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主催国・中国の興隆栄華も、また欠点、矛盾も露わにしつつ、それでもきらびやかなドラマで人びとの目を奪った「北京オリンピック」の夏が終わると、逃れられない現実が目の前に立ちはだかっている。 政府は、景気は今年に入って「足踏み」などと言っているが、明らかに昨年半ばから後退局面に入っている。もともと2002年から続いていたという、“史上最長の景気拡大期”にしても、普通の労働者、生活者にとっては「実感なき好況」、「空景気」に過ぎなかった。 2001年から05年にかけての従業員給与は、5.8%マイナスである (法人企業統計)。企業の人件費負担は、01年度をピーク(労働分配率75.1%)に低下し、06年度には69.3%、特に資本金10億円以上の大企業では53.3%にまで下がっている。「人件費が横ばいになっている中で付加価値が増加したことによる」と労働経済白書(平成20年版)は分析する。 その一方で、経常利益率は上昇し、配当率も大きく上昇している。10億円以上規模の大企業の場合、01年度には5%ほどだった配当率が06年度には20.2%に跳ね上がっている (同白書)。 つまり、利益を上げることを最重視する企業経営によって、労働者の賃金が抑えられ、その分が株主に渡っているのである。そしてそのお金は再びマネーゲームに投入され、巨大な余剰資金となって石油や食料への投機に回り、結果的に私たちの首を締めることにつながっている。 賃金の低下は、非正規労働の増大による。1980年以降、非正規雇用の割合は増え続け、08年第一四半期には、ついに34.0%(1737万人)となった。 株主のために一円でも多く利益を上げるべきだとする企業経営にとって、労働力は一円でも安くしたい「要素」に過ぎない。できるだけ安く、できるだけ能力があり、できるだけ文句を言わず、不要になればいつでも切ることができる「労働力」。それこそ、現在の資本にとって理想の「労働力」である。非正規労働の劇的拡大は、資本にとって理想の「労働力」が十分に存在する社会になったということであり、非正規労働の拡大は正規労働の条件をも引き下げることになる。 まさに資本にとって「理想の社会」が到来したかに思われたが、それは不安定で閉塞し、若者に希望を与えないばかりか、いつまでも景気が上向かない社会になったのは皮肉である。自動車が売れない、マンションが売れない、耐久消費財が売れない――労働者は消費者・生活者でもあり、労働者にお金が廻らなければモノが売れなくなるのは当然である。 労働者は人間である。生まれ、育てられ、学び、様ざまな経験をし、それを伝え、尊厳と誇りをもって仕事をし、子どもを産み育てていく人間である。本号特集でいう「人間らしい」とは、そのようなことを指す。このままでは「生きられない」「家族も持てない」と声を挙げた若者たち、労働者たちが求めるのは、消費を回復させる「消費者」としてではなく、「人間らしい」生の回復である。 秋葉原事件に衝撃を受け、野党のみならず政府・与党も、非正規労働の改善に動き始めた。この臨時国会でどれだけ成果が築けるか。実質的な改善なのか言葉だけなのか。本号特集は、その指標となろう。グローバル・クライシス(金子勝氏)の大波が襲う前に、人びとが何とか自力で立ち、生き延びられる基盤を作らなければならない。時間はあまりない。 |
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