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http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20080930dde018070019000c.html
牧太郎の大きな声では言えないが…:引退しない美学
秋ですネ。夕日が奇麗な季節になりました。
モハメド・ベロ・アブバカルおじいさん、お元気ですか。86人の奥さんも、約170人のお子さんも、お元気ですか。
エッ、そんなことは分からねえ? そうでしょうね。奥さんたちに1日に3人ずつ会っても、3カ月近くかかるんですから。
でも、おじいさんの元気は知っています。祖国・ナイジェリアの裁判所が86人の妻を持つ84歳のあなたに「妻帯は4人まで。イスラム教の教えに反するから3日以内に82人の妻と離婚しなければ死刑」と判決を下した。すごいですね。奇跡ですね。神業ですね。86人の奥さんを持つなんて……。
日本では、そうはいきません。ついこの間も、プロ野球選手が美人アナと一夜を共にしたと大騒ぎになりました。腹を立てるのは野球選手の奥さんだけと思ったのですが、日本人の大半が腹を立てた。日本には「不倫を許すな!」というモテない男のおきてがあるんです。もちろん、妻は1人です。
元教師のおじいさんが住むニジェール州では、大半がイスラム教徒。00年に州がイスラム法に基づく司法制度を導入したので、男性が持てる妻の数は「4人まで」。でも、おじいさんは30年ほど前から結婚を繰り返していたのですよネ。「妻が10人いれば普通の男は死ぬ。でもおれの力は神から授かったものだ。別れない!」。当然です。神業は超法規的な存在です。
日本では今、妙な引退ブームが起きているんです。現職首相が突然、政権を投げ出して以来、衆院議長も引退、世界の王選手も、小泉というカリスマ元首相も引退です。人々は「花は散り際が奇麗」と引退の美学を褒めたたえる。花? 日本では桜のことです。
でも、アブバカルおじいさんは立派だと僕は思います。「聖典コーランには妻を5人以上持った場合の罰を書いていない」と屁理屈(へりくつ)を並べ「もっと結婚する気だ」。すごいですネ。死刑になっても平等に妻を愛する現役宣言。これは「引退しない美学」です。
カリスマ元首相は再婚して、イタリアに移り住み、オペラを見て余生を楽しむのかもしれませんが、庶民は年金不安で、引退なんてとてもできません。第一、桜が散ると、人々は平気で“花びら”を踏みつけて歩くものです。
アブバカルおじいさん! 現役続行に拍手を送ります。遠い日本の引退できない男たちより。(専門編集委員)
毎日新聞 2008年9月30日 東京夕刊
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