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(回答先: 第86回 安倍外交“神話”の試金石 北朝鮮の「核」と「拉致」 (2006/10/13) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 09 日 19:44:33)
第87回 イラク・北朝鮮問題で露呈したアメリカ覇権主義の幻影 (2006/10/25)
http://web.archive.org/web/20061126033419/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/
2006年10月25日
一昨日、米ABCテレビのブッシュ・インタビューを見た。ブッシュ大統領が急に老けこんだ様子だったので、びっくりした。
イラクに新政府ができて、米軍と共同作戦ができるようになった。これから米軍の負担が軽くなり、犠牲者の数も減るといっていたのに、イラク情勢は悪くなるばかりではないかと記者が突っ込むのに対して、ブッシュ大統領はうまく切り返すことができない。言葉がスムーズに出てこない。
イラク問題がブッシュ政権の命取りに
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かつてのブッシュ大統領はこうではなかった。その内容が必ずしも真実でなかったとしても、少なくとも、熱のこもった自信たっぷりの言葉が次々とブッシュ大統領の口をついて出た。表情が豊かで、オーバーなジェスチャーまじりで、いかにも大衆受けしそうだった。なるほど現代の政治家に何より必要なのは、テレビ向けの弁舌能力なのだということがよくわかった。
ところが、一昨日のインタビューでは、そのころの元気たっぷりの様子がまるでうかがえなかった。一言でいえば、「冴えない」の一語につきた。
目前に迫っている米中間選挙は、共和党不利、民主党有利の観測しきりである。
その予測の最大の背景になっているのが、イラク情勢である。犠牲者が増えるばかりで(イラク戦争の米側戦死者はすでに今年6月時点で2500人を超えている)、事態が好転するきざしはさっぱり見えてこない。
ブッシュ大統領のイラク戦争政策が誤った情報(イラクの大量破壊兵器保有)の上に立てられた誤った決断であったとする見方は、もはや米マスコミ界では定説となっているといってよい。
next: なぜ日本では小泉イラク派兵問題が問われないのか
http://web.archive.org/web/20061126033419/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/index1.html
なぜ日本では小泉イラク派兵問題が問われないのか
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ブッシュ大統領のイラク政策が誤りなら、それに軽々にコミットしてイラクに派兵を行った小泉前首相の政策も、むろん誤りである。
アメリカではブッシュ大統領のイラク政策の誤りを批判する声が、あっちでもこっちでも渦を巻いているというのに、なぜ日本では、小泉イラク派兵を批判する声がかくも少ないのか。
この問題を問われたときの小泉前首相の答え方はきまっている。
それが誤った情報だったとわかるのはずっと後になってからのことで、当時の日本の政府の決断は、その当時正しいと信じられていた情報に従ってなされた。イラクのフセイン大統領は過去において大量破壊兵器を使用した実績があり、そのときも怪しまれて仕方がない状況証拠がたっぷりあったのに、その疑惑を解く努力を十分にしなかった。だからあのような結果になっても仕方がない、というものだ。
この問題についての安倍政権の見解も、これと同じである。
要するに「そいつはお前を殺そうとしている」というガセネタに従って、殺意なき相手を殺してしまったとしても、相手がかねて札つきの悪者の場合、それは正当防衛になるみたいなこじつけの論理である。
こういう言う抜けが許されるなら、日本の満州事変も正当だったし、泥沼の日中戦争拡大も正当だったし、太平洋戦争開戦も正当だったということになるだろう。
政治はすべて結果責任である。結果において誤りであったものは、どうもっともらしい理屈をつけようと誤りなのである。そして政治家は、結果的に誤っていた決断の責任を必ず取らなければならない。
next: 政治家が次になすべきことは
http://web.archive.org/web/20070206062602/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/index2.html
政治家が次になすべきことは、なぜそのような誤りが生じたのか、その原因を時間をさかのぼって追究し、そのよってきたるところを明らかにすることである。そしてそれが明らかになったら、その責任を追及し、そのような誤りが2度と起こらないように対策を取ることである。
ブッシュ大統領も小泉前首相も、そこが完全に抜け落ちている。2人とも、責任政治家として落第である。
日本は戦争が終わってから、あの戦争の原因追及を全く等閑視してしまったが故に、いまだに歴史認識の問題がさっぱり片付かない。
それと同じことが、日本でもアメリカでも、イラク戦争に関して起きている。
北朝鮮が切る最終カードの行方
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ミサイル発射から核実験へ、次々に冒険主義的瀬戸際政策を取る北朝鮮はいったいどこまでいくのか。
北朝鮮側の代弁者が最近日本の週刊誌に語っているところでは、北朝鮮が切ることができるカードはまだ複数枚あるという。まず、さらなる核実験。次に「朝鮮戦争休戦協定」の破棄。それに次いでは、「国連脱退」だという。
北朝鮮はそこまで考えているのかとビックリした。しかし、客観的に見れば、そんなカードを次々に切っても、誰も北朝鮮に味方しようとする者は出てこないだろう。
北朝鮮の脅しに屈して北朝鮮の側に立とうとする国も全く出てこないにちがいない。北朝鮮が国連を脱退するというなら、大半の国が「やめないで下さい」と引き止めるのではなく、「どうぞ、どうぞ」ということになるのではないか。
next: むしろ、そのような冒険主義的挑戦をつづけている
http://web.archive.org/web/20070206062647/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/index3.html
むしろ、そのような冒険主義的挑戦をつづけていると、中国ないし、アメリカが、北朝鮮をこれ以上放っておくわけにはいかない、と、過激な手段に訴えてでも北朝鮮のおさえこみにかかるのではないか。
どれくらい過激な手段かというと、たとえば、謀略的に北朝鮮の体制転覆をはかる(クーデター)、あるいは暴力的に北朝鮮の核ミサイル能力を破壊してしまう(巡航ミサイルあるいは戦闘爆撃機によるピンポイント先制攻撃)といったことである。
どちらもその可能性は相当にあると思う。北朝鮮はいま、火遊びがすぎて、家を丸焼けにしてしまう寸前の状態だと思う。
今の北朝鮮と重なるかつての日本の姿
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戦争瀬戸際政策に狂奔することで、世界の孤児になりつつある北朝鮮を見ていると、満州事変以後の日本の姿が二重写しになって見えてくる。
満州事変(1931)に次いで上海事変(1932)を起こし、戦争瀬戸際政策をつづける日本はみるみる世界の孤児となっていった。国際連盟がリットン調査団(1932)を派遣して、ある程度の妥協策を提示してくれたのに、日本はそれを拒否して満州国を建国(1932)してしまう。国際連盟がそれを非難すると、日本は国際連盟を脱退して満州を帝国にしてしまう(1933)。
国際連盟を脱退したあとの日本は、同じ世界のきらわれ者、ナチスドイツと組む(1936。日独防共協定)。
あとは盧溝橋事件(1937)を経て、戦争への道をまっしぐらである。
あのころの日本は、世界一の横紙破り国家として、世界から爪はじきに会っていた。
日本が当時、国際社会から、そのような、どうしようもない無法者国家と見られていたなどということは、一般国民はみな知らなかった。
日本人のほとんどが、ケシカランのはむしろ、日本に対してどんどん圧迫を強めてくる米英中などの周辺国家のほうだと思っていたのである。
いまの北朝鮮の人々がそうであるように、あの頃の日本人たちも、自国が世界の他の国からどのように見られているかという客観的認識がまるでなかった。
next: 反米国家の核保有で塗り替わる世界地図
http://web.archive.org/web/20070206033304/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/index4.html
反米国家の核保有で塗り替わる世界地図
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北朝鮮の人々は、全くちがう目で自国を見ている。
講談社で出している「クーリエ・ジャポン」は、海外30カ国、60以上のメディアをチェックして、日本関係のニュースを拾い出してくれるという面白い雑誌だが、その最近号が「北朝鮮の本音『核ドミノ』と『次のシナリオ』」という注目すべき特集を組んでいる。
そのうちの一本が、香港で出ているメルマガ、「アジアタイムズ・オンライン」に出た北朝鮮の裏スポークスマンといわれる金明哲(キム・ヨンチョル)の分析である。
それによると、金正日は、核実験の成功によって、「朝鮮半島史上、最も偉大な英雄になった」という。なぜなら、それによって北朝鮮は、米国本土を攻撃できるような軍備をはじめて持つことができたからだ。
そして、「次の戦争は、米国戦争、あるいは朝米戦争として後世に語り継がれることになるだろう」という。次の戦争の主戦場は米国になり、「摩天楼がそびえる都市が一瞬にして地獄絵に変わる」、という。
また、北朝鮮は、日本、韓国、オーストラリアが核武装することに反対しないどころか、むしろ望んでいるという。
アメリカの同盟国が自ら核武装することになると、アメリカの核の傘の外に出ることになる。それによってアメリカの同盟国が、脱アメリカ勢力になる。それは北朝鮮にとって望ましいことだというのだ。
また、北朝鮮が核を持ったことで、米露を中心とする核不拡散体制は終わりを告げたともいう。それによって、これから世界の構図が大きく変わってくるだろうという。
これまでは、アメリカとアメリカと友好関係にある国だけが核クラブを作っていた。しかしこれからは、反米国家で核を持つ国がふえるだろう、という。多分、イランのような国を念頭に置いているのだろう。
しかし、もちろん、アメリカがそのような新しい世界の構図を望むはずがない。従って反米的な核保有国家が幾つも生まれてくる前に、アメリカはそのような国々を暴力的に叩きつぶしてしまうはずである。
next: 亡国へ導く日本の核武装論議
http://web.archive.org/web/20070206025341/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061025_genei/index5.html
亡国へ導く日本の核武装論議
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最近、日本の政治家の中に、麻生外務大臣、中川政調会長など、日本も核武装是か非かの議論をすべしなどという人が登場しはじめた。
日本に核武装の可能性が本当に出てきたら、その潜在的な国力の大きさ故に、日本は一瞬にして、アメリカの「ナンバーワン・エニミー」に変わってしまうだろう。そしてその場合、本気で日本を叩きつぶそうとするかもしれない。
安倍晋三・岡崎久彦「この国を守る決意」を読んでいたら、こんなくだりがあった。
岡崎 1993-95年の経済交渉では、本当に大変な目に遭いました。日本が潰れるかどうかという交渉でした。
交渉をしているときには、アメリカには『日本と同盟国』などという姿勢は一かけらもなかったのです。日本はもう潰れてもいいというような姿勢でした。
日本人はすぐ忘れますけど、あの時期を覚えていたら覇権国アメリカと協調しないことの恐さはわかるはずです。
北朝鮮がいくら大言壮語しても、日本を潰すなどということはできない。しかし、アメリカはできる。日本にとって本当に恐い国はアメリカなのである。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月 -2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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