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汚染米だけでなくコメの流通自体そのものに問題がある。
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汚染米騒動で露見したコメ流通の暗部、農水省にも批判集中(1) - 08/09/18 | 12:30
工業用の汚染米が食品へ流入する――。コメ加工業者の三笠フーズ(大阪市)が「事故米」を不正転売していた問題は社会を揺るがす騒動へと広がっている。中小の食品メーカーのみならず、アサヒビールの芋焼酎にも混入したことが判明。食品業界を不安に陥れている。
三笠フーズは非食用途に限定された政府保管の事故米を買いあさり、危険性を認識しながら一部を加工食品向けに転売。購入量は2003年度以降だけで1779トンと、政府が売り払った7400トンのうち4分の1にも上った。「工業米を購入する業者は限られている」(総合商社)中で、目立つ存在だったようだ。
売れ残るMA米 累積差損601億円
事故米とは残留農薬の検出などで食用に適さないとされたもの。転売された事故米は「ミニマム・アクセス(MA)米」と呼ばれる輸入米の中から発生したものだった。1キログラム当たり3〜12円と、50〜70円する通常のものに比べて圧倒的に安い。三笠フーズはこの価格差を利用して、不正転売で利ザヤを稼いだ格好だ。今回の事故米からは、中国製冷凍ギョーザからも検出されたメタミドホスや、カビ毒アフタトキシンが検出されていた。産地偽装や消費期限改ざんといった、これまでの食品偽装とは一線を画す悪質さだ。
早い段階で不正を見抜けなかった農林水産省にも批判が集中している。現在、問題のコメの流通経路を調査中だが、コメ流通は業者間取引が多く複雑。市場に出回った商品の追跡までとなると、事態収拾には時間がかかりそうだ。
「輸入米を焼酎や日本酒、みそ、米菓に使うのは業界の常識。しかしイメージ悪化をおそれて、業界は公表を抑えてきた傾向がある」と食品メーカー関係者は吐露する。汚染米の横流しは、そうした業界の暗部につけ込んだものとも言える。
加工用米として出回るコメは年間50万トンで、うち半分をMA米が占める。MA米とは、1993年のウルグアイ・ラウンド農業合意により、日本が自由化を回避するのと引き換えに受け入れたもの。「最低義務」として年間77万トンの輸入を決めた「国際約束」だ。毎年、政府が米国などから買い付けており、その量は国内消費量837万トン(07年度)の10%弱に相当する。
MA米のうち加工用途は3割程度。残りについて農水省は持て余しているのが実情だ。海外援助に振り向けるほか、06年から飼料用への払い下げを開始。それでも07年10月末の在庫は189万トン。年間の倉庫保管料は実に180億円にも上る。輸入開始以来の累計差損は601億円に膨らんでいる。中堅食品メーカーは「コメの原産地表示を始めたら、メーカーは国産米の調達を増やす。MA米の需要はさらに減少するのでは」とささやく。
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汚染米騒動で露見したコメ流通の暗部、農水省にも批判集中(2) - 08/09/18 | 12:30
MA米を輸入代行する業者もうまみは少ないという。数年前に取り扱いをやめた商社は「輸入量が中途半端で儲けがない。麦を輸入する商社が農水省との付き合い上、輸入代行するケースがほとんど」と語る。倉庫業者も「荷動きの少ないMA米は儲けが薄い」とこぼす。「国際相場でコメを落札すると政府は言うが、輸入量の半分はアメリカ、と暗黙のうちに決まっている。MA米は100%が政治の産物」との声もある。
ミニマム・アクセスは国内コメ農家を保護するため受け入れた苦肉の策だが、当の農家からは「減反しているのに輸入するなど言語道断」と制度見直しを求める声もわき上がっている。農水省は加工用途に限定することで国産米の価格下落を防いでいると懐柔に必死だ。
主食用のコメでも偽装が横行の現実
「見かけは同じなのに価格が違う。だからコメは偽装の温床となっている」と卸売業者は口をそろえる。スーパーなどで販売される主食用の卸値は平均で1キログラム当たり240円。「中間流通で古米やMA米が混ざっても見分けがつかない」と大手コメ卸は話す。加工用米は平均で130〜170円。その下のランクとして奇形ものなど「くず米」もあり、それらは50〜80円。件のMA米は50〜70円。それらを混入させれば、濡れ手に粟の儲けとなることは確実だ。
今回、事故米が混ぜられたのは加工用米だった。しかしある卸売業者は「ディスカウント店などで売られる激安な主食用米には、くず米やMA米が混ざったものもある」と指摘する。だとすれば、可能性は低くても、主食用に汚染米が混入する可能性すらゼロではない。川下に向かうにつれ、用途別に分かれたコメ流通の境界はあいまいになっているのが実情だ。流通問題は農水省も認識はしている。だが「04年に新食糧法が施行されて以降、コメは届出制となり原則自由化した」(農水省)と偽装防止などの規制にはほぼ関与できない立場をとる。
卸売業者は「農水省の優先順位は減反政策とMA米の処理。業者の不正を立ち入り検査で見抜くなど二の次なのだろう」と話す。消費者保護の仕組み作りに向け、官民挙げて一から議論を始める時期が来ているとは言えないだろうか。
(前田佳子 =週刊東洋経済)
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