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2008年12月 4日 (木)
りそなの会計士はなぜ死亡したか(2)
12月3日付記事「りそなの会計士はなぜ死亡したか(1)」を掲載してから知ったが、「Electronic Journal」主宰者の平野浩氏が、11月25日以降、りそな問題に関連する記事を連日掲載されている。
11/25「なぜ柳沢大臣は解任されたか」
11/26「米国が不良債権処理を迫った理由」
11/27「なぜ竹中大臣にことは託されたのか」
11/28「意図的に積み上げられた不良債権」
12/ 1「金融再生プログラムの矛盾」
12/ 2「竹中大臣が目をつけた監査法人」
12/ 3「なぜ、りそなショックというのか」
12/ 4「りそな救済で儲けたのは誰か」
りそな問題の核心に迫る追跡に少なからぬ人々が強い関心を持ち始めた。ライブドアや村上ファンドが摘発されたが、「りそな問題」は比較にならない重大な意味を有している。国家権力そのものの行動が問題とされるからだ。日本政府が日本国民の利益のためではなく、特定の利害関係者、あるいは外国勢力への利益供与を目的に行動したのなら、国民に対する重大な背信行為になる。
「kobaちゃんの徒然なるままに」様、「本音言いまっせー!」様、早速のありがたいメッセージをありがとうございます。「こづかい帳」様、いつも心に響くメッセージをありがとうございます。『あの金で何を買えたか』についても、感銘を受け、記述したいことがありました。いずれかの機会に記述させていただきますが、貴重なお言葉をいただきましたことに感謝しております。
なお、拙著『知られざる真実−勾留地にて−』第4刷が完売となり、増刷に入っております。増刷が出来次第、ご提供が可能になります。大変ご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご了解賜りますようお願い申し上げます。
米国は日本の不良債権処理を加速させることを執拗に求めていた。佐々木実氏が『月刊現代』2008年12月号に寄稿した論文で紹介した2001年9月25日の「不良債権処理による日本経済再生のシナリオ」と題するシンポジウム。主催者は経済産業研究所とAEIだった。経済産業研究所は経済産業省の研究所、AEIはブッシュ政権と関係の深い米国のシンクタンクだ。
シンポジウム参加予定者には、竹中平蔵経財相、グレン・ハバードCEA(大統領経済諮問委員会)委員長、RTC(整理信託公社)議長を務めたウィリアム・シードマン氏、ロバート・ダガー氏、リチャード・ギドリン氏などが名前を連ねた。
私はシンクタンク勤務時代、年に数度のペースでNY、ワシントンを訪問し、情報収集を行っていた。ワシントンではほぼ毎回、ロバート・ダガー氏とも会っていた。ダガー氏はヘッジファンドの経営者であると同時に研究者でもあり、不良債権問題に関する強い発言権を有していた。
私はダガー氏に公的資金投入は必要になるかもしれないが、金融機関の責任追及と公的資金による金融システムの安定確保の両立を図る必要性を常に唱えたが、米国の関係者は責任処理に無関心だった。日本の金融システムが崩壊しないことを優先しているように見えた。
米国の関係者にとっては、日本の金融システムが崩壊しないことと、日本における不良債権処理ビジネスに強い関心があったのだと考えられる。国内問題では、金融システムの安定確保と責任ある当事者の責任追及の二つが問題処理にあたっての車の両輪である。1990年前後のS&L処理に際しても、関係者の責任は厳しく追及された。
しかし、これは米国の国内問題での基準であって、日本の問題を考察する際には、「正義の基準」は消滅する。米国資本にとっての利益が優先され、日本の問題処理に際しての「正当性」の視点が消滅するのだ。日本が崩壊することを回避しなければならないが、この点が確保されれば、あとは利益動機だけが軸になる。米国の典型的な「ダブル・スタンダード」を示していると言って良いだろう。国内に適用する基準と植民地に適用する基準は異なるのだ。
米国にとっては、@日本の資産価格が暴落し、日本の投資家が優良資産を破格の安値で投売りする状況が生まれること、Aしかし、最終的に日本の金融市場が崩壊せずに、安定を回復すること、の2点が満たされることがベストだった。日本の優良資産を安値で買い占めることが可能になる。同時に、日本で不良債権処理ビジネスを一気に拡大することができるからだ。
実際、2001年から2005年にかけての日本経済は、米国資本が描く理想の軌跡をたどった。日本経済は2000年にいったん浮上しかけた。1998年から2000年にかけて政権を担った小渕政権が金融危機を克服し、経済を2%成長の軌道に誘導することに成功した。
この経済回復を中立の経済政策で維持したなら、日本経済が2003年に地獄に直面することはなかった。緩やかな経済改善の流れのなかで、不良債権問題は順調に改善していったはずである。
ところが、2001年に発足した小泉政権は史上空前の超緊縮政策によって日本経済の崩壊を誘導した。その結果、株価は順当に暴落した。さらに追い打ちをかけたのは、2002年9月30日に金融相を兼務した竹中氏の発言だった。
竹中氏はニューズウィーク誌のインタビューに対し、統廃合の結果残った4つのメガバンクについて、「大きすぎてつぶせないとは思わない」と述べたのだ。竹中氏は弁明に努めたが、「大銀行破たんも辞さず」の政府方針がその後の株価暴落を加速させたことは間違いない。
『月刊現代』2008年12月号の論文のなかで、佐々木実氏は竹中氏と金融問題処理に関して何度も交渉した元自民党税調会長の相沢英之氏の言葉を紹介する。
「竹中さんたちは、自分たちの手を汚さず不良債権処理の功績を挙げようという戦略で動いたはずです。おそらく2つのポイントがあって、ひとつはスケープゴートをつくる、二つ目は監査法人の手でやらせるということだったとおもう」
スケープゴートになったのが「りそな銀行」だった。りそなホールディングスの勝田泰久社長は、「りそな銀行実質国有化」が報道された2003年5月17日の記者会見で次の発言を示した。
「ゴールデンウィーク明けの5月7日になって、新日本監査法人の態度が一変した。背信だ。」
この点については、「Electronic Journal」の12月3日付記事に記載がある。りそな銀行は2003年3月に1200億円の増資をしている。この段階で、自己資本不足の可能性があれば、より巨額の増資を実施したはずである。3月末の決算に伴う措置であるから、監査法人と協議しないことは考えられない。
「りそな銀行」の自己資本不足は、表向きは監査法人が金融監督当局とは独立に判断した結果とされている。2003年5月12日の金融問題タスクフォースで、竹中金融相が最後に「金融庁は監査法人の判断にはいっさい介入しない」と述べた。
しかし、2002年10月から2003年5月までの、銀行の自己資本比率算出にかかる竹中金融相を軸とする政策当局と銀行、監査法人、公認会計士協会との間のさまざまな折衝を検証すると、りそな銀行の自己資本比率を4%割れと決定した新日本監査法人の最終判断が、新日本監査法人の独立の決定であると見なす者はいない。
極めて恣意的であり、政治権力によって歪められた措置であったと言わざるをえない。朝日監査法人の岩村会計士(仮名)は、朝日監査法人でりそな銀行の会計監査の主導権を握っていたと見られる。そして、岩村氏はりそな銀行の繰り延べ税金資産計上を認めるべきとの見解を有していたと見られるのだ。
岩村氏が強硬にりそな銀行の決算を承認したなら、りそな銀行は健全銀行として2003年3月期決算をクリアしていた。そのキーパーソンの岩村氏が4月24日に突然死亡した。自殺と処理されたが遺書も発見されていない。
りそな銀行を念頭に置いて、繰り延べ税金資産計上はゼロないし1年分と強く主張していたのは木村剛氏である。この木村剛氏が2003年3月17日に朝日監査法人の亀岡副理事長と会食をしている。
佐々木実氏は4月16日に速報ベースのりそな銀行決算資料を受け取った朝日監査法人の森公高代表社員が、新日本監査法人に対して「繰り延べ税金資産は全額取り崩しではないか」との判断を伝えたと記述している。
朝日監査法人には「大きな力」が加えられた可能性が高い。竹中金融相−公認会計士協会−木村剛氏−朝日監査法人−奥山章雄氏−新日本監査法人は、りそな銀行処理に関して、密接なつながりを保持していたように窺(うかが)われる。
少なからぬ人々の尽力により、少しずつ輪郭(りんかく)が見えてきている。真実を知る当事者が、少しずつ真実を語り始めている。最大のキーパーソンは岩村氏であるが、誠に残念なことに命を落とされている。心からご冥福をお祈りする。
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