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日本経団連は16日、来年の春闘に臨む経営者側の指針となる「経営労働政策委員会報告」を発表した。その内容は「賃上げどころではない」とする一方、最優先だった雇用の安定についても「安定に努力する」と書くにとどめた。理由は言うまでもなく金融危機に発する急速な実体経済の収縮で「経営環境が危機的状況だから」だという。
『日経』17日によれば、この報告は夏から討議が始まり、10月中旬の第一次案では「増益で余力のある企業は賃上げしたほうがいい」という内容だったのが、11月上旬の第二次案では「雇用安定を最優先に話し合うことが求められる」と雇用確保に重点が移り、それがさらに発表文の「雇用安定に努力」という表現に後退したのだそうである。
これに対して、労働側の「連合」は来春、8年ぶりにベースアップを求める方針と伝えられる。「賃金を上げなければ(内需が拡大せず)経済は良くならない」(高木剛会長・16日)というのが、不況下であえて賃上げを求める理由である。
今や喫緊の社会問題にまでなっている非正規労働者の相次ぐ首切りについては「賃上げと雇用確保を両立させるのが労組の責任だ」(同)として、二正面作戦を挑む構えである。
労働組合の大義名分としてはこれが正しいのかもしれない。しかし、第三者の無責任な見方と言われるかもしれないが、この方針では賃上げも雇用確保もどちらも成果をあげられないのではないか。非正規労働者の雇用維持と賃上げは、収益増が見込まれる場合は両立しても、収益減、あるいはそれが見込まれる状況下では、企業における労働コストの奪い合いというトレードオフ(あちら立てればこちらが立たず)の関係とならざるをえない。
「連合」は正規労働者主体の組織である。おそらく各企業、あるいは各業種の連合組織の団体交渉では、そこで働く非正規労働者の代表としてその場に臨むことはないはずだ。だから非正規労働者の雇用維持を要求したとしても、それはたんなる「要望」にすぎない。経営側はそれに応答する義務はないと突っぱねるであろう。むしろ非正規労働者の首切りは正規労働者の雇用確保のバッファーである事実を突きつけられて、自分たちの賃上げ要求の矛先を鈍らせることにもなるであろう。
最近の経営側の動きを見ていると、彼らは自分たちの立場を守るために、周到な準備をして着々と手を打っているように見える。トヨタ、キャノン、ソニーといった超一流企業がわれ先にと需要減だ、大幅減益だ、操業休止だ、投資計画見直しだ、そして首切りやむなし!と、大声で触れ回っている。トヨタは今年3月期に2兆円を越える巨額の利益を上げたのに、それをいったいどこに隠して、3000人もの生首を切ろうというのか。
こういう会社がそろって騒ぎ立てれば、世人はそういうものかと思わざるを得ない。その準備工作の上で、以下に続く企業はあのトヨタやキャノンやソニーでさえ大変なのだからと、自分たちの合理化計画を文字通り合理化する。
全世界で16、000人のリストラを発表したソニーの中鉢良治社長は「雇用を優先して損失を出すことが、私に期待されていることではない」と言い放っている(『朝日』17日)。この人は一体誰に向かってこの言葉を発しているのか。そう聞けば、おそらく株主と答えるのだろう。しかし、本当にそうか。株主だって、業績のためには多くの人間の生活を台無しにしていいと思う人間ばかりではないはずだ。ましてソニーの製品を使って、ソニーを支えている多くの消費者は、たとえ一時的に損失を出しても働く人間の生活を守ることをソニーに期待しているのではないか。
この人が典型だが、企業を守るという大義名分は実は経営者としての自分の地位を守るためでしかない。「百年に一度の大恐慌に際して、果断なリストラで減益を最小限に食い止めた」と評されて、株主から、あるいは社内のライバルから身を守ることが最大の関心事なのだ。そのために多くの人間が寒空に放り出されようとしている。
こういう状況を突き破るには、より大きな正義を掲げるしかない。経済危機が真実だとしたら、それから生活を守る、それもみんなの生活を守ることが、これ以上はない正義のはずだ。正規労働者、非正規労働者といったところで、それは企業経営に都合のいいように分けられているだけのものだ。非正規労働者がいじめられれば、それはかならずいつか正規労働者にもはね返ってくる。だから同じ企業で働くものは正規、非正規の区別なしに生活を守ることを第一に、団結しなければならない。
そうは言っても、これは簡単ではない。そこで最大の労働者組織である「連合」の責任は重い。正規、非正規の分断を許さないために、「連合」は非正規労働者の雇用を守るためなら「賃下げもいとわない」という態度を明確に打ち出すべきだ。非正規労働者のリストラで節約される分を正規労働者が負担するのだ。本当に仕事が少ないなら、労働時間を短くする「ワークシェア」を実行するのだ。
「連合」はそれを大声で唱え、未組織の職場にもそれを実行するように訴えるべきだ。肩を並べて働いていた仲間が非正規だという理由で職場から放り出されるのを見るのは、正規労働者にとっても安堵と同時に後ろめたさを感じさせるはずだ。ここは思い切って肩を組むべきだ、多少の犠牲は覚悟しても。
大企業の周到な戦略配置を突き破るには、大きな正義と連帯しかない。「連合」の働き時だ。
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