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郵政株式売却強行が「売国政策」である理由(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 11 月 27 日 19:55:35: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-285e.html

2008年11月27日 (木)
郵政株式売却強行が「売国政策」である理由


11月25日、米国連邦準備制度理事会(FRB)は、個人向けの信用収縮を和らげるため、最大で8000億ドルの新たな金融支援を行うことを発表した。住宅ローン関連で6000億ドル、クレジットカード、消費者ローンなど向けに2000億ドルの資金枠を設定した。


米国政策当局はすでにベア・スターンズ社救済に290億ドル、政府系住宅金融公社支援に2000億ドル、AIG救済に1500億ドル、金融機関の資本増強等に7000億ドルの資金投入を行う資金枠を設定しており、これらの合計金額は1兆8790億ドルに達している。


サブプライム金融危機に伴う米国金融機関の損失が最終的にどこまで拡大するかが明らかにされていない。今回の金融危機はデリバティブ金融商品によって、リスクの極めて高い金融商品の想定元本が幾何級数的に拡大している点に最大の特徴がある。市場原理にすべてを委ねる「市場原理主義」=「新自由主義」がもたらした必然の帰着点であるが、人類がかつて経験したことのない領域にリスクが拡散されていることを踏まえなければならない。


デリバティブ金融商品の想定元本は600兆ドル水準にまで膨張したと見られており、米国住宅価格下落に伴う損失が6兆ドル程度にまで拡大する可能性は決して小さくないと考えられる。


FRBは8000億ドルの追加金融支援策を発表したが、金融市場の反応はそれほど大きなものでない。米国最大の金融機関であるシティグループに対する金融支援策発表、数千億ドル規模の追加景気対策策定、オバマ次期政権の経済閣僚発表に続いてFRBによる金融支援策が発表された。政策総動員を印象付けて、市場環境の劇的な転換を実現することが目論(もくろ)まれたのだ考えられるが、金融市場の反応はさほど大きいものではなかった。


11月25日に発表されたS&Pケースシラー住宅価格指数では、全米主要10都市の住宅価格は前月比1.9%下落し、調査開始以来の最低値を更新した。2006年6月のピークからは23.4%の下落を記録した。米国の住宅価格下落はピークから23%にすぎないが、金融市場は大混乱に陥っている。


住宅着工件数は年率80万戸水準に激減しており、経済全体に対する波及効果が徐々に拡大している。自動車、住宅が米国経済の基調を判断するポイントであるが、乗用車販売は前年比30%減を記録し、個人消費全体が著しい抑制傾向を強めている。


米国の不動産価格は2010年に向けて下落し続けることが予想されており、不動産価格下落に連動するデリバティブ金融商品の価格下落も持続が見込まれる。このため、金融機関の生み出す損失は、今後も順次拡大することが予想される。


最終的に米国政策当局は数兆ドルの公的資金を投入せざるを得なくなる可能性が高い。米国政府は巨大な国債を発行し、FRBは連動して過剰な流動性を供給することになると考えられる。


こうした延長上に予想されることは米ドルの大幅な減価である。日本政府は外貨準備約1兆ドルの大半を米ドル建て資産で保有している。ドル下落は日本の外貨準備の円評価金額が減少することを意味する。


1ドル=95円までの円高進行で、すでに外貨準備には24兆円の評価損が生まれていることが明らかにされた。日本の財政状況が逼迫し、国民生活にとって必要不可欠な社会保障費までが、年間2200億円削減されつつある。さらに麻生首相は国民に過重な負担を押し付ける追加大型増税まで言及し始めている。


そのような財政逼迫(ひっぱく)の状況下で、外貨準備で24兆円もの損失を生むことが許されるはずがない。驚くことに、こうした状況下で麻生首相は11月15日のワシントン緊急金融サミットで、IMFに日本の外貨準備から10兆円を流用する方針を表明した。国会の同意を取ることなく、貴重な国民資産が安易に海外に提供されることを野放しにすることはできない。


また、途上国銀行に資本注入するために、世銀と3000億円の基金を設定し、日本が2000億円もの資金を拠出することまでが検討されているという。


11月13日付記事「憲法違反の外国為替資金特別会計」に記述したように、国会の決議を経ずに100兆円もの国民資金が野放しにされ、政府、財務省が勝手に巨大損失を生みだしている行為は、憲法違反の行動として糾弾されなければならない。


日本国民が不況にあえぎ、日本の金融システムが崩壊の危機に直面するなかで、巨大な損失を生みだしている政府の外貨準備管理の問題は、11月28日の党首討論でも重大な問題として追及されるべきだと考える。


日本の外貨準備残高が激増したのは、2002年10月以降である。竹中平蔵氏が小泉政権の金融相を兼務し、日本の資産価格暴落が誘導され、最終的に不正と欺瞞に満ちた「りそな銀行救済」が実行され、日本の株価の急上昇が演出された時期に、外貨準備が激増している。


日本は外貨準備の大半を米国国債で保有しているが、小泉元首相がブッシュ大統領に米国国債を売却しないとの約束をしたとの重大な情報を森田実氏が明らかにしている。小泉政権得以来の自公政権が売国政策を実行してきた疑いは濃厚である。


郵政民営化は、日本郵政が保有する巨大な優良資産を米国資本が収奪するために実行されている疑いが極めて強い。米国の金融資本は350兆円の郵政資金をターゲットにしているだけでなく、日本郵政が保有する巨大な不動産資産をも標的にしていると考えられる。


麻生首相が郵政株式の売却凍結を口にした途端、激しい麻生首相バッシングが噴出している。テレビ朝日は、小泉元首相、中川秀直元自民党幹事長、飯島勲元秘書、小泉チルドレンを画面に登場させ、郵政民営化見直し論議を封じ込めようとしているように見える。


日本郵政が不動産事業を本格化していることが報道されている。東京・目黒の社宅跡地で分譲マンション開発を進めるほか、東京中央郵便局の再開発にも着手している。日刊ゲンダイ紙は11月24日付記事「西川・日本郵政 国民の財産を勝手に切り売り」を掲載したが、貴重な国民資産が私的利益のために流用されつつある。


日本郵政が保有不動産の売却を開始した直接の理由は、当面の利益確保のためであると考えられる。決算において黒字を確保しなければ株式売却を実施できない。株式売却が凍結されぬ前に、できるだけ早く株式売却を実現しようとの思惑が透けて見える。


株式売却が実行され、日本郵政の所有権が日本国から民間に離れてしまえば、あとは株式を保有した民間資本の思いのままになる。日本郵政の優良資産は食い尽くされることになるだろう。これらの問題を「神州の泉」様、「チラシの裏」様をはじめとする多くの識者が繰り返し指摘されてきた。


350兆円の資金、巨大な優良不動産を思いのままに処分できる。巨大な人員と採算の取れない郵便局ネットワークが現在の利益水準を抑制している要因だが、民営化が実現した段階で、これらの障害物が順次取り除かれるはずである。


障害物が存在しているために、当初は低い価格で株式が売却されることになる。安いい価格で郵政会社を購入し、障害物を取り除いて、株価上昇を誘導して高い価格で売り抜ける。その間に、日本国民が蓄積した巨大な優良資産の甘い蜜を吸い尽くすのだ。


売却された株式を直接、間接に外国資本に支配されれば、国民の貴重な優良資産がそっくり外国資本に収奪(しゅうだつ)されることになる。日本郵政の不動産事業はまだ本格化しない。当面は、株式売却を実現するための利益確保に限定される。民営化が実現した段階で、優良資産の本格的な収奪が実行されるだろう。


外貨準備の巨大損失、IMFや世界銀行への巨額資金拠出、郵政民営化、市場原理主義の日本への強制、これらは小泉・竹中政権が誘導してきた売国政策の延長上に位置づけられる施策である。


国民新党が郵政民営化凍結法案を提案し、民主党とこの問題で足並みをそろえることは、日本の政治を外国資本のためのものとせず、日本国民の幸福実現のためのものとする意味で、極めて重要な意味を有している。


日本郵政の事業展開に対する監視を強化しなければならない。まず求められることは、日本郵政の上場と株式売却を凍結することである。貴重な国民資産が根こそぎ外国資本に収奪された後で、後悔しても取り返しがつかない。


急(せ)いては事を仕損じる。これだけの巨大な国民資産の取り扱いを拙速(せっそく)に進めることを避けなければならない。郵政民営化をなんとしても強行しようとする勢力は、郵政民営化は2005年9月の総選挙で国民が示した総意だと主張するが、2005年9月に示した意向を主権者である国民が、冷静に見直し始めている。


2007年7月の参議院選挙結果は、その明確な意思表示である。次期総選挙で冷静さを取り戻した国民が最終判断を下し、政治がその意向に従うのが正しい対応である。日本の政治を「売国政治」から「国民の幸福を追求する政治」に糺(ただ)さなければならない。

 

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