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STOP!裁判員制度 矛盾はますます明らかになった実施延期から制度廃止へ進もう(かけはし)
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投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 12 月 19 日 18:48:14: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/frame090101f.html

一方的通知書と
大キャンペーン

 グローバル派兵大国建設の一環である新自由主義的統治強化にむけた裁判員制度の〇九年五月二十一日実施強行にむけて、最高裁はテレビCMなど広告費用総額約十億円をかけて裁判員名簿記載通知宣伝(11月10日)を展開した。続いて政府は「裁判員になる可能性のある方に、今月末から通知が届きます!」広報(11月16日)を全国的にばら撒いた。大キャンペーンを展開しながら最高裁は、十一月二十八日、ついに裁判員候補者二十九万五千二十七人に一方的に通知書を送りつけた。「国家への奉仕」を強制し、憲法違反に満ちた裁判員制度の具体化を開始した。
 通知には調査票が同封され、次のような設問の実施を行っている。第一は、裁判員になれない職業(国会議員、市町村長、司法や治安関係、自衛官)かどうかの設問からだ。第二が、学生、七十歳以上の人、重い病気やけがの人で辞退を希望するかどうかと設問し、そのことを証明する書類を添付しろと言う。第三は、仕事などで特定の月《上限二ヶ月》で裁判員になるのが難しい場合の設問と、その事情の記入を求め、一括して返送せよと命令するのだ。
 この日、最高裁刑事局は、「なるべく具体的に書いて返送してもらえれば、裁判所は辞退を認めるか判断しやすくなり、国民の負担の軽減につながる」などと記者会見で述べているが、すでに憲法第十八条「苦役からの自由」違反を行い、負担を押し付けているではないか。また、個人情報の調査、プライバシーの侵害などの人権侵害を行っているにもかかわらず、こんな居直り発言を許してはならない。この先には、裁判所の呼び出しに素直に出頭しないと十万円以下の過料を科せると脅かすことによって裁判員の就任を強要しようとしているのだ。
 しかし、四月に最高裁は裁判員制度に関する国民意識調査を行ったが、「義務でも参加したくない」と三七・六パーセントの人が回答していることを明らかにせざるをえないほど、拒否態度の状況が広がっていた。日本司法支援センターに対する制度の問い合わせでも、十月が百三十二件、十一月二十二日までには七百五十八件へと増大傾向だ。裁判員候補通知書を配布してから開設(12月1日)した最高裁の裁判員候補者専用コールセンターには、一万五千六百八十本の電話相談が寄せられ、その中で辞退に関する質問が約三千九百六十本だった。この傾向は、〇九年五月二十一日に接近すればするほど裁判員候補の拒否態度などが爆発的に増えていくはずだ。
 制度定着の任務を担わんと登場した竹崎最高裁長官は、「裁判員が参加しやすい状況を整えるため、候補者の都合を柔軟に判断し負担を軽減する」と危機意識丸出しで弁明した。また、裁判員制度の基本設計の中心メンバーであった四宮啓(早大法科大学院教授)にいたっては、「自分の問題にならなければ意識が高まらないのはある程度仕方がない」と本音を言い放った。あげくのはてに「模擬裁判に裁判役で参加した人に、経験や感想を積極的に語ってもらうのが効果的ではないか」などと制度の欠陥、問題点を検証し、掘り下げていく姿勢を投げ捨て、あくまでも強行突破を狙って声高に叫ぶことを繰り返しているにすぎない。

逆効果だった
NHK特集番組

 推進派の危機はこれだけではない。危機感をさらに促進する新たな事態が立て続けに発生している。現在、各裁判所でマスコミを動員しながら裁判員模擬裁判を行いながらキャンペーンを行っているが、逆に様々な問題点が浮き彫りになってしまっている。
 その中でも推進派が力を入れてきたNHKの裁判員制度に関する特集番組(12月6日)において、反対派のガス抜きとからめとりをねらったところ、逆効果の結末になってしまったのだ。制度の構造的欠陥、問題点、民衆の拒否意識がひろがっていることが全国放送によって明らかになってしまった。裁判員制度実施強行に反対する運動構築にとって民衆の主張を受け止めることは重要だ。そのための資料の一つとして、リストに加えたい。番組の内容は、こうだ。
 〇九年五月二十一日の裁判員制度強行を想定して第一部が「あなたは死刑を言い渡せますか ドキュメント 裁判員法廷」という模擬裁判。第二部は、「裁判員制度がはじまる 今夜とことん考えます 日本の、これから『裁判員制度』」と題する討論番組だ。
 模擬裁判は、企業・団体協力にもとづいて六人を抽選で選出した裁判員、元裁判官三人を配置。二人を殺害した強盗殺人事件の裁判だ。カメラは裁判員たちの内面に迫っていく。死刑または無期懲役という罪名を自ら判断しなければならないことの不安、心の負担、葛藤、守秘義務の強制への苦痛などをクローズアップしていく。
 しかし、カメラポイントは、やや裁判員の内的葛藤に比重を強めすぎてしまった(この側面自身は重要だが)。つまり、裁判員裁判実施強行の前段情勢にある中で、NHKの任務は、はっきりしていた。裁判員候補者選定から裁判所呼び出し、裁判官面接などのプロセス、とりわけプライバシー侵害、裁判員への強要、罰則規定など裁判員制度が憲法違反に満ちた欠陥、問題だらけの実態を暴くシーンを描き出すことによってバランスをとるということだった。しかし、タイトルで「死刑」を提示しているにもかかわらず、なんら死刑制度について掘り下げることもしなかった。最低限、国連総会第3委員会(人道問題)で11月20日、死刑執行の一時停止などを求める決議案を採択(賛成百五カ国)しているが、反対したのが日本、米国、中国、イランなど四十八カ国である事実。国連規約人権委員会が日本に対して死刑廃止へ向けた取り組みを求める勧告を含む最終見解を明らかにしている事実。死刑廃止の国際的流れが広がっているにもかかわらず、逆行して日本は死刑執行を増加している事実などを、なぜ取り上げなかったのか。客観的事実と冷静な評価を視聴者に伝えていくことがNHKの任務だろうが、「偏向」傾向に対する社会的批判が何回も指摘されてきたが全く生かされていないことを証明してしまった。

アンケートで
も批判と疑問

 第二部の討論では、裁判員制度に賛成、反対の意見を持っている二十人が参加。さらに制度推進派の最高裁判所刑事局総括参事官の平木正洋、最高検察庁裁判員公判部検事の上冨敏伸、日本弁護士連合会・弁護士の櫻井光政、四宮啓(早大法科大学院)が登場。バランスをとろうとして制度に課題があるという立場から土本武司(白鴎大法科大学院)、桂文珍(落語家)もコメントする。
 冒頭、司会者は、「半年後に始まる裁判員制度。話すなら今こそ」などと掛け声をかける。トップバッターは賛成意見だ。制度実施について「市民感覚を裁判に反映させるためにいいことだ」「決まったことなんだから、参加しながらよくしていけばいい」「裁判が短くなるなら賛成」「負担から逃げることはよくない」など、ほとんど無責任で、「よいしょ」の放談レベル。
 ところが反対、疑問派の意見は、「法律の知識がないのに裁くのはおかしい」、「死刑求刑する精神的負担に関わりたくない」「なぜ強制的に参加させられるのか」「制度導入の発端は、アメリカ年次改革要望書。司法改革審議会によってつくられた制度でしかない」「市民感覚を反映するという曖昧な目標。納得してない」「被告人の防御権が保障されていない」「公判前整理手続は、密室で行われ、弁護側が不利。争点を絞ってレール敷いてしまい裁判員はおかざりだ」「市民感覚とは何なのか。守秘義務はストレスだ。ケアも必要。三年後見直すとなっているがもっと早くしてもいい」「問題があるから見直すことを前提にしているのはおかしい」など制度の欠陥を突く核心的な意見のオンパレード。
 冤罪事件に巻き込まれた男性の発言シーンも放映。彼は懲役三年の刑に服し、刑務所出所後、真犯人が見つかるという冤罪事件だった。男性は、「自白調書の作られ方が問題だ。プロだって冤罪であることがわからないのに素人がわかるわけがない」と抗議する。
 番組では同時進行で視聴者に裁判員制度に関しての質問アンケートを行い、制度に対する批判・疑問の回答が多数という結果だ。
 問1 あなたは、裁判員として裁判に参加したいと思いますか。参加したい(2721人) そう思わない(6395人)
 問2  裁判が短くなることをどう考える? よい面が多い(2927人)  
 良くない面が多い(4531人)
 問3 市民参加で日本の裁判は良くなる? 良くなる(2931人)  良くならない(4497人)
 おそらくここまでは番組ディレクターの「想定」通りの進行であろう。裁判員制度は「問題あり」のトーンの押し出しだ。ところがだ! このような展開になることを事前打ち合わせで意志一致していたのにもかかわらず? 全国放送であるにもかかわらず推進派の上冨が「取り調べの可視化は本当に捜査として役に立つのか疑問」とどう喝し、平木が「プロと違う感覚を反映させていくことが求められている。裁判が身近になることが目的だ」とほぼやけっぱちで発言してしまった。困った櫻井は「裁判をよくしたいと思っている。市民が参加すればよくなるんだ」などと根拠を積極的に提示することもなく、打ち合わせとは違う展開に驚きながら、身勝手なシナリオにもとづく願望表明を行うという漫画的な立ち振る舞いの防戦一色となってしまった。

えん罪発生装置
になるのは必至

 大混乱をダメ押すラストシーン。参加者の一人が「制度に賛成だが、こんなに課題が山積。急に知らされたことは、国の告知不足だ。もっと広めてからスタートしても遅くはない」とアピール。会場から拍手が巻き起こってしまった。こんなシーンを想定していなかった、打ち合わせとは違った展開にあわてた司会者は、「国民的議論を繰り広げながら裁判員制度を行っていく必要がある」と必死で閉めざるをえなかった。番組はこのように裁判員制度の行く末を現してしまった。裁判員制度推進派は、とんでもない国営放送番組になってしまったとイライラしていることだろう。
 次に、裁判員制度の致命的欠陥を暴露したのが、広島高裁が「審理足りぬ」と批判して、一審破棄判決を出してしまったことだ(12月9日)。広島高裁は、〇五年十一月の小学生殺害事件(殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄罪)で広島地裁が無期懲役判決(06年7月)を出したが、「一審は審理を尽くしておらず違法」と断定し、差し戻すことを言い渡した。
 一審裁判では裁判員裁判のモデルケースとして公判前整理手続きを採用し、二十五時間(五日間)の集中審理だった。ところが検察は、ずさんな立証だったため途中で犯行場所の範囲を広げる訴因変更を行ってしまった。いいかげんな検察と連動して地裁は、裁判員裁判のモデルケースだとハリキッてしまい、なんとしてでも短期集中審理判決のために暴走してしまったのが真相だ。高裁は、あまりにもいいかげんな審理だったことがミエミエだったために、そのことが司法崩壊に直結する危機を直感し、「あいまいなまま判断するのは相当でない」と厳しく批判せざるをえないほど酷い審理だったのだ。裁判員裁判の「迅速・軽負担・平易化」という看板スローガンを先取りして実証するために、裁判所・検察が共同演出したのだが、とんでもない実態を浮き彫りにしてしまったのである。
 報道各社は、裁判員を長期間の裁判審理に拘束しないことを優先する裁判員制度の欠陥についてクローズアップ。「公判前整理手続きを急ぎすぎた」「死刑適用が争われている事件で表面化」「控訴審でその不備を指摘されるケースが続けば、裁判員制度自体が混乱し、候補者となった市民に不安が広がる」というコメントを同時に掲載したのである。しかし、この先には、冤罪事件を発生させる自動装置へと腐敗・堕落することが必至であることが明白なのに、その結論だけは触れようとしないことを厳しく指摘しておかなければならない。

広がる批判と
実施延期論

 新潟県弁護士会が「制度実施の延期を求める決議」を可決(〇八年二月二十九日)したことを皮切りに、栃木弁護士会(5月24日)も「裁判員制度の抜本的見直しと実施の延期を求める決議」を採択した。大分県弁護士会は、「裁判員裁判実施までに解決すべき課題」として「政府、国会、裁判所、検察庁、日本司法支援センターに対し、裁判員裁判において充実した審理を行うため、裁判員裁判実施までに取調全過程の録音・録画、全証拠開示、保釈の原則化、夜間・休日接見を実現し、審理日程及び審理期間について再検証するとともに適切な国選弁護報酬の実現を求める」ことを決議している(5月22日)。
 この流れは押し止めることはできない。八月七日、共産党と社民党が、裁判員制度の実施延期を決め、民主党も裁判員制度のあり方を検討するプロジェクトチームを立ち上げた。
 以上のように裁判員制度を延期しなければならない条件は出揃っている。この流れを止めることはできない。制度の疑問・反対派は、裁判員制度の欠陥と民衆の拒否態度の表面化のひろがりによって、ほぼ「延期」の要求でくくれるだろう。その根拠として、1、裁判員になることにたいして民衆の多数が消極的、否定的である。2、裁判員への条件不備(休暇制度と休業補償、託児施設や介護施設の準備)。3、裁判員の「守秘義務」などさまざまな罰則が設けられている。4、重大事件《死刑、無期懲役》が対象のため心理的負担がかかりすぎる。5、「公判前整理手続」導入によって冤罪を新たに生む危険性がある。冤罪を生まない制度の確立(被告人の防御権の保障と「公平な裁判」を受ける権利、身柄拘束の適正化、起訴前保釈制度の導入、代用監獄制度の廃止、ビデオ撮影による取調過程の保存、弁護人の取調立会権の制度化)が急務である。
 さらに根本問題として裁判員制度について日本国憲法になんら規定されていないだけではなく、制度自身が憲法第十三条「自由権、幸福追求権」、第十九条「思想及び良心の自由」、第十八条「苦役からの自由」、第三十二条と第三十七条「公平な裁判所での裁判を受ける権利」、第七十六条「裁判官の独立」)違反している。こんな実情に対して反対派は、裁判員制度を違憲とする訴訟を取り組み、制度延期・廃止にむけて踏み込んでいくだろう。

 読売新聞は竹崎最高裁長官就任にあたっての記事(11月26日)で、(制度に対して)「違憲の主張が続出する可能性もある。最高裁が新たな憲法判断を示す場合、裁判官全員による大法廷を開く必要があり、竹崎氏が自ら裁判長を務めることになりそうだ」と取り上げている。
 その通りだ。竹崎は、司法官僚機構のトップを担い、裁判員制度導入を先頭きって引っ張ってきた成果として、現役の十四人の最高裁判事を飛び越えて最高裁長官に就任した。裁判員制度に対する批判を払いのけ、違憲訴訟と真っ向と対決するバッターとして先制的に任務に就いたのである。
 制度批判が強まっているなかで最高裁事務総局の下に御用学者らをメンバーとする「裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会」を設置すると発表した(12 月10日)。制度防衛のために、お得意のヤラセの再現だ。宣伝機関として活躍させようとしているのだ。反対派は、このような目論見を許さない。有識者懇談会よ、「制度実施延期・廃止を提言せよ」と勧告しておく。裁判員制度反対運動の方向性と対決軸は、以上のように鮮明である。裁判員制度の09年5月21日実施強行を粉砕しよう! (遠山裕樹)

 

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