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http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/164/index.html
12月12日、自民・公明の両党は、与党税制改正大綱を発表した。メディアで既に大きく取り上げられているので、ご存じの方も多いだろう。 報道では分かりにくいかもしれないが、現在の税制改革論議には2つの課題がある。1つは、今回発表された来年度の税制改正。もう1つは、2010年代前半に実現を目指す税制改革の「中期プログラム」の作成である。 いわば、短期政策である来年度の税制改正と、中長期政策である中期プログラムが同時に議論されているのだ。 中期プログラムについては、消費税引き上げの税率と時期を明記するかどうかが注目されており、今年中にまとまるかどうか予断を許さない状態だ。総選挙への影響を懸念して、増税については触れたくないという声が与党内に強いからだ。 こうした与党の態度に対して、メディアからは「増税幅に加えて、引き上げ時期の明記も先送りすれば、財政再建への道筋は見えなくなる」という声もあった。どうやら、メディアも消費税導入を前提として議論しているようだ。 だが、今回の税制論議では、もっと根本的なことが忘れられているのではないか。それは、現在の不況の分析とその効果的な対策は何かという点である。単に税収が不足しそうだからといって、広くとりやすい消費税を上げるのは間違っているとわたしは思うのだ。 現状においては一般庶民への減税こそが最大の経済対策中期プログラムの方向性については、柳沢伯夫自民党税調小委員長の発言から、うかがうことができる。それは、次の4本の柱からなっている。1.所得税の最高税率の引き上げ まず、1と2を聞いたところで、わたしは時代の変化を感じた。この2つは、小泉・竹中路線のときには絶対に考えられなかった方向性だ。金融資本主義、新自由主義の考え方では、金持ちが経済の牽引役だと考える。だから、金持ちを活性化するために減税し、その代わりに庶民に対して増税するというのが基本方針であった。今回の自民党税調の方針は、明らかにこれまでと逆を向いている。 これは世界の流れであり、オバマ米次期大統領もそうした発言をしている。庶民が金を稼げなくなったことが、景気失速の大きな要因であることに気がついたからだ。 自民党税調も所得税についてはオバマ大統領に倣ったのだろう。そうしたことが理解されてきたのかと、「よしよし」と思っていたところに、次に出てきたのが3と4であった。これを聞いて、わたしはがっかりしてしまった。この2つを重ねたら、1と2という所得税改革の効果は吹き飛んでしまう。 どうも、彼らは根本的なことを認識できていないようだ。現在は世界恐慌になりかねない経済状況なのである。何度かこのコラムで繰り返しているが、恐慌のメカニズムは、資本家の強欲が表面化して、働く人に富を分配しないことで進んでいく。資本家は、自分たちの所得を膨らませ、それをもとにどんどん投資を増やして事業を拡大する。 だが、買う側に金を渡そうとしないから、事業を拡大してモノやサービスをいくら作っても売れなくなってくる。やがて、一気に値崩れを起こしてデフレとなり、恐慌に陥っていくのだ。 こうした危険性があるときは、逆のことをすればいい。働く人がモノやサービスを買えるようにすること、つまり庶民に減税をするのが、最も効果的な経済対策なのだ。買う側に金がないのに、いくら法人税率を下げて設備投資をしてもダメなのである。 ただ、誤解していただきたくないのは、わたしは中小企業に重い税金をかけるのがいいといっているのではない。中小企業対策は、また次元の違う問題である。 日本の法人税の実効税率はけっして高くない日本は法人税が高いという思い込みがあるようだが、法人税の実効税率(国・地方合わせた法人課税の表面税率)は、すでに米国並みに下がっている。これは、日本政府自らが明らかにしていることだ。昨年11月に発表された政府税調(内閣府の税制調査会)の答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」(PDFファイル)のなかでも、国際比較をした結果、「我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないという結果も得た」としている。 もっとも、そう述べた舌の根も乾かないうちに、「こうした点を踏まえつつも、法人実効税率の引下げについては、当調査会の議論において、法人課税の国際的動向に照らして必要であるとの意見が多かった」としているのは理解に苦しむ。 様々な意見をすべて反映しようとした結果、こんなあきれた文章になったのだろうが、こうした矛盾した内容を政府文書として堂々と出す神経が理解できない。 それはさておき、経済の現状は、法人税率を下げて投資を促進してもだめなのである。 自動車産業を例にとって考えてみよう。ご存じのように、自動車の生産・販売が急激に落ち込んで、今は設備も人も余っている。だが、設備が遊んでいて人が働けないのは、国全体で見て損だと考えなくてはいけない。 販売台数の落ち込みは、車が不要になったことが主原因ではない。郊外や地方にいけば、車はやはり生活必需品である。多くの人は、収入が減ったために買い替えを先延ばししている状態なのだ。最近の車は出来がよくなってきたので、もう少し乗ろうと思えば乗れる。 もちろん、先延ばししても、いつかはそれに対応して設備投資をしなくてはいけない。だが、ちょっと景気が回復したときに一気に生産台数を上げようとしても難しいし、非効率である。それよりも、今のうちに安定して売れるようにするのが効率的であり、国として正しいやり方である。 では、どうしたら車が安定的に売れるようになるかといえば、庶民の手元に金が回るようにして、車を買えるようにするのが最大のポイントである。 それなのに、消費税を引き上げて庶民の生活を追い詰めたら、消費のマーケットが縮小してしまい、モノやサービスが売れなくなってしまうではないか。 金融資本主義の亡霊にとりつかれている自民党税調先に紹介した自民党税調の方針によれば、消費税を増税する代わりに所得税を減税するという。それでバランスをとろうというのだろうが、おそらく個人レベルではプラスにならないはずだ。まず、庶民のレベルでは、消費税率が引き上げられたら所得税の減税分は吹き飛んでしまう。例えば、年収400万円の世帯の場合、消費税率が5%引き上げられると、年間14万円ほどの負担増になる。しかし、年収がこのくらいだと、年間の所得税は6万円前後のはずである。たとえ、所得税が全額免除になったとしても、トータルで増税になってしまうのだ。 それだけではない。自民党税調の方針通りに進めば、高額所得者に対する増税効果も意味をなさなくなってしまう恐れがある。なぜなら、所得税の最高税率を引き上げても、法人税率を引き下げてしまうと、会社経営をしている金持ちにとって大きな抜け道ができてしまうからだ。 現在、高額所得者が負担している所得税の最高税率が40%、法人税も法人事業税を含む実効税率が40%となっている。もし、ここで所得税の最高税率を引き上げて、法人税率を下げたらどうなるか。金持ちがとる行動は明らかだ。自分への報酬額を減らして、経営している会社にプールする。そして、自分の支出を会社の交際費として使うわけだ。そう行動されたら、金持ちにとって実質的な減税になってしまう。 全くばかばかしい税制改正方針ではないか。金融資本主義、新自由主義の亡霊に取りつかれているから、こんな愚かな考えが出てくるのだ。 もっと経済の現状をよく分析して、金融資本主義に対する根本的な反省をしたうえでやり直すべきではないか。金融資本主義に乗ったまま、ちょっと目先を変えて済むような問題ではないのだ。 |
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