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2008年08月26日
もはや国家権力は国民の敵ではないか
世界の様々な国に勤務してその国の政治を見てくると、残念ながら国家権力は国民の敵であるような国が実に多く存在する事を知る。
まさか日本はそんな国ではないだろう、と思っているとしたら間違いである。
そう思わせる事件が私の周りに最近立て続けに起きた。
私が今住んでいる栃木県の鹿沼市で、豪雨で水没した軽乗用車が県警と消防本部の危機管理体制の不備によって放置され、運転していた女性が水死するという考えられない事件が16日起きた。
「助けて、水が、水が」という電話が母親の携帯電話に鳴ったのは夜中ではない。皆が活動している夕方6時過ぎである。
「どこにいるの?」とお母さんが尋ねてもかえってくるのは悲鳴ばかり。そしてその電話は最後にこう言い残して切れたと言う。「お母さん、さようなら・・・」
この事故で県警と市消防は通報をたびたび受けながら現場に出動しなかったという。他の水没事故と混同して的確な判断が出来なかったという。
信じられない事件であるが、悪意がないだけまだましかもしれない。
国家権力は、自己保身のために、時として悪意を持って国民を犠牲にする。
そんな事件が公然と高知県で起きていた。
先日講演で徳島を訪れたとき、隣の高知県でバスの運転手の冤罪事件を知った。
停止していたスクールバスに白バイがぶつかって、それを運転していた警官が死ぬという事件が起きたのは06年い3月の事だった。
警察と国は、組織防衛の為にその事故はバスの運転手を過失致死罪と言い張り、その運転手は有罪となる。
これはとんでもない冤罪だと訴えを起した運転手。その訴訟が最後は最高裁まで上がって争われていた。そして最高裁が上告を退けて冤罪が確定した、という事件である。
高知から来た人が言う。誰もが警察のでっち上げと思っているのに、皆口をつぐんだままだ。運転手は気の毒だ、と。
こんな不条理な事が実際にありうるのだろうか。
そう思っていたら、この警察、司法の国民無視のやり方を一貫して糾弾しているブログを見つけた。「きっこのブログ」である。
その22日のブログには冤罪にされた運転手の悲痛な叫びが掲載されている。警察、司法の国民弾圧の非道が告発されている。
これほどまでに重大な冤罪であるのに、大手新聞がまともにこれを報道する事はない。テレビが伝える事はない。だから国民は知らないままだ。
気の滅入るような出来事の中で、救われる思いの出来事が起きた。
26日の各紙は、海上自衛隊員の自殺事件をめぐって被害者の両親が国を相手取って起していた訴訟において、福岡高裁は国の賠償責任を求めた、というニュースを報じていた。
自衛隊内部でのいじめで自殺に追い込まれたり犠牲になっている隊員は少なからずいる。
その家族の一人がかつて講演中の私を訪ねてきたことがあった。その際私は、決してなき寝入りしてはいけない、正義は必ず勝つ、と励ました事があった。
その家族が、粘り強く訴訟を続けた結果、ついに福岡高裁は、「上司の言動は指導の域を超え違法」と断じたのだ。素晴らしい判決である。
国家権力の中にいても正しい判決を下す裁判官もいる。
そこに私はこの国の将来に関する一条の光を見る思いがした。
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