
誰でも助けてくれる−そんな幻想をもやいに抱いて来る人は、後を絶たない。
「この方の相談、お願いします!」
こもれび荘でのスタッフ会議の最中、突然、ドアが開き、通り掛かりの20代の女性が路上生活者の男性の手を引いて入ってきた。
「おれは中に入らない! おれは別にこのままでいいんだ!」
男性がいら立たしそうに言い放ち、立ち去るのを見て、女性は泣きだした。事情を聴くと、路上の男性を見て、矢も盾もたまらず連れてきた、という。
「最近、こういうことが多いんですよ」。女性をなだめ、見送った後、スタッフは「人と人がつながるには時間がかかる。もやいが何でもできるなんて、あり得ないんだよね」と疲れた顔で首を振った。
稲葉は最近、親しい住職に「昔からお寺がやっていたことを、もやいがやっている」と言われ、あらためて思った。
「つながりづくりは本来、社会の役割。もやいだけではなく、社会全体で考えなきゃいけない」
もともとは地域の共同体にあった場所。そんな場所が東京のような大都会に戻るのか。「あきらめたくない」。もやいの誰もが、思っている。