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2008年10月16日 (木)
総選挙・本格政権樹立で金融危機に対応せよ
『週刊金曜日』第722号(10月10日発売)に拙稿「米国カジノ経済破綻が日本を襲う」が掲載された。ご高覧賜れればありがたく思う。
また、高橋清隆氏の著書『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)が刊行された。高橋氏は、私が巻き込まれた冤罪事件について、これまで丹念な取材に基づく記事を発表してきてくださった。私の巻き込まれた事件が冤罪であることは紛れもない事実だが、今回の著書の中には、直接取材されずに執筆された他の事件についての記述があり、その内容には同意できない部分がある。しかし、全体を通してメディア報道の問題点を多角的な視点から指摘されており、この場を借りて紹介させていただく。
日経平均株価が10月16日、前日比1089円暴落した。10月14日の急騰が帳消しになってしまった。マスメディアは10月13、14日の株価急騰について、各国政府が資本注入を決定したことによる成果であると報道した。
私は10月13日付記事「デリバティブ金融危機の津波は残存する」のなかで、「各国当局の資本増強策推進についての合意を受けて、世界の株式市場は一時的に株価反発の反応を示すことが予想される。金融機関の破たんの連鎖が当面は、政府による資本増強策によって回避されるとの見通しが広がるからだ。しかし、事態を楽観視することはできない。理由は三つある。」と記述した。
メディアは、資本注入で安心感が広がったが、「新たに」景気悪化観測が広がって株価が下がったと説明している。資本注入策を絶賛したために、その後の株価暴落を説明できなくなり、苦し紛れの説明を施している。
株価が急反落したのは、今回の金融危機の根が深いことを背景にしていると考えるべきだ。10月13日付記事に記述したように、金融危機の根源である米国の不動産金融不況が、まだ4合目にしか差しかかっていないのである。景気後退が本格化するのはこれからだ。米国の住宅価格は2006年6月のピークから、本年7月までに21%下落したが、恐らく2010年半ばまでに、さらに20−30%は下落するだろう。
不動産価格下落に連動して、サブプライムローンに付随して形成された巨大なデリバティブ金融のバブルが破裂する。住宅価格が20%下落した時点で、100兆円の損失処理がすでに求められている。最終的な損失規模を現段階で特定することは難しい。
各国政府が提示した資本注入政策では、問題解決を得ることは困難である。金融市場の反応は、こうした事実認識を反映しているのだと考えられる。米国は最終的に膨大なドル資金を投入せざるを得なくなるだろう。米国がドル過剰流動性を創出することは、ドル価値の暴落を招く。
日本政府は100兆円の外貨準備を保有しているが、極めて重大なリスクを負っていると言わざるを得ない。経営危機が表面化した米国の政府住宅金融公社ファニーメイとフレディマックが発行、保証する債権は約5兆ドル(約500兆円)に達する。日本は政府、日銀、民間金融機関合計で2300億ドル(約23兆円)の上記機関債券を保有している。
ドル下落リスクが極めて大きいことを踏まえて、日本政府は政府保有のドル建て資産を早急に売却しなければならない。リスクが大きいことを認識しながら、ドル資産を保有し続けて、日本国民に膨大な負担を強いることは許されない。
サブプライム金融危機の最大の特徴は、野放図に構築されたデリバティブ金融の巨大想定元本にある。「新自由主義」=「市場原理主義」の必然の帰着点に、主要国経済は到着してしまったのだ。
各国政府が採用し始めた「破たん前資本注入策」は、正当性を持たない政策対応である。「自由主義経済」は「自己責任」を大原則に置いているからだ。公的資金を投入する根拠は、「金融システム」という「公共の利益」を守るためであって、「個別金融機関」という「私的利益」を守るためではないからだ。
公的資金を注入するからには、公的資金を受け入れる金融機関に対する適正なペナルティー付与が不可欠である。株価暴落のどさくさに紛れて、責任処理を伴わない公的資金注入論が大手を振っていることには、修正圧力が働くはずである。
米国経済の内需にとって、自動車と住宅はきわめて重要な意味を有している。米国人のライフスタイルのなかで、住宅の占める比重は極めて高い。住宅着工件数は2005年に207万戸あったのが、本年8月の年率換算値は90万戸に激減している。
9月の自動車販売台数は前年同月比22.7%減少した。また、9月の小売売上高は前月比1.2%減少した。住宅価格下落、株価下落が進行し、個人の消費心理が急激に悪化し、個人消費が今後、急激に減速を強める可能性が高い。
米国発の世界的な株価急落は世界の個人消費を停滞させる。最終需要が落ち込めば、企業の設備投資も大幅に減少する。2009年には世界同時不況が深刻化する可能性が濃厚である。
したがって、主要国が公的資金投入による金融機関の自己資本増強策を採用するとしても、現段階では、決して楽観できないのである。
こうしたなかで、米国では11月4日に大統領選挙が実施される。大統領選挙に向けてのバラク民主党候補とマケイン共和党候補の3回のテレビ討論について、「カナダde日本語」の美爾依さんが動画で紹介くださっているが、米国で大統領選挙を先送りすべきとの世論は発生していない。
幸い、日本の金融機関は1990年代以降の金融危機を経験した直後であったため、欧米金融機関のように、デリバティブ金融の想定元本を管理不能な水準で保持していない。したがって、金融システム全体が根底から動揺するリスクは現状では限定的である。
世界同時不況が進行するなかで、2009年にかけて、日本経済が悪化することは避けられないだろう。本格的な政策対応が求められる。そのために、日本の政治状況を転換することが強く求められる。
現在の衆参ねじれ状況の下では、政策運営の停滞を免れない。自公政権は衆議院で多数を確保しているが、直近の有権者の判断を示す参議院の議席構成で、野党が過半数を制しており、野党の主張が与党と対立する問題については、国会で結論を得ることが困難だからだ。
本日、10月16日に補正予算が成立した。8月29日に決定された緊急経済対策を実施できる状況が整った。2009年度に向けては、年末の予算編成がもっとも重要な意味を持つ。
政治のあり方について、主権者である国民が明確な判断を示し、国民の信を受けた政権が、今後の問題について、抜本的に対応することが望ましい。
麻生首相は『文藝春秋2008年11月号』に「強い政治を取り戻す発射台としてまず国民の審判を仰ぐのが最初の使命だと思う。」と明示した。また、「私は逃げない。勝負を途中で諦めない。」とも記している。
11月23日大安、11月30日先勝、のいずれかの日程で総選挙が実施されることになると思われる。民主党が提示している政権公約は大規模な景気対策、国民生活安定化策の側面を有している。自民党の鶴保議員が、民主党が提案する「子ども手当」が子どものいる世帯を優遇しすぎることになるのではないかと主張した。しかし、「少子化」が極めて重大な問題であることを踏まえれば、「子ども手当」創設は、少子化対策の切り札になると考えられる。
金融市場の混乱が拡大して、「政権選択」という日本の命運を定める最重要問題が陰に隠れたが、改めて、この問題を中心に位置づけ、国民が誤りのない選択を示すことのできる環境を整備しなければならない。次期総選挙は日本の命運を定める決戦の場になる。
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