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現代ほど成果主義と効率主義が幅をきかせている時代はこれまでにないだろう。東京新聞「社説」が、月刊誌「経済」(新日本出版社)のインタビュー記事でノーベル物理学賞を受賞した益川さんが紹介した例え話などをもとに、「成果と効率」のみを追及する風潮に警鐘を打ち鳴らしている。一体どういうことか?
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008110902000104.html
【社説】
週のはじめに考える ノーベル受賞者に学ぶ
2008年11月9日
重苦しい閉塞(へいそく)感を吹き飛ばしてくれた日本人四人のノーベル賞。過去の受賞者を含め、彼らの言葉から社会のあり方を考えるヒントが読み取れませんか。
名古屋市中区の愛知県図書館の一角に「ノーベル賞と13人の科学者たち」という展示、貸し出しコーナーが設けられています。
今回受賞が決定した南部陽一郎さん、小林誠さん、益川敏英さんの物理学賞三人と、化学賞の下村脩さんら科学部門の十三人の著作や関連資料が集められています。
「宇宙論と統一理論の展開」といった書物はさすがに敬遠しましたが、講演録や対談集には多くを教えられました。
◆変化に耐え得る学問を
益川さんが月刊誌「経済」のインタビューでこんな例え話を紹介しています。和歌山の柿栽培農家で収穫増のために柿の畑にハチをたくさん放したところ、受粉の効率がよくなり、最初の一、二年は収穫が三倍くらい増えたのに、数年後、どうにも実のなり方が悪くなったというのです。
調査した研究者によると、ハチの強制的な受粉により、柿の木の体力が弱ってしまったのだそうです。成果を急ぎすぎたのです。先日の本紙座談会での小林さんの言葉を思い出しました。
「(学問の環境が)成果主義とか、応用中心とかに偏りすぎていることを心配している。基礎科学を軽視し、目に見えるような大きな刺激だけを求めているのではないか」。続けて益川さん。「科学は基礎科学が上流で、下流まで五十年、百年かかる。『今、受賞した。万歳』だけでは困る」
素粒子論の標準理論といわれる「小林・益川理論」は実に三十六年前の発表です。化学賞の下村さんがオワンクラゲから緑色の蛍光タンパク質を見つけたのは、その十年も前です。時代と変化に耐え得るのが基礎学問でしょう。
◆時代に合った価値観を
ところが学問の世界に限らず、成果主義が幅を利かせています。底流には売買可能な社会があります。あらゆるものがその品質を見るより、カネと量で測られるのです。そこからある種の価値観がもたらされています。市場競争原理がその一つです。柿の木とハチの話が教えるように、便宜的で功利主義的で短期的な価値観です。
市場原理をすべて否定するつもりはありません。でも強欲の論理が支配した金融の危機が、大恐慌の際まで世界を追い詰めました。
学問に限らず、政治、経済も最終的には人々の生活に役立つためにあるべきです。その観点に立って、人間主義とでも名付けるべき価値観や原理を構築すべきです。次の四つの課題で考えます。
第一は、少子高齢化への対応です。年金、医療、介護という社会保障をどうするか、消費税だけでなく各種税制の抜本見直しも必要になるでしょう。給付と負担の分担割合など、生活者を納得させる長期ビジョンが欠かせません。
第二は、東京一極集中の是正です。つまり地方分権の推進です。補助金、地方交付税、税源移譲を一体として行う「三位一体」は地方を疲弊させただけで終わったとの批判があります。地方自立への制度、経済振興策が必要です。その青写真は描かれていますか。
第三は、教育と治安の劣化です。背景に、学校教育の限界、子どもたちのコミュニケーション能力不足、随所で崩壊現象が見られる家庭、ワーキングプアの増大などが指摘されています。この病状への処方箋(しょほうせん)は用意されていますか。
最後は、低炭素社会への取り組みです。これは北海道洞爺湖サミットの議長国としての国際公約であり、景気が後退しても地球温暖化対策に手を抜くわけにはいきません。
こうした問題の解決には、社会全体を見通した基本設計図が欠かせません。米国は初の黒人大統領を選ぶことで「変革」へのダイナミズムを見せつけました。日本にも力強くてしなやかな変革を担う指導者がいるでしょうか。
ノーベル賞学者に戻ります。横浜市の女子中高校に招かれた物理学賞の小柴昌俊さんは「二十一世紀を担う若者たちに何を望むか」と問われて、こう答えました。
「皆さんにお願いします。結婚をして、昔のように五人も六人も子どもを産んでください」
◆子育て安心の社会を
将来を見越し、多くの人材が要ることを率直に表現したのでしょう。それには安心して子どもを産め、育てられる社会でなければなりません。その社会を築くのが政治家ら大人の仕事のはずです。
いま大切なことは、政治家たちに国民の声をぶつけることです。税金のこと、年金のこと、雇用のこと、暮らしの困り事を粘り強く訴えていく。民主的な社会づくりは強力な民意の支えがあってこそです。
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