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[原理主義の罠]米国型「市場原理主義」の「狂信徒集団」たる経団連&自民党の“錯誤・狼狽ぶり”の笑止
<注記>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080920
【画像】コロー『モントフォンティーヌの想い出』
[f:id:toxandoria:20080920160632j:image]
Jean-Baptiste Camille Corot(1796-1875)Memory of Montefontaine 1864 Oil on canvas 65 x 89 cm Louvre Paris 、 France.
コローの時代は、29歳で夭折したドイツ・ロマン派の詩人、ノヴァーリス(Novalis/1772-1801)が生きた時代の空気をほんの一瞬だけ共有しています。とはいえ、コローが5歳のときにはノヴァーリスが29歳で世を去っています。しかしながら、大きく見ればやはりその時代は欧州の産業革命の進展期であり、併行して科学上の重要な発見が引き続いた時代です。従って、コローの感性は多様な事象に刺激を受けるとともに、科学合理的な空気と古典派の形式主義に対する懐疑の感情が伴っていたことが想像されます。このため、コローをロマン派に入れることもあるようです。
フランス史に絞れば、コローが生きたのはナポレオンの第一帝政、ブルボン朝の王政復古(ルイ18世、ルイ・フィリップ)、ウイーン会議、ナポレオン3世の第二帝政の頃に重なり、それは相変わらず植民地をめぐる戦争と権謀術数の時代でした。しかし、コローが生きたこの時期は特にフランスの産業革命と資本主義が急速に発展した時代でもありました。
このような時代背景のゆえか、才能ゆえか、その事情はなかなか判然としませんが、多様な画風の変遷を見せてくれることがコローの魅力となっています。コローは1934〜1943年にかけて度々イタリアを訪れており、その旅行で吸ったイタリアの空気と様々な見聞が次第にコローの個性を形成してゆきます。初めは古典主義的な画風を見せますが、やがてバルビゾン派の影響で詩的な情趣に富む風景画を多く描くようになります。
55歳のとき、コローがサロンに出品した『朝、ニンフの踊り』(参照、http://www.abcgallery.com/C/corot/corot51.html)の幻想的な画面が爆発的な注目を集めましたが、この絵は老年期へ向かって夢幻的・回想的・象徴的な絵画へ変化するコロー絵画の転機となった重要な作品とされています。近年の研究によると、コローの絵画は、印象派・後期印象派・キュビズムなどへの影響の可能性が窺われるなど、その射程の広さが再認識されつつあります。敢えて言うなら、コローの魅力は、「原理主義的観念」に囚われない、その広い視野で「ミメーシス」(現象界についての因果観察的模倣)を着実に実践したという点にあるのかも知れません。
『モントフォンティーヌの想い出』(コロー、68歳の作品)の舞台となるモントフォンティーヌはパリの北、約30kmにある小さな村で、そのすぐ南にはジャン・ジャック・ルソーが晩年を送ったとされる、美しいエルモンヴィルの森があります。これは、晩年のコローの風景画の最高傑作とされる作品で、少年時代にコローが体感したルソー風の自然賛歌が聞こえてくるようです(2008.8.22観賞、於・国立西洋美術館「コロー、光と追憶の変奏曲展」/現在は神戸市立博物館で開催中、http://www.corot2008.jp/)。
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(市場原理主義の誤謬=米国発・グローバル金融パニックの発生)
各メディア(9/19)によると、ブッシュ政権は米国・金融機関の不良債権を買い取って処理する公的機関を設立する検討に入った(9/18〜)ようです。それは、1980-1990年代にS&L(貯蓄貸付組合)の破綻が相次ぎ金融パニックが想定された時の「整理信託公社(RTC/Resolution Trust Corporation)」(参照、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B4%E7%90%86%E4%BF%A1%E8%A8%97%E5%85%AC%E7%A4%BE)と似た組織になるとも報じられています。このため、9/18の米株式相場と9/19の日経平均株価は急反発しています。
しかし、これで世界的な金融パニック(世界金融のメルトダウン=金融システム崩壊、信用崩壊の連鎖危機への不安心理拡大)の空気が収まった訳ではありません。なぜなら、前回と同じRTCには金融不安の核心である米金融機関の資本不足を埋める機能がないからです。このため、公的資金を資本注入に使うと米当局が決断するまで、この金融不安は収束しないとの見方がマーケットに出ているようです(情報源、http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-33844720080919)。
目先の現象として見れば、現在の金融パニックの発端は、欧米紙(9/16)が「荒れ狂った週末、ブラックサンデー」と名づけた9/14の投資銀行(5大証券会社の第4位)リーマン・ブラザースの破綻劇です。米政府はリーマンの公的救済を拒否した訳ですが、その負債総額は約94兆円という巨額です。一般に米国の投資銀行(証券会社)のビジネスは、借金を増やしつつサブプライム・ローン関連等の証券化を膨らませて、それを投資家に販売する手数料ビジネスが主体となっていました。
リーマン・ブラザーズは、その売れ残り在庫を抱えすぎたため、この8月末で総資産額が株主資本(自己資本)の実に約10倍まで膨れ上がっていたのです。また、同時に、同じく第3位のメリルリンチはバンク・オブ・アメリカによる救済合併が決まっています。更に、「ドラマ・金融危機」の主役は世界最大の保険会社AGIの経営危機へバトンタッチされましたが、急転直下、こちらは米政府管理下に置かれる形で救済されたことは周知のとおりです。
「前者(リーマン・ブラザーズ)の公的救済拒否」と「後者の公的救済の理由説明」が納得できないという声も聞かれます。確かに、AGIが崩壊すれば「金融機関・投資家・株主らの損失拡大にとどまらず、全世界の一般の人々(保険契約者はもとより、各国民・市民としての一般の生活者レベル/保険契約者は世界で約百数十カ国に拡がり、傘下の日本法人・生保「アリコ」の契約者だけで約900万件に及ぶ/情報源:2008.9.17付・日本経済新聞)に甚大な被害が及ぶ可能性があったと思われます。また、米国の健康保険制度は日本のような「国民皆保険の原則」でないため、AIGが崩壊すると甚大なパニックが米国内に拡がる懸念もあったと思われます(アメリカの医療制度の恐るべき実態については下記記事▲を参照乞う)。
▲2007-08-24付toxandoriaの日記/国民を米国型『患者の権利宣言』へ誘導する内閣府「規制改革推進会議」の欺瞞性、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070824
ともかくも、それは、ハイテク金融商品を装いつつ実質は債務保証(債務の証券化技術の開発による)である、非常に複雑な仕組みの「信用デリバティブ」(一種の再保険システム)への保険会社の全世界における関与は、今や、殆ど天文学的と言っても過言でないほど巨大な規模となっており、それがIT&金融工学技術の進歩とともに加速しつつ更なる規模拡大をし続けるという恐るべき現実があるからです。
もし、このグローバル経済時代において、自分は株はやらないし、デリバティブとも再保険とも全く無縁だと思っている人がいるとすれば、それは、ただ「知らぬが仏」ということに過ぎないのかも知れません。民間の医療・損保にせよ、公社債型投信にせよ、自分が勤務する会社の経営(財務)にせよ、今や、我々は殆ど無自覚のままに、この天文学的なほど巨大に膨れ上がった「再投資型金融システム=信用デリバティブという名のヴァーチャル空間」の中に取り込まれているのです。しかも、今やその信用デリバティブの規模は、少なくとも約6,300兆円を超える規模まで膨張しているようです(それは日本の国内総生産(GDP)の約12倍以上!/情報源:20008.9.17付・日本経済新聞)。
しかも、恐るべきことですが、我々が「生涯の大半をかけて積み立てた年金保険料(約170兆円?)」の大部分が「年金資金管理運用独立行政法人」(特別会計/厚労省・天下りの受け皿組織)の手によって、その巨大な「再投資型金融システム=信用デリバティブという名のバブル型・ヴァーチャアル金融空間」で投資・運用されており、しかも直近の事例では、115兆円規模の資金運用(1年間)で約6兆円の損失が発生しています(H19年度/参照、http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h20_p01.pdf)。恰も、これは、「年金資金管理運用独立行政法人」が我われの「なけなしの年金積立金」でバクチを打っているように見えるではありませんか?
それでも、今回の金融パニックが収まれば“日本国民は運が良かったと思え!”、という「お上(自民党・政府&厚労省)のお達し」だから仕方がないと言うのでしょうか?いくら運用についての法的根拠(参照、http://law.e-gov.go.jp/haishi/H12HO019.html)があるとはいえ、今回の金融パニックの当事者ですら厳禁(アメリカでは年金積立金の運用は禁じられている)とされる、この「国民の年金積立金で官庁の天下り組織がバクチを打つ」というバカげた行為の是非については、早急にそれを国民の議論に付すべきでだと思います。これは、「標準報酬月額の改竄問題(年金の算定基準となる給与水準の社会保険庁による対企業・偽装指導問題)」(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008091901000362.html)に劣らず、全ての日本国民の日常生活と生命維持に直結する重要な問題です。
ところで、リーマン、AGIにとどまらず、市場関係者らの金融不安にかかわる疑心暗鬼の矛先は、更なる金融機関(銀行・証券会社)へ拡大しつつあります。具体的に言うなら、これらの米・金融機関がサブプライム・ローン関連等の不良資産をどれだけ抱え込んでいるかという疑念です。そして、それは株価の下落率(2008.3.18と同.9.16の対比/情報源:2008.9.18付・日本経済新聞)に現れており、ワシントン・ミューチュアル(最大の貯蓄貸付組合=貯蓄と住宅ローンに特化した金融機関▲74.9%)、ワコビア(全米で第4位の銀行/▲55.0%)、モルガン・スタンレー(米5大投資銀行の第2位/▲21.1%)、バンク・オブ・アメリカ(全米で第2位の銀行/▲17.8%)、シティ・グループ(全米で第1位の銀行/▲15.4%)、アメリカン・エキスプレス(巨大クレジット会社/▲13.5%)、ゴールドマン・サックス(米5大投資銀行の第1位/▲11.9%%)という具合です。
注目すべきは、モルガン・スタンレーがワコビアと合併交渉中とされており、第5位のベアー・スターンズは3月の金融危機でJPモルガン・チェースに救済買収されているので全米5大投資銀行で唯一健全と見なされるのが第1位のゴールドマン・サックスだけとなってしまったことであり、しかも、それすら株価が大きく下がっている(=信用が崩壊しつつある)ということです。なお、今回の「荒れ狂った週末、ブラックサンデー」の政府側を代表する立役者であるヘンリー・ポールソン財務長官の古巣がこのゴールドマン・サックスである(2005年まで、同社の会長兼最高経営責任者(CEO)であった)こと、しかも、そのゴールドマン・サックスですら、この6-8月期決算の結果(純利益)が前年同期比70%減(8億4500万ドル/約880億円/情報源:2008.9.18付・日本経済新聞)となっていることです。ここからも、米国金融パニックの事態の深刻さが窺えます。
また、この「荒れ狂った週末、ブラックサンデー」の根本原因であるサブプライム・ローン問題の大元締めたるファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)について、結局は、ポールソン財務長官が両社の国有化を宣言した(9/7)ことも記憶に新しいところです。それは、両社が米国の住宅ローン残高約12兆ドル(約1260兆円)の半分近くを保有または保証しており、もし万が一にも、これらがデフォルトされると日本の国内総生産(GDP)規模以上の巨額債権の評価が大きく毀損するか、あるいは紙屑に近いものとなり、その大パニックの余波は米国内のみならず全世界の金融システムを破壊する恐れがあったからです(参照、下記資料◆)。
◆米政府、ファニーメイとフレディマックを政府管理下に(2008年9月8日、Reuters)、http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-33624620080907
(新自由主義思想の誤謬の証明/金融パニックの火消しによる『FRB資産の劣化』と『大きなアメリカ政府』の出現)
アメリカ政府は、金融危機の拡大を防ぐための「総合金融安定化対策の大枠」(数千億ドル(数十兆円)規模の公的資金の投入)を固めた(9/19)ことが報じられており、そのポイントは三つです(情報源:日本経済新聞ネット版、http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080919AT1C1900M19092008.html)。
(1)公的資金による不良債権買取機関の創設(冒頭で記述した情報の具体化への動き)
(2)投資信託MMF(マネー・マーケット・ファンド/政府発行の短期証券や公社債などに投資し、元本の安全を確保しながら安定した利回りを得られる運用を行う投信)の保護のため政府基金を最大500億ドル(約5.4兆円)を準備(・・・額面が1ドル以下に下がった場合、その差額を政府が保障する)
(3)金融機関株式の空売りの全面禁止、ほか
一方、FRB(米連邦準備理事会)自身の財務内容(資産)も劣化しつつあります。資金繰り救済のため証券会社が保有する住宅ローン担保債権(サブプライム・ローン関連など)と国債を交換したため、所有する9千億ドル(約95兆円)の資産のうち国債(安全資産)の保有額が前年比で約40%減少するとともに、様々な担保との交換の形で銀行へ貸し付ける新型融資の残高が1.5千億ドル(約16兆円)に達しています。更に、これにアメリカ政府によるベアー・スターンズの買収救済支援、および二つの住宅公社(ファニーメイ&フレディマック)と今回のAIG向け融資などの出資額を合計すると、その合計は実に3140億ドル(約33兆円)の巨額となります(以上の情報源:2008.9.18付・日本経済新聞)。
いずれにせよ、このFRB自身の資産劣化傾向に対しても、米財務省が国債発行で支援することとなるため、これらの方針がブッシュ政権の意志として決定したことは、今後、アメリカの財政赤字拡大が避けられなくなったこと(イラク・アフガン戦争の巨額戦費に、これらの巨額費用が加わるため)、つまりブッシュ政権のアメリカが、事実上、「大きな政府」へ向けて舵を切ったことを意味します。別に言えば、それは、市場原理主義(新自由主義思想)に沿って暴走してきたアメリカ型グローバル市場原理主義が、今回の『金融パニック』の発生によって、やむなく「大きな政府」へ回帰せざるを得なくなったということです。これは、「対日・規制改革要望書」によって、「米国型市場原理主義」(新自由主義思想)に基づく徹底的な政策実行を日本へ迫り続けてきた(今年度で8年目になる)アメリカ政府の強硬な姿勢からすれば大いなる<自己矛盾>以外の何物でもなく、今回の「大金融パニック発生」そのものが、<米国型市場原理主義の誤謬の証明>であるとすら言えそうです(参照、下記記事★)。
★2008-09-03toxandoriaの日記/福田・退陣の真相を“お笑い番組化”で脚色・転嫁する民放TVの唾棄す堕落・痴呆ぶり、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080903
ついでながら、今回の「大金融パニック発生」の直接原因となったサブプライム・ローン問題には、新自由主義思想の徹底による<典型的な金融モラルハザード現象>が観察されます。例えば、ABCニュース(9/18)によると、サブプライム・ローンの契約者の中には“死人まで存在した”という驚くべきエピソードがありました。つまり、住宅バブルで全米が舞い上がる異様な空気の最中に、あまりにも杜撰な書類審査でローン貸付が行われたため、絶対に支払い能力などあり得ない“死んだ人”が契約者となり新築の豪邸が売買されていたという訳です。それが転売され、やり放題で暴利を貪ったバブル期の不動産会社および関連金融機関(表記の投資銀行など)の“狂気のごとき仕事ぶり”を想像すると、アメリカ型市場原理主義の“ポンジー(詐欺)的性格”がリアルに見えてきます。
それだけでなく、次のような驚くべき実情もあったようです(情報源:2008.9.18付・日本経済新聞)。・・・・・現在のバーナンキFRB議長は、既に、彼が理事時代の2004年に、二つの住宅公社(ファニーメイ&フレディマック)が必ず金融危機を起こすという懸念を抱いていた。また、当時のグリーンスパンFRB議長も、政府が支援するこれら二つの公社の膨張(暴走)を止める法的規制が必要であることを再三にわたり訴えていた。しかし、議会と政府に対する強力なロビー活動によって(恐らく、二公社のみならず、住宅・不動産関連業界&関連投資銀行などの勢力による・・・・)、これらの声は退けられた。・・・・・このような初期の病状に巨大投資会社(証券会社)などのモラルハザードと対応策の先延ばし、および経営トップの自己本位の利益至上主義が加わり重症化したことが今回の「大金融パニック発生」の直接の引き金となった訳です。
なお、破綻した(事実上は、米政府によって破綻させられた)リーマン・ブラザースのリチャード・ファルドCEO(最高経営責任者/その強面の風貌、押しの強さ、ワンマン&独善ぶりからゴリラと渾名され恐れられた)のここ10年の年収は約1.86億万ドル(約200億円/毎年)であったと報じられています(参照、http://www.zakzak.co.jp/top/200809/t2008091735_all.html)。因みに、アメリカにおける一般サラリーマンと経営トップの年収格差は、CEOと平均的労働者との報酬比較で典型的に見られることが指摘されています。民主主義的資本主義(民主党オバマ大統領候補の政策アドバイザー、ロバート・B・ライシュの命名/バランスのとれた資本主義)の黄金時代における米国大企業のCEOは平均労働者の25〜30倍の報酬を受け取っていたが、1980年代の格差は約40倍になり、市場原理主義が暴走し始めた1990年は約100倍に、2001年は実に約350倍にまで拡大したようです(下記記事▼を参照乞う)。が、これに比べてもリチャード・ファルドCEOの巨額な年収は余りにも異常です。ここにも、今回の「大金融パニック発生」の背後に潜んでいた<米国型市場原理主義(新自由主義思想)の異常な病理>がリアルに現れています。
▼2008-07-26付toxandoriaの日記/国民主権を侵す「資本の暴走」を「政治のチェンジ(変革)」に擬装する連立与党らの犯罪、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080726
(今こそ求められる“市場原理主義(裁定型金融ビジネスモデル)の暴走”を制限する知恵)
「サブプライム・ローンの詐欺的性格」のエッセンスを纏めると次のとおりです(表記のhttp://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080726より再録)。
●RMBS(住宅ローン担保証券)の最劣等部分だけを取り出した不動産債権にかかわる複雑な証券化商品(例えばCDO(評価・トリプルB格の証券だけを集めた債務担保証券)など)がファンド分野全体へ浸透・拡散し、更に空売り・スワップオプション等のヘッジ技術、あるいはディリバティブ等の高度な金融工学関連技術への過剰なのめりこみで、ファンドの基盤が過剰に際限なく虚構化したことがサブプライム・ローン問題の本質である。
●しかも、肝心の「格付け会社の評価」そのものについても「詐欺的な作為性の可能性」(フェアバリュー(Fair Value/or Fair Price/市場価格に基づく会計上の時価)は公正か否か?)をめぐる諸問題が次々と噴出するなど、米国の金融工学技術関連のフィールド全体での犯人探し(疑心暗鬼)の動揺が果てしなく広がり、広義の金融市場全体での混迷の度合いが深まる一方となり、その意味でサブプライム・ローンの詐欺的性格という根本問題は今も解決されていない。
●いずれにせよ、このサブプライム・ローンの由々しき本質は、本来であれば絶対に貸すべきでない“既に、事実上破綻してしまった「低格付け層(サブプライム)の人々」を、契約後の数年間だけの“誘導的な見せかけの低金利設定”という、ほとんど詐欺に近い「騙し商法」で債務契約へ誘い込んだ点にある。
●結局、これら気の毒な立場の人々(多くの弱者層の人々)は、擬装低金利(実質的な超高金利)で住宅ローンを貸し付けられ、一方で不動産バブルの煽り(地上げ)が公然と行われ、それが突然にはじけた”というのが現実である。つまり、これは米国流市場原理主義の<異常で悪魔的な部分>が噴出したものに他ならない。
結局、このような「サブプライム・ローンの詐欺的性格」の根本にあるのが、市場原理主義(新自由主義思想)が持て囃してきた「裁定型金融ビジネスモデル」(=サヤ取り型の金融ビジネスモデル)と「野放図な規制緩和政策」です。これらが行き過ぎてポンジー(詐欺商品)化したのがサブプライムローン問題の本質です。しかも、既述のとおり、その高収益に味を占めた米国の金融サービス関連企業がロビー活動で政治(ブッシュ政権と議会)に圧力をかける始末となり、金融機関自らが率先する形で「不公正取引の増殖」をアメリカ国内のみならず世界中に向けて強要する(波及させる、バラ蒔く)ところまでモラルハザード状態へ堕ちてしまった訳です(参照、下記資料■)。
■池尾和人・慶応大学教授『裁定業務の限界超えよ』(2008.9.18付・日本経済新聞)
ここで我われは、そもそも金融には「付加価値創造(支援)」(=信用創造機能)という主要(重要)な役割があることを想起すべきです。IT技術と金融工学を駆使した「裁定型金融ビジネスモデル」の特徴は金融取引の手法や金融商品そのものを過剰に複雑化できることですが、それ故にこそ「不公正取引」(ポンジー化/ネズミ講、あるいは詐欺取引)へ向かって暴走するリスクが絶えず付きまとっています。しかし、過剰に複雑化し、あるいはポンジー化すれば、売り手と買い手の間における「情報の非対象性」は無限大へ向かって拡張し、もたらされる「金融パニック」の規模も巨大化へ向かうことになるのは当然です(「情報の非対象性」については、下記記事★を参照乞う)。
★2006-03-15付toxandoriaの日記/日本の「格差社会の拡大」を助長する「情報の非対象性」の問題、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060315
これら深刻な問題の解決を「神の手」(市場原理)にのみ委ねるという「新自由主義思想」の危うさを懐疑しつつ、アメリカ型市場原理主義とは異なる資本主義の方向(=利口に市場原理を活用する方向)を探り続けているのがヨーロッパ型資本主義(EU(欧州連合)の理念)です。無論、グローバリゼーション時代ゆえに、今回の「大金融パニック」では欧州各国も大きな波を被り(大きな被害を被り)、その対応に追われていますが、敢えてここでは、その具体的動向については省略します。ともかくも、このような時にこそ、我われ日本人も、余りにも異常な米国型市場原理主義に飲み込まれてきたことの愚かさを自覚し、日本の国のあり方について根本から見直すことの重要性に気づくべきです。しかも、「小泉構造改革」なるものの実像が、実は、ブッシュ政権の言いなりになって、その「情報の非対象性」を意図的に拡大することのお先棒担ぎであったことにも気づくべきです。
つまり、欧州諸国の政治家・経営者ら指導層に属する人々は、市場経済の持続的活力が、非市場部門(家庭、地域社会、公共など)から創生されるものであることを理解しています。従って、彼らが目的とするのは、先ず、この非市場部門の充実と活性化のために市場原理を有効に活用するということであり、ドイツを例に挙げれば、それが「ドイツ型の社会的市場経済」ということです。新自由主義思想(市場原理主義)にスッポリと飲み込まれたアメリカ型資本主義とは根本的に異なります。それは、社会の非市場部門と経済活動がバランスを維持しつつ市場原理の暴走を抑制して成長・発展させるということです。さもなければ、その余りも倒錯した市場の機序がもたらす大きなツケ回しのために、我われ一般市民の生活が絶えずカタストロフィーの危機に苛まれることになります。
(市場原理の奴隷と化した経団連&自民党の“錯誤・狼狽ぶり”)
日本経団連が、会員企業・団体が自民、民主の両党に政治献金するときの目安となる政策評価(2008年)を発表したことが9/17に報じられました(参照、http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080917-OYT1T00776.htm)。それによると、経団連は、自民党についておおむねその政策を評価しており、最高の「A」評価を30項目中、昨年より一つ多い10項目につけました。他方、民主党については、ねじれ国会で対決姿勢が目立った(党利党略に走りすぎた → ということは、このような国会の“ねじれ”を作った一般国民の意思が誤りだと言うのか?)として下から2番目の「D」評価が昨年より2項目多い6項目と厳しい評価を付けています(政治献金額は自民党29億1000万円、民主党8000万円)。要は、民主党は、小泉構造改革の揚げ足取りに終始して「改革逆コースを叫ぶ」だけの未熟でくだらない、しかも経団連にとって役立たずの政党で信頼できないということのようです(<注記>必ずしもtoxandoriaが民主党の贔屓だということではなく、客観的にこのように見えるということ!)。
しかし、問題は「経団連自身が自民党同様に国民生活を向上させる目線ではなく、自らの既得権益にのみ照準を当てていること」にあります。たまたま、国税庁が発表(9/19)した「民間給与実態統計調査」によると、平均給与は10年ぶりに微増(06年・435万円→07年・437万円)したものの、<年収200万円以下:02年・853万人→07年・1032万人・・・5年前の21%増加/年収1000万円以上:02年・217万人→07年・233万人・・・5年前の7%増加>のデータが示すとおり、【小泉構造改革の唯一の成果】は着実に日本社会における【格差拡大を実現した】ということだけです。平均給与の微増(僅か2万円!)にしても、これは一過性と見るべきデータであり、現在の悪化しつつある景気動向が続くとすれば、次年度以降は再び<中間層没落>の悲惨なデータが現れるはずです。
しかも、小泉構造改革が目玉とした公務員改革・道路公団改革などは悉くが看板倒れとなり、大目玉であったはずの郵政改革の意義も今や薄れつつあり(元々、人件費に歳出が伴わないので、郵政民営化で公務員の人件費が減った訳でもなく、一体何のための郵政改革だったのか?)、それどころか農水省・厚労省・防衛省・国交省などを巡る「国民の生命・財産をコケにするような酷いスキャンダル」が小泉政権の跡を継いだ「無責任・安部内閣」いらい次々と噴出しており、まるで日本政府と中央官庁組織そのものが巨大な伏魔殿の様相を呈し始めています。かと思えば、まるで“何か別の目的”(噴出が予見される大スキャンダルのカムフラージュ作戦か?)があって、わざと国民の意表を突くかのように政権を放り投げた福田首相の後釜を選ぶための「仲良しクラブ内でのオジャラケ総裁選劇場」(主演:面妖な妖怪4人プラス厚化粧の雌ダヌキ一匹)が延々と「小泉構造改革の本命後継者」を演じてみせる「小泉好みの“見栄きり”三文オペラ」(これは、ポピュリズム・アジテーター装置としての衆議院選挙の巧妙な事前運動の意味もあるらしい)を興行中です(参照、下記記事★)。
★2008-09-12付toxandoriaの日記/「国民主権意識」の不在で爛れきり「妖怪コンテスト」化した「自民・自惚れ総裁選挙」の腐臭、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080912
★2008-09-03付toxandoriaの日記/福田・退陣の真相を“お笑い番組化”で脚色・転嫁する民放TVの唾棄すべき堕落・痴呆ぶり、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080903
要するに、今回のアメリカ発「大金融パニック」の震源が「米国型市場原理主義(新自由主義思想)の暴走」であったことが明らかとなり、肝心のブッシュ政権自身がそれを認める形で「大きな政府へ舵を切らざるを得なくなった」という、まさに、この段に至っても、まるで方向感覚を失い呆けたかのように見える、我が「経団連」と「自民党」は、約7年前に「小泉内閣」(プラス御用学者・竹中平蔵ら)が強引に日本に持ち込んだ「米国型市場原理主義」を後生大事にご本尊様として掲げつつ”我なすすべを知らず”の錯乱状態に嵌っている訳です。それを象徴するのが、このアメリカ発「大金融パニック」の余波が日本へ到達したときに、総裁選劇場へ出演中の与謝野財務大臣が放ったコトバ、『日本市場への影響はハチが刺した程度』だと宣ったことです。
“ハチの一刺し”どころか、日米欧の中欧銀行が金融市場の不安を和らげるため9/15-9/16の二日間で36兆円の資金供給を実施することを迫られ、9/18にはFRBと通貨スワップ協定を結び(欧米銀行の資金繰り支援目的で)、日銀が外国銀行を含む金融機関に6兆円相当のドルを直接貸し出すことに踏み切っています。また、AGIの経営不安では傘下・日本法人「アリコ」の生保契約者(約900万人)がパニック状態となり、リーマンの破綻では国内金融機関が多額の回収不能債権を抱えていることが明らかとなり、同社等の社債・株式を組み込んだ一部投信の取引停止などが続出して騒ぎとなっています(情報源:2008.9.20付・朝日新聞ほか)。これを、“蜂の一刺し”程度と認識する人物が財務大臣であることが驚きです。
かと思えば、「オジャラケ総裁選劇場」に出演中の“厚化粧の雌ダヌキ”が、まるで絵に描いた餅に乗せられたかのようにボ〜ッとした“けだるく疲れた表情”で、“もし麻生内閣で私が官房長官とのお誘いを受けても、小泉純一郎さんの正統な後継者でない麻生さんのお誘いをお受けすることはできないワ〜”と宣うため、賑々しく記者会見を開いたりしています。ともかくも、問題なのは、「オジャラケ総裁選劇場」に出演中の5人も含めた自民党と経団連が、この<「大金融パニック」の発信源となった「米国型市場原理主義」(新自由主義思想)の誤謬>を正確かつ冷静に真正面から認識できていないという点にあります。
重要なのは、このような意味で明らかに誤りであった<金融パニックと格差拡大現象に汚染された小泉構造改革>をソックリそのまま引き継ぐのではなく、今後の日本の持続的発展と国民主権(人権・生命・財産および生活権等の保全)と厚生・福祉の充実のため日本の資本主義のあり方をどのような姿と構造に改革すべきかという点にかかわる根本的ビジョンを設計(優先順位を付けて)することです。これがないため、日本は深刻な「改革のジレンマ」に嵌っているのです。今のままの経団連&自民党の“錯誤・狼狽ぶり”(改革のジレンマぶり)は、まさに、もはや過去のものとなりつつある米国型「市場原理主義」の「異様な狂信徒集団」といった体たらくであり、このような茶番に付き合わされる国民はいい迷惑です。
そもそも、現代資本主義の「構造改革」には、それぞれの国の歴史事情によって色々な形があって然るべきのはずです。ここで、この論点を深める余裕はないので、事例として、EU(欧州連合)におけるドイツとフランスの資本主義の特徴(=旧来の資本主義の改革に取り組む姿、国民の厚生と福祉のため市場原理を利口に活用する努力の方向性)と思われる点をアウトライン的にメモしておきます。
ドイツの構造改革
→ 秩序自由主義に市場原理を少し取り入れて活性化するが、エアハルトが確立した社会的市場経済を踏襲する。そして、安定経営と従業員の向上心をエネルギーとする経営の形を変えるつもりはない。その結果、大企業トップの年収と熟練工の年収格差は約10倍程度に止まっている。また、ヒトラー政権への反省から、ドイツでは労使間などでの協働決定の仕組みが工夫されている。
フランスの構造改革
→ 「エリート官僚主導+マルキシズム+重商主義」という歴史的伝統による中央集権型資本主義を、市場原理によって、より効率化する。しかし、エリート指導型を変えるつもりはない。その背景にあるのはフランス革命を含む自国の歴史・文化に対する大きなプライド。なお、中央集権型の弱点を補完するため「リスクコミュニケーション」の視点が導入・実践されている(参照、下記記事★)。
★2007-12-10付toxandoriaの日記/福田総理『あわわわわ〜!』の背後から続々と噴出する裏金づくり「闇の構図」、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20071210
このドイツ・フランス型の二つの「構造改革」が主軸となって、市場原理主義に傾く米国とは異なった「EU型の資本主義」(国民の福祉充実と経済発展の両立を図る資本主義=利口に市場原理を活用する資本主義)の実現が目指されています。そして、ドイツに限らずEU内企業のトップとボトムの「年収格差」は、せいぜいが十数倍ですが、前に述べたとおり、アメリカでは、1980年代の同・年収格差が約40倍となり、今ではそれが、実に驚くべきことですが、約350倍にまで拡大していたのです。しかし、漸く、このアメリカ型市場原理主義の異常なバブル経済も今回の「金融大パニック」で変化を迫られることになりそうです。
さすがに、このような自国の「市場原理主義」(ワシントンコンセンサスに始まる新自由主義思想の実践)の異常さに気づいていた、アメリカの学者の一人(ウイスコンシン大学のRogers Hollingsworth教授/出典:福島清彦著『ヨーロッパ型資本主義』(講談社現代新書)は、次のように語っています。
『 アメリカ社会の上層1/3の人々は、他の先進国が作り上げたグローバル市場を利用して繁栄を謳歌しているが、いつまでも、こんなお祭り騒ぎが続くはずがない 』(今回のリーマン・ブラザーズ等の倒産劇を予言していた?)
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なお、この稿の関連記事として下記★がありますので、ご参照ください。
★2007-10-31付toxandoriaの日記/(米)サブライム問題と(日)防衛・疑獄に通底する“賭博化&軍需化経済”の病巣(プロローグ)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20071031
★2005-03-27付toxandoriaの日記/シリーズ「民主主義のガバナンス」を考える(1/4)(ワシントンコンセンサスについて)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050327
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