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2008年10月15日 (水)
100兆円外貨準備野放しの怪
10月14日の参議院予算員会質疑で、外為特会などの「埋蔵金」についての実態が明らかにされた。財務相は外為特会の積立金が円高で目減りし、1ドル=99円以上になるとゼロになると答弁した。
日本の外貨準備高は2008年9月末時点で、9958.9億ドル存在する。7月末時点では1兆0046.58億ドルで1兆ドルを超えていた。日本円に換算して100兆円という膨大な外貨建て資産を保有している。
最近、この外貨準備についてのさまざまな意見が提示されている。中川昭一財務相は10月11日にワシントンで開催された国際通貨金融委員会(IMFC)で、金融危機に対応するため日本の外貨準備を活用して資金面で支援する考えを表明したことが報道されている。
また、渡辺喜美元金融相は、英国の通信社ロイターのインタビューで、「資本増強で国際的な枠組みを作るのであれば、外貨準備を使うことも、私が金融担当相のときの私的懇談会(金融市場戦略チーム)でブレーンストーミングをした。これもあり得ないことではない。運用している米国債を(金融機関の株式と交換する)デット・エクイティ・スワップ(DES)する話で、ドル危機後の新しい通貨秩序の形成にもつながる戦略になる」と発言している。
いずれの発言においては、外貨準備があたかも自分の財布であるかのような感覚で提案がなされている。このような発言が野放しにされていることは不適切極まりない。外貨準備は政府が外貨を買い取った残高である。為替市場の状況によって、政府が外為介入することがある。その残高が外貨準備高である。
外為介入は政府が日銀から短期の借り入れを起こして行われる。日本銀行に対する円建て債務に見合う外貨資産が保有される。2008年9月末時点の外貨準備の構成は、外貨建て証券が9692億ドル、外貨預金が1050億ドルで、外貨建て証券の大部分は米国財務省証券、つまり米国国債である。
日本政府は日本銀行から100兆円の借金をして米国政府に100兆円貸し付けをしていることになる。
問題は外貨準備であるから、為替リスクを伴っていることだ。100兆円のドル資産を保有していると、円ドルレートが1円変化すると、1兆円の評価損益が生じる。1ドル=105円が1ドル=95円になると、10兆円の損失が発生する。
自公政権は高齢化進展に伴う社会保障費の増額に対して、毎年2200億円、社会保障支出を圧縮する方針を示している。社会保障支出削減は財務省が主導する「財政再建原理主義」の中核に位置付けられている。
「障害者自立支援法」は名称のイメージと裏腹に、障害者を施設から排除し、生存権を脅かす冷酷な施策である。生活保護も支出削減の対象とされ、老齢加算、母子世帯加算などが非情に切り込まれている。
「後期高齢者医療制度」も医療費抑制を目的に創設されたものである。財務省が提示する「経済規模に見合った社会保障」との大方針の下に制度が設計されている。本来、日本経済が低迷することと高齢者の比率が上昇して国民医療費が増大することの間には何の因果関係もない。
それにもかかわらず、「経済が停滞するから医療を受けるな」の暴論が大手を振っている。罹(り)患率の上昇する高齢者だけを対象にした制度が保険として機能するはずがない。窓口負担以外の高齢者の負担比率を1割に定めたとされるが、高齢者の医療費は急増するから、1割負担の金額は急増していく。制度発足当初だけ保険料が減少するのなら、詐欺的手法と言わざるを得ない。
10兆円もの資金があれば、社会保障をどれだけ充実できることか。外貨準備で損失が拡大すれば、一般国民にはさらに厳しいしわ寄せが押し付けられる。「母屋でおかゆを食べているのに、離れですき焼き」との言葉があったが、「家族がおかゆをすすっているときに、父親がばくちで散財」の図式である。
円高が急激に進行し、日本国民の生活の安定を確保するために、為替市場でドル買い介入しなければならない局面はあるだろう。外為介入が一概に否定されるものではない。しかし、下落する傾向を強く持つドルを購入するのだから、ドル建て資産の残高を保有している時には、常にドル下落リスクに最大の注意を払わなければならない。
ドル買い介入はドルが急落する局面で実施される。平均すれば安いドルを購入できることになる。ドル買い介入を実施して、為替市場が安定すれば、必ずドルが反発する局面がある。本来、政府はドル買い介入して蓄積したドルをドルが反発した局面で売却するべきである。ドルが反発する局面でドル売りを実行しても、為替市場に影響を与えない。日本政府が為替リスクを温存する理由は、後述する利権獲得に関連する理由を除けば、何一つ存在しない。
為替レートが横ばいであれば、金利差を得ることができる。円短期金利はゼロに近く、ドル長期金利は4%ある。為替レートが横ばいであれば、金利差を利益として確保できる。この金利差に狙いをつけた投機資金の行動が「キャリートレード」と呼ばれる行動である。円短期金利で資金調達し、ドル金利で運用する。この「キャリートレード」は「円売り・ドル買い」のオペレーションになるため、ドル高が進行する要因になってきた。
しかし、中長期では円高・ドル安が進行する。為替市場で円高傾向が強まると、「キャリートレード」を実行していた投資家は、一斉にポジション解消に動く。この行動は、急激な円高進行の原因になる。
いずれにしても、米ドル建て資産をそのまま保有することが、極めて大きなリスクそのものであることは紛れもない事実だ。
日本政府が100兆円のリスク資産を保有する正当な理由はまったく存在しない。外貨準備は外国為替資金特別会計が保有する。外為特会は財務省の所管である。上述した金利差は積立金として蓄積され、通常は外為特会が潤沢な資金環境に置かれることになる。各省庁は特会の資金を通常経費に充当する。猛毒米の杜撰な検査をしていた福岡の農政事務所の検査費用も、その大半が特会から支出されていたことが明らかにされている。
100兆円の米国国債保有者は国債ディーラーにとっては、最上位の重要顧客になる。100兆円もの資産保有が、さまざまな利権を生み出す源泉になることは間違いない。外貨準備の異常な膨張の背景には、財務省の利権拡大動機が潜んでいたと考えられる。外貨準備を新興国支援に活用するとなれば、資金管理者は新興国に対する強い立場を得ることにもなる。
9月1日付記事「「日本売国=疑惑の外為介入」政策の深層」、9月6日付記事「自民党の分裂と「上げ潮派」の詭弁」に記述したように、2002年10月から2004年3月にかけての47兆円の外貨準備増加は、暴落した日本資産購入資金を外国資本に提供したものである疑いも強い。
2002年年初から2008年7月15日までの為替レート変動を見ると、
1ドル=130円 から 1ドル=106円
1ユーロ=117円 から 1ユーロ=169円
に変動している。
ドル運用とユーロ運用との時価評価の差額は、
100兆円の運用資金であれば63兆円、
50兆円の運用資金であれば31.5兆円
に達する。
この期間、日本円が主要通貨に対して暴落したために、米ドル運用での損失が、たまたま表面化していないが、日本円が暴落していなかったなら、ドル運用の外貨準備は巨大損失を表面化させていたのである。
野放しの外貨準備を国会の監視対象にするための法改正が絶対に必要である。外貨準備は本来、ゼロを基準に設定するべきものだ。外為介入で購入した外貨は、市況を見極めて、極力損失を発生させないで、市場で売却するべきだ。
外貨準備を自分の財布のような感覚で、米国の金融危機対策に流用することなど、言語道断の対応である。仮に日本が国民の総意で外貨準備を米国金融危機対策に流用するなら、少なくとも、その意思を国際社会で表明する前に、国会での十分な論議と承認が不可欠である。
最大の問題は、外貨準備の仕組み、諸制度、現状、法制などについての知識、認識が多くの国会議員、政党、そして一般国民に行き渡っていないことである。100兆円の巨大リスク資産についてのすべての情報がすべての国会議員と国民に共有されなければならない。
国民負担に直結する100兆円のリスク資金が野放しになっている現状を是正する法改正が、直ちに求められる。
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