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2008年11月30日
パレスチナ問題 ー 絶望の中に希望を求めて
しばらくの間忘れかけていた私の頭に再びあの「パレスチナ問題」が入り込んできた。
何気なくチャネルをまわしていたら、NHK教育テレビがイスラエル占領下のパレスチナの映像を流している事を見つけた。
イスラエル軍の戦車に少年たちが石を投げつけている。その少年たちを追い回して戦車が発砲する。
究極のイジメである。
しばらく見た後、チャネルを切り替えた。
後で新聞の番組欄で調べたら、第35回日本賞受賞作品「ヨルダン川 二つの学校」というドキュメンタリー作品であることがわかった。
どのような内容の映画であるか、数分見ただけでは勿論わからない。
しかしこの映画の一コマは、しばらく忘れかけていたパレスチナ問題について、私の心に二つの思いを蘇らせてくれた。
パレスチナ問題、その途方もない絶望と、かすかに見える希望、である。
最近の日本の報道ではほとんど報じられる事はなくなったが、パレスチナでは連日絶望的な日々が続いている。昨日も今日も、そして果てしない明日も。
ブッシュもライスも、何一つ問題を解決することなく、たち去ろうとしている。
まるで世界が見捨ててしまったかのようなガザのパレスチナ人は、その間も日々巨大な監獄のような状況に置かれたままだ。
行動の自由はおろか、食糧も医薬品も、何もかも欠乏した、想像を絶する非人間的な生活を強いられている。
それにもかかわらず、国際社会は動かない。
米国、イスラエルのパレスチナ政策を誰も糾弾できないでいる。
この絶対的な不条理、これこそがオサマ・ビン・ラデンを反米テロに駆り立てたものだ。
インドの武装テロ事件が与えた衝撃は、多くの犠牲者を出した組織的テロだったからだけではない。
新興経済大国として日本や世界が経済関係を強化させようとしてきたインドでさえもテロ事件が起きたからだけではない。
「私は(アフガン、イラクの)5000万人を自由にし、平和達成を手伝った大統領として名を残したい」(全米公共ラジオのインタビューで。11月30日毎日)というブッシュ大統領の願いをあざ笑うかのように、もはや反米テロが世界中に広がりつつあるのではないか、その思いが皆を戦慄に突き落としたからだ。
オバマ大統領の最大の難問はここにある。
世界金融危機はいずれ解決する。オバマ大統領でなくても、みながよってたかって解決策を講じる。
しかしパレスチナ問題を解決しようとする指導者は間違いなく命を落とす。
ましてや、金融危機の回避と違って、自分にとって一銭の得にもならないパレスチナ問題の解決に奔走する者はいない。
ここに私は目がくらむような絶望感を感じるのだ。
その一方で、パレスチナ問題に心血を注ぐ若者がこの日本にもいる。一銭の得にならないどころか、多大の負担と犠牲を払いながらパレスチナ人の怒りと苦しみを共有しようとする若者たちがいる。
ここに私はかすかな希望を託するのだ。
「パレスチナの平和を考える会」の若者たちもその一人だ。
私の手元に、「パレスチナの平和を考える会」の定期会報である「ミフターフ(家を追われたパレスチナ難民たちは故郷の家の鍵を今も大切に持っている、その鍵を意味するアラビア語)」の11月号がある。
そこに、鳴り物入りで日本が援助した「ヨルダン渓谷開発援助(俗称「平和と繁栄の回廊」構想)」の現地レポートが詳細に書かれていた。
果たしてどれだけの読者の目にとまるのだろうと思うほどの小さな会報であるが、その報告はどこの新聞や雑誌にも書かれることのない上質の報告である。
どこのメディアも書けないほど正確に、日本の中東外交、援助外交の欺瞞を見抜いたものである。
小泉元首相の末期に提唱され、麻生外交が引き継いだ、「平和と繁栄の回廊」構想。
それは、イスラエルの占領下にあるヨルダン川渓谷の農業開発に援助する事によって、日本がイスラエルとパレスチナの協力促進に一役を買う、そういう謳い文句の援助であった。
それがまったく進んでいない現状を、現地を訪問し、関係者に直接会って確かめた、そのレポートである。
外務省の中東政策にも、援助政策にも携わってきた経験がある私には、この援助が、かつての同僚や後輩たちが頭でつくりあげた、首相、外相の宣伝のための「援助」である事を知っている。
うまく行くはずがない。
占領者と被占領者という絶対的不平等下にあって、どうして真の協力関係を築けるというのか。
作ったものが占領政策によってたちまち破壊されるような戦争状態の中で、どうして開発が進むというのか。
それどころか、日本の援助はイスラエルのパレスチナ占領にお墨付きを与え、占領を固定化するものですらある。
このレポートは、しかし、私のそのような批判めいた事に焦点を当ててはいない。
占領政策でもがきながら生活を続けているパレスチナ人たちにとっては、それが占領の固定化であろうが、日本の宣伝であろうが、少しでも生活の糧になるのであればありがたい、と考える。
しかし、この日本の援助は、イスラエルの対パレスチナ政策の硬化によって、プロジェクトそのものが満足に進められない状況になっている、というのだ。
それにもかかわらず日本政府はイスラエル政府に文句一つ言わないというのだ。
その結果、占領の固定化であっても援助が暮らしの助けになればありがたい、というパレスチナ人の最低限の願いさえ裏切っているという。
これ以上ないほどの失策である。
そのレポートはこうしめくくっている。
・・・当面、この構想(平和と繁栄の回廊構想)は、大々的に進める事もできず、かといって止めることもできず、規模を縮小したかたちで延命されていく可能性が大きいように思われる。その間にも、ヨルダン渓谷におけるイスラエル人の入植の拡大、パレスチナ人の家屋破壊、イスラエルによる水の一方的な収奪がますます強化されていく事は確実である。
私たちは日本政府およびJICAや援助関係者、日本社会全体に、(パレスチナ問題に向き合うこと無しに援助を続ける事は)納税者に対する欺瞞であり税の無駄遣いでしかないことを訴えていく必要がある・・・
外務省の官僚たちが権力と援助予算に胡坐をかいて進める血の通わない援助政策を、たった一人の若者が徒手空拳で調査して暴いて見せた。
イスラエル人の苦しみを共有しようとする若者がこの日本にもいる。
ここに私は希望を見出す。
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