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(回答先: 第19回 東京裁判を蒸し返す政治的愚行を繰り返すな! (2005/06/02)⇒同じくたどれず。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 11:12:57)
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第19回 東京裁判を蒸し返す政治的愚行を繰り返すな! (2005/06/02)
http://web.archive.org/web/20051215160734/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/
2005年6月2日
先に政治家は時と場合によっては、前言を翻しても問題はないどころか、それがしばしば必要なことがあるといったが、同じことは、国家についてはいえない。
国家が一度、国際条約などの形で、国際社会全体に対してなした約束ごとの場合は、それを破ることができないのである(破るためには破る手続きが必要だし、破った場合には、その報復として国際社会から加えられるあらゆる仕打ちに耐えることを覚悟しなければならない)。
現代日本にとって重い意味を持つサンフランシスコ講和条約
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現代日本にとって何がいちばん大切な国際条約かといえば、1951年のサンフランシスコ講和条約が筆頭にあげられるだろう。あの講和条約以前、日本は世界の主要な国のほとんどあらゆる国と戦争状態が継続していたのである。あの講和条約によって、はじめて国際社会の一員として認められたのである。といっても、それはサンフランシスコ講和条約にサインした48カ国とだけで、サインしなかった東側の国などとは、その後個別に交渉して平和条約を結ばねばならなかった。いまでも個別平和条約を結べず、唯一今でも法的には戦争状態が継続しているのが北朝鮮である。北朝鮮との交渉が何かにつけてむずかしいのは、これが主たる原因である。
この何より大切なサンフランシスコ講和条約の第11条で、日本は東京裁判の結果をそのまま受け入れて、それに文句を付けないということを約束してしまっている。国際法上、それを今さら引っくり返すことはできないのである。それを引っくり返すというなら、あの戦争の当事国すべてと交渉をし直す必要があるし、もちろん、国際連合からも脱退しなければならない。当然のことながら、常任理事国入りなどという日本の野望は、夢のまた夢ということになる。
next: 第18回の最後のほうで紹介した人民日報の記事で…
http://web.archive.org/web/20050609010326/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/index1.html
第18回の最後のほうで紹介した人民日報の記事で靖国神社参拝問題を、国際正義と人類の道義の問題としているのは、このことを指摘しているのである。東京裁判は、「国際正義と人類の道義」の名の下に行われた裁判だったのである。そしてこのことは、靖国神社参拝問題が「他国が干渉できない内政問題ではない」というくだりにそのままつながっている。つまり、中国は条約のサイン国ではないが、中国の靖国神社参拝批判は、サンフランシスコ講和条約第11条で約束したことを日本がちゃんと履行しているかどうかをチェックすることで、日本が国際信義を守る国かどうかのチェックだから、内政干渉ではない、といっているのである。
話がここまでさかのぼっていくと、日本が中国に論争で勝てる望みは全くない。外務省OBがこう解説してくれた。
「話がそこまでいったら日本の完敗です。サンフランシスコ講和条約第11条に不満があるから、東京裁判のA級戦犯についてだけは留保するなどということは、当時も今も絶対にいえません。いったとたん、講和条約全部パーです。日本の戦後国際社会におけるポジションはゼロになってしまいます。ですから、今からでも、中国がこの問題をアメリカの前にもちだして、中国の言い分と日本の言い分とどっちが正しいと思うかと踏み絵を突きつけたとします。アメリカは日本のために逃げに逃げて返答を避けるでしょうが、どうしても答えなければならない立場に置かれたら、疑問の余地なく、中国が正しいといいます。それ以外の選択はありません。アメリカ人はみんな、日本の政治家の靖国神社への異常なこだわりを唖然として見ています。日本人はほとんど知らないが、アメリカ政府を代表する人間で靖国神社へ行った人は誰一人いません。昔(53年)ニクソン大統領がまだアイゼンハワー時代で副大統領だったときに、招待を受けて、訪問寸前まで行ったことがありますが、どういう施設か説明を受けて取りやめています。これはA級戦犯合祀のずっと以前の話です。A級戦犯合祀以後は、誰一人行っていません。何かのおりに武官が一人、二人行ったことはあっても、政府を代表する文官は誰も行っていません。世界の主要国みな同じです。天皇ですら行かないようなところに誰が行きますか」
next: 東京裁判の歴史的事実をねじ曲げる森岡発言の愚かさ…
http://web.archive.org/web/20050609012015/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/index2.html
東京裁判の歴史的事実をねじ曲げる森岡発言の愚かさ
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先に紹介した人民日報の論評があったすぐその翌日(5月26日)、自民党の代議士会で、森岡正宏・厚生労働政務官が、「極東軍事裁判は一方的裁判。A級戦犯はもう罪人でない」という発言を行って、物議をかもした。
森岡代議士が、正確なところ何といったのか、森岡代議士自身のホームページから引用してみると、こうだ。
私は5月26日の自民党代議士会で次のように発言させていただきました。
「小泉総理の靖国神社参拝をめぐって中国がA級戦犯合祀を問題にしています。これに対する与党幹部の態度はいかがなものか。中国の気にさわっているから何とかして靖国神社とA級戦犯を切り離したいという対応しかしてないように見えます。そもそもA級戦犯といいますが、日本が占領下にあったとき、勝者である連合軍が国際法違反の軍事裁判で敗戦国日本を裁いたものです。戦争はどうしても話し合いで決着しないとき、国際法で認められた一つの政治形態です。
日本は経済封鎖され、やむなく戦争せざるを得ない状態に追い詰められ国際法のルールにのっとって戦争をしました。勝った方が正義で負けた方が悪ということではありません。独立回復後は、国会でも全会一致で名誉回復を図り、A級戦犯といわれた人達の遺族にも恩給が支給されるようになりました。
A級戦犯の中には絞首刑になった人も禁固刑になった人もいましたが、皆罪を償いました。のちに大臣や総理大臣になった人もいます。A級戦犯はもはや罪人ではありません。日本は中国にも韓国にも何度も何度も謝ってきました。戦後60年間、平和主義を貫き、一度も戦争をしないでやってきましたし、経済援助もしてきました。中国や韓国にこびてA級戦犯の分祀や新たな追悼施設建設をめざすのではなく、『東京裁判は国際法上違法であった』と世界に向って主張すべきです」
next: この人は、「東京裁判は国際法上違法であったと世界に向って主張する」ということが…
http://web.archive.org/web/20050609013206/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/index3.html
この人は、「東京裁判は国際法上違法であったと世界に向って主張する」ということがどういうことを意味するのか(先に書いたように、それはサンフランシスコ講和条約の否定。日本の国際社会復帰の否定になる)、まるで見当がつかないらしい。
問題はこれと同じような主張をする人が日本に少なからずおり、そのどこが誤っているのかわからない人が大部分だということである。
同代議士のホームページには、このような発言をしたあとの一般市民からの反響がどれほど大きかったか、次のように書かれている。
夕刻、議員会館の事務所に戻ったとたん、秘書から「代議士、電話とメールの洪水です。批判的なものは数行で、あとはほとんど激励してくださるものばかりです」と聞かされ、反応の早さと関心の高さにびっくりしました。
中国の靖国問題へのこだわりは歴史を学べば理解できる
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このような反響の裏側にある事情を示しているのが、朝日新聞が5月31日に発表した靖国問題に関する世論調査だろう。それによると、中国の靖国問題に対するこだわりを「理解できる人」37%に対して「理解できない人」51%とずっと多い。
「理解できない人」の中にはさまざまのレベルの「理解できない人」がいると思われるが、私の見るところ、その相当部分が、日本と中国が、長い長い大戦争をしていたということを知らない人々なのだと思う。
いま生きている日本人のマジョリティは、すでに戦後生まれになっている。戦後生まれの大半が、日本が国をあげて戦争に熱中していた時代があったということをそもそも知らないか、あるいは戦争と聞いて頭に浮かぶのは、もっぱらアメリカ相手の太平洋戦争のことで、それよりずっと前から、そして太平洋戦争と同時並行で、中国大陸のほとんど全域にわたって、ずっと戦争をつづけていたことをほとんど知らない人たちなのだろうと思う。
next: アメリカ相手の戦争は、足かけ4年でしかなかったが…
http://web.archive.org/web/20050609013918/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/index4.html
アメリカ相手の戦争は、足かけ4年でしかなかったが、中国相手の戦争は、満州事変からかぞえると、足かけ14年にもなる。アメリカとの戦争は、はじめこそ日本軍が華々しい戦果をあげたものの、しばらくすると、大負けに負けて、敗走につぐ敗走を重ねた。そしてついには沖縄で潰滅に近い大敗北(住民大殺戮。住民犠牲者15万人)を喫し、最後はヒロシマ、ナガサキで、核爆弾による37万人もの犠牲者を出して終わるという戦争だった。この戦争は、戦後、映画、テレビのドキュメント、あるいはドラマを通して、あるいは活字のルポを通して、何度も何度もさまざまな形で描かれてきたから、日本人の大半がその擬似的な記憶を持つことになり、なんとなく知っているような気持にさせられている。
ところが、中国との戦争に関しては、日本人はあまりに過少な事実しか知らない。戦争をしていた期間が太平洋戦争より3倍以上も長く、戦争を展開した面積もずっと広く、従軍した兵もずっと多く、敵に与えた損害もずっと多いというのに、日本人は、特に若い世代の日本人はこの戦争についてほとんど知らない。ほんの数年前までの私自身がそうだったのだから、ほとんどの若い世代の日本人もそうだと思う。
戦争の時代をリアルタイムで同時代のできごととして体験しているはずの人々も、同時代の日本国内の報道が量質ともに、きわめて低レベルのものであったから、客観的歴史的事実をほとんど知らないという点では同じである。
リアルな歴史として知らないだけでなく、グロスなデータもほとんど知らない。太平洋戦争と原爆で日本人が殺されまくった歴史のほうは、相当知っている人でも、中国では日本軍が各地で中国人を殺しまくり、1000万人をこえる犠牲者を出したというごく基礎的な事実すら知らない。
日本人は、中国との戦争に関して、歴史解釈、歴史認識に誤りがあるというより、それ以前の状態にある。歴史的な外形的な事実を知るためのごく基礎的なデータすらほとんどの人が持ちあわせていないのである。日本ではそのあたりの歴史的教育がスッポリ抜けていたためである。
だから、大半の人が中国の靖国問題へのこだわりが「理解できない人」になってしまうのである。
next: 日本が国際社会に復帰できた経緯を振り返れ…
http://web.archive.org/web/20050609015618/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050602_yasukuni2/index5.html
日本が国際社会に復帰できた経緯を振り返れ
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小泉首相は、年代からいっても、生まれ育った環境からいっても、社会に出てから身につけた知識からいっても、典型的な「理解できない人」であると思う。
しかし、小泉首相の場合は、外務省出身の秘書官が常についていて、とんでもない失敗失言をしないように、いつでも情報を入れているから、それでも、同時代人よりは少しはましな知識をもっているようだが、先の森岡政務官の発言はあまりにひどいといえばひどい。
日本のやった戦争が、「国際法のルールにのっとってした戦争」などという発言は全く史実に反している。たとえば、誰でも知るパールハーバー攻撃は、宣戦布告なき奇襲攻撃であり、これは明々白々の国際法違反である。そもそもこの戦争は、不戦条約違反であるし、満州事変以降の中国進出は第1次世界大戦以降の世界秩序の基本を定めた9カ国条約(1922)違反、4カ国条約(1921)違反なのである。
東京裁判の法的根拠に、さまざまな問題点があったことは事実だが、先に述べたように、日本はサンフランシスコ講和条約で、それらの問題を含め、丸ごと東京裁判の結果をそのまま受けとることを約束して、国際社会に復帰したのである。だから、日本は東京裁判が国際法違反であることを世界に向けて主張せよなどというのは、ただナンセンスとしかいいようがない。
この森岡という代議士は、88年に、「日本は中国侵略の意図はなかった」との発言をしたために国土省長官の座を失った奥野誠亮元法相の秘書だった男である。この発言は、その時代からの考えに基づく発言といってもいいが、さすがに、この発言のアナクロニズムには、小泉首相もついていけなかったらしく、同日の記者会見でも、「A級戦犯の責任問題は、戦争裁判ですんでいるじゃないですか」と軽く突き放し、細田官房長官も、「事実関係に種々誤りが含まれており、論評する立場にない。極東軍事裁判などは政府として受け入れている。政府の一員として話したということでは到底ありえない」
と、これまた突き放した。
ただ、森岡発言問題はそれですますことができても、小泉首相自体は、8月15日に、靖国神社に参拝するのかしないのか、遠からず、決断を迫られることになる。
(この項、次回に続く)
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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