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2008年10月06日
岩国から目を離してはいけない
毎日の報道を根気よく見続けていると、おのずと気づく事がある。
どの新聞もテレビも、報道する事柄は同じだ。
それは、限られたスペース、時間帯の中で、最大公約数的に世間が関心を持つニュースは、おのずと決まってくるからだ。
その同じテーマについて、報道各社が、より早く、より詳しく、そしてより正確に報道しようと競い合う。
各局お抱えのコメンテーターが、その同じニュースを無責任に評論して終わってしまう。
しかし、我々受け手にとっては、そのようなニュースや解説は、どれか一つで十分だ。
それよりも、報道されていない物の中にこそ、我々の生活にかかわる重要な出来事がある。
とくに権力者の悪については、権力者はそれを国民から隠そうとするする。
だからこそジャーナリズムは、それを国民に代って発掘し、報道しなくてはならない。
同じような報道をなぞるばかりでなく、国民の「知る権利」に一つでも多く応えて見せる事こそ、ジャーナリズムの使命なのだ。
その観点からいえば、今日(10月6日)の報道でなんといっても群を抜いていたのが、東京新聞「こちら特報部」の岩国市米軍住宅建設をめぐる記事である。
私が岩国市の米軍住宅建設問題を知ったのは、今年2月に行なわれた岩国市長選挙で井原市長を応援する集会にゲストスピーカーの一人として招かれ、岩国市を訪れた時の事だ。
岩国市財政逼迫の原因の一つに愛宕山開発事業があると、タクシーの運転手に聞かされた。
1998年にはじまったというその事業は、激しい騒音を伴う米空母艦載機の滑走路を沖合いに移設する工事と関連がある。
その工事に必要な埋め立て用の土砂を、岩国市の背後にある愛宕山を削って供給し、その跡地を整備して県民数千人が暮らす新しい街を作るという青写真で始められた事業だった。
ところが経済情勢の変化で需要が見込められなくなったとして、事業主体である県、県住宅公社、岩国市は昨年6月にそのプロジェクトを中止せざるを得なくなったという。
莫大な借金(244億円)が残り、その返済が市の財政を圧迫した。
そのタクシーの運転手が言うには、愛宕山跡地は国が買い取って米軍住宅が建てられる、最初からそう決まっていたらしい、国に騙されたのではないか、と。
私はそれを聞いた時、いかにも政府がやりそうな事だと思った。
しかしその卑劣な政府のだまし討ちは、岩国市民や、まして岩国市議会の力では糾弾できない。そのやるせなさがこのタクシー運転手の言葉なのだ。
飴と鞭で地方に米軍再編の負担を押し付けてきた政府の卑劣なやり方に対しては、この国の国会でさえ追及できていない。米軍再編問題についての野党政治家の追及はあまりにも弱い。
ましてや地方議員や地方住民の力では政府のごり押しを防ぐ事はできない。
暗澹たる思いを持ってそのタクシー運転手の話を聞いた私は、それ以来すっかりこの話を忘れかけていた。
10月6日の東京新聞「こちら特報部」の記事は、忘れかけていたその時の話を鮮やかに蘇らせてくれたのだ。
その記事は、この愛宕山開発問題について、岩国市が国と県から米軍住宅建設の打診を受けていた事実を示す文書の存在が明らかになった、とするスクープ記事であった。
すなわち今年4月付で作成された「愛宕山地域開発室作成」の議事録によれば、岩国基地に民間空港を再開させる事と引き換えに米軍住宅建設を了承することについての関係者のやり取りが詳細に記されているという。
6月の県議会では岩国市側は、そのような打診は国や県からは一切ないと言い張っていたという。市民や市議会に大嘘をついていたのだ。
その岩国市の市長は今年2月の選挙で、空母艦載機のこれ以上の受け入れは住民にとって負担が多すぎると慎重だった井原勝介市長から、受け入れ賛成の自民党福田良彦市長に代った。
市長が交代した途端に、国はそれまで凍結していた補助金を与え、米軍住宅建設を進めようとしたわけだ。
東京新聞かスクープした議事録文書が本物であれば、国の背徳の行為はあまりにも露骨だ。
政府が米軍住宅を建設したいのなら、なぜそれを堂々と岩国住民に説明して了承を取りつけようとしないのか。
それが出来ないのは、政府の行なおうとしている事があまりにも不当であるからだ。それがわかっているから隠そうとするのだ。
米軍基地を日本に抱え続ける限り、この矛盾は続く。
米国の安全保障政策に従うばかりの日本の防衛政策は、いまや日本の国防とは大きく乖離した米国の戦争と、そのための行なわれる米軍再編に、完全に協力させられものとなった。
その結果、日本を守る為の防衛政策は、もはや完全に国民の利益と反するものになってしまった。
その矛盾が国会の場で論争されることなく、しわ寄せだけが地方住民に押し付けられていく。
交付金ばら撒きの飴をなめさせられる住民とこれ以上の米軍基地負担には耐えられないと反対する住民が分断され、基地を抱える地方住民と基地の被害を感じない一般国民が分断されていく。
分断されてはならない。国家権力の悪に抗していく国民の利害は常に一つのはずだ。
我々は岩国市の愛宕山米軍住宅建設問題から目を離してはいけない。
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