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国籍法改正案審議で田中康夫氏が示した視点(国を憂い、われとわが身を甘やかすの記)2008/11/28 18:13
またもや風邪でダウン(喉が痛い)しかけたり、処理しなければいけない締め切り間際の原稿を複数抱えていたり、周囲に不幸があったりで、ちょっとエントリの更新が滞っていました。そんなこんなで、国籍法改正をめぐる新しい動きについて報告できませんでした。いやもう、本当にそんな余裕がなくて。
で、少し前後のことを振り返りながら書くと、当初は27日に参院法務委員会で採決、28日の参院本会議で可決・成立する見込みだった国籍法は、国民の反響に驚いた参院の自民、民主両党がそれぞれ慎重姿勢に転じたので、とりあえず見送られました。
今後の日程は、1日の法務委理事懇談会で決められる予定ですが、早ければ2日に委員会採決、3日に成立ということもありますし、場合によってはそれも「なし」になるかもしれません。
これに関連し、民主党の直嶋正行政調会長は26日夕の記者会見で次のように述べました。国会の会期が延長となったので、当初の自民・民主両党の合意だった「30日の会期末までの成立」の先延ばしがしやすくなりましたね。
「いろんな方から陳情等を受けているようでありまして、民主党の方でも幾人かの議員から、もうすこし慎重にという意見は出ている。聞いている範囲だと、参議院の審議も、衆議院では会期延長を前提にせずに、会期末が11月30日だということで審議を急いだという面もあったと聞いていますので、参議院の方は逆に言うと、会期延長も見通す中で、より慎重な審議をしたいと思っておりまして、多分採決等の日程も少しずれるのではないかと思っています」
また、自民党の村田吉隆国対筆頭副委員長は27日午前の記者会見でこう踏み込んで話しています。こちらは2日に採決と明言していますが、委員会を飛び越して国対で先にここまで言い切るのはどういうものでしょうね。付帯決議の内容まで言っています。まあ、実際の国会運営では国対の意向が最優先されるのはその通りでしょうが。
「国籍法。本日は参考人の意見聴取、採決まで予定していたが、民主党内にもすぐの採決は疑問でないかということで、質疑終局までやり、12月2日に採決まで行う。手続き問題で、省令について11項目明示する。付帯決議で見直し規定を設ける。不正が続出した場合は法案をただちに修正すると書く」
さて、そこで27日の法務委審議について触れたいと思います。いくつか注目すべきところがありましたが、まずは上の村田氏の話に関連して、山谷えり子氏の質問と、それに対する法務省の倉吉敬民事局長の答弁を紹介します。
山谷氏 国民の心配、懸念は本当に大きいものです。認知が悪意か悪意でないか、見極めるのが難しい。組織的犯罪が起こる心配があるわけですから、半年ごとに委員会に、どのぐらいの届け出があったのか、件数やケース、どこの法務局の窓口でどうだったと、こういう報告はしていただけるか。
倉吉氏 半年ごとということですが、委員会の求めがあれば、それは当然やるべきだと思っております。
…ここで山谷氏が求めて倉吉氏が応じた「半年ごとの委員会報告」は、参院法務委での付帯決議に入る見通しです。
村田氏が言う「見直し規程」までが直接入るかどうかは現時点で私は把握していませんが、半年ごとの報告で偽装認知の例がたくさんあったなどと不具合が報告されれば、それは法律の見直しにつながるということもありえるでしょう。国民の声が国会の場に届いた一つの証左だと思います。ただ、私が聞いているところでは、衆院法務委での付帯決議にあった「重国籍の検討」の条項は、今のところほとんどそのままの形で残る方向だそうです。
そして、この日の法務委ではもと一つ、参院で民主党と統一会派を組んでいる新党日本の田中康夫代表の質問が興味深いものでした。田中氏はまず、次のように考えを表明しました。田中氏が国籍法問題に関心を示しているということは、数日前から複数の後輩記者らから聞いていましたが…。
「私は今回の国籍法のいわゆる『改正』に疑義があると考えております。そして、DNA鑑定制度を導入するべきであり、そのことを明記すべきだと考えています。実は、人権保障を尊重するならばなおのこと、このDNA鑑定の導入が必要である」
田中氏はこう述べた上で、「罪無き子供を奈落の底へと突き落とす蓋然性が極めて高い。当初から偽装認知奨励法にほかならぬと懸念されていた本法案は、人身売買促進法、ないしは小児性愛、ペドフィリアと呼ばれますが、小児性愛黙認法と呼び得る危険性をはらんでいると思います」と続け、DNA鑑定の必要性を訴えました。
田中氏は、東南アジアの子供達が買い求められ、ペドフィリアの被害者、犠牲者にならないようにするためにもDNA鑑定が必要だと強調しています。これは、これまであまり指摘されていなかった視点ですね。
また、欧州諸国でのDNA鑑定の実施状況について指摘(これは、私が17日のエントリ「『国籍法改正案』緊急対策会議で語られたこと」で紹介したものと同じ内容)した上で、民事局長が「DNA鑑定が正確なものであるかどうか分からない」と答弁したことについて「これはアホなお話だ」と切って捨てました。
さらに、この質疑の中で気になったのは、田中氏が「幸いにして、国民新党代表代行の亀井静香さんからも、また民主党幹事長の鳩山由紀夫さんからも、是非とも、良識の府参院で法案修正を勝ち取って衆院に差し戻してほしいと、昨日、直々に激励を受けた」と述べた部分でした。
鳩山氏は、今朝の産経3面の田母神前空幕長インタビューでも、田母神氏から「鳩山幹事長は、私や懸賞論文を主催したアバグループの元谷代表との会食を中座したように言っていますが、まったくのウソですね」とあっさり言動を否定されているようにとても言葉の軽い人なので、額面通りに受け取るわけにはいきません。でも、民主党内のある種の空気は反映しているのだろうと思います。
鳩山氏は、国会の場で国籍法改正案に反対する田中氏を激励したと明らかにされたわけですから、今後は、その考えにふさわしい言動をとってくれることを期待したいと思います。なんだやっぱり、いつもの軽いリップサービスか、となるのかどうか。この人も、いつかは首相の座に就きたいと思っているのでしょうから、もっと国民から鼎の軽重を問われる場面があっていいはずですね。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/815098/
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