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2008年09月04日 社説
[「密約裁判」棄却]
歴史に虚偽は許されず
司法が政府の「ウソ」にお墨付きを与えてしまった。その思いを強くする最高裁の判断だ。
沖縄返還協定をめぐる日米両政府の交渉過程で、軍用地の原状回復補償費四百万ドルを日本側が肩代わりするという日米間の密約公文書を暴いた元毎日新聞記者・西山太吉さんが、国に密約の事実認定などを求めていた訴訟で、最高裁第三小法廷が上告を棄却した。
同訴訟では一審、二審とも民事上の請求権が不法行為から二十年で失われる「除斥期間」を適用し、原告の訴えを「門前払い」してきた。最高裁の判断も密約の「存否」を何ら検証することもなく、判決は確定した。
あらためて指摘するまでもなく、この密約は今や「疑いようのない事実」である。
琉球大学の我部政明教授らが、裏付けとなる米公文書を発見。加えて、当時の対米交渉責任者だった元外務官僚が事実を認め、VOA(米海外向け短波放送)の移転費千六百万ドルも含まれていたことを証言している。
これだけの状況証拠と証人の声にも耳を傾けず、司法が果たすべき役割に背を向け、実質的な審理を怠ったことは、西山さんの言葉を借りれば「行政と司法が一体化した高度な政治判断で、司法の自滅」である。
密約を裏付ける文書が見つかったのもここ十年に満たない。原告が求めた除斥期間に当たらないとする主張にこそ説得力がある。
政府の対応も理解しがたいことだらけだ。
文書の存在を一貫して否定している。もう一方の当事国から「証拠」が出され、身内の「告発」があっても「知らぬ存ぜぬ」を押し通す姿勢は駄々をこねる幼子と変わらない。
仮に密約がなかったのであれば、米側で見つかった文書の真意を確かめることは容易なはずだ。元外務官僚についても同じだ。
米国の圧倒的な政治力に押され、不利な交渉を強いられた時代はもはや過去のことだ。成熟した二国間協力を築き上げるためにも、過去に誠実に向き合い、同じ過ちは防がねばならない。歴史に「虚偽」があってはならない。それが次世代へのわれわれの努めでもある。
米軍基地をめぐる「密約」は枚挙にいとまがない。政府の外交に対する国民の目線はすでに「疑念」を通り越している。
密約からツケを負わされるのは国民である。
政府は情報開示のあり方を考える時期である。外交文書の公開は三十年後が原則だが、政府の恣意的な判断に委ねられているのが現状だ。機密保持の必要性を「錦の御旗」にされれば、民主主義の根幹をなす「国民の知る権利」はないに等しく、権力の乱用を止める術もなくなる。
ジャーナリストら有志が、密約訴訟に関連する文書の開示を国に求めた。西山さんらの問題提起は終わったわけではない。私たちはその本質をしっかりと問い続けなければならない。
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