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11月30日23時59分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000581-san-pol
「不良と呼ばれたことはあるが…」と、民主党の小沢一郎代表からチンピラ呼ばわりされて苦笑いしていたという麻生太郎首相。定額給付金の支給をめぐって自治体の負担や混乱が懸念される折、NHKホールで開かれた全国町村長大会に顔を出すと、「バラマキ」「丸投げ」などとヤジを浴び、あいさつを短めに終えたという。
人気演芸番組「笑点」の大喜利コーナーでは、林家たい平が以前から麻生首相の物まねを口をひん曲げ、それでも割と好意的に取り上げていたが、最近は「頻繁(ひんぱん)」→「煩雑(はんざつ)」や「未曽有(みぞう)」→「未曾有(みぞゆう)」など首相の誤読ネタで笑いをとりはじめた。
政治家も演説や答弁など言葉を使う商売。読み間違いや言い間違いのダメージは小さくない。20年近く前、民放の女子アナが「旧中山道」を「いちにちじゅうやまみち」と読んだという話は、今も語り継がれており、首相の誤読も長く言い伝えられるだろう。新聞記者にとっても用語間違いは致命的で、読者の厳しい指摘を受けることは少なくない。政治家やアナウンサーとは異なり、こちらは口に出して読むわけではないのが救いだ。
ベストセラー『バカの壁』で知られる解剖学者で東大名誉教授の養老孟司氏は、首相の相次ぐ誤読について「読字障害説」を提起し、他の面では高い才能の持ち主である可能性を指摘しているという。そこまで難しい話にしなくても、あえて首相を擁護すれば、2カ月前の総裁選びで、自民党員や国民は麻生首相に学術的、学究的な意味のインテリジェンスを期待したのだろうか。決してそうではあるまい。
福田康夫前首相が辞任を決めた後、べらんめえ調でチョイ悪おやじ風なのは好き好きだが、前任者よりはずっと明るい。国民的人気はある。そういう麻生氏のキャラクターに救いを求めたのではなかったのか。
程度問題はあるにせよ、漢字の読み間違いなど大したことはない。首相のキャラクターに期待したのであれば、自民党員はそう開き直るしかあるまい。本当に困るのは、一国の首相が大きなかじ取りを誤ることだ。政府・与党はクリスマスまで臨時国会の会期を延長したものの、緊急性の高い追加経済対策を裏打ちする第2次補正予算案は提出せず、来年の通常国会に先送りした。果たしてその判断は正しく、国民に受け入れられるものかどうか。
政府の役割には外交・防衛を含めていろいろあるが、主たる仕事は政策を実現するために国会で法律や予算を通すことだ。昨年夏の参院選で自民党が大敗して以降、1年半近くにわたって衆参のねじれ現象がその作業の前に大きく立ちはだかっている。
福田前首相も安倍晋三元首相も、ねじれ国会に手足をしばられて政策を思うように実行できず、政権を投げ出したのが実情だ。麻生首相にとって、今の臨時国会はデビュー戦にすぎない。平成21年度予算案がかかる年明けの通常国会こそ本番だ。そこで立ち往生すれば、衆院解散の好機をうかがう余裕など消えてなくなり、政権は持ちこたえられまい。
「国対政治」。料亭政治と並んで、永田町における政党や政党幹部の間のなれ合い、与野党の談合を象徴する言葉で、批判的なニュアンスが込められている。古くは議長みずから「重要法案1本当たり1000万円」などと相場を決め、国会対策に必要な金額を与党に出させていた時代もあったというから、悪いことの代名詞になるのも仕方あるまい。
平成の世に入り、自民党がいったん下野すると、自民、社会両党が主導した55年体制が崩壊した。それに伴い、裏金が飛び交う国対政治は主流ではなくなったが、同時に政権運営における国会対策の優先順位が低下してしまった。
国対政治の舞台として登場する料亭政治。時代劇で悪代官が越後屋に「お主も悪よのぉ」と語りかけるシーンを思いだしてもらえばよかろう。山吹色のものも付き物だ。しかし、国会の会期や審議時間を緻密(ちみつ)に計算し、確実に法律や予算を仕上げていく国会対策は、裏方による地味な作業だ。与党や各省庁の国会担当者らは、カレンダーとにらめっこの日々を送っている。その進展状況を、新聞記者が追いかける。これを廊下トンビと呼ぶ。
もちろん、オバマ次期米大統領のように、「CHANGE」と叫んで大きな潮流の変化の先頭に立つのも政治家の重要な役割だ。首相となったからには、そういう国際的指導者の一員としての気概も持ってもらわなければならないが、その一方で首相の立ち居振る舞いには1億2000万人の生身の国民の生活がかかっている。毎年繰り返しの作業とはいえ、法律や予算を間違いなく成立させることがその出発点となる。
昨年7月の参院選のさなか、安倍首相の首相秘書官の1人と財務省関係者が、インド洋で海上自衛隊が補給活動を行うためのテロ対策特別措置法の処理について協議していた。すでに年金記録問題や閣僚らの事務所費問題の逆風で自民党の苦戦は必至、参院過半数割れが予測されていた時期だ。現実に衆参のねじれ現象が生じれば、野党の反対で特措法の延長が困難になり、テロとの戦いに空白が生じかねない。
それを未然に防ぐには、参院選後、直ちに臨時国会を召集し、参院が法案採決を引き延ばしても、憲法に基づく「60日ルール」で衆院再議決できるように備えておかなければならない。
残念ながら、あれだけ大騒ぎになったインド洋の補給活動の中断という事態について、最初に心配していたのは、当時の安倍首相ではなくて役人なのだ。その後、国会運営上の問題は官邸の重要テーマの1つとなったが、参院選大敗後の安倍首相は茫然(ぼうぜん)自失、臨時国会の早期召集もできず、あの投げ出し退陣を迎える。
そのあおりをモロにかぶったのが、後継の福田内閣だ。60日ルールを経て特措法延長を成し遂げたのは年を越える作業となった。さらに、通常国会では「ガソリン税」攻防に代表される歳入関連法案の成立に苦しんだ。結局、ねじれ現象にとらわれて精根尽き果て、内閣改造を断行して間もなく、政権を投げ出す。
2代にわたる政権投げ出しを目の当たりにした麻生氏は、「小沢は信用できない」と公言するほど、ねじれ国会の深刻さを肌で感じているのは確かだろう。しかし、その打開策を見いだすには至っていない。
今の臨時国会に第2次補正予算案を出せば、口先では成立を保証するという小沢民主党が態度を豹変(ひょうへん)させた場合、年末の予算編成作業も抱えたまま国会審議は座礁しかねない。首相の読みは間違っていない。ただ、中小企業の資金繰りや雇用不安への対応を盛り込んだ追加経済対策を裏付ける作業まで、来年に先送りしてしまったのは、説明がつかない。定額給付金にしても、財源の裏付けがないまま、総務省と自治体との間で着々と準備作業が進んでいるというのは正常な姿ではない。
麻生首相は、「今やれば自民党は惨敗するかもしれない」という選挙情勢を無視できずに、臨時国会冒頭にもくろんでいた衆院解散を先送りし、すでに一度、男を下げてしまっている。米国発の金融危機にかこつけて「政局より政策」と言い繕ったものの、その政策面でも問題を先送りしたのでは、次々と目の前の難題から逃げている印象をぬぐえないだろう。
幸い、自民党には大島理森国対委員長という数少ない国会運営のベテランがいるが、二院制の片方を敵に握られ孤軍奮闘中だ。国会対策に関して、幹事長や官房長官、官房副長官ら政府や党の要の人々が大島氏の右腕になっているという話は聞かない。
テレビでは「麻生 実行中」というCMが流れているが、どこまで国民の心に響いているか。内閣のキャッチフレーズは、大切ではあるが政権維持の本質ではない。法律と予算を通すことの重さと難しさを首相がどれだけ認識し、最大限のエネルギーを傾注するか。衆院選に先立つ勝負の鍵はそこにある。
(石井聡)
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