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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20080918-01-1301.html
自民党破滅へのシナリオ
2008年9月18日 The Commons
こんな自民党を見るのは初めてである。かつての自民党には巧妙なシナリオの書き手がいて、能力の劣る野党とメディアを手のひらに乗せ、しかも当人たちには乗せられている事を気づかせずに思いのままに操るという高等技術を持っていた。
例えば2004年に年金法改正案を成立させた時には、「年金未納問題」をリークして野党とメディアを翻弄し、国民が賛成するはずのない法案に目を向けさせず、未納問題だけに釘付けにすることによって、難しい法案を成立させた。国民が気づいて騒ぎ出したのは法律が施行された翌年である。しかも自民党はその時国民の怒りを利用して菅直人民主党代表を辞任に追い込み、藁にもすがりつきたくなった民主党に「三党合意」を飲ませて消費税導入に引きずり込もうとした。まさに一石三鳥のシナリオであった。
正義派ヅラをして悲憤慷慨する「おバカ」メディアは、年金未納の政治家を非国民のごとくに騒ぎたてた事が、負担が増えて給付が減る年金制度の確立を可能にした事に気がついていない。無論シナリオの存在にも思いは及ばない。それほどのシナリオを書くのが権力であり自民党の凄さであった。
ところがシナリオライターの能力が劣化したのか、或いは複数のシナリオライターが競合して収拾がつかなくなったのか、福田総理辞任後の自民党はやることなすこと全てがおかしい。シナリオのひどさは目を覆うばかりで、これでは自民党を破滅に導くシナリオだと思ってしまう。
以前から安倍前総理の政権投げ出しは自民党が書いたシナリオのせいだと私は言ってきた。国会の召集を意図的に遅らせ、海上給油活動を期限切れにし、海上自衛隊を引き上げさせて、その責任を民主党に負わせようとしたシナリオである。安倍前総理が責任を取って辞任する時に小沢民主党代表の責任論も浮上させて辞任に追い込むのが目的だった。しかし悩んだ安倍前総理がその手前で自爆してしまいシナリオは未完に終った。安倍前総理を辞めさせた後は福田康夫氏を総理に充てる事もシナリオは決めていた。
しかし今回の福田総理の投げ出しは自民党にとって想定外であったようだ。だからその後のシナリオには周到さがない。福田総理は辞任を表明する際、それによって行われる自民党総裁選挙が、代表選挙を行わない民主党に対する「絶妙のタイミング」になると言い訳した。派手な総裁選挙を繰り広げれば自民党が総選挙に勝てるというニュアンスである。シナリオはその言い訳に乗せられた。しかし次の総選挙に勝利などない事を福田総理自身が一番良く知っている。たとえ与党が過半数を制しても再議決は出来なくなり、法案は1本も通らない。自民党はひたすら民主党の足の裏を舐めるしかなくなる。
そんな事をしたくないから福田総理は政権を投げ出した。自分に海上給油法案の再議決と解散総選挙をやらせようとする勢力に抵抗した。もしも自民党にわずかな活路があるとすれば、過半数を取れなかった民主党の小沢氏が代表を辞任したその時に政界再編を仕掛け、参議院の民主党を分断できれば、権力の座にしがみつける可能性がある。しかしそんな事に興味がないから福田総理は政権を投げ出した。小泉氏が意欲を見せる政界再編など「とてもじゃないがやる気にならない」という気持ちだったのではないか。
とにかく福田総理は辞任の理由として「絶妙のタイミング」と言い訳した。そして自民党はやらざるを得ない総裁選挙を衆議院選挙に利用するしか展望は開けないと考え、派手な総裁選挙のシナリオを書き始めた。これが誤りの始まりである。
派手な総裁選挙と言えば小泉純一郎氏が国民を熱狂させた2001年を思い出す。それに引きずられたシナリオが描かれた。しかし2001年と現在とでは政治の構造がまるで違っている。2001年はまだ衆参両院を自公が制していた。いわば自民党一党支配構造の延長にあった。一党支配の時代には自民党総裁選だけが最高権力者を選ぶ選挙で、国民はそれに一喜一憂できた。しかも2001年は田中真紀子・小泉純一郎ペアが野中広務・橋本龍太郎ペアと本気で戦った選挙である。「自民党をぶっ壊す」選挙だったから盛り上がった。
しかし現在は自公が参議院の過半数を失って一党支配構造は崩れた。国民はその事をこの一年肌身で感じてきた。政治を見る目は全く変わった。自民党総裁選だけが最高権力者を選ぶ選挙でない事も感覚で分かっている。その事にシナリオライターは気づいていない。前回のコラムでも書いたが政権交代を繰り返す民主主義国では党首選挙はなるべくやらない。党内の選挙は民主主義とは関係がなく、むしろ分裂を招いて有害だからだ。一党支配の時代は敵は党内にいたが、政権交代の時代には敵は党外にいる。だから現在の総裁選挙は見せかけの出来レースにしかならない。候補者同士が真剣に戦わないで民主党批判ばかりしている。これでは2001年のように盛り上がるはずがない。おまけにシナリオライターは総裁選挙をやる事が「民主的だ」などとピンボケ発言を候補者にさせて、世界に恥をさらしている。
世界の常識通りに自民党は党内にひび割れが起きた。津島派では参議院が与謝野氏なのに衆議院の中堅・若手は石破氏を担いだ。参議院のドンの面子は丸つぶれである。町村派では大勢が麻生氏支持なのに小泉氏が小池支持を公言した。将来の自民党分裂の芽がいよいよはっきりしてきた。小泉構造改革を巡っていずれ自民党は二つに割れる運命にある。
そして問題なのは「政策論争」のお粗末な中身である。北朝鮮情勢はわが国の安全保障戦略の一大転換を促す話である。アメリカも中国もあらゆる可能性を考えながら半島の将来像を模索している。日本にとっては日米同盟の存続に関わり、この地域に日米同盟に代わる枠組みが構築される可能性がある。その重大な時にそれを議論していない。国内では汚染米の話が出てきた。これは国家犯罪と呼ぶべき事件かもしれない。何故汚染米が輸入されそれが食品業者に出回るのか。中国の毒入り餃子を批判するどころの話ではない。アメリカ産牛肉輸入禁止に文句を言われても反論できない話だ。この深刻な問題をどれだけ議論したのか。そしてリーマン・ブラザースの破綻である。景気の先行きは全く不透明。こんな時に経済財政担当大臣が総裁選挙などやっている場合かと言いたくなる。自民党が衆議院選挙をまともに戦おうと思うなら即刻選挙を切り上げ、政治家の仕事に戻るべきだ。1日も早く総裁を決め、直ちに国会を開き、新総理は国連総会を欠席して早期に補正予算を成立させ解散すべきである。シナリオライターは一体何をしているのか。信じられない。
一方で代表選挙が無風になった民主党は次々に強烈な戦術を繰り出している。1つは小沢代表が「刺客」になる戦術。もう1つは国民新党との合併である。小沢代表の「国替え」はもっぱら東京12区の太田公明党代表との戦いと思われているが、私はそれよりも神奈川11区の小泉純一郎氏との戦いをやるべきだと思う。いわば頂上決戦である。まさに天下分け目の関が原になる。選挙は盛り上がること間違いない。その波及効果は計り知れず、国民は民主党に単独過半数を与えるかもしれない。無論小選挙区で小沢代表は負ける。しかし政権交代が果たせれば本望ではないか。退路を断ち政治生命を賭けた戦いが新しい時代を切り開く事になる。また出身地から立候補するという日本の選挙のやり方は議員職を私有財産化し、世襲議員をはびこらせる。小沢代表の「国替え」はそれを終わらせる宣言と受け止めたい。
次に国民新党との合併だが、これは小沢代表が政界再編の主導権を握るための一手である。いずれにしても選挙が終れば民主党は国民新党、社民党と連立を組まざるを得ない。連立よりは合併の方が強力な団結を維持できる。しかも国民新党との合併には平沼赳夫氏らの郵政民営化反対組も参加する可能性があり、自民党が小泉構造改革を巡って割れれば、自民党の反小泉勢力と合体する道が開かれる。その時には民主党内の小泉シンパが小泉氏と連携し、新たな二大政党制に進む事になる。その再編の口火を小沢氏が切ろうとしている。
小泉氏との選挙に敗れれば、総理はもとより議員にもなれず、それで政治が出来るのかと疑問を持たれるかもしれない。しかし議員の身分がなくとも政治を動かすことは出来る。幕末を思い起こしてもらいたい。坂本龍馬は脱藩浪人で藩の仕事に就いて政治にタッチしたわけではない。徳川幕府の政治とも無縁であった。しかし龍馬は日本の政治史上稀に見る大政治家だと私は思っている。彼の「船中八策」や「藩論」を読めば、日本の議会制民主主義の祖である事が分かる。彼の教えが自由民権運動を生み、100年以上も前に日本に議会を開設させた。龍馬こそ日本の近代政治の礎なのである。
小沢氏が何を考えているのか、私には知る由もないが、私の目にはそのようなシナリオが見えている。
(田中良紹)
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総裁選挙は未熟すぎる民主主義の証明【Yahoo!政治記事読みくらべ:The Commons】08 年 9 月 13 日
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