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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081027ddm003010220000c.html
読む政治:世論調査データ追跡 食い合う自・民 都市と地方、基盤変動
自民党の加藤紘一元幹事長は森内閣時代に「1区現象」という政界用語を流行させた。自民党は農村部で比較的安定しているものの、都道府県庁の所在地にあたる都市部の各衆院1区は要注意という警句だった。
ところが、世論調査のデータを追跡してみると、自民党にはもはや農村部での優位性はなく、むしろ都市型政党と言われてきた民主党から大幅に侵食を受けていることが分かる。
本社の世論調査結果から政党支持率の推移を見ていく。小泉内閣時代の自民党は、支持率で常に民主党より勝っていた。その差は10ポイント以上開く場合が多かった。しかし、安倍内閣の後半には徐々に差が縮まり、昨年7月の参院選直前には自民22%、民主24%と小泉内閣以降初めて逆転した。その後は両党の競り合いが続いている。
さらに両党の支持率を、回答者の住む場所から「市部」(東京23区を含む)と「町村部」に分けて比較してみると、従来のイメージとは裏腹の特質が浮かび上がってくる。
それは、自民党の地盤とされてきた町村部で民主党は自民党と互角以上の支持を獲得し、逆に自民党は町村部で目減りした支持率を市部で稼いでいるという実態だ。
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自民党の強みは一貫して農林漁業が主体の町村部にあった。都市部の無党派層を取り込んだとされる小泉時代に入っても、自民党の支持率は町村部が市部を上回り続けた。民主党との開きも、市部よりは町村部の方が大きかった。
それが、03年11月の衆院選前から町村部での両党支持率は次第に接近し始め、05年8月にはついに24%と同率で並んだ。
その後、自民党は上下しながら町村部での支持率を緩やかに落とし、逆に民主党は上昇させたため、安倍内閣の末期からは町村部での民主優位がしばしば出現するようになった。
直近の世論調査(今月18〜19日)でも、この傾向は変わらなかった。町村部での支持率は自民29%に対し、民主は34%。市部の支持率分布(自民24%、民主26%)以上に民主党は町村部で自民党との差を広げている。
03年時点で約3200あった全国の市町村数は、「平成の大合併」により1800を切るまでに再編が進んだため、町村部の人口比重は大きく低下した。それでも民主党が町村部での支持率を上向かせているのは、構造的な要因があるように思われる。
◇転機は郵政解散
町村部で自民、民主両党の支持率が並び、調査の転機となった05年8月は、小泉純一郎元首相による「郵政解散」が行われた時期だ。自民党の歴史的勝利の陰で見過ごされたが、町村部で静かに進んでいた伝統的な自民党支持層の離反と、民主党の受け皿機能が調和した結果と推定される。
この傾向が一層著しくなるのが、07年7月から9月にかけての調査結果だ。安倍内閣の下で自民党が惨敗した参院選直後にあたるこの時期、町村部での民主党支持率は急伸し、自民党の2倍近くになることもあった。
自民党の敗因は「消えた年金」問題や相次ぐ閣僚の不始末などが指摘されたが、小泉内閣以来続いていた都市重視の政策に、地方の不満が高まったこともその一つに数えることができる。参院の議席は、衆院に比べて都市部より地方に手厚く配分されているため、地方の支持を得た民主党の地滑り的な圧勝となったと思われる。
埼玉大経済学部の松本正生教授(政治意識論)は「支持構造の質的転換があったからこそ、07年参院選で民主党は自民党を離れた有権者の受け皿になることができたのだろう」と分析している(「改革者」8月号)。
◇勝敗決めるのは…
地方重視政党への脱皮は、小沢一郎氏が民主党代表に就任以来進めてきた党風刷新活動だ。小沢氏は「生産性の低い産業、生産性の低い地方は切り捨てても仕方がないという考え方で政治が行われている」と自公政権を批判する。農家への戸別所得補償制度の創設は選挙戦略でもある。
民主党は今年7月、地方公聴会を、長崎県五島市を皮切りに、福島県いわき市、青森県八戸市、佐賀県多久、神埼両市で開催した。都市部を避けての会場設定だった。
かつて「1区現象」を憂えた加藤氏は「民主党が、自民党からこぼれ落ちた地方の票を集めたのは確かだ。小沢さんは演歌の人で、小泉さんや麻生(太郎首相)さんのようにポップスの人じゃないから、地方に浸透しやすいのだろう」と語る。
対する自民党はどうか。地方再生担当の首相補佐官に任命された山口俊一氏は今月9日、自民党内の会議で報告した。「総理から『地方を何とかしろ。地方対策が総選挙の勝敗を決するんだ』と言われました」。与党の追加景気対策では、農家への補助金上積みが検討されている。【編集委員・古賀攻、相良美成】
毎日新聞 2008年10月27日 東京朝刊
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