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政治に優越したい軍人の論理(1)
2008年11月 9日 (日)
田母神・前航空自衛隊幕僚長が航空自衛隊の司令官の立場で、政府見解と方針を真っ向から否定する見解を明らかにしたことをもって、更迭されたのは当然のことであるが、彼は空将という立場ではなお持論を維持したまま処分されることもなくめでたく“退職”してしまった。
今ここでは、中国や朝鮮への侵略の事実や、
日本政府としての反省をどうとらえるかについては触れない。
私や、ほとんどの日本国民にとって、世界中の人民にとって、それは否定しようのない事実であり、極東軍事裁判の結果についてもすでに講和条約において日本政府として受け入れたことである。
今、それを「自虐史観」と呼んで否定しようという勢力の活動が活発化しているが、それは日本国民にも世界各国にとっても受け入れられることはありえない。
もし万が一にも、日本政府が過去の侵略を全否定してみせるとしたら、それは国連憲章への挑戦であり、日本は世界中から孤立することになるだろう。
しかし田母神の主張は、
日本の国と国民にとってもっと重大な問題をはらんでいる。
田母神は、航空幕僚長、空将、航空総隊司令官など自衛隊の指導的地位を歩んできたが、統合幕僚学校長という自衛官幹部を“教育”する立場にあった。
こうした立場で、2003年以降、「航空自衛隊を元気にする10の提言」なるものを、パートT、パートU、パートVと発表し、今でもそれは堂々と「防衛大学校第15期生の公式ホームページ」に掲載されている。
これは自衛官に対する教育の指針ともいうべきものであるが、もちろん田母神個人の意見ではなく、統合幕僚学校長や空将、空幕長の立場からのものであってみれば、自衛隊における公的な見解と見られる。
ご丁寧にもそのホームページには、『営利目的やマスコミ等での転用・利用は禁止致します』と断り書きが付いていて、私など営利やマスコミではないが、それでも批判するために引用しようとしてちょっと躊躇させられる、怖いページではある。
たとえば、パートTには次のような見出しがある。
3 報告の遅れを叱らない
10 国民の国防意識の高揚
「部隊等において服務事故等が発生し上級指揮官にその報告が行われず、後日それがマスコミ沙汰等になった場合、上級指揮官は、ゆめゆめ『なぜもっと早く報告しなかったのか』などと言ってはいけない」と言うのだ。
なぜなら、「何をいつ報告するかは本来部下指揮官の判断事項である」から、
報告が遅れてもその責任を問うてはならないらしい。
最近も、自衛隊の事故で、政府への報告が遅れて、あるいは報告を後回しにしてシビリアンコントロールが問題になったことがあったが、田母神は“報告が遅れても問題にするな”と部下たちに教えていたわけだ。
軍隊の情報は軍隊の内部だけで秘匿して、できるだけ外には出さない、
これは軍隊の行動様式として当然のことであるのだろう。
その上で、「国民の国防意識」を高揚するために、自衛隊のホームページや定期刊行物、マスコミが取り上げるようなセミナーを開催したり、雑誌や新聞に投稿する、テレビやラジオで直接国民に訴えるというようなことを組織的に実施するなど、「あらゆる手だてを尽くして広報乃至は国防意識の高揚のための活動を行うのだ」と扇動してみせる。
自衛隊が今、「日本国内において反日的グループとの冷戦を戦っている」というのは、田母神の意識の中では人を殺傷する武器を使わないまでも国内ですでに戦争をしているのである。
憲法を守るというような“反日勢力”を打ち負かして自分たちが日本をリードしていく、そのために軍隊が政治的な発言を強め、政治への影響力を行使していくという強い意志の表明であろう。
と、ここまで書いてきてふと、田母神のこの「航空自衛隊への10の提言」のページそのものが、自衛隊員の教育の指針といった内部向けのもににとどまらず、国民啓蒙のための宣伝活動なのだということに気がついた。
彼らが確固とした国家間・歴史観を持って、この国の政治を誘導する意志を持って活動しているのだということを、あえて国民、特に憲法改正反対などといっている「反日勢力」に知らせようとしているのだろう。
内部向けの意見ならば内部だけで読めるようにしておけばいいはずなのに、このページは誰でもが読めるようにわざわざ“公開”の場に置いているのだから。
それにしても、である。
公開しておきながら、『営利目的やマスコミ等での転用・利用』を禁止しているのは、田母神のいう「反日勢力」やマスコミが、これを引用して批判するのを封じようということだろうか。
自分たちの意見は言うけれども、それへの批判はさせないとしたら、
軍隊特有の、何と独善的な行為ではないか。
パートTの「終わりに」では、「石原都知事のような強いリーダーの出現を待ち望んでいる」というホンネを隠そうともしない。
田母神が、中国や韓国と真正面から立ち向かう、“侵略”などは否定する、二度と謝罪などしない、国家の強いリーダーを求めていて、そのために世論操作も含めて行動していって、チャンスさえあれば、“いつだって政治に介入していくかもしれないぞ”という圧力さえにおってくる。
http://tomoni.blog.ocn.ne.jp/blog/2008/11/post_41ff.html
国民を誘導したい軍人の論理(2)
2008年11月11日 (火)
田母神・前航空自衛隊幕僚長による、自衛隊幹部や自衛隊員に対する教育指針たる「10の提言」についての続きである。
パートUの冒頭には、パートTが全国の自衛官や防衛産業にもたいへん好評だったと自慢していて、「陸上自衛隊、海上自衛隊の上級指揮官等からも部下等に配布したいという話があり、喜んで配布させて頂くことにした」とあるから、これは航空自衛隊だけでなく、自衛隊全体の教育指針にまで高められているということだろう。
パートUにはこんな見出しが並んでいる。
2 法令改正を年度要求する
7 身内の恥は隠すもの
8 戦場は2つある
10 国家感観、歴史観の確立
自衛隊がもっと活動しやすいように、自衛隊がみずから法律の改正を要求すべきだというが、それは果たして自衛隊の行うべきことか。
軍隊である自衛隊がみずから政治への働きかけを行うことが、シビリアンコントロールを突破する危険をはらんでいることは言うまでもない。
パート1で、“報告が遅れてもかまわない”と書いていたが、パートUではもっとはっきりと、「情報を隠せ」「秘匿すべきものは秘匿せよ」と言う。
田母神は「何でもかんでも全て公開する必要があるのか。そんなことはないと思う」と断言してみせる。
まず、「いわゆる身内の恥的なもの」、おそらくは自衛官による不祥事や事故、犯罪などをさしているのだろうが、これらは“部下を守るために隠せ”という。
さらに、常日頃から秘密の保全を意識した隊務運営を心がけて、公開を要しない事項については徹底的に秘匿する、秘匿すると決めたら徹底して秘匿する、もし秘密が漏れたならば、なぜ漏れたのか、誰が漏らしたのかを徹底的に追求せよとまで言ってのける。
軍隊が秘密の多い世界であるのはおそらくはそのとおりだろうが、一歩進めて、普段から内部情報を、できるだけ国民にも政治家にも知られないようにしておくのが自衛隊の行動様式となるとしたら、これは怖いことだ。
言うことはだんだんエスカレートしてくる。
田母神によれば、実力のぶつかり合う本物の戦場は「第1の戦場」だが、それに加えて自衛隊には「世論やマスコミと闘う第2の戦場がある」と言う。
米軍が自分たちに都合の悪い映像やニュースをマスコミに流させないようにしているように、日本でも「今後は第2の戦場における勝利も併せて追求しなければならない」「自衛隊はいま第1の戦場で戦うための訓練をしながら、第2の戦場では正に戦闘実施中なのだ」。
積極的にマスコミに関与せよ、ホームページ、テレビ、ラジオを通じた発信、定期刊行物を発刊して宣伝するべきだ。
自衛隊や自衛官が新聞や雑誌に継続的に投稿すべきだ、本を書く人を育てる、若い人たちを自衛隊に呼んで教育することが必要だ。
世の中の「親日的活動」に対して、自衛隊員は「経費も含めて個人的に支援」したり、「新しい歴史教科書」のような本が出たら、「これをみんなで買いまくる」ことまで勧めてみせる。
「親日的活動」とは言うまでもなく、自虐的な「東京裁判史観」に立った共産党や社民党、あるいは憲法を守る運動、侵略戦争とか従軍慰安婦問題などの「反日的活動」に反対する、つまり普通の言葉では右翼を、自衛隊員が積極的に支援する必要があると言っているわけだ。
そして、自衛隊が「正しい国家観・歴史観を確立して国民を啓蒙する」と言うに至っては、軍隊(軍人)が自分たちの信じる国家観こそが正しくて、軍隊が国民を啓蒙し、国民の意識を誘導して軍隊の言うなりに従わせる、田母神は、それこそが理想的な軍隊と政治、国民の在り方として思い描いていることになる。
ナチス・ドイツ、ヒトラーの後継者として国家元帥に就いた
ゲーリングは次のような言葉を遺している。
「もちろん、国民は戦争を望みません。運がよくてもせいぜい無傷で帰って来る位しかない戦争に、貧しい農民が命を賭けようなんて思うはずがありません。一般国民は戦争を望みません。ソ連でも、イギリスでも、アメリカでも、そしてその点ではドイツでも同じ事です。政策を決めるのはその国の指導者です。そして国民は常に指導者の言いなりになるように仕向けられます。
反対の声があろうがなかろうが、人々を政治指導者の望むようにするのは簡単です。 国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。そして国を更なる危険に曝す。
このやり方はどんな国でも有効です。」
田母神がやろうとしたこと、そして今、
大東亜戦争肯定派・靖国派・改憲派が現にやっていることは
まさにこれではないか。
http://tomoni.blog.ocn.ne.jp/blog/2008/11/post_6856.html
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