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麻生政権 A 「財政政策の中味」が最重要 (植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 10 月 06 日 17:18:03: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-0c58.html

2008年10月 6日 (月)
麻生政権A「財政政策の中味」が最重要


「政権選択」選挙においては、「一般国民」の利益を優先する政治と、一般国民ではない「特定の利害関係者」の利益を優先する政治、のいずれを国民が選択するのかが問われる。


与党と野党の主張する政策方針の対立軸は以下の三点だ。


@弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化


A官僚利権擁護VS官僚利権根絶


B対米隷属外交VS自主独立外交


 政府の活動を知るもっとも分かりやすい資料は「予算」である。財政資金をどのように調達し、財政資金をどのように配分するかを示すのが予算である。


 財政政策の機能には、@資源配分、A所得再分配、B景気安定化、の三つがあるとされている。経済用語にすると分かりにくくなるが、@どのような対象に財政資金を使うか、A経済格差を政策がどのように調整するか、B不況対策に財政政策を活用するか、の三つの機能があるということだ。


 Bの「景気対策と財政運営」の問題について、二つの対立する考え方がある。ひとつは「景気対策は効果がなく、財政運営はひたすら緊縮に努め、財政赤字削減に努力すべきである」との考え方だ。これを私は「近視眼的財政均衡至上主義」と呼んできた。「財政再建原理主義」と言い換えることもできる。


 対立する考え方は、「国の役割は国民生活の安定であり、政府は必要に応じて財政政策を活用すべき。経済成長を維持することが財政再建には不可欠で、経済を無視した緊縮政策の強行は財政再建にも逆行する結果を招く」との考え方だ。


 私は後者の主張を貫いてきた。橋本政権が1997年度の「9兆円の負担増加策」を決めた時も、小泉政権が2001年度に超緊縮財政を強行した時も、私は「行き過ぎた緊縮財政は景気にも財政にも悪い結果を引き起こす」と警告した。実際に、ふたつのケースのいずれにおいても、警告通りの結果が生まれた。2001年度のケースでは、橋本元首相も小泉首相に警告を発したが、小泉氏は警告を無視した。


 小泉政権は結局、2001年度も、2002年度も5兆円の追加財源調達を含む大型補正予算編成に追い込まれた。偏向メディアが、「小泉政権は財政出動を実行せずに景気回復を実現した」との「大嘘」を流布しているが、小泉政権は2年連続で大型補正予算編成を実行している。


 麻生首相は、財政再建原理主義からの訣別を宣言した。また、自民党の中川秀直氏も同様だ。ただ、この主張は私が2001年の小泉政権発足当初から主張してきたもので、麻生氏も、中川氏も、「財政再建原理主義」から、私が主張してきた「経済成長重視主義」に「転向」したものである。


 麻生氏と中川氏は、小泉政権の中枢に座り続けた人物である。小泉氏に異を唱えて、自らの主張を貫いてきたわけではない。麻生氏は小泉政権が超緊縮財政を実行した2001年の小泉政権発足当初から2003年9月にかけて、自民党政調会長の職にあった。政調会長は自民党のおける政策決定の最高責任者である。小泉政権の政策決定責任者として麻生氏が小泉元首相の財政政策運営に強く反対した形跡はない。


 国民生活を重視して、小泉元首相と対峙してでも自らの主義主張を貫くような行動はまったく示されなかった。ひたすら小泉元首相に恭順の意を示して、小泉政権の政策に追従し、要職ポストを得ることに専心したのである。自己の政治的利益のためには原理原則をねじ曲げてしまう、「現世利益優先」の基本姿勢がうかがえる。


 財政政策運営において、「財政再建原理主義」を否定し、「経済成長重視主義」を唱える人々が増えてきたことは望ましいことだが、目先の自己の利害でくるくると変節する人物が多く、信頼することができない。福田政権の経済財政担当相だった大田弘子氏は、「財政政策を活用する国は存在しない」とまで言い切った。権力迎合のマスメディアも財政政策活用を全面批判し続けてきたのだから、麻生政権の景気対策を全面批判するのが順当だが、突然、筆鋒を鈍らせている。


 麻生首相が成長重視の主張を示したのに、私が麻生政権を支持しない理由のひとつは、麻生氏が「信念を貫くことより、ポストなどの現世利益を優先し、小泉政権の経済崩壊政策にすり寄り、加担した」ことだが、より重要な理由は「政府の役割」についての麻生氏の基本スタンスに同意できないことだ。


 「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が、麻生首相に対する不信感を表明されている。高橋氏は郵政民営化問題に対する麻生氏の基本姿勢に強い疑念を提示されている。小泉政権の「売国政策」を糾弾しなければならない、との視点から、私も高橋氏の主張に賛同する。国民新党の自見庄三郎議員が参議院での代表質問で指摘された極めて重大な問題については、改めて意見を提示する。


 「日本経済復活の会」の小野盛司会長は、「経済成長重視」の視点から、麻生氏が提示した方針を歓迎しており、この点については、私も理解できる。しかし、私は、財政の「資源配分機能」、「所得再分配機能」をより重視しており、「景気安定化機能」についての政策スタンスだけを理由に、麻生政権を支持することができない。


 財政活動は政府の行動の中核である。どのような政治理念に基づき、財政資金をどのように配分するかが、「政治そのもの」であると言っても過言ではない。「不況に際して財政政策を活用するかどうか」以上に、どのような理念の下に、どのような目的で「財政資金配分を実行するのか」が、「政治」を評価するうえで不可欠な視点である。


 財政出動をするのに、「不透明な利権に結びつく公共事業」を増額するのと、「子育て支援の給付金」を、ルールを定めて一律給付することは、まったく異なる効果を生み出す。「いくら使うか」以上に、「何にどのように使うか」が重要なのだ。


これまで何度か記述してきたように、政府支出を「裁量支出」と「プログラム支出」に区分することが可能だ。「裁量支出」は利権に結びつきやすい。政治屋と財政当局は「裁量支出」を強く選好する。「裁量支出」は、「さじ加減」で支出を決定できるから、「権力」=「利権」そのものになる。


これに対して、社会保障支出を中心とする「プログラム支出」は、制度を確定すると、制度にしたがって自動的に支出が実行される。透明な「プログラム支出」は「利権」に結びつきにくい。景気対策は透明性の高い「プログラム支出」を中心に実施するべきなのだ。


ガソリン価格急騰に伴う財政政策も、「ガソリン税暫定税率廃止」がもっとも透明で分かりやすい。漁業協同組合を介在させ、細かな基準を設定して補助金を配分する政策には、裁量と恣意が入り込みやすい。政治屋と財政当局は後者の手法を選好する。予算配分の「権力」=「利権」を手にできるからだ。


民主党が提案している諸施策は、「プログラム支出」を基軸にしている。「最低保障年金の全額税源化」、「年金制度一元化」、「子育て手当の支給」、「高速道路無料化」、「公立高校授業料無料化」、「私立高校授業料補助、大学学費補助」、「農家の戸別所得補償制度」などのいずれも、透明性を確保する「プログラム支出」に分類することができる。


破壊されたセーフティーネットを再構築する提案も多く示されている。「後期高齢者医療制度」をいったん廃止し、新しい高齢者の医療保障のあり方を検討するのは正しい手順だ。パートや派遣労働者の非正規雇用者の待遇を正規雇用者と同一にすることも、極めて重要な施策である。


財政政策で重要なことは、「透明な制度で施策を実行すること」と、「国民生活の安定を目的とする施策を実行すること」なのである。


自民党政治は、「市場原理主義」に基づき、「弱肉強食を奨励」し、「格差拡大を容認」し、「セーフティーネットの破壊」を推進するものだった。この施策に対する対極の政策が、「セーフティーネットの再構築、強化」、「高齢者、障害者、若者、労働者を支援し、これらの一般国民の生活を安定化させる施策の強化」なのだ。


日本経団連会員企業が2007年に実施した政党の政治団体に対する寄付総額を見ると、民主党への寄付が8320万円であったのに対し、自民党への寄付は29億1000万円だった。自民党が「大資本」の利益増大に向けての施策に熱心であるのは、自民党が「大資本」から「買収」される構造を有していることからすれば順当である。


また、麻生政権は日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行の、いわゆる「財務省天下り御三家」に対する、財務省からの天下り人事を全面的に擁護している。自民党総裁選でも「天下り利権排除」が大きな論点として提示されたにもかかわらず、麻生政権は「天下り利権」の完全擁護の姿勢を変えようとしていない。


麻生政権が「大資本」、「特権官僚」と癒着し、「大資本」と「特権官僚」の利益保護に軸足を置いていることがよく分かる。対極の政策は「大資本」と「特権官僚」の利権を排除して、「一般国民」の利益を重視する施策を実施することだ。民主党が提示した政策は、「一般国民」の利益重視を鮮明に示すものである。


「外交」の方針についての小沢一郎民主党代表の説明は明快だった。小沢氏は「日米同盟を日本外交の基軸に据える」ことを明確に示したうえで、「日米同盟を基軸に据えることは米国の言いなりになることではない」と述べた。小泉政権以来の自公政権が「米国の言いなり」になり、日本国民の利益ではなく、外国勢力の利益を優先して政策を運営してきたことを、根本から糺(ただ)す必要があることを強調した。


「セーフティーネットの再構築と強化」、「官僚利権の根絶」、「対米隷属を排除し自主独立外交を確立」、の三つの基本方針は麻生政権の基本方針に対する対論である。不況に際して財政政策を活用すべきは当然の判断であり、問題は政策の内容である。「誰のための政治であるか」が最も重要な視点だ。「政官業外電=悪徳ペンタゴン=利権互助会のための政治」を継続するのか、「一般国民の幸福実現のための政治」に転換するのか。「政権選択」で問われるのは、「CHANGE」を望むのか、いずれの政権を選択するのか、についての国民の判断である。

 

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