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2008年11月 6日 (木)
日米株価反落と金融機能強化法審議への監視
10月24日に発行した『金利・為替・株価特報2008年10月24日号』(077号)タイトルを「木枯らし前の小春日和に惑わされるな」とし、第1節「急落した日米株価」に次のように記述した。
「2008年7−9月期の金融機関決算が発表されて、株価は急落した。各国政策当局は10月10日から11月15日にかけて、あらゆる政策努力を示すと考えられる。巨額の公的資金も用意され、使われるだろう。金利引き下げと財政政策発動も迅速に決定されると考えられる。
10月下旬から12月初旬にかけて、金融市場は小康状態を取り戻す可能性がある。世界の株価が10−15%程度、反発することもあり得ると考える。
しかし、中期的な楽観は許されないと思う。季節で言えば、厳冬はこれから到来するのではないか。政策当局の対応により、一時的な安定がもたらされても、春が到来するのではないと思う。小春日和とは、木枯らしが吹く前に、春でも来たかのような穏やかな天候が訪れることを言う。小春日和につられて、冬仕度を中止すると、厳冬の到来に対応できない。先行き警戒感を緩めぬことが求められる。」
NYダウは10月27日に8175ドルまで下落し、2003年4月1日以来、5年7ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価は10月27日に7162円と1982年10月7日以来、26年ぶりの安値を記録した。
10月29日に日銀の利下げ観測が報道され、内外株式市場で株価が反発した。NYダウは11月4日に9625ドルに反発、日経平均株価は11月5日に9521円に反発した。安値からの上昇率はNYダウが17.7%、日経平均株価が32.9%に達した。
しかし、11月5日、NYダウは前日比486ドル安の9139ドルに、11月6日、日経平均株価は前日比622円安の8899円に反落した。急ピッチの株価反発に対する警戒感が強まったことが背景であると考えられる。
11月14、15日に米国ワシントンで20ヵ国による首脳会議が開催される。首脳会議に先行して13日には財務相会議が開催されることになった。首脳会議は米国のブッシュ大統領が主催者であるが、米国では11月4日の選挙でオバマ民主党上院議員が次期大統領に選出されることが確実になった。首脳会議にオバマ次期大統領が出席するかどうかがひとつの焦点だが、現段階では流動的である。
11月7日には10月米国雇用統計が発表される。米国経済は2008年7−9月期にマイナス成長に転落したが、2009年1−3月期までマイナス成長が持続するとの見通しが有力である。
デリバティブ金融商品の一類型であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場だけでその規模は60兆ドル(約6000兆円)に達しており、デリバティブ金融バブル崩壊に伴う金融機関損失が最終的にどこまで拡大するかは、現段階で特定されていない。
米国政府は10月3日に成立した金融安定化法によって7000億ドルの公的資金枠を確保し、そのなかの2500億ドルを資本増強に充当することを決定した。また、政府系住宅金融公社(GSE)支援に2000億ドル、保険会社AIG救済に850億ドルの公的資金を活用することをすでに明らかにしている。
合計1兆ドルを超す公的資金枠を確保して金融危機に対応する姿勢が示されているが、金融市場の不安心理は消滅していない。
日本でも金融機関の資本増強策として、期限の切れた金融機能強化法を改正する法案が国会で審議されているが、金融機関の責任追及と金融システムの安定確保とのバランス確保についての国会での同意が成立していない。
日本の場合、民主党を中心とする野党は、農林中金と新銀行東京に対する監視を強化することを強く求めている。農林中金はJAバンク(旧農協)、各都道府県の信用農業協同組合連合会(信連)を下部組織に持つ系統金融機関の中央組織であり、歴代理事長に農水省事務次官経験者が就任する官民癒着を象徴する金融機関である。また、自民党の有力な支援組織としての性格も備えている。
農林中金は系統金融機関から預託された資金の多くを内外の有価証券で運用する代表的な機関投資家のひとつである。1992、93年に問題になった住宅金融専門会社(住専)の不良債権処理では、6850億円の公的資金を農林系金融機関に投入することが大きな政治問題になった。
米国の金融危機で焦点となっている政府系住宅金融公社(GSE)のファニーメイとフレディマックが発行、保証する債券は5.9兆ドルに達しており、米国財務省証券発行残高を上回っている。米国金融危機の中核がこのGSE経営危機にあると言っても過言ではない。
農林中金は日本で最大のGSE債券保有金融機関である。2008年6月段階で保有債券の額面は5.3兆円に達している。11月6日の日経新聞報道によると、農林中金は2009年3月期通期決算の経常利益予想を当初の3500億円から1000億円程度に引き下げるもようである。また、2009年9月中間期の経常利益は200億円程度に激減する見通しである。
農林中金は米国の金融危機が表面化した当初から、日本の金融機関でもっとも大きな打撃を受けることが予想されてきた金融機関である。ハイリスク・ハイリターンを追求する投資行動を展開し、その結果として巨額損失が発生する場合、その責任は当事者である金融機関自身に帰せられるべきであることは当然だ。
自民党は総選挙で有利な結果を得るために農林系金融機関への責任追及なき公的資金投入をごり押ししようとしていると見られるが、こうした公的資金投入は金融機能強化法の基本目的から逸脱しており、まったく正当性を有していない。
また、新銀行東京については、設立当初より、政治家による融資斡旋の不透明性が指摘されており、現在捜査が行われている詐欺事件に象徴される、不祥事がまだ多く残されているとの見方も強い。
先の都議会では新銀行東京の損失を穴埋めする追加出資が与党の賛成多数で強行されたが、さらに損失が拡大している。新銀行東京の経営危機は米国の金融危機とは独立した重要な問題であり、金融危機対応に名を借りた公的資金投入が認められるはずがない。
農林中金に対する公的資金投入について、国会の事前承認を求めること、新銀行東京を金融機能強化法の対象から外す、との野党の要求は当然であり、政党である。
自公政権は11月6日に法案を衆議院で通過させたが、参議院では野党が主導権を握り、法案が修正される見通しである。麻生政権が金融システム安定と金融機関の自己責任の両者を重要視するなら、参議院で修正される法律案を承認するべきだ。
麻生政権が金融危機への対応を総選挙に向けての利益誘導策に悪用するとの姑息な姿勢に固執して、野党が求める正当な法案修正を拒否するなら、11月14、15日の首脳会議までに、日本の資本増強政策を確定することは困難になる。
金融システムの安定確保と、適正な責任追及の両立は、今回の世界規模の金融危機を打開するうえで、どうしても解決しなければならない関門である。欧米でも金融危機の切迫感が強まり、責任追及を伴わない公的資金活用が横行している傾向が強いが、最終的には、両者が満たされる問題処理スキームが示されなければ、危機対応策は立ち往生することになるだろう。
各国政策当局は財政・金融政策を総動員して世界経済の悪化緩和に注力することになる。こうしたマクロ経済政策と公的資金を活用した金融システム安定化策の全面的な発動により、危機は回避されることになると考えられるが、本格的な公的資金活用が認められるためには、責任ある当事者の責任追及が不可欠でなる。この問題が現段階では解消されていない。
日本政府は首脳会議で日本の外貨準備の流用を求められる可能性があるが、安易な協力を約束することは許されない。外貨準備の源泉が国民の税金であるにもかかわらず、現状では外貨準備に対する国会の監視が十分に行き届いていない。政府・財務省の一存で外貨準備の取り扱いを決定する法的正当性は存在しない。政府・財務省の独断による外貨準備の流用は財政法に違反する行動だと考えられる。
今後の金利・為替・株価の見通しについては、『金利・為替・株価特報2008年11月8日号』に記述する。内外株式市場は12月にかけて安値圏内でのもみ合いを示す可能性が高いが、2009年に向けての中期的な展望を的確に保持することが重要である。
金融機能強化法改正論議は、やや専門性の高い法案審議だが、金融問題処理における極めて重要な問題を内包している。与党が数の力によって、不正と欺瞞に満ちた法案成立を強行することを断固阻止しなければならない。
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