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2008年11月21日 (金)
首相の資質を欠く麻生首相
麻生首相が私立幼稚園PTA全国大会で驚きの挨拶をしたが、「カナダde日本語」の美爾依さんが挨拶を伝えるニュース報道の動画をアップしてくださった。
麻生首相は挨拶のなかで次のように述べた。
「普段からー、お子さん、預かっておられるんだと思いますがー、そのー、お子さんの後ろにくっついている親で苦労してるでしょ。」
会場から笑いがこぼれたため、麻生首相はしたり顔で続けた。
「子供よりは親で苦労しているんだと、私はそう思ってんだけど。」
調子に乗った麻生首相の言葉が勢いをつける。
「やっぱり家庭の力が、たぶんなくなってきているんだと思いますね。」
「じいさん、ばあさん、やかましいおやじさんの存在が薄くなってきたせいもあって、幼稚園で何とかしろと負担が掛かってきている。しつけるべきは母親だ。」
しかし、会場の空気は冷え込んだ。カメラは冷え切った会場の様子をよく捉えている。動画の威力は大きい。渋谷事件での警察のよる不当逮捕も動画が決定的な証拠になるだろう。
PTAの大会だから、幼稚園児の親、母親が全国大会出席者の中心だった。その親に対して、「お子さんの後ろにくっついている親で苦労しているでしょ」と述べるのだから驚く。
幼稚園の先生の会合と勘違いしたのではないかと見られるが、原因は麻生首相の準備不足にある。
本ブログ9月23日記事に「首相の資質を問われる麻生太郎氏」と題する記事を掲載した。私は一国の首相の資質に関わる重要事案として三つの問題を提示した。以下が記事で記述した三つの問題だ。
第一は、政策主張の一貫性である。麻生氏は小泉政権の発足から2003年9月まで、自民党政務調査会長を務めた。政調会長は政策立案についての自民党最高責任者である。麻生氏は小泉政権の経済政策の最高責任者だった。小泉政権は「景気よりも目先の財政収支改善を優先」したが、現在の政策スタンスと明確な違いがある。政策についての主義主張を貫くことよりも、ポストを獲得することが優先されたのだと思われる。
理念や哲学よりも私的な利益を優先する行動様式が示されている。国民に対して解散総選挙を宣言し、総選挙で勝利して初めて天命を担うことができると明言しておきながら、選挙で惨敗する予想が示されると、恥も外聞もなく総選挙を先送りする姑息な行動は、現世利益優先の行動様式から導かれているのだと思われる。
第二は、後期高齢者医療制度や年金記録改ざん問題に対する発言迷走だ。麻生首相は福田政権末期に福田政権の閣僚である舛添厚労相が、福田首相の了解も取らずに麻生政権が実現した場合に後期高齢者医療制度の年齢区分を見直すと表明したことを明らかにした。舛添厚労相の行動は、人間としての信義則(しんぎそく)に反する行動だ。
麻生政権では定額給付金構想についても、首相が「全世帯」と明言した直後に、閣僚が「所得制限を設ける」と発言して混乱を招いた。首相が「道路特定財源から1兆円を使途自由の交付税を地方に配分する」と発言すると、自民党道路調査会幹部から「交付金を交付税と読み間違えたのではないか」と揶揄(やゆ)される。
組織を強固に保つためには、組織のトップがすべてを統率しなければならないし、組織の構成員は組織トップの権威を守らなければならない。組織のトップが言葉の重みを十分に認識して言葉を発し、上意下達(じょういかたつ)が徹底されていれば、無用の混乱を避けることができる。
第三は、麻生氏の説明が正確でないことだ。麻生氏は自民党総裁選で、「目先の財政収支よりも経済悪化を回避することが重要だ」と述べた。この見解は私の持論でもあり正当だと思うが、繰り返し例示した1997年度の事例が事実と大きく異なっていた。
麻生氏は「橋本蔵相の時代に消費税で5兆円、社会保障負担増加で4兆円、合わせて9兆円の増収を図ったが、結果的に税収は4兆円減少した。プラスマイナス13兆円も税収の見積もりを誤った」と繰り返し発言した。
97年の事例をあげたのだと考えられるが、事実は以下の通りだ。
政府が実施したのは「消費税増税5兆円、所得税増税2兆円、社会保障負担増加2兆円の合計9兆円の国民負担増加策」だった。政府税収見積もりは59兆4812億円だったが、実績は53兆9415億円にとどまった。97年度税収は96年度税収よりも1.9兆円増加した。つまり97年度税収は「7兆円の増税を実施したが1.9兆円しか増えなかった」というのが実態である。
「9兆円増税したのに4兆円税収が減少して、13兆円見積もりを誤った」事実は存在しない。また、97年度は橋本政権の時代で、「橋本蔵相の時」との発言も事実と異なる。私は麻生氏も出席した研究会で、「97年度に橋本政権が9兆円の国民負担増加策と4兆円の公共事業削減を実施し、13兆円のデフレ策を実行した」と説明したが、麻生氏はこのことと混同したのかもしれない。
ポイントは、麻生氏の説明が不正確であることだ。郵政株式の売却凍結、道路特定財源の一般財源化、など重要問題に関する麻生首相発言でも、首相発言の詳細(しょうさい)がぐらぐら揺れ動く。その理由は、最初の発言の段階で首相が詳細(しょうさい)を完全に把握していないことにあると思われる。
これらを通して考えてみると、やはり麻生首相の総理大臣としての資質に問題があるのだと思われる。
政治家として第一に求められることは、政治理念、哲学が明確で、ブレないことだ。目先の利害で主義主張がブレる政治家を信用することはできない。目先の財政収支よりも経済の回復が優先されるべきと考えるなら、なぜ、2001年度から2003年度の小泉政権の経済政策に異を唱えなかったのか。ポストを得るために政治信条、政策哲学をくるくる変える政治家を信頼することはできない。国民生活を大切にするとの約束も、麻生首相の個人的利害でいつ反故(ほご)にされるか分からない。
また、組織を一枚岩に保たなければ、政治の激流を乗り越えてゆけない。発言をころころ変える行動が国民の信頼を失わせるし、閣僚が首相と異なる見解を不規則に示すことが常態化すれば、もはや政権の体をなさない。
もっとも大切なことは、国民の生命、財産、生活を守るために、首相が政策運営に全身全霊を注がなければならないことだ。首相を目指し、総裁選に立候補するなら、水も漏らさぬ理論武装することは最低限必要だろう。4度も総裁選に立候補しながら、総裁選で何度も説明した最重要の政策提言の根拠で、事実すら正確に把握していないのは致命的だ。橋本首相の時代(1996−98年)と橋本蔵相の時代(1989−91年)はまったく異なる時代だ。
郵政民営化、道路特定財源、定額給付金など、首相が発言するなら、事前に詳細(しょうさい)を徹底的に詰めて、完全に理論武装して示すべきだ。そのためには、自宅に早めに帰って勉強することが必要ではないか。「新聞を信用しないから新聞を読んだことはないが、マンガは努めて読むようにしている」ことを望ましい習慣だと思う国民はいないだろう。
自分が挨拶する会合の属性を正確に把握すること、挨拶文に事前に目を通すことなど、非常に地味な仕事だが、おろそかにするべきでないと思う。国民の幸福を実現するために、全身全霊を注ぐ姿勢がまったく感じられない。
日本経済は本当にみぞうゆの危機に直面している。10月30日の記者会見では年末にかけての企業の資金繰りが非常に苦しくなると発言し、中小企業の資金繰りをより万全なものとすると発言したのではないか。
「政局より政策」と掲げて、総選挙を先送りしたのに、補正予算案を国会に提出しないなら、小沢一郎民主党代表が指摘するように、「金融危機」を解散総選挙を先送りするための口実に使ったことになる。
補正予算案を臨時国会に提出すべきとの主張が自民党内部からも提示された。「過(あやま)ちては則(すなは)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」だ。APEC総会から帰国したら、補正予算案の臨時国会提出を決定し、補正予算成立後、直ちに解散総選挙を実施して、本格政権樹立を目指すべきだ。国民生活を第一だと考えるなら、本格政権に政策運営を委ねる道を選択するべきである。
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