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金融危機責任者たちを投獄せよ あの米映画監督ムーアが告発状(ちきゅう座)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 10 月 09 日 21:27:32: twUjz/PjYItws
 

http://chikyuza.net/modules/news1/article.php?storyid=479

<08.10.09>金融危機責任者たちを投獄せよ あの米映画監督ムーアが告発状<安原和雄>


<やすはらかずお:元毎日新聞経済部記者>

「華氏911」(9.11テロがテーマ)や「シッコ」(米国の悲惨な医療保険制度がテーマ)の米国映画監督として日本でも話題を呼んだマイケル・ムーアが今回の米国発金融危機と米議会で可決された修正金融安定化法に関連して告発状ともいえる批判文を発表した。題して「ウオール街の混乱をどう治めるか」で、10項目の独自の「救済計画」を盛り込んでいる。
その内容は「今回の危機到来に加担した者を犯罪者として起訴し、投獄すべきである」、「救済経費は富裕者が自ら負担すべきである」などで、危機収拾に翻弄されているブッシュ米大統領らにとっては実に手厳しいが、むしろ正当な主張というべきである。(08年10月8日掲載)

この告発状は、彼のメーリングリストにも流された。金融安定化法(最大7千億ドル=約75兆円の公的資金を金融機関の救済資金として投入する計画)は最初米議会上院で可決されたが、9月29日下院で否決、その後法案は修正されて再度採決することになり、上院で10月1日可決の後、3日下院でも可決され、修正金融安定化法は成立した。
ムーアは告発状を送るメールで「上院では今夜、アメリカ略奪の独自改正案を審議する。またあなたが10項目計画に賛同していることを地域の下院議員に知らせて下さい」と記しており、議会の動きを追いながら、告発状を書き、流していたことがうかがえる。

▽ムーアの告発状 ― 最裕福400人が全国資産の半分以上を隠匿

マイケル・ムーアの告発状(大要)はつぎの通り。なお原文・英文の仮訳は藤谷英男さんによるもので、日本国内のメーリングリストで入手した。
 原文は以下で読むことができる。
http://www.michaelmoore.com/words/message/index.php?messageDate=2008-10-01

皆さん、
400人のアメリカの最裕福層、そう、「たったの400人」が底辺の1億5千万人を全部合わせた以上の財産を持っている。最裕福400人が全国の資産の半分以上を隠匿しているのだ。総資産は正味1兆6千万ドルになる。ブッシュ政権の8年間に彼らの富は「7千億ドル近く」膨らんだ。7千億ドルはちょうど救済資金として我々に支払いを要求しているのと同額だ。彼らはなぜブッシュの下でこしらえた金で自ら救済しないのか!

ジョージ・W・ブッシュはクリントン政権から1270億ドルの黒字を引き継いだ。それは我々国民の金であって自分のものではないので、裕福層が求める通りに後先も考えずに支出した。その結果、国民は今9兆5千億ドルの負債を背負っている。そもそも我々はなぜたとえ少しでもこんな盗人貴族に追い銭を与えねばならないのか?

さて私の救済プランを提唱したい。
金持ちさん、済まないが、これはお前さん達がいやと言うほど我々の頭に叩き込んだものだよ。タダ飯ハ食ワセナイ・・・。生活保護で生きる人達を憎むように仕向けてくれて有難う。だから我々からお前さん達に施しは出来ないのだよ。

上院は今夜、法案を採決に持ち込もうとしている。これは阻止しなければならない。我々は先に下院でこれを成し遂げた。今日上院でも出来るのだ。
我々はいたずらに抗議し続けるだけではなく、議会がなすべきことをきっちりと提案しなければ埒が明かない。そこでフィル・グラム(共和党・ジョン・マッケイン大統領候補の参謀)より賢い人達と相談の上、「マイクの救済計画」と題してここに私の提案をする。明快・単刀直入な10項目である。

▽救済計画10項目(1)― 金融危機加担者を犯罪者として起訴せよ

1.【ウオール街で、承知の上で今回の危機到来に加担した者を犯罪者として起訴するた
め、特別検察官を任命せよ】

何らかの新たな支出をする前に、議会は責任を持って、我が国の経済の略奪に少しでもかかわった者を刑事犯として起訴することを決議すべきである。即ち、インサイダー取引き、証券詐欺その他今回の崩壊に何らかの寄与をした者は投獄されるべきである。この事態を出現させた全ての者と、今後も社会を欺く全ての者を精力的に追求するための特別検察官を招聘(しょうへい)すべきである。

2.【救済経費は富裕者が自ら負担すべきである】

彼らが住む邸宅は7軒から5軒に減るかも知れない。乗る車は13台から9台になるかも知れない。しかしそもそも、ブッシュ政権下で世帯当たり収入を2000ドル以上も減らされた勤労者や中流層が、彼らのもう1隻のヨットのために10セントでも払ってやるいわれなどありはしない。
彼らが必要だと言う7千億ドルが真に必要なものならば、それを簡単にまかなう方法を提示しよう。

a)年収100万ドル以上の全ての夫婦と年収50万ドル以上の独身納税者は、5年間10%の追加所得税を支払う。これでも富裕層はカーター政権の時よりも税負担が少ないのだ。これで3千億ドルが出来る。
b)ほとんどの民主主義国家のように、全ての株取引に0.25%を課税する。これで毎年2千億ドル以上が出来る。
c)株主はみな愛国的米国人であるから、四半期の間配当の受領を辞退し、その分を財務省による救済資金の足しにする。
d)米国の大企業の25%は現在連邦所得税を全く払っていない。企業からの連邦税収は現在GDPの1.7%であるが、これは1950年代には5%であった。もし企業の所得税を1950年代の水準に戻せば、さらに5千億ドルが出来る。

3.【緊急救済すべきは住居を失う人々だ。8つ目の住宅を建設する連中ではない】

現在130万軒の住宅が抵当として取り上げられている。これこそが正に問題の核心なのだ。だから資金を銀行に贈与するのではなく、1人当たり10万ドルでこれらの住宅ローンを払いきるのだ。そして住宅の持ち主が時価に基づいてローンを返済するべく銀行と再交渉できるように要求する。
この救済措置の対象は持ち主の現住住宅のみとして、家転がしで儲けを企んでいる者や投機家を確実に排除しておく。この10万ドルの返済と引替えに政府はそのローンの債権を共有して幾らかを回収できるようにする。このようにすると住宅ローンの焦げ付きを(貪欲な貸し手を巻き込まずに)その根っこで解消する費用は7千億ドルではなく千五百億ドルですむ。

さて住宅ローンの返済不能に陥った人々は「不良リスク」などではない。彼らは自分たちの家を望んだにすぎない。しかしブッシュ時代に何百万人もがそれまでに就いていた良い職を失ったのだ。600万人が困窮し、700万人が健康保険を失った。そして全ての人の年収が2000ドルも減少したのだ。つまずきの連鎖に見舞われたこれらの人々を見下す者は恥を知れ。

▽「救済計画」10項目(2) ― 規制の回復を。レーガン革命は死んだ

4.【あんた達の銀行や会社が我々からの「救済金」を少しでも受け取れば、我々はあんた達の主人だ】

気の毒だがそれが世の決まりなのだ。もし我々が家を買うために銀行から資金を借りれば、全額を利子も付けて返済するまでは銀行がその家を「所有」する。ウオール街についても同じだ。もしもあんた達が良い生活を続けるために何らかの資金を必要とし、また政府があんた達を低リスクで国家のためにも必要な者だと判断したら、ローンは得られるが、我々があんた達を所有することになる。もし債務不履行があれば我々はあんた達を売却する。これはスウェーデン政府が行って成功した方法なのだ。

5.【規制は全て回復しなければならない。レーガン革命は死んだ】

今回の悲劇は狐に鶏小屋の鍵を持たせたことが原因である。1999年にフィル・グラムがウオール街と銀行を支配する全ての規制を撤廃する法案を起草した。法案は成立してビル・クリントン(当時の大統領)が署名した。その署名の時、マッケインの主任経済顧問であるフィル・グラム上院議員が言った言葉は次のようであった。

「1930年代、政府が答えであった。動いている市場を政府が支配することで安定と成長がもたらせられると信じられていた」
「今日我々はそれを撤回する。我々は政府が答えではないことを学んだからだ。自由と競争こそが答えであることを学んで来た。我々は競争と自由を手にすることで経済成長を促進し、安定を推進する」

この法案は撤回されなければならない。ビル・クリントンはグラム法案を撤回して財政機構に一層厳格な規制を復活させる努力を主導することで貢献できるはずだ。これらが達成されたら、航空会社、食品検査、石油業界、職業安全衛生管理局、その他日常生活に影響する全てのことに関する規制の回復も出来る。どのような「緊急救済」を管理する規定も、資金の裏付けと全ての違反者の刑事処罰が伴わなければならない。

6.【失敗が許されないほど巨大なものは存在も許されない】

超大型合併の出現を許す一方で、独占法やトラスト禁止法をないがしろにする現状によって多くの企業が合併で余りにも巨大になりすぎて、その破綻だけで一国の経済全体が破綻に至るほどになってきた。1つや2つの企業がこれほどの威力を持つことがあってはならない。
いわゆる「経済的真珠湾」は、人々の資産が何千何百の企業に分散していたら起こりえないことである。自動車会社が1ダースもあれば、その1つが倒れても国家の惨事にはならない。もし町に別々の経営による3紙の新聞があれば1社だけが情報を独占することはない。企業が余りに大きく独占的になりすぎて、片目にぱちんこの一撃を受けただけで倒れて死ぬようなことがないように、企業の肥大化を防ぐ立法が必要である。

▽救済計画10項目(3)― 経営責任者の高報酬は正気の沙汰ではない

7.【いかなる会社重役も、従業員の平均賃金の40倍を超える報酬を受け取ってはならず、会社のための労働への妥当な給与以外にはいかなる「落下傘」(訳注:墜落する企業から退散する時の巨額の退職金など)も受け取ってはならない】

1980年には米国の平均的な最高経営責任者は従業員の45倍を得ていた。2003年には自社従業員の254倍を稼いだ。8年のブッシュ時代が過ぎて、今では従業員の平均給与の400倍を得ている。公的な会社でこのようなことが出来る仕掛けは正気の沙汰ではない。英国では平均的な最高経営責任者は28倍稼いでいる。日本では17倍にすぎない!
我々は頂点の連中が何百万ドルを操って信じがたいほどに膨れあがるのを許して今のような大混乱を創ったのだ。このままにしてはならない。役員は誰もこの混乱から脱出するために受ける援助から利益を得てはならないのはもちろん、会社の破綻に責任ある役員は会社が何らかの援助を受ける前に辞職しなければならない。

8.【連邦預金保険公社を強化して、国民の預貯金にとどまらず年金と住宅の保護のモデルとせよ】

オバマ(民主党の大統領候補)が国民の銀行預金に対する連邦預金保険公社による保護の範囲を25万ドルにまで広げるよう提案したのは正しかった。しかしこれと同様の政府系保険で国の年金基金も保護されなければならない。国民が老後のために支払った掛け金がなくなっていないかと心配することがあってはならない。これは、従業員の年金の基金を管理する企業を政府が厳格に監督することを意味する。
国民の退職基金も保護が必要だが、基金を株式市場という博打に投資させないことを考える時かも知れない。我が国の政府は、誰でも年老いて赤貧に投げ込まれることがないことを保障する厳粛な義務を負うべきである。

9.【深呼吸をし、落ち着いて、恐怖に日々を支配させないことが誰にも必要だ】

テレビを消そう!今は「第二の大恐慌」などではない。天は落ちては来ない。評論家や政治家が余りにも矢継ぎ早に、おどろおどろしく嘘をついているので、我々は降りかかる恐怖の影響を免れるのが困難になっている。私でさえ、昨日、ダウ平均株価が過去最大の1日の下落を示したとのニュースを聞いて皆さんに記事を送り、その内容を繰り返した。それはその通りだが、7%の下げは1987年に株価が1日で23%暴落したブラックマンデーにはほど遠いものだ。80年代には3000の銀行が閉鎖された。しかし米国は破産しなかった。

今週何万人もが自動車ローンを組んだ。何千人もが銀行でローンを借りて家を買った。大学に戻った学生達を15年の学生ローンに取り込んで銀行はほくほく顔だ。日々の営みが続いている。銀行預金や手形、定期預金証書の形である限り誰一人金を失わなかった。そして何より驚くべき事は米国民が恐怖キャンペーンに乗らなかったことだ。人々はひるむどころか議会に救済法案を葬らせたのだ。それは真に印象深い出来事だった。
民衆が大統領やその一味が繰り出す恐怖に満ちた警告に屈しなかったのはなぜだろうか? そう、「サダムはその爆弾をもっている」などと何度も言えるのは人々に大嘘つきだと見破られるまでのことでしかない。長い8年のあと、国民は疲れ果ててもう我慢の限界なのだ。

10.【民衆の「国民銀行」を作ろう】

どうしても1兆ドルを印刷するとしたら、それは一握りの大金持ちに与えるのではなく我々自身に与えようではないか。フレディーとファニー(2大政府系住宅金融会社)が我々の手に落ちた今こそ、国民の銀行を作ろうではないか。自宅の購入、小規模事業の起業、通学、癌治療、あるいは次の大発明のための資金を望む全ての人に低金利の融資を行う銀行である。
また、米国最大の保険会社AIGも我々の手に落ちたのだから、次の段階に進んで全ての人に医療保険を提供しよう。全国民にメディケアーだ。これで長期的には大きな節約が出来るだろう。また平均寿命が世界12位とはならないだろう。もっと長生きをして政府が保障する年金を享受し、やがて、とんでもない惨状をもたらした企業犯罪者達を許して出獄させ、我々の助力で市民生活に再順応させる日を生きて迎えるだろう。素敵な家1軒と、国民銀行の援助で発明された、ガソリンを使わない自動車1台を持つ市民生活にだ。

〈安原の感想〉― 新映画の題名は「反乱929ー天国の400人」?

「告発状」は私が名づけたもので、たしかに告発状になってはいる。「金融危機加担者は犯罪者として起訴せよ」と叫ぶあたり、いかにもムーアの面目躍如の観がある。同時に小説「米国の金融危機と貧困物語」を読んでいる印象さえある。しかしこれは事実から離れた小説ではない。米国の現実そのままである。「事実は小説より奇なり」というが、ごくわずかな最富裕者を含む保守層が推進する新自由主義のために、特にブッシュ政権のこの8年間に米国でどれだけ貧富の格差が広がって、大量の貧困者が生み出されたかが明確に描かれている。
要旨紹介のつもりでかなり削ろうとしたが、「もったいない」という思いがつのり、全文の8割程度を生かすことになった。

私の想像だが、マイケル・ムーアはこれを映画化するのではないか。この告発状はシナリオの下書きのつもりかも知れない。
新映画の題名は「反乱929ー天国の400人」ではどうか。「反乱929」はいうまでもなく下院反乱によって一時的にせよ、金融安定化法案を否決した祈念すべき9月29日のことである。これが主題で、副題として最富裕層400人の日常生活を追跡する。天国にいるつもりだろうが、地獄に墜ちるぞ! という警告をこめる。ヒット作になることは間違いないだろう。

それにしても見逃せないのは、「救済計画10項目」の中で紹介されているマッケイン(11月の米大統領選挙の共和党候補)の主任経済顧問であるフィル・グラムのつぎの言葉である。
「1930年代、政府が答えであった。動いている市場を政府が支配することで安定と成長がもたらせられると信じられていた」
「今日我々はそれを撤回する。我々は政府が答えではないことを学んだからだ。自由と競争こそが答えである。我々は競争と自由を手にすることで経済成長を促進し、安定を推進する」

言葉の中の「自由と競争」は、正確には「一部の者のための無規制の自由と競争」というべきであり、悪名高い新自由主義を指している。現下の焦点は金融危機とともに破綻した新自由主義がどうなるかである。死滅へ向かうのか、よみがえるのか。死滅しなければ、多くの民衆は救われない。保守派のマッケインがつぎの新大統領になれば、見事によみがえるだろうが、新大統領にならなくとも、新自由主義は容易には死滅しないだろう。その時、ムーアはつぎの告発状をどう記すのか。

初出:安原和雄の「仏教経済塾」http://kyasuhara.blog14.fc2.com/
(08年10月08日掲載)より転載。

 

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