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道路特定財源 首相の「言葉」が軽すぎる【西日本新聞】
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/61237
2008年11月22日 10:45 カテゴリー:コラム > 社説
発言が批判や反発を招くとすぐに撤回したり、修正したりする。言葉の軽さが混乱に拍車をかけ、自らの威信を失墜させていることに、麻生太郎首相は気付いているのだろうか。
首相は来年度からの道路特定財源の一般財源化に伴い、国から地方へ1兆3000億円以上を移譲し、このうち1兆円は使途を縛らない交付税とすると明言した。19日のことだった。
道路特定財源から地方へは、使途を道路整備に限定した地方道路整備臨時交付金7000億円と補助金6000億円の合計1兆3000億円が配分されている。首相の発言が実現すれば、地方の取り分は増えるうえに使い勝手が良くなる。全国知事会での発言であり、出席した全国の知事からは歓迎する声が上がった。
だが、喜びはつかの間だった。首相が翌日昼には、1兆円は交付税に限る必要はないと修正したからだ。
この問題は、首相が10月下旬の会見で1兆円を国から地方へ移すと発言したことから、混乱が始まった。首相が真意を説明しなかったためである。
一般財源化でなくなる道路整備臨時交付金に3000億円を上乗せして1兆円と国土交通省は解釈した。これに対し、総務省は1兆円を増やし合計1兆7000億円と主張した。道路予算の切り崩しを抑えたい道路族議員と、地方予算を拡充したい地方自治体がそれぞれの応援団だ。
与党は、地方への配分は道路整備など公共事業に使途を限定した交付金とする案を検討していた。首相の発言修正は、道路族議員ら与党内の反発に配慮した結果なのだろうが、この日夜には再び交付税とすることを示唆した。
発言を修正したのは、これだけではなかった。やはり19日に表明していた郵政会社の株式売却凍結方針も、株価など経済状況を見ながら売却すると言い換えた。「(医者は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」との発言は、日本医師会から強い抗議を受け、謝罪したうえで撤回した。
こうも発言がころころ変わるようでは、首相としてのリーダーシップは発揮できない。早晩、政権担当能力を問う声が高まるのは必至だろう。
一連の発言を聞いても、地域づくり、郵政民営化、医師不足などの問題をどうするのか、首相の目指す姿は見えて来ない。選挙で頼りになりそうな勢力向けに、リップサービスを繰り返しているようにも思える。国民に分かりやすく説明しようとの姿勢は感じられない。
とくに一般財源化される道路特定財源は、税収が落ち込む中での貴重な収入だけに、発言の迷走は看過できない。財政の効率化を重視し、より重要な施策に使うべきである。そうでなければ、税金を納める自動車利用者の理解を得るのは一層困難になろう。人気取りの「ばらまき」の財源とすることは許されない。
=2008/11/22付 西日本新聞朝刊=
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