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2008年11月10日
「好戦の共和国アメリカ」を読んで日米同盟の将来を考える
田母神問題が起きて以来、歴史のことばかり書いて恐縮だが、やはり史実を知る事は今を語るときに重要だと思う。
週末をかけて「好戦の共和国アメリカ」(油井大三郎著 岩波新書)を通読した。
その感想の一端を紹介したい。
この新書は、著者自身がそのあとがきで書いているように、オバマ新大統領が誕生したら米国の好戦性は果たして変わるのか、という問題意識をもって、アメリカの戦争史を振り返ったものだ。
その意味で極めてタイムリーな本である。
日米同盟を考える上で必読の書である。
この書を企画してから出版にこぎつけるまでに、著者は6年もの歳月をかけている。
現代史を専門とする著者は、植民地時代や19世紀のアメリカ史については知識不足であったが、「建国期をきちんと勉強しないとアメリカはわからない」と教える恩師の言葉に従って、植民地時代や独立革命期をあらためて研究した上で書いたという。
その学者の労作を、わずか780円の新書で通読できるのだ。
十分理解したのか、学んだ事をどれだけ覚えていられるか、そこが問題である。
しかし、繰り返し述べているように、我々は学者や専門家の労作を通じて、歴史の一部を知りうる。
著者に感謝しつつ、同時に米国の歴史に関するおびただしい研究のほんの一部を知りえたに過ぎない、という謙虚な気持ちで、われわれは歴史認識に向かわなくてはならない。
そう言いながら、いつものように独断的な私のまとめを以下に羅列してみる。
1.建国以来の230年余りの米国の歴史は、まさに戦争の歴史であった。
2.「テロとの戦い」に見られる市民、女性、子供への無差別攻撃の原型は、先住民(アメリカインディアン)との戦いに見つける事ができる。
その背景にある考えは、彼らを「野蛮、悪魔」視、差別視することであり、それによって虐殺を正当化する事である。これこそが米国の戦争に通底するものである。
3.米国の指導者の中には、好戦的な指導者だけでなく、反戦思想を持っていたと思わせる指導者も勿論いた。
しかし、リンカーン大統領からケネディに至るまで、好戦的でないとされる指導者も、最後は好戦的な米国の指導者に終わってしまう。そうでなければ政治的にもたない。
4.米国の戦争を国民の大勢は認めてきた。反戦思想家や運動家は存在し、反戦、厭戦機運が高まる事はあっても、彼らが国民の大勢になることはなかった。
5.国民を好戦的に纏め上げるため、情報操作(米西戦争のきっかけとなったメイン号事件、ベトナム北爆のきっかけとなったトンキン湾事件、など)とスローガン(「アラモ砦を忘れるな」からはじまって、「パールハーバーを忘れるな」を経て今は「9・11を忘れる」)が使われる。
6.これを要するに米国の戦争は、@軍事力による領土や市場の拡大を当然視する、A軍事的な「勢力均衡」が崩れた場合はただちに軍事力に訴える、B国土や国民の防衛のために戦争を正当化するC「民主市議のために世界を安全にする」という理想主義で戦争を肯定する
という傾向が米国の戦争に読み取れるという。
そして油井氏は、イラク戦争を批判する一方でアフガン戦争の完遂を主張するオバマ次期大統領に、このアメリカにおける「好戦性」の根深さを感じざるを得ない、と言う。
このような歴史的考察もさることながら、私はこの著書で見つけた次のようなエピソードに新たな発見の喜びを感じるのである。
つまり東京大空襲を主導したカーチス・ルメイは、ベトナム戦争では空軍参謀長になっており、北爆の指揮をとっていた。
そのルメイが北爆によって「ベトナムを石器時代に引き戻す」と豪語したというのだ(「好戦の共和国アメリカ」191ページ)。
どこかで聞いた事のあるせりふだと思ったら、アーミテージ元国防、国務副長官のせりふだった。
パキスタンのムシャラフ大統領が「米国の言う事を聞かなければパキスタンを石器時代のようにするぞ」、と脅かされたとメディアに語ったあのせりふだ。
そういえばアーミテージもまたベトナム戦争で獰猛に戦った一人であった。
そのような米国と日本が真の軍事同盟関係を維持することが日本にとって最善なのか。
そもそも米国は日本を真の同盟国と思っているのか。
日本政府関係者は、米国が日米同盟関係を米英同盟関係のようにしたいと言う言葉を真に受けて歓喜している。そうありたいと願っている。
しかし、米国が本心からそう言っているのか。
1902年以来維持してきた日英同盟を英国に破棄させたのは米国であった(同、137ページ)。
日本は米国という国をを正しく理解し、国民にとって最善の日米関係を構築していかなければならない。
オバマ大統領の誕生をその契機にしなければならない。
誰が米国の大統領であって同じだという主体性のなさが、正しい筈はない。
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