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浜岡原発運転差し止め訴訟、控訴審始まる。中越沖地震は何だったのか
荒木祥2008/09/21
東海地震発生時の大惨事を懸念して住民らが浜岡原発の運転差し止めを求めた民事訴訟の控訴審が東京高裁始まった。原告が中越沖地震や岩手・宮城内陸沖地震を踏まえた危険性を主張したのに対し、中部電力は「国の安全審査などに適合しているから問題はない」と主張、静岡地裁の原判決を支持し控訴棄却するよう求めた。
住民らが東海地震時の大惨事を懸念、浜岡原子力発電所の運転差し止めを求めた民事訴訟(浜岡原発運転差し止め訴訟)、昨年、静岡地方裁判所は、中部電力の「国の安全審査に沿っていれば問題はない」などとする主張をほぼ全面的に認め、原告は敗訴した。これを受けた控訴審が始まり、第1回口頭弁論が19日、東京高等裁判所であった。
控訴人は2時間、被控訴人・中部電力は1時間にわたって、代理人(弁護士)が主張を述べた。口頭弁論の最後、東京高裁は、老朽化による事故により停止が続き、新耐震指針による再評価(バックチェック)もなされていない1・2号機について和解協議を持ちかけたが、中部電力は拒否した。
浜岡原発は想定されている東海地震の震源域のど真ん中で3〜5号機が運転を続けている。阪神・淡路大震災以後の日本は地震の活動期に入ったと言われる。これまで原子力施設は、ウラル核惨事、スリーマイル島、チェルノブイリ、もんじゅのナトリウム漏れ火災、東海村JCO臨界事故などといった惨事を引き起こしてきた。
浜岡原発が地震で被災する大事故が起これば、風向きにもよるが、関東甲信越の広範な地域でヒトは住めなくなり、450万人の被害者が出ると想定されている。しかし、静岡地裁判決は原発震災を、いわば「杞憂に過ぎない」と一蹴した。
原告団共同代表・長野榮一さん
東海地震の力は加速度1,000ガルですむのか
中部電力は現在「念のため」と称し、国の指示に従い、ほぼ1審での原告の主張に沿う形で、浜岡原発3、4号機の耐震性を再評価(バックチェック)している。しかし地震の力をことさら低く見積もり、「安政東海地震級の地震でも大丈夫」と力説する。
だが、今年6月14日に起きた直下型の「岩手・宮城内陸沖地震」(マグニチュード7.2、震源の深さ約8km)では、0.2〜0.3秒周期の地震波が強く、木造家屋の倒壊が少なかったのにも関わらず、橋やダムといった大型構築物に大きな被害を出した。
大型構築物は短い周期の地震波に弱く、原発はとくに0.1〜0.3秒周期の上下動に弱い。岩手・宮城内陸沖地震では、一関西(いちのせきにし)観測点で、上下動を3,866ガル(加速度)、三成分合成で101カイン(速度)を記録した。
プレート境界型の東海地震では、御前崎台地を隆起させたと考えられる断層帯(長さ56km)が連動して動く可能性もあり、プレート境界型の地震と直下型地震(御前崎断層帯)が同時におきる危険もある。そのような連動型の地震がおきても、中部電力は浜岡原発に加わる力を「大きくて1,000ガル」と見積もるが、想定は岩手・宮城内陸沖地震などと比べ過小ではないのか。
中部電力「柏崎刈羽で起きても浜岡では起きない」
昨年夏の中越沖地震(直下型・マグニチュード6.8、震源の深さ約17km)では、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所が被災した。3号機の変圧器が火災をおこしても、消火系配管の破損のため鎮火できなかった。
このときは至る所でトラブルは起きた。非常用電源も破損して使えなかったので、通常の供給電源が被災していれば核燃料が暴走し、チェルノブイリ級の大惨事にもなりかねなかった。原子力防災の基本「冷やす」のに手間取って放射能が漏れ、中央制御室も防災センターも、一時使用不能になった。
柏崎刈羽原発の被災では、東京電力や国の地震想定が大幅に甘かったことが明らかになった。震源断層は原発の直下まで延び、その面積は想定より大きかった。さまざまな要素の積み重ねで想定の6倍、1,699ガルもの力が記録されている。
それにもかかわらず19日、中部電力は「国の安全審査などに適合しているから問題はない」「多重災害はおきない」などと繰り返し陳述した。国の安全審査に沿った「想定」より大きな力が加わり、あちこちに被害が出、冷却まで20時間もかかった柏崎刈羽の被災を、中部電力は、いわば「浜岡ではおきない」と力説するのだ。
東海地震の際、連動して動くと考えられる浜岡原発周辺の活断層
(9月6日・「プルサーマルいらない浜岡ネット」総会で。長沢啓行さんの講演資料より)
地震防災上、きわめてまずい場所に乱立する日本の原発
日本の電力は現在、約3割を原子力発電に頼っている。しかしこれは、起動と停止がやっかいな原子力発電所を稼動し続けなければならない事情も絡んでいる。仮に原子力発電所をすべて停止したとしても、火力発電所などの稼働率が上がるだけで電力供給に支障は生じない。
日本では、2006年10月に中国電力が土用ダムで不正を行っていたことが発覚、それを契機に原発の事故が多数、隠されていたと明らかになった。少なくとも、1978年11月(東京電力・福島第1)、1984年10月(東京電力・福島第2)、1999年6月(北陸電力・志賀)で、大惨事につながりかねない臨界事故がおきたのに、電力会社は長年、隠蔽を続けてきた。しかし食品の不祥事と違い、電力不祥事では強制捜査もなければ、電力会社の経営者の交代や監督する経済産業大臣の辞任もなかった。そして中越沖地震がおき、柏崎刈羽原発が被災した。
原子力発電に地球温暖化防止を期待する向きもある。たしかに原子力は発電では二酸化炭素を出さないが、ウラン濃縮などの段階では石油を消費、プロセス全体では二酸化炭素を排出している。大量に出る放射性廃棄物の管理などでも石油を消費、二酸化炭素を排出するがその量は定かではない。大量の温排水を排出することから、欧州では猛暑に原子力発電を止めている。何より1万年もの管理が必要な放射性廃棄物が出来てしまうことが、原子力発電の最大の問題点である。
20世紀の前半に、原子力に関する自然科学的な知見は次々と明らかになり、20世紀の後半、軍事利用も平和利用も大きく進んだ。対して地震は、20世紀の後半にようやく色々なことがわかってきて、これからようやく私たちは知見を活かそうとしている。
このため日本の原子力発電所や関連施設は、耐震性の観点から非常にまずい場所に多数、つくられてしまった。地震について、よくわかっていなかったころに作られた立地計画のまま造られた。青森県六ヶ所村のウラン濃縮施設、核燃料再処理工場、東京電力の柏崎刈羽原発、中国電力の島根原発、北陸の一連の施設などなどは、地震防災上、きわめて問題のある場所に立地している。
とくに中部電力の浜岡原発は、きわめてまずい場所に建っている。どうして御前崎が陸地なのか「出っ張って」いるのか、巨大地震の度に隆起したと考えるべきだろう。いったん大惨事がおきれば、グールドン・パウゼヴァンクの小説『みえない雲』と、その映画化の再現である。そのような未曾有の大惨事を事前に防げるのかどうか、東京高裁の英断を期待したい。国の原発耐震指針は阪神・淡路の大震災を機に改定、したと思ったら中越沖地震がおき、柏崎刈羽原発が「想定外」に被災したのだ。
白鳥良香さん他、原告団
筆者の感想
19日の口頭弁論、抽選に外れた私は、原告の好意により傍聴することができた。用意された傍聴席75に対し、希望は190名強、中部電力関係者は少なくとも5名が当初より当選した傍聴券を廃棄、途中退席も相次ぎ、国民の知る権利を明ら様に侵害した。記者クラブ加盟の商業マスコミ記者のためには45席もが用意され、記者たちは出入りを繰り返し、途中、15席も空の出る事があった。
さらに職員の不手際により、撮影時に原告団は入廷していなかった。東京高裁はこの失態を重く受け止め、傍聴席の3分の1をも占める商業マスコミ記者席を大幅削減し、中部電力関係者の傍聴妨害(当選した傍聴券の廃棄や、途中退席)について苦言を呈すべきだろう。
原告の1人、塚本千代子さん
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