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http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/171182/
孤立する上げ潮派 財政再建派と出動派が包囲網
配信元:
08/19 14:38更新
■路線対立で政界再編も
福田康夫政権で、経済成長と構造改革を重視する「上げ潮派」の孤立が鮮明になっている。これまでも激しく対立してきた「財政再建派」に加え、改革路線を転換し大規模な景気対策を主張する「財政出動派」が勢いを増し、“包囲網”が構築されたためだ。上げ潮派を率いる中川秀直元自民党幹事長は「政策を軸とした政界再編」が持論で、衆院選を控え、自民党が分裂し、民主党を巻き込んだ「真の2大政党体制」への再編もあながち否定できなくなってきた。(石垣良幸、高橋寛次)
「わたしは次世代の皆さんと連携しており、大人の社会での孤立は恐れていない。先送りや借金で景気対策をしようということには断固反対する」
中川氏は11日に東京・代々木で行われた「子ども国会」の開幕式で、小学生から高校生の約40人を前に気勢を上げた。
「孤立」は、先の内閣改造で、“宿敵”の与謝野馨経済財政担当相ら財政再建派が重用されことを意識。「断固反対」は、自民党幹事長に就いた麻生太郎氏が、2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標の先送りを主張していることを公然と批判したものだ。
さらに、中川氏は自身のホームページに、「政策論議の域ではなく『路線転換、即政局』を意味する」と記し、分裂も示唆する強い姿勢で構造改革路線の堅持を突きつけている。
実際、小泉純一郎政権が進めた改革路線の継承者を自任する中川氏には大逆風が吹き付けている。
内閣改造では、与謝野氏に加え、伊吹文明財務相、谷垣禎一国土交通相ら、消費税増税の必要性を主張する財政再建派が軒並み入閣した。
自民党執行部では、月末に政府が打ち出す「総合経済対策」に絡み、麻生幹事長が黒字化目標の先送りに加え、小泉政権で打ち出された新規国債発行30兆円枠にもこだわらない姿勢を表明。小泉政権の郵政民営化に反対した造反組から起用された保利耕輔政調会長も「枠を当てはめて考えるのはわたしのやり方ではない」と同調するなど、総選挙を意識した財政出動圧力が高まっている。
財政再建派と出動派は、財政政策的には相いれないものの、反・小泉構造改革では一致しており、上げ潮派は、まさに“四面楚歌(そか)”の状況にある。
路線対立が激化し、自民党分裂に発展する可能性はあるのか。党内では「中川氏の腹はそこまで据わっていない」(関係者)との声が大勢だ。
しかし、小泉政権の改革路線を支持してきた中堅、若手議員や3年前の郵政選挙で当選した“小泉チルドレン”の間では、改革後退への危機感と現政権への不満が充満している。
それだけに、「小泉前首相か小池百合子氏当たりをトップに担ぎ、“上げ潮党”を立ち上げれば、かなりの数の同調者が出て、相当な勢力になる」(自民党筋)との見方は多い。
さらに、中川氏は民主党の前原誠司副代表とは、たばこ税の大幅引き上げを目指す「たばこと健康を考える議員連盟」を共に立ち上げるなど接点は多い。
民主党内でも、農家への所得補償など従来型の財政出動を掲げる小沢一郎代表への不満がくすぶっており、党を割って、中川氏らの勢力に合流する可能性も否定できない。
「中川氏による再編が実現すれば、構造改革による小さな政府を目指す政党と、増税しても社会保障を充実させて国民の安心に応える大きな政府を志向する政党に分かれ、米国の共和、民主党のような本当の意味での2大政党制に移行できる」(政治評論家)
自民党の路線対立は、政界再編の“火種”となる可能性もあるだけに、中川氏の動向から目が離せない。
◇
■経済対策 バラマキ復活の懸念
福田政権の路線対立で、当面の焦点となるのが、政府が月内に打ち出す「総合経済対策」だ。総選挙を控え、与党から歳出圧力が高まるなか、福田首相も麻生幹事長が求める補正予算の編成に前向きな姿勢をみせており、“バラマキ復活”の懸念が出ている。
財政出動派が勢いを増している背景には、景気が後退局面入りするなかで総選挙が迫っていることへの強い危機感がある。
自民党に加え、公明党は減税を含む1兆円超の大型補正を要求しており、幹部は「バラマキと言われてもいい」と開き直る。
本来はバラマキを止めるべき財政再建派の与謝野経財相も、対策の規模について、「500億円とか1000億円とかいう単位ではない」としており、補正容認の姿勢を示している。財布をあずかる伊吹財務相も「(来年度予算の)前倒しで足らざれば、いろいろな方法を考える。福田内閣として必要なことは毅然(きぜん)としてやる」と前向きだ。
対策の内容は、燃料代高騰に苦しむ農業、漁業の支援や省エネ住宅の推進から、非正規雇用対策に医療対策、食の安全や学校耐震化まで含まれ、「まさに与党のための選挙対策」(政府筋)だ。
財源については、災害などに備えた来年度当初予算の予備費と今年度の剰余金が想定されるが、特例法なしで捻出(ねんしゅつ)できるのは計6000億円程度。対策の規模がこれ以上に膨らめば、赤字国債の追加発行に頼らざるを得ない。
一方で、バラマキ復活は、有権者から「改革路線を捨て、古い自民党に戻った」と受け止められる可能性もある。改革路線を支持してきた自民党の中堅、若手の反発が一段と強まるのは必至で、政界再編の“マグマ”の圧力も高まりそうだ。
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