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「決戦の秋」来たる(山口二郎)
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投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 9 月 16 日 23:53:20: mY9T/8MdR98ug
 

http://yamaguchijiro.com/

 福田康夫首相の退陣表明は、確かに唐突ではあったが、それほど意外なことではなかった。私自身、八月二五日の東京新聞(朝刊)のコラムで次のように書いた。

「(国会召集をめぐって)内閣の長である総理大臣が、この日に国会を開くと言えば、それですむ話である。臨時国会をいつ始めるかをめぐって1か月以上も議論が続くなどという事態は、首相不在を意味する。
 国会をいつから、どのくらいの会期で開くかということは、景気対策のための補正予算の編成やインド洋での給油のための特措法の延長など、重要な政策課題と密接に関連するので、慎重に考慮しなければならない課題だろう。
 それにしても、これらの国政上の課題について方針を決め、指示を出すためにこそ、総理大臣がいるはずである。自分の判断で国会も開けないようでは、首相の政治生命も終わりである。
 安倍晋三前首相が突然政権を投げ出して1年になろうとしている。リーダー不在の悪夢が繰り返されるのだろうか。」

 八月以来、内閣改造はしたものの、福田政権からは政権維持に向けた覚悟や意欲が伝わってこなかった。給油特措法の延長にしても、経済対策の骨格にしても、福田首相は何ら明確な言葉を発することがなかった。これについては、福田個人の性格という問題もあるだろう。しかし、昨年秋の総裁選挙では圧倒的な支持を得て選ばれたのであり、福田の党内基盤は盤石だったはずである。したがって、自民党が丸ごと政権担当能力を失っているとしかいいようがない。

 自民党の矛盾を考える時、根源は小泉純一郎政権にさかのぼらざるを得ない。今日の自民党の行き詰まりの原因は、小泉が作りだした。あるいは、小泉自民党の栄華を支えた要因が、今ではことごとく自民党の足を引っ張る結果となっている。

 まず、ポピュリズムと擬似的直接民主政治という手法が挙げられる。小泉は自民党の派閥政治を否定し、国民に直接訴えかけ、世論の支持を背景に政策を実現するという手法を採った。見せ物としての政治に慣れた国民は、次のリーダーにも同じような演技を要求する。政党政治がリーダーの個人的力量に依存するような仕組みを作ると、リスクはきわめて大きい。だめなリーダーが表に立つと、政党全体が沈没してしまう。

 実際に、小泉ほどの演技力を持たない政治家は、たちまち舞台から転げ落ちたわけである。福田の場合、国民に訴えるべき中身を持たないうちに首相の座が転がり込んでしまった。そもそも家業を継ぐ感覚で政治家になっただけに、国民に訴えるべきメッセージを持たないのも仕方なかった。

 もう一つは、政策面における小泉政治の負の遺産である。小泉構造改革は、政治による再分配機能を縮小したら世の中はどうなるかという壮大な社会実験であった。小泉自身が権力の座にあった時は、改革という意味不明のスローガンによって、その実態は覆い隠されていた。しかし、小泉退陣と共に、貧困の拡大、不平等の拡大という政策の帰結が明らかになった。

 小泉後継の安倍晋三は、ナショナリズムの鼓舞という手法によって、再分配によらない国民統合の方法を模索した。しかし、憲法改正に対して国民はノーを突きつけ、安倍もあえなく退陣した。

 福田は、どのような政策によって国民を束ねていくかという問題について、優柔不断であった。小泉路線を否定して、公明党や自民党の一部が要求する景気刺激に踏み切ることも一つの道であった。しかし、父親譲りの財務官僚的発想が、それを許さなかった。また、伝統的な保守政治の美風を受け継ぐ政治家として、アメリカ流の新自由主義をこれ以上進めるという路線も取れなかった。さりとて、国民を説得し、消費税率の引き上げや増税を提起するという剛胆さもなかった。方向感覚を失った福田は、この夏の段階で政権を担う気力、知力を失っていたのだろう。

 福田政権は自壊したと同時に、野党の攻勢によって崩壊したという面もある。参議院での野党多数という状況で、政権運営は困難を極めた。昨年一一月には大連立騒動もあったが、民主党はともかく連立から引き返し、対決路線を選んだ。そして、通常国会では重要法案を参議院で否決し、政府与党を追いつめた。政治は権力闘争である以上、このような野党の路線は正しいものであった。まして、福田政権は国民からの負託を受けていない、正統性のない政権であったから、早期の解散総選挙を求めるのは当然であった。退陣表明の記者会見で、野党の抵抗で政策が実現できないと泣き言を言っていたが、これは一国の総理としては、あまりにみっともない姿であった。

 これから誰が次の総理になっても、その政権は選挙管理内閣にならざるを得ない。自民党の無責任によって政権をたらい回しするのは、もう限界である。自民党には、今月中旬に派手な総裁選挙を行い、マスコミの注目を引きつけた上で、次期政権への支持率を上げたいという思惑があるようだ。しかし、これはあまりにも国民をなめた話である。自分の不始末で火事を起こしておいて、みんな野次馬に来てくれというようなものである。総裁選びをめぐる報道には、十分注意する必要がある。そして、自民党には政治の空白をもたらしたことについて国民にわびる義務があることを、しつこく言い続けなければならない。

 自民党総裁選挙の行方次第では、政党再編が前倒しになるという可能性も取りざたされている。小泉や飯島元秘書官が暗躍し、小池百合子を総裁選挙に立てるというような展開になれば、首班指名をめぐって与野党入り乱れた闘いが起こるのかも知れない。

 しかし、今こそまじめに政党政治の将来を見据える時である。政治の混迷は、日本国民が小泉の目くらましに会い、思考停止状態に陥ったことに端を発している。同じ間違いを繰り返してはならない。

 私も、将来の政党再編成の可能性は否定しない。だが、今はまず、自民党と民主党という二つの政党が政権をめぐって争い、雌雄を決することが先である。国民の意思表示ができないままで、政権の構成を変えるという国会議員の身勝手をこれ以上許してはならない。また、来るべき総選挙では、政権担当能力を失った自民党を罰することが、最大のテーマとなるべきである。臨時国会では、与野党が政権構想をめぐって、正面から論争し、国民の選択の材料を示してほしい。

 一九九三年の政権交代から一五年たった今、いよいよ政治の回り道に国民が決着を付ける時が来た。(週刊金曜日9月5日号)
 


 

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