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人間の生存権を剥奪する非情な「市場原理主義」におさらばしよう
植草さんが「市場原理主義に代わるもの」 と題して、実にわかりやすく、小泉・竹中両氏
が敷いた弱肉強食論理一辺倒の政策本質を書いている。その中に下記の説明があったので引用させていただく。
「小泉政権が強引に日本社会に浸透させた「効率至上主義」=「市場原理主義」=「新自由主義」=「弱肉強食奨励」=「格差拡大容認」=「弱者切り捨て」の政策路線に対する根本的な見直しが求められている」
私は今、森田実氏の「崩壊前夜・日本の危機」(日本文芸社)を読み終えたばかりだが、森田氏は市場原理主義と訣別せよと、暴走した小泉構造改革をきびしく糾弾し、その非人間的な考え方から離脱して、修正資本主義に切り替えるべきだと、一貫して主張している。小沢民主党に対する捉えかたは、植草さんと森田実氏では、若干ニュアンスの違いはあるものの、米国に言われるがままにやった、弱肉強食の小泉政権、及びその踏襲(とうしゅう)政権への批判はほとんど同じである。両者とも、市場原理主義の過剰が招いた国民生活のクライシスをよく認識し、資本主義の暴走を食い止めて、国民中心の政策に切り替えるべしという視点では一致している。
この本で森田氏は言う。暴走する資本主義から「中庸の資本主義」(修正資本主義)に立ち返れと。金融破綻でパックス・アメリカーナが終焉した今、日米同盟関係を再検討する議論を起こすべきであり、新自由主義か、修正資本主義かの議論も避けるべきではないと。「修正資本主義」については管理人のとらえ方をあとで説明する。森田実氏の乾坤一擲の憂国心情溢れる著書・「崩壊前夜・日本の危機」については、森田氏のサイトに渡邊良明氏の優れた書評があるので、そちらをご覧いただきたい。
しかし、私が今、植草さんと関連して言いたいことは、この森田氏の著書のエピローグについてである。ここには森田氏の姿がテレビから消えたことについて詳しくその経緯が書かれている。森田実氏は植草さんと同様に、2001年当時から、小泉政権が弱者切り捨て、福祉切捨て、地域切捨ての政策構造を持つことを見抜いており、小泉政権発足時から、この政権の危険性、方向性の間違いを指弾し続けていた。小泉純一郎氏が2005年に、郵政民営化のために衆議院を解散した翌日の9月9日、フジテレビの「めざましテレビ」のコーナーで、森田氏は「小泉首相は憲法違反をした」と発言した。
その内容であるが、憲法第41条は、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関であると規定している。その国会が郵政民営化を否決したのに内閣総理大臣が納得できないと言って、国民投票に代わる衆議院選挙で決着を付けようとした行為は、内閣総理大臣が従うべき国会の決定を踏みにじり、自分を国会の上位に置いたことになり、これは明らかな憲法違反である、小泉首相は直ちに責任を取るべきだと森田氏は言ったそうである。この話は当時、少し話題になったから私も覚えている。「森田さん、よくぞ言ってくれた!」と快哉を叫ぶ思いだった。
ところが、この出演を契機に森田氏はフジテレビ生番組の出演依頼がぴったりと止まった。その後、何日かしてTBSのお昼の芸能番組からも出演依頼があり、森田氏は静岡7区(当時、城内実さんと片山さつき氏の大激戦があった区)にかかわることについて、控えめに語った。その日の夕方、官邸から政治部記者が二人駆けつけて会議が持たれ、その後、テレビ・ディレクターが、「今後は森田に依頼するな」と、森田氏に知らせてくれたアシスタント・ディレクターに命令したそうである。森田氏はここできわめて控えめにこう書いてある。「その記者が官邸から何かを言われたのだと思います」と。
しかし、この圧力は明らかに官邸主導の中枢から、すなわち当時の清和政策研究会筋から出たものに決まっている。この一件以降、森田氏はいっさい東京のテレビには出演できなくなった。森田氏に限らず、これ以降、小泉政権に批判的な識者はテレビから姿を消した。森田氏はこれを、1950年のレッド・パージ(赤狩り)のようなことが起きたと言っている。この本のエピローグはまだ物凄い。森田氏はその後も、自民党の圧力を事細かに書いている。小渕内閣の時、森田氏は新井将敬氏の自殺に関連して、「ザ・ウィーク」で自民党は冷たすぎるとテレビで言ったら、それに共感した人たちから自民党本部に抗議が殺到、これに怒った自民党大幹部はテレビ局に抗議をし、この番組は結果的につぶれたそうである。
森田氏はアメリカ保険業界が数千億円の資金を投入し、電通を使って「民営化は善、官営は悪だ」という一大キャンペーンを張った事実を、ウォール・ストリート筋の話として暴いている。額もあとで森田氏がしらべたら「兆」の桁であることがわかったそうだ。この辺の仔細は本を読んでいただきたい。実に驚くべきことが書かれている。これは私の一存で言うが、あの当時、古館一郎氏やみのもんた氏等、郵政民営化に国民を誘導し、司会者権限で反対意見を潰した者たちは国賊級である。国民はいつまでも彼らをのさばらせない方がいい。売国に手を貸した者を人気者にしているわけだから、国民の民度も問題であろう。彼らを無批判に称揚する連中はB層と言われても仕方がない。今のテレビというものは基本的に愚民化公器である。それを自覚して自分の頭で考えて欲しい。
森田氏は城内実さんに大きな期待を寄せているようだ。小泉政権が何であったかを、わかりやすく知りたい方は、「崩壊前夜・日本の危機」を是非読んでいただきたいと思う。
最後に、修正資本主義とは、資本主義制度の抱えるさまざまな問題、貧困、失業、格差など、国民生活や企業に生じる種々のネガティブな矛盾を、自己修正することによって矯正し、良い方向に持っていくこと。ケインズ経済学のマクロ政策などもこれに該当する。マルクス経済学的には夜警国家から福祉国家への反転作用という考え方もできる。
小泉・竹中構造改革路線とは、その意味で言えば典型的な夜警国家造りであり、それはフリードマン・モデルに忠実に従ったものだ。だからこそ、このネオリベ・モデルを早急に否定し、人間に優しい資本主義体制に作り変える必要がある。経済モデルはいろいろとあると思うが、新自由主義とは、日本のみならず、どこの国でも採用してはならないモデルである。あまりにも非人間的である。これを続ければ国が崩壊する。小泉・竹中路線が敷いた経済モデルは、日本経済が選んではならない進化の系統樹だった。従って、今後はアメリカの影響下から脱した自立自尊型の日本経済を構築していく必要を感じる。
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